朝起きて、隣で寝ている「私」とペリーヌをじっと見つめてみる。
すやすやと寝息をたてて、細い鎖骨を上下に揺らしている。
二人ともこちらを向いて、完全に寝入っている。
俺はそこまで信頼されていたのだろうか、と頭を掻く。
ふと感触の違和感に気がつく、そうか女の姿で寝ていたんだった。
客観的に見ると、仲の良いスールのようにも見える。
実際はどうなのかは良くわからないが。
布団を揺らさないように這いでて、二人の寝顔をまたマジマジと見る。
二人は依然変わらず、寝息を立てて寝ていた。
男の時はスキンヘッドだったから、朝の支度も楽だったが、やはり女の姿ってのは面倒だ。
洗面所で寝癖のついた髪を梳きつつ思う、髪を梳かし背中に流し、口の中を磨いた後。
顔を石鹸で洗おうとすると、後ろにグラマスシャーリーが、マジかという表情で立っていた。
シャーリー「俺、流石に女の子の姿で、石鹸を泡も立てずに洗うのはどうかと思うぞ」
俺「何が悪いんだ?」
シャーリー「いや、まあアンタはそういう奴だから良いかもしれんけどさ……」
俺「?」
シャーリー「普通はこう、石鹸を手にとって、手で擦って泡を立てて」
シャーリー「んで、顔に優しく、傷をつけないように塗りつけて、水で流す」
俺「うわっ面倒くせぇ、マジで面倒くさい」
シャーリー「これだから普段男臭いのは…宮藤なんかがくれた糠も、結構いいものなのに」
俺「そんなもんかね、うーん?まあこれでいいや、顔はすっきりしたし」
シャーリー「然し、普段より小さいな、俺」
俺「ああ、声も大体12歳の女の子だ、便利な体だよ、全く」
シャーリー「なあ、何で俺ってそんな体になったんだ?」
俺「打ち上げ花火を作って、皆にパフォーマンスしようと思ったら、無限加速型ラムジェットができた感じだよ」
シャーリー「?」
俺「まあそんなもんだよ、俺もどうしてそうなったかは、良く分かってないんだから」
シャーリー「何だそりゃ」
俺「そのまんまだよ」
イマイチ納得いかず、ブツブツ言っているシャーリーを尻目に、食堂を目指す。
食堂では、バルクホルンとハルトマンが、飯を淡々と食っていた。
あの気質は元来からああ言う人、というのは妹が元気になって、ブリタニアから帰ってきたハルトマンの談。
ふと観察していると、ハルトマンがバルクホルンに何か囁いた後、バルクホルンが噎せているのが見えた。
そのまま、食堂の宮藤とリーネちゃんに飯を作ってもらう。
宮藤「わーまた、その格好なんですか!すごい違和感ですよね!」
俺「うん、まあわからなくもないな、うん」
リーネ「私や、芳佳ちゃんよりも身長低いですもんね」
俺「ねー、ところで朝御飯は何?」
宮藤「それは…」
俺「それは?」
宮藤「……(ニヤ)」
俺「ト…!!」
(ガコオオン!)
俺「トキィ!!」
宮藤「海軍カレーかA-10ビフテキです」
俺「じゃあこの、この煮込み雑炊をひとつください」
宮藤「あ、すいません、それ第二期からなんですよ」
ガーンだな、出鼻をくじかれた、リーネちゃんがニヤニヤしながら、此方を見つつ煮込み雑炊を食べている。
だが、熱かったのか涙目になりつつ、飲み込んだ後、ひたすら雑炊をフーフーしていた。
俺「じゃあA-10ビフテキで」
宮藤「はいどうぞ」
ルーデル「…」
そこには得体の知れない迫力を伴いつつ、膝にルッキーニを抱えて撫で撫でしているルーデルさん(推定)が居た。
心なしか、嬉しそうではある。
俺(ああ、A-10ってそういう)
ルーデル「…お前…うむ…よし、ステーキをやろう」
俺「え、はあ」
ルーデル「…」
俺(あ、ステーキ切り分けてくれてる)
ルーデル「…あーん」
俺「…あーん」
ルーデル「旨いか?」
俺「え、はい」
ルーデル「そうか」
俺(…ナンダコレ)
時折熱いステーキをフーフーしたり、ルッキーニを頭を撫でつつ、食事は進んだ。
俺「何で、今日は此方に来たんですか?」
ルーデル「扶桑の和菓子が食べたくてな…」
俺(そんくらい食べさせてやれよ…)
宮藤「はい、ルーデルさんお疲れ様です」
ルーデル「コレが最中…」
宮藤「あ、それと牛乳です」
ルーデル「ああ、ありがとう」
俺(スゲーいい笑顔)
俺はルーデルさんの膝で寝ているルッキーニを一瞥した後、食器をリーネちゃんに渡して、食堂を後にした。
俺「いい天気だなぁ」
ペリーヌ(ニコニコ)
俺「…やあ、おはようペリーヌ」
ペリーヌ「探しましたわ俺さん」
俺「ああ、そう?」
ペリーヌ「その、俺さん挙式もまだなのですが、ふふふ…ムラムラしてきましたわ…」
(説明しよう、今のペリーヌは、半ヤンデレで手段とか方法を選ばないぞ!)
俺「いや今日俺、女の子の日だし……」
ペリーヌ「私は別にその、ペッテイ」
俺「嗚呼いい天気だなペリーヌ君!紅茶を入れてくれないかね!」
ペリーヌ「…はい、ただいま」
ペリーヌがニヤニヤと、ねっとりとした微笑みを浮かべつつ、厨房へと消えて行った。
さて、気がつけば変な位置に立ってしまったものだ。
昔は名前だけの元帥、唯一戦争行為を行わない軍人、洋菓子店の店長。
今は……
私「それにしても、よくあなたは私を受け入れたわね?」
俺「…急に出てくれるなよ、今回想いれて、じゃあこれから頑張ろっか、お話終わりって締めようとしたのに」
私「それじゃあ、何で私を人間にしたのかわからないじゃん、どういうことよー、これどういうことよー」
俺「え、奴r……メイドさんが欲しかった、ってだけかな……」
私「おい、今奴隷って言おうとしただろ」
俺「キノセイダヨ」
私「コノヤロー!」
隣でギャンギャン喚き立てる何かを適当になだめ、ペリーヌが持ってきたお茶に、砂糖とミルクを3杯づつ注ぎ。
落ち着いたところで、ペリーヌに幾つか問かけることにした。
俺「ペリーヌ、ペリーヌちゃんや、何で俺のことが気に入ったんだい?」
ペリーヌ「そうですね、先ずは一見粗雑そうに見えて、内心では緻密に且つ、誰にもそこまでは肩入れはしない」
ペリーヌ「だけれど、出来るだけ悪い感情を向けないように努力する、そんな優しさですわ」
俺「それは思い違いじゃ無いかね、私はただ単に効率を重視しただけだよ」
ペリーヌ「本当に効率だけを重視したなら、バルクホルン大尉の妹さん」
ペリーヌ「クリスさんに会いに行って、高度な医学審査をやったり」
ペリーヌ「態々、魔力が減衰した坂本少佐に、特殊な薬を施して戦闘寿命を延命したり」
ペリーヌ「本人が納得する時間を得れるように、気を使ったりはしませんわ」
俺「だからって、俺を好きになるには薄すぎないか?」
ペリーヌ「いいえ十分ですわ、貴方は少し前の精神的に不安定だった私に」
ペリーヌ「私が恩を感じ、恋心を自覚する程度には、優しくしてくれましたもの」
俺「……俺は紅茶には砂糖とミルクをドパドパいれるぞ?」
ペリーヌ「十分ですわ、一緒に紅茶を飲んでくださる貴方が好きですから」
そう言って彼女は、マリーゴールドの紅茶を一口飲むと、ニコリと優しい笑みを浮かべた。
俺は、この紅茶の味が好きだが、この紅茶には弱くなりそうだ、と思った。
私(…ご馳走様っと、お腹すいたから宮藤にビフテキ焼いてもらおうーっと♪)
俺「……なんだかなぁ」
それは、何となく悪くないと思うようになった今の関係への呟きか、それとも今の置かれた立場の不可思議さにか。
ペリーヌ「所で俺さん、私は子どもが二人欲しいのですけど…」
俺「君は簡単に、何というか余韻を台無しにするよね」
ペリーヌ「あら、早いに越したことはありませんから」
俺「……後々、な、後々……」
ペリーヌ「嫌がったら私にもいい考えがありますので」
そう言ってニッコリ笑う笑みには、何となく嫌な予感を感じさせられるものがあった。
俺「ヤレヤレヤレヤレ、参ったよマジで高官さんよ」
高官「なんだいお嬢ちゃん、オオッと怒るなよ、分かってるって君の夫人の話だろ」
俺「お前
ガリアの高官と、三つ返事で了承しちゃったそうじゃねぇか、結婚」
俺はガリアにリベリオンから飛んできた高官と、久しぶりの談話に勤しんでいた。
久しぶりにあった上官はニヤニヤと、此方を見ている。
高官「だってよ、お前さんがあの嬢さんと結ばれりゃあよ、扶桑とガリアでの戦後交渉の選択肢の一つになるじゃねぇの」
俺「それはわかるよ、分かるけど何か気に入らねぇんだよ」
高官「分れとは言わんよ、けど今のところ全員ハッピーだろ?これで」
俺「……ヤレヤレヤレヤレ、言っとくが今度から嫌がらせみたいに、経費計算が面倒くさくなるようにしてやるからな」
高官「おー怖い怖い、俺も大元帥様様には怖くて怖くて抗命はできんからね」
高官「そこら辺は、君が気に入るように折り合いをつけさせてもらうさ」
俺「じゃあまずガリアに扶桑の庭園が欲しい、勿論最高級の伊予青石と、良い庭木を付けさせて」
俺「龍安寺庭園のような作りで頼むよ、んで扶桑の南洋島にガリア式庭園を作れ」
俺「勿論、皆が使えるように広く且つ公園として作れ、勿論できるよな?」
高官「お前は、本当に、ひどい事を、思いつく、よな」
俺「良いじゃないか、俺はただ対価を要求しただけだぜ、公園と別荘」
俺「それに・・・まあ、その他色々で手を打とうとだな・・・」
高官「おい、その他って、その他って何だ」
俺「思いついたら連絡するよ☆」
高官「まあ良いだろう、今回の戦争で大分他の先進国よりも、ストライカー開発という点」
高官「そしてお前の指揮した501による、様々な戦果これで大分釣りが来るくらいだ」
俺「じゃあブリタニアに大聖堂を追加な」
高官「お前本当、無駄に嫌がらせが凝ってるな」
俺「嫌がらせちゃうよ(笑)僕は皆に笑顔になって欲しいなって(笑)」
高官「まあお前の給料からも、半分は徴収するけどな」
俺「なん…だと…」
高官「それと、言っちゃ悪いが結婚を嫌がってたお前が、俺より先に結婚するとか可笑しくてなぁ」
俺「だからそんなニヤケ面なんだな……」
高官「んでもうシッポリなのかい」
俺は飲んでいた態々嫌がらせに上官がいれた、ペリーヌのマリーゴールドを松田優作バリに吹き出した。
上官はそれに耐え切れず、ついに吹き出したようだった。
俺は限界だと思った。
その後、一度501は解散する流れになったそうだ、というのは一度、全部隊を再編するためだそうだが。
各々の目的のために、全員は一度解散することになった。
バルクホルンとシャーリー、ハルトマンはブリタニアのクリスの元へ。
坂本、ミーナさんは、ブリタニアの前線基地で事務仕事等を片付けに。
サーニャとエイラは、エイラの友人が居るという、北方前線に行くらしい。
俺とペリーヌ、私、宮藤、リーネはガリアで前線哨戒という名の、ガリア復興事業を興している。
ガリアの民間人を雇い、仕事と居住区の雇入れとして、日々あくせく働かせる事業である。
最初はペリーヌも寄付団体を作る、と息巻いていたが、戦争が終わればそこで団体は目的を無くしてしまう。
それなら最初から、事業として起こせば引き継ぎなども簡単に行える、と説得し。
事業団体を設立するに至る、勿論貧乏人からは金は取れない。
故にガリア政府や、ブリタニア政府、リベリオン政府の支援の元で事業を興したので。
今の中身的には、ペリーヌの主張した寄付団体と対して変わらない。
ペリーヌ「俺さんあーん」
俺「あーん」
宮藤「リーネちゃん、あーん」
リーネ「あーん」
私「あ、紅茶渋めで貰えます?ええ、甘いのはもう良いんで、はい」
俺は今日も、ペリーヌにお茶を入れてもらっている。
だが最近ペリーヌに夜、逆セクハラを受けることが多くなってきた。
覚悟を決めるべきなんだが、まあセクハラだけで済むならと思ったら、昨晩ケツを掘られた。
ペニバンなんて、どこから持ってきたんだろう、本当に。
だけどまぁ、それでも良い日々には違いないんだろう、そう思いつつ俺は甘ったるい『変わらない愛』を飲み干した。
最終更新:2013年01月28日 15:23