異世界のウィッチ
――――――――ロマーニャ基地にて
・・・俺は、ミーナとか言う女に抱えられたまま空飛ぶ10人に自己紹介され、
こいつらの基地だというところに連れてこられた。
俺を支えてくれたミーナに感謝しつつ、俺は信じられないことを耳にした。
・・・ここはロマーニャという国にある自分たちの基地で、
自分達は『ウィッチ』として空を飛び、人類に牙をむくネウロイという不思議な生命体と戦っている、というのだ。
(・・・なんで俺はここにいるんだ、という質問には答えてもらえなかった。当たり前か。答えようがないしな)
俺「・・・」ボーゼン
坂本「どうした?」
ゲルト「それほど驚くことでもないだろう」
俺「驚くに決まってんだろ!」
サーニャ「!」ビクッ
エイラ「サーニャを(ry」
俺「信じられるわけないだろ!ウィッチって、ようするに魔女だろ!?
魔法使ったりするあれだろ!?そんなもの今も昔もいるわけない!
ネウロイなんて、そんな生き物聞いたこともない!ロマーニャって国も聞いた事ないぞ!」
エーリカ「・・・」
ミーナ「・・・俺さん」
俺「なんだよ・・・」
ミーナ「あなたは、この世界のことについての基本的なことすら知らないということになります。・・・妙です」
俺「あんたらみたいな魔女ってもののほうが妙だろ」
ゲルト「貴様!口の利き方には気をつけろ!」
俺「・・・」
ミーナ「・・・あなたの生まれた国と、生年月日を教えていただけますか?」
俺「・・・生まれは日本、生年月日は1994年6月1日だ」
宮藤「え?」
リーネ「・・・何年って、言いましたか?」
俺「1994年だ」
ペリーヌ「・・・えーっと・・・なんと言えばよろしいのやら」
言葉に困るほど妙なことか?
シャーリー「・・・おい、俺。・・・ニホンだな?・・・本当にそんな名前か?」
俺「ああ。そうだよ」
シャーリー「・・・どこだ?」
この胸の大きいシャーロットという女は世界地図を広げているようだが・・・日本を知らないのか?
俺は、地図の日本列島のところに指をさした。
俺「ここだ」
ルッキ「え?そこ扶桑だよ?」
俺「は?」
俺はルッキーニとかいうガキの言葉に耳を疑った。シャーロットから地図を引ったくり、そこを見た。
そして俺は、次は目を疑った。 ・・・フソウ?日本じゃなく、扶桑?
ミーナ「あのね俺さん、非常に言いにくいことなんだけれど・・・」
そして、俺は、またもや耳を疑うことになった。
ミーナ「今は、1945年なの」
―――――――
理解が追いつかない。
俺「・・・なんだよそれ」
今は2010年のはずだ。
ゲルト「なんだよ、とは言われても、これは本当のことだ」
バルクホルンって言ったか。・・・ズバッと言ってくれるのはありがたいけど、
この状況じゃ更に絶望するしかなくなっちまうよ。
俺「・・・おかしいだろ、こんなの」
サーニャ「・・・そんなこと言われても」
エイラ「困るよナァ」
何言ってんだ。困ってるのはこっちだよ。お前らより、ずっとな。
エーリカ「ねえ。君の言ってたことは、本当?」
俺「・・・お前らの言ってることのほうが本当かどうか疑わしいぞ」
エーリカ「ふーむ・・・」ジー
確かこいつはハルトマンとかいったか。何だよ。
エーリカ「嘘ついてるようにはみえないよ、ミーナ」
嘘つく必要なんかないからな。
坂本「つまり、何か・・・君は・・・」
ミーナ「・・・本当に、未来の世界から来たの?」
俺「・・・俺がいた所は魔法なんてなかったけどな」
宮藤「へ・・・へー・・・」
リーネ「信じられません・・・」
ペリーヌ「全くですわ・・・」
この三人は、宮藤とリネットとペリーヌだったっけ。
俺「俺だって信じられない。俺は学校に行こうとしてただけなんだ。
・・・それが、なんでこんなことになってんだよ」
坂本「・・・君のいたところでは、扶桑のことを日本と言うのか」
俺「・・・ここでは日本のことを扶桑っていうんだな・・・そこだけは理解したよ・・・はぁ」
それ以外のことは理解できない。
魔法使いが人間以外の奇妙な生命体と戦っている過去の世界にいきなり飛ばされて・・・
・・・クソッ、誰がこんなこと頼んだんだよ。俺は頼んだ覚えはないぞ。
・・・いや、頼んだかもしれない。中学生くらいの頃、何もかもつまらなくなって、『剣と魔法の世界に行きたいなぁ』
なんて思ったことがある。・・・かも。だからって本当にこんなことになるとは・・・
俺は頭を抱えた。・・・これからどうすればいいんだよ?
ミーナ「・・・」
ゲルト「ミーナ、彼をどうするつもりだ?」
ミーナ「・・・俺さん、ちょっと話をしてもいいかしら?」
俺「なんだよ・・・?俺を元居た世界に戻してくれるってのか?」
ミーナ「いいえ、そうではないのだけれど・・・」
俺「だったら断る」
ゲルト「なっ!?」
坂本「即答だな・・・」
エーリカ「・・・」
ミーナ「・・・どうしてかしら?」
俺「俺は元居た世界に戻りたいんだ。こんな妙ちきりんな世界になんて居たくない。
だからそれ以外のことなんて聞きたくもないし、あんたらとも一切関わりたくない」
ゲルト「・・・貴様は、これからどうするつもりなんだ」
俺「あんたらが俺を戻すことができないなら、あんたらとはオサラバして俺は一人で戻る方法を見つける」
ペリーヌ「当てはあるんですの?」
俺「家族も友達も、一緒にこの世界に飛ばされてきた奴もいないんだ。あるわけねえだろ」
シャーリー「・・・あー、この世界に連れてこられたきっかけとかは?」
俺「交差点で待ってたら異世界に飛ばされるなんて納得いかねえよ」
シャーリー「・・・そりゃ、なんつーか、理不尽だな」
エーリカ「つまり手がかりゼロでしょ?・・・詰んでるようなもんじゃん」
俺「・・・でも、探すしかないんだよ。俺一人でさ」
ミーナ「・・・一人で・・・ねぇ。そんなことはないかもしれないわよ」
え?
ミーナ「・・・あなたを抱えたとき、あなたのなかに魔法力を感じました。どういうことかわかりますか?」
俺「わかんねえよ」
ミーナ「あなたも、ウィッチになれるかもしれないってことよ」
は?
俺「・・・俺が?」
宮藤「え!?」
リーネ「・・・俺さんがですか?」
ペリーヌ「男性なのに?」
ミーナ「ありえない話ではないはずよ。女性しか魔法力を持っていないなんてことはないわ」
シャーリー「・・・ストライカーを履かせてみるのか?」
ミーナ「ええ」
すとらいかー?
俺「なんだそりゃ」
ルッキ「あたし達がさっき履いてたやつだよー!」
ああ、あれか。すとらいかーっていうのか。
俺「・・・」
ミーナ「あなただけで元の世界へ戻る方法を探すとは言うけれど・・・
行く当ても帰る場所もないなら、私達と一緒に戦いながら探すほうが、良いと思わない?
全力でやるほどの余裕はないけど、できる限りは協力するわよ」
俺「・・・遠慮する」
ミーナ「え!?」
坂本「・・・何故だ」
俺「・・・あんたらと一緒なら、確かに見つかる可能性は少しは高くなるだろうな。
でも、俺なんかのためにあんたらに迷惑はかけられない。
それに、あんたらと一緒に『探す』ってだけでも迷惑をかけるみたいで嫌なのに、まして『戦う』なんて無理だ。
俺は銃なんて持ったこともないし、ましてや生き物に向けるなんてできない。ただの学生なんだ。
俺に出来ることなんて、あんたらに比べたら無に等しい。戦うことなんてできない。足手まといになるだけだろ」
ゲルト「確かにな」
ミーナ「トゥルーデ!」
サーニャ「・・・あの」
エイラ「お、おいサーニャ?」
俺「ん?」
こいつらは、確かサーニャとエイラっていったか。イチャイチャイチャイチャと目障りな二人だ。
サーニャ「・・・使うのは、銃だけじゃなくて、剣でもいいんですよ?」
・・・剣?
そういえば。
俺「・・・昔、剣道をやっていたけど」
坂本「おお!」
この眼帯をつけた女は坂本だったっけ。なんで嬉しそうな顔してんだよ。
剣を使うって言っても、竹刀じゃ無理だろ?それに本物の刀って重いんだろ?
俺「途中でやめたんだ」
坂本「ん?何故だ?」
俺「・・・挫折した。どうしても、壁を乗り越えられなかった」
・・・部の中では上手いほうだ、と顧問は言っていたが、
俺は剣道における何かをどうしても掴むことができず、やめたんだ。
坂本「・・・ならば」
なんだよ?
坂本「今からもう一度やって、壁を越えればいい」
俺「・・・そういうもんか?」
坂本「そういうものだ。それに、訓練さえすれば、お前も戦える」
俺「そんな簡単に言い切れるのかよ?」
坂本「ああ。言い切れる」
なんでだよ。
坂本「何故かって?」
俺「人の心を読まないでくれないか」
坂本「・・・ごほん。お前は、そもそも何か勘違いしているようだな。
今ここでネウロイと戦っている私達も、初めから今のように戦えていたわけではない。
訓練と実践を重ねてここまでやってきたのだ。・・・何も今すぐ飛んでネウロイと戦えと言うのではない。そこは安心しろ。
訓練せねば、どんなに素質があっても結局のところどうにもならんからな。
それにお前一人で帰る方法を探すといっても、正直言って見つかるとは思えない。おまえ自身もそう思っているだろう?」
・・・だから心を読まないでくれるか。
坂本「だったら、・・・飛ぶことを試してみる価値はあると思わないか?」
俺「・・・あのさ、俺が飛べるって前提で長々と話してんじゃねえよ。失望したって知らないぞ」
エーリカ「!」
ミーナ「では俺さん。来ていただけますね?」
俺「ああ。やってみるよ。試してみなきゃ始まらないしな」
――――――――
俺「・・・これを、履くのか」
ミーナ「ええ」
俺「・・・」
言われるままに、俺は目の前の機械を脚に装着した。
俺(・・・これで、飛ぶ、のか)
そう思った瞬間、足元に光が現れ、プロペラのようなものが回り出した。
ブウウウゥゥゥゥン!
俺「!?」ピョコンッ
俺の頭から何か出てきた。・・・犬耳?
俺「・・・」
誰が得するんだよ。
俺の複雑な心情なんてお構い無しに、周りの女共は騒いでいる。
宮藤「おお!凄い!」
リーネ「おっきい魔法陣・・・」
ペリーヌ「まさか・・・」
シャーリー「凄いぞ俺!史上初、男性ウィッチ誕生の瞬間だ!」
ルッキ「おお~」
ゲルト「魔法力は問題ないのか・・・」
エーリカ「結構強力みたいだよ」
サーニャ「・・・凄い」
エイラ「ま、マア最低限の条件はクリアしたみたいダナ」
坂本「うむ」
ミーナ「俺さん、ありがとうございました。・・・飛行状態を解除してください」
俺「え?」
そんなこと言われても。
俺「どうすりゃいいのか・・・」
ミーナ「飛ぶのを止めるって思えば止まるわ」
適当だな、おい。
ピタッ
俺「・・・こんなんでいいのか?」
エーリカ「『こんなん』?なに言ってんの、上出来じゃん!」
マジか。
ミーナ「・・・さて俺さん。あなた、どうするの?」
俺「・・・」
ミーナ「たった一人きりで寝食をし何時来るかもわからないネウロイの脅威から逃げながら、当てもなく元の世界へ戻る方法を見つけるのか、
それとも私達と一緒に生活しネウロイの脅威に立ち向かいながら、私達と一緒に元の世界へ戻る方法を見つけるのか」
こういうのをなんというのだろうか。『八方ふさがり』?違うな。この場合一方だけ開いてるからな。
俺「・・・俺がいちゃ迷惑だろ?」
坂本「心配するな。お前が来る前からここは騒動が多いからな」
シャーリー「一人くらい増えたからってそんなに変わんないんだ」
エーリカ「むしろ、話した感じだとしっかりしてるみたいだし、迷惑だなんて思わないよ」
俺「・・・そうか」クスッ
ルッキ「おお!笑った!」
エーリカ「君はそうして笑ってるほうがいいよ。せっかくのいい男なんだからさ」ニコッ
俺「余計なお世話だ」
エイラ「中佐、ホントにこんな奴を501に入れるのか?」
サーニャ「エイラ・・・失礼よ」
ミーナ「大丈夫・・・だと思うわ。登場の仕方こそ変だったけど、内面自体は問題あるようではないみたいだし。(口は悪いけど)
上層部に言っても追い出したりはしないでしょう。史上初の男性ウィッチなんだもの、データを採りたいっていうに決まってるわ。
私たちにとっては・・・後々の戦力の増強になると思うし、上層部は得するし、俺さんも損をしない。誰も損をしないのよ」
・・・ま、一人で野垂れ死ぬよりはマシか。
ミーナ「俺さん。・・・良いわね?」
俺「・・・仕方なくだけど、世話になることにするさ。帰るまではな」
あ、思い出した。こういうのって、『選択の余地がない』って言うんだったな。
ミーナ「じゃあ・・・待っててね。正式にあなたが『ストライクウィッチーズ』に入隊できるよう働きかけるわ」
―――――――――
・・・次の日。上層部にはミーナから言ってくれたらしい。ありがたいことだ。
これで正式に俺は『ウィッチーズ』の一員ということになった。
あの人には世話になりっぱなしだ。当然礼を言いに行った。上手くいえなかったから『ありがとう』ってだけだけど。
―――――――――――
それから俺は、坂本って女にも、それはもうってほど世話になった。体力づくりや射撃や飛行の訓練の他に剣道の稽古でたくさんしごかれたり、
わざわざ扶桑から戦闘用の刀を届けてもらったり、(・・・これってやっぱり『日本刀』じゃなくて『扶桑刀』って呼ばなくちゃいけないのか?)
・・・ちなみに魔法力を発現させていると不思議と武器を重く感じない。魔法力のおかげらしい。
実戦では刀と銃を持ち、後衛として援護をしつつ前衛の奴らから戦い方を学んだりして・・・戦うための力を付けていった。
・・・でも。
ミーナ「彼の固有魔法がはっきりしない?」
坂本「ああ。刀を振っても、銃を撃っても、飛んでいても、全くわからないんだ。本人も、特に感じないらしい」
ミーナ「・・・」
坂本「ま、そのうちわかるとは思うがな」
ミーナ「そうだといいけれどね・・・。」
――――――――――
ミーナ「それより、もっと心配なことがあるのよね」
坂本「なんだ」
ミーナ「この三ヶ月、襲撃してくるネウロイがみんな少数の小型だけだってこと」
坂本「・・・」
ミーナ「不自然よね・・・なにか悪い予感がするのよ」
坂本「・・・確かに、な」
最終更新:2013年01月28日 15:50