―――――――――――――俺の部屋
・・・俺は、ベッドに寝転がって、ボーっと天井を見ていた。
その間、俺の胸の内はもやもやしっぱなしだった。・・・きっと、自分の行いが正しかったのか否かが、自分でもわからないからだろう。
俺は、女さんを助けるために、女さんに協力した。そうすることで、世界が崩壊するということをわかった上で。
・・・今まで散々世話になったみんなのことが、・・・サーニャのことが、頭に無かったわけではない。
・・・人は、誰もが居場所を求めて生きている。そして、俺の居場所はここにある。だから、俺はこの居場所を大切にしたいと、そう思っている。
けど。・・・俺は、どうしても女さんを見捨てる気にはなれなかった。
・・・突然召喚されて戦うことを強いられる不安感を、俺は知っているから。
・・・それに・・・
・・・
・・・どのくらい時間が経っただろうか?窓の外が橙色に染まっていたから、随分と経ったのだろう。
タッタッタッタッ・・・
誰かの足音が近づいてくる。
・・・今は誰にも会いたくない。もし俺に用があるとかで部屋に入ろうとしても無視しよう・・・
俺はそう思ったのだが・・・
ガチャッ
俺「・・・」
その『俺に用があった誰か』は、ノックもしないで部屋に入ってきやがった。・・・誰なのか予想はつく。
「にゃっほー俺ー」
バタン
俺「・・・ハァ」
ベッドの横まで歩いてきた女に・・・ハルトマンに目を向ける。・・・
エーリカ「『ノックもしないで入ってくるんじゃねえよ』って思ってるでしょ」
俺「・・・最後に『死ね』がつけられてないからハズレだな。重要な部分が抜けてる」
エーリカ「にゃはは、その口ぶりだと、まだ頭が冷えてないと見えるね」
・・・頭が、冷えて・・・?
俺「・・・俺は」
エーリカ「いつもどおりだった?」
俺「・・・ああ」
エーリカ「嘘つけ。君があんなに怒ってたの、あたし
初めて見たよ」
・・・
エーリカ「今まで君が怒ったことがないとは言わないよ。でも、あんなにきつい怒り方は今までに無かったよね」
・・・怒り。・・・召喚を行った奴らへの怒りも、俺を突き動かした一因であることは事実だ。・・・
俺「・・・そんなことを言うために、わざわざここに来たのか?ズボラ女」
エーリカ「もっかい、君が思ってること当てようか」
俺「あ゛?」
エーリカ「『一人にさせてくれないか』」
・・・
俺「・・・当たり」
エーリカ「やっぱりね」
・・・
エーリカ「君がどんなことを言ったとしても、私は出て行かないよ。今の、頭に血が上ってる君を一人にしたら、何しでかすかわかったもんじゃないし」
俺「・・・何って、例えばなんだよ」
エーリカ「逃げ出すとか」
俺「・・・」
逃げる・・・
俺「・・・それは、無理だ」
エーリカ「なんで?」
俺「・・・道が、」
エーリカ「?」
俺「・・・道が、わからないんだよ」
・・・
エーリカ「・・・ぷっ」
俺「・・・」
エーリカ「ぷははははははは!なるほど、そっかぁ!あっははははは!」
俺「・・・///」
そうだ。俺は、空以外ではほぼずっとここにいる。一度
シャーリー(と宮藤)に連れられて街に行ったこともあったけど、
・・・街までの道なんて覚えていない。覚えているのは、トラックの振動の強烈さとサーニャの手の感触くらいだ。
しばしの間笑いを続けていたハルトマンだったが、次第にそれは収まっていった。
・・・そしてハルトマンは、俺のベッドに腰掛けて、言った。
エーリカ「それでも、ここから脱走するってだけなら簡単だよね。君にはストライカーユニットがあるし」
・・・
俺「目立つだろ」
エーリカ「あ、わかってたか」
俺「・・・」
エーリカ「・・・」
・・・
俺「他に言うことはないのか」
エーリカ「ん?」
俺「・・・」
エーリカ「例えば?」
・・・
俺「・・・お前は、俺がしたことをなんとも思わないのか?」
エーリカ「思わないわけないよ。ただ、言うことは何も無いかな」
俺「なんでだ」
・・・普通だったら、責めたり、罵倒したりするもんじゃないのか?
エーリカ「もう過ぎたことだから」
俺「・・・」
エーリカ「過ぎたことをグチグチ言っても仕方ないじゃん。それよりも『これからどうするか』、だよ」
俺「・・・これから」
エーリカ「私達がすることは変わらないんだ。女さんが居ようと居まいと、君が女さんに協力しようとしまいとね。
どうなろうと、・・・ロマーニャを解放するための最終作戦を行うってことは、変わらない。どの道避けては通れない運命だ。
時期が早まるか遅くなるかくらいの違いしかない。問題は、君だ」
俺「・・・」
俺、か・・・
俺「俺は・・・」
エーリカ「君は、道を選べる立場にある。・・・選択肢は限られてはいるけどね」
俺「・・・」
エーリカ「今答えを出せってわけじゃないよ。・・・時間は、五日も許されてる。
その間に、自分のするべきことは何で、どういう理由でそれをするのか、自分なりの答えを見つけてみて。君ならできるから」
俺「・・・どうかな」
エーリカ「だーいじょうぶ!このエーリカ・ハルトマンが保障する!あたしが信じる君を信じて」
その言葉に俺は苦笑する。
俺「・・・ハハ、俺はいつの間にお前に信じられてたんだ?」
エーリカ「結構最初のほうからだよ」ニシシ
・・・
俺「あの時の俺くらい信用のおけない奴はいなかったと思うけどな」
エーリカ「はぁ~・・・わかってないなぁ」
俺「え?」
エーリカ「あんな君だったからこそだよ」
・・・
俺「なんでだ?」
エーリカ「教えな~い」
・・・
俺「・・・ま、いいか」
エーリカ「・・・(・・・ひねくれてた君に戻ったかと思ったけど、あの時程酷くはないみたいだね。安心したよ)」
俺「なんだ?」
エーリカ「ううん、別に。それよりさ、俺」
俺「?」
エーリカ「今の気分、どう?」
俺「・・・」
良くはない。・・・ハルトマンのおかげでいくらかマシにはなったものの、
今までみんなと築いてきた色々なものを崩してしまうような暴言を吐いたあとなのだから。
・・・でも。・・・それでも、俺は・・・女さんを・・・
俺「さあな」
エーリカ「そっか」
・・・
エーリカ「俺」
俺「ん」
エーリカ「夕飯できるまで、寝よ」
俺「は?」
エーリカ「嫌な気分を吹っ飛ばすには、寝るのが一番だよ」
俺「・・・」
なるほど。
俺「そうかもな」
その俺の言葉に、ハルトマンは、無邪気な笑顔を見せた。
エーリカ「よしっ!そうと決まれば」ボフッ
そう言って、ハルトマンは寝転がっている俺の隣に倒れこんだ。
・・・
・・
・ え?
現状把握。
ハルトマンが、俺の隣に、寝転んでいる。
・・・
俺の隣に、寝転んでいる。ハルトマンが。
・・・
俺「お、おい!///」
エーリカ「どったの」
俺「どったのじゃねえ!なんでお前まで一緒に寝るんだよ!?///」
エーリカ「いいじゃん、別に」モゾモゾ
俺「良くねえよ!寝るなら自分の部屋で寝ろ!///」
エーリカ「えぇ~・・・部屋に戻るのめんどくさい」
・・・
俺「も、戻ってくれよ!誰かに見られて誤解されたらどうすんだ!?///」
エーリカ「それはほら、あれだよ。さーにゃんみたく部屋間違えたってことにすれば」
俺「お前はサーニャじゃねえだろ!//////」
エーリカ「あ、さーにゃんの名前出したらもっと顔赤くしてる。可愛いなあ」
俺「・・・チッ、勝手にしろっ!///」バッ
ハルトマンの正反対を向くように、俺は身体を横にした。
エーリカ「うん、勝手にする~♪」ニシシ
・・・ったく、こいつ、何考えてるんだ・・・
・・・
・・
・
――――――――――
エーリカ「・・・」ムク
俺「・・・」zzz
エーリカ「・・・俺・・・」
俺「・・・」zzz
エーリカ「・・・寝顔、可愛いなぁ」
俺「・・・」zzz
エーリカ「・・・信じてるからね、俺」
俺「・・・」zzz
エーリカ「・・・最後まで、一緒に来てくれるって・・・見届けてくれるって・・・逃げないって」
スッ
俺「・・・」zzz
スタスタ
ガチャ
エーリカ「・・・」
バタン
・・・
・・
・
最終更新:2013年01月28日 16:13