異世界のウィッチその2
――――――――ある日・出撃命令が出た時にて
ペリーヌ「また小型ネウロイですの?いい加減飽きてきましたわ」ガガガガガ バキィン

宮藤「そうですねー・・・ずっとこんなんですしね。俺さんが来る前からこうなんです」ガガガガガ バキィン

俺「・・・そうなのか?」ガガガガガガガ バキィン

リーネ「もう、三ヶ月になりますよ。どう思います?」ズギュゥン バキィン

俺「・・・じゃあ、そろそろ無茶苦茶強いのが来るかもな。地震みたいに」ガガガガガ

ペリーヌ「前兆ってことですか・・・嫌な感じですわね」ガガガガガ

そんな無駄口をたたきながら戦えるくらいには、俺も余裕が出てきた。
 ・・・俺は戦いは好きではない。ゲームの中でやる程度だったらいいのだが、現実に本気で命のやり取りをするなんて御免だ。
こいつらはどうなのだろうか。・・・戦いが好きそうな顔には見えない。
でも、こいつらには目的があるらしい。人々を、世界を守るという目的が。だから戦っている、と言っていた。
 ・・・俺には、そんな目的なんてない。正直言って、俺以外の人やこの妙な世界なんてどうなろうと知ったことじゃない。
なのに、何故俺は戦っているのだろうか。

バキイィィィン

俺「・・・終わり、と」チャキッ

俺の戦う理由。・・・それは「仕方ないから」だ。
 ・・・目的でもなんでもないこの程度の理由で戦っていいのだろうか?
急に申し訳ないような気がしてきた。

リーネ「俺さん、戦いには慣れましたか?」

俺「・・・慣れたくないものに、慣れちまった」

宮藤「あはは・・・」

ペリーヌ「・・・私達も同じですわ。慣れたくないものに慣れてしまいました」

俺「そういうもんか?」

宮藤「そういうものです」

リーネ「・・・じゃ、基地に戻りましょう」

 ・・・よく一緒に出撃するこの三人は、今のところ一番打ち解けている奴らだ。よく話しかけてくれる。
まだぎこちない感じだけど。・・・俺なんかに構ってくれなくてもいいのに、なんでわざわざ絡んでくるんだろう。


―――――――――基地
坂本「よくやったな、みんな。特に俺。最近上達してきたみたいじゃないか。良かったな」

俺「・・・そうだな」

ゲルト「・・・おい俺、口の利き方に気をつけろ」

俺「はいはい・・・」

坂本「・・・どうした?あまり嬉しそうじゃないな」

俺「ああ。嬉しくない」

ゲルト「・・・」ピクピク

坂本「・・・そういえば、お前は仕方なく戦っているだけだったな。そんなものに興味なんてないか」フゥ

俺「まあな。元の世界に帰ったら何の意味も無いしな」

宮藤「お、俺さん・・・」

シャーリー「そう言うなよ。どんなことでも、上達は上達だ。喜べることだぞ」

俺「だからさ、俺は嬉しくないって言ってんだよ・・・はぁ」

ゲルト「・・・」プルプル

視界の端に見えていたバルクホルンが、何やら震えている。

エーリカ「どしたのトゥルーデ?」

ゲルト「もう、ダメだ・・・!」

何がだよ?

ゲルト「俺・・・以前から不満だったが、もう我慢できん!貴様!それが上官に対する口の利き方かぁ!!!」

フオオォォン ピョコンッ

 ・・・使い魔発現させやがった。ハルトマンが必死で止めようとしている。

エーリカ「わわ、落ち着いてトゥルーデ!あんたが殴るとシャレになんないから!」

 ・・・シャレにならない、か。

俺「別に殴っても構わないぞ」

リーネ「・・・え?」

俺「死ねば元の世界に帰れるかもしれないしな。ほら、さっさと殴り殺してみろよ」

ミーナ「!?」

ペリーヌ「お、俺さん!?」

ゲルト「なっ・・・」

宮藤「お、俺さん!そんなこと言っちゃダメです!」

俺「はいはい、わかったよ」

そう俺が言った瞬間、バルクホルンは魔力発現を解除し、言った。

ゲルト「・・・それほどまでに、この世界が嫌いなのか?」

 ・・・別に嫌いだとは言っていない。ただ単に『戻りたい』ってだけだ。

俺「そういうことじゃない。俺は平穏に暮らしたいだけなんだ。でも、ここじゃ平穏がどうのなんて言ってられない。
だから俺はここにいたくない、戻りたいってだけだ」

ゲルト「・・・」

俺「・・・で、俺は部屋に戻ってもいいのか?」

坂本に尋ねる。

坂本「あ、ああ・・・食事の時間になったら呼びに行くぞ」

俺「わかった」

というわけで俺は、入隊したときにあてがわれた部屋に戻った。


――――――――
俺「・・・」

ベッドに寝転がり、俺は考え事をしていた。
向こうの世界は退屈だったが、それでも安心して、平穏に暮らしていくことができていた。
だから居心地は良かったんだ。まともに過ごしていれば、まともに生きていくことができたんだ。
不満こそあっても、不安なんてなかったんだ。
なのに、この世界は不安だらけだ。まともに過ごしていても、まともに過ごせるかはわからない。
いつ、人間側が崩壊するかわからないんだ。冗談じゃない。

 ・・・コンコン

ドアがノックされた。寝転がったまま俺は言った。

俺「誰だ?」

まだ食事の時間には早いはずだ。

『・・・サーニャです』

 ・・・あの根暗そうな女か。起きてるなんて珍しい。俺はドアの方に向かっていった。

『お、オイサーニャ、ホントにあいつと話すノカ?』

『・・・うん』

といった会話が耳に届いたが、気にせず俺はドアを開けた。


―――――
エイラ「おわっ」

サーニャ「・・・こんにちは」

俺「・・・何の用だよ?」

まさかあいさつするためだけにここに来るわけないよな。

サーニャ「あの・・・」

俺「・・・」

サーニャ「・・・俺さん。元気出してください」

は?

エイラ「おいサーニャ・・・」

俺「・・・なんだよ、いきなり」

サーニャ「辛い気持ちはわかりますが・・・」

 ・・・何言ってんだ、この女。

俺「わかるわけないだろ?」

エイラ「ナッ!」

サーニャ「・・・!」ビクッ

俺「元気だせだと?出せるような状態だったらとっくに出してるさ。
それどころじゃないから今こうやってウジウジしてるんだよ。お前らに異世界にいきなり連れてこられた人間の気持ちなんてわかるわけない」

サーニャ「・・・その、」

俺「なんだよ?」

サーニャ「・・・独りで」

エイラ「ン?」

サーニャ「・・・独りで悩まないで、相談してみてください」

俺「・・・」

サーニャ「・・・相談したら、きっと気持ちも晴れます」

 ・・・俺はドアを閉めた。

――――――――
バタン
エイラ「・・・サーニャ、なんでアイツにそんなこと言おうなんて思ったんダヨ?」

サーニャ「・・・あの人に、笑って欲しいから」

エイラ「ハ?」

サーニャ「・・・あの人の笑顔が、素敵だったから」

エイラ「・・・」

サーニャ「なのに、今まで一回しか笑ってくれないから」

エイラ「・・・」

サーニャ「だから、上手く言えなかったけど、笑ってもらうために、支えになりたくて・・・」

エイラ「・・・」
―――――――――
 ・・・クソッ、なんなんだよ。異世界に連れてこられたと思ったら選択の余地無しに戦わざるをえないような状況に追い込まれて・・・
野垂れ死にするくらいならって仕方無しに入隊したら、変人ばっかりで、その変人共はわかったような顔して
「元気出してください」とか「相談して」なんてほざきやがるんだ。相談したってお前らにはどうすることもできないだろうに。
気持ちはありがたいが、どうしようもないってこと、考えればすぐわかることなのに。こいつら、一体何考えてるんだ。わけわかんねー。
そう思った。


―――――――――ある日の談話室にて
ルッキ「俺ー」

俺「なんだよ」

ルッキ「かくれんぼしよー」

俺「・・・遠慮する」

ルッキ「えー・・・」

宮藤「なんでですかぁ、俺さん?」

リーネ「ちょ、ちょっと芳佳ちゃん・・・」

俺「面倒だからだ」

ゲルト「まるでハルトマンみたいなことを言うな」

エーリカ(・・・)

俺「ほっといてくれ」コツコツコツ

ゲルト「待て!」ガタッ

俺「何だよ?」ピタッ

ゲルト「貴様は他人への思いというものが不足している!」

俺「・・・そんなの必要ないだろ」

ゲルト「いーや、必要ある!他の何かを守りたいと思うことで、初めて軍人たりえるのだ!
今ここに居る人の思いを放り出すようでは・・・」

俺「・・・あんた、俺がここに居る理由を忘れたのか?帰るまでの間、仕方なくいるだけなんだぞ。
他人を守るなんて思ったことはないし、そもそも俺は軍人になろうなんて思ってない」バタン

―――――――

シャーリー「・・・行っちまったか」

ゲルト「くっ、あいつは・・・」

エーリカ「俺のことが気になって仕方ないんだねートゥルーデ」

ゲルト「なっ!ち、違う!」

エーリカ「違わないでしょ~トゥルーデにとってあいつは生意気な・・・」

ゲルト「わー!わー!」

エーリカ「弟みたいなもんなんだよね~?」

ゲルト「そ、そんなことを言った覚えはない!」

エーリカ「寝言で言ってたよ~、確かトゥルーデが俺を殴ろうとしたときの夜のことだったかな~?」

ゲルト「な、なに・・・?」

エーリカ「トゥルーデ、心配してたみたいだもんね~。『嫌わないでくれ』とか
『お前のその性格さえなんとかなれば・・・』とかさぁ~?」

宮藤「そうなんですか?バルクホルンさん」

リーネ「へー・・・」

ゲルト「や、やめてくれ・・・」

シャーリー「そういやあバルクホルン、お前あれからあいつの口の利き方にとやかく言わないよな」

ペリーヌ「もう慣れたということでしょうか?」

ルッキ「慣れた~」

ゲルト「う、うるさい!」

サーニャ「・・・それはともかく、私も心配です」

エイラ「私もダ。アイツ最近、以前にもまして表情が硬いじゃないカ」

坂本「・・・なかなか、向こうから打ち解けてくれないな」

ミーナ「そうね・・・私達だけが一方的に彼のことを受け入れてもしょうがないのよね・・・」


―――――俺の部屋
ベッドに寝転がり、俺は考え事をしていた。

俺「・・・」

ここに来てからの毎日、俺はずっと絶望しっぱなしだった。元の世界に帰る手がかりが何も掴めないのだ。
文献を探したけれど、当然そんな資料は存在しなかった。・・・あったら逆にびっくりするけどな。

俺「・・・」

俺は仕方なくここにいるだけなんだ。
なのに、ここの連中は俺がいるということに対して、もう誰も不満そうな顔一つ見せない。
それどころか『相談して』だの『一緒に遊ぼう』なんて言われてしまった。
そんなみんなの態度が、俺には辛かった。なんだか、無理に本音を抑えているような気がして。

 ・・・はやくこんな世界から消え去って元の世界に戻りたい・・・でもどうすればいいのかわからない。
 ・・・どうすれば、この悪い気分をなんとかできるのだろうか。

俺「・・・」

『他人への思いというものが不足している』

他人への思い、ね・・・
ルッキーニ。あいつは、哀れみからああ言ったのだろうか。・・・そんなやつには見えない。
もし、心から遊びたいと思っていたのだとしたら・・・


――――――――
宮藤「じゃあルッキーニちゃん、私たち隠れるね」

ルッキ「うん・・・」

シャーリー「・・・おいルッキーニ」

ルッキ「なぁに?」

シャーリー「もう一回、俺に遊んでって頼んでみろ」

ルッキ「え・・・だいじょぶかな?怒ったりしない?」

シャーリー「ああいう奴は押しに弱いからな。行ってみろ」

ルッキ「・・・わかった!」

―――――――
コンコン

部屋のドアがノックされた。

俺「誰だ?」

ドア越しに話す。

ルッキ「あたしだよー」

 ・・・またあのガキか。

俺「何の用だ?」

ルッキ「やっぱりかくれんぼしないのー?」

俺「・・・」

 ・・・他人の思いを放り投げるのは、軍人云々の前に、人としてどうなのかって話だよな。

俺「仕方ねえな」

ルッキ「!」

次の瞬間、ドアが勢いよく開かれて、満面の笑みを浮かべたルッキーニが部屋に飛び込んでいた。

最終更新:2013年01月28日 15:50