ルッキ「・・・俺。どーするの?」

俺「・・・俺は・・・」

 ・・・女さんを、助けたい。何を犠牲にしてでも・・・

女「・・・あなた達は既にご存知とは思いますが・・・この地にいる、ネウロイ、でしたっけ?
その生き物の力が弱まってきているのでしょう?」

ミーナ「・・・ええ」

女「あなた達にとってはチャンスなのでしょうが、この機を逃す手はないというのは私も同じです」

シャーリー「・・・?」

女「俺さん。あなた以外にも、私達の世界から女の子がこの世界に連れてこられたそうですね」

俺「・・・」

エーリカ「・・・あの子は、ネウロイに召喚されて・・・私達と戦わせられたんだ」

女「・・・俺さん。あなたは、その女の子と魔力を使って会話したでしょう」

 ・・・こんな風に

 ・・・ああ

女「不思議に思いませんでしたか?」

俺「え?」

女「ネウロイの力に支配されたはずの女の子が、ずっと人間としての意思を、理性を保っていたことを」

 ・・・そういえば、ネウロイの力に支配された戦闘機械(ウォーロック)は、暴走したんだっけ・・・

俺「・・・なんで、あの子は理性を保ってたのか・・・?」

女「理由はわかりませんが、我々はネウロイに取り込まれても支配されずに自分の意思を持てるようですね」

 ・・・俺たちは、ネウロイと同じ怪異だからか?

さあ?どうでしょうね

 ・・・

俺「・・・」

シャーリー「・・・それが、どうしたっていうんだ?」


女「つまり、私が逆にネウロイを支配できる可能性がある、ということです」


『・・・!』

俺「・・・それと、二つの世界を繋ぐことがどう関わるんだ」

女「繋ぐ、というのは正しい表現ではないと思います。正しくは『二つの世界を一つにする』です」

サーニャ「・・・一つに・・・?」

俺「どういうことだ」







女「この世界を破壊するということです」







『!?』

俺「・・・」

女「私を縛る鎖の根元であるこの世界を破壊すれば、私達を・・・異世界の人間を縛るものはなくなります。
だから、きっと帰れるはずです。あなたも一緒にね」

俺「・・・」

俺も一緒に・・・

女「ネウロイの力が弱まっている今であれば、異世界の魔力によってコアを乗っ取り、
意のままに操ることができるでしょう。そして、あらゆる物を破壊し、あらゆる攻撃を跳ね返す無敵の軍を作り上げることができます。
それがあれば、容易いことです」

シャーリー「ちょ、ちょっと・・・その、待ってくれ!」

女「なんでしょう?」

シャーリー「今、なんて言った!?」

女「この世界を破壊します」

エイラ「・・・そんなとんでもないこと、簡単そうに言わないでクレヨ!世界の破壊!?私達はどうなるンダよ!?」


女「死にますね」


『!!』

エイラ「・・・だから!」

女「いくら罵倒していただいても構いません。なんと言われようと、
元の世界へ帰還するためならばそれも受け入れます。貴女たちにとってはこの世界が全てなのでしょうから、
そういう反応をすることも納得できますし、気の毒にも思います。ですが、
私にとっては、向こうの世界こそが全てなのです。ゆえに、この世界のことなどどうでもいいことです」

『・・・』

女「貴女たちにはこの気持ちをわかっていただけなくても結構です。と言うより、わかるとは思えません。
しかし、俺さんになら、わかっていただけると私は思っています」

サーニャ「・・・俺さん」

俺「・・・」

女「さあ、あなたの持つその刀を、私の手に」スッ

俺「・・・え?」

女「私は不完全な力しか持っていませんが、あなたの魔力を込めた刀を手渡していただければ、
私の魔力に欠けている部分を補うことができ、疑似的にですが私は完全な力を手にすることができます。
不完全な力では、ネウロイを支配するのには心もとないですし、
 ・・・弱まっているとはいえ、ネウロイは随分とあなた達を苦しめてきたようですからね。逆に私の身が破滅してしまうかもしれませんから」

俺「・・・」

リーネ「俺さん!?」

ペリーヌ「お、お待ちくださいまし!今ここで結論を出すのですか!?」

女「最終作戦が迫ってきているのでしょう?」

『!』

ミーナ「・・・どうして、そのことを」

女「俺さんの記憶を読ませていただきました。・・・その作戦を発動されては、困りますからね。
結論は、今でなくてはなりません。・・・今しかないのです」

俺「・・・」

 ・・・俺にはわかる。痛いほどに。目の前の女性の気持ちが、わかる。異世界の魔力の影響だけじゃない。
 ・・・俺も同じ苦しみを、絶望を経験したのだから。どれほど辛いものなのか、俺にはわかる。



それに、・・・女さんには・・・



 ・・・



だから、助けたい。目の前の女性を。

 ・・・でも・・・俺は、どうすればいいんだろう?

この選択次第では、俺の名が後世に刻まれるかもしれないんだ。
ただし、英雄としてではない。人類を破滅の渕に追いやった裏切り者として・・・

だけど、それは人類が生存していればの話だ。世界が破壊されてしまえば、歴史なんてそこで途切れてしまう。

 ・・・それに、今の俺にとっては、この世界はそれほど守りたいものでもなくなっている。
この世界が滅びれば、俺の世界の人がこの世界の勝手な事情で運命を弄ばれることもなくなる。
そして、女さんを救えるのは俺しかいない。それに、・・・女さんを助けて世界が滅びても、俺だけは助かる。
向こうの世界で平穏に・・・平和に生きることができる。・・・ならば。

答えは、

一つだ。

 ・・・

『俺さん』


 ・・・


 ・・・すまない、サーニャ、みんな・・・俺は・・・



ピョコンッ




ゲルト「まさか」



異世界の人間として・・・




フオォォオォォン





エーリカ「俺!」







 ・・・女さんを、救わなくちゃならない・・・








俺「・・・」 スッ












俺は、紫色の光を宿した扶桑刀を、鞘ごと、女さんに手渡した。












サーニャ「・・・!」






エイラ「なッ・・・」





宮藤「あ・・・」




シャーリー「・・・っ!?」




俺「・・・」



ピョコンッ


 ・・・犬耳の生えた女さんの身体を、少し青色が混じった紫色の光が包むのを見た。



女「ありがとうございます、俺さん」


俺「・・・」

女「本当にありがとう。・・・五日後に、また会いましょう。
そして、私と共に元の世界へ帰還しましょう」スッ

そう言って、女さんは消えた。

シャーリー「えっ・・・?」

坂本「・・・消えた・・・」

 ・・・転移シールドの応用ってところか。

ルッキ「俺・・・どうして?」

俺「・・・」

ルッキ「ねえ・・・どうして」

俺「お前たちには、わからないさ」

リーネ「・・・そんなこと」

 ・・・俺の中に、この世界に来てからまだ間もない頃の感情が蘇ってきた。

俺「ないとでも言うつもりか!?」

リーネ「っ!?」ビクッ

俺「ふざけるな、お前達にわかるわけないだろ!そうさ、女さんの言った通りだよ!
お前たちには、俺たち異界の人間の気持ちなんて、これっぽっちもわかりはしないさ!
わけもわからずに見知らぬ世界に呼び出されて、
それで自分達の望む力があるはずだから経験が無かったとしても命を賭けて戦えって、
それが嫌なら見知らぬ土地で勝手に野垂れ死ねって迫られたんだぞ!
それがどれほど不安だったか、怖かったのか、わかるのか!?」

ミーナ「・・・」

 ・・・

エイラ「・・・やっていいことと悪いことの分別くらいつけろヨ!」

俺「そう言うだろうと思ったよ・・・
お前達はこう言いたいんだろう!?たった2人の勝手でこの世界を滅ぼすようなことをするなって!
けどな、だったらあの人は、俺はどうすればいい!?
女さんに、どうしようもない不安と憤りを感じながら、この世界で一人で生きていけっていうのか!?
俺に、女さんを見捨てろっていうのか!?」

エイラ「・・・う・・・」

俺「絶望の中で過ごさなきゃならない日々がどれほど辛いものなのか、俺にしかわからないことなんだからな!」

ミーナ「・・・」

坂本「・・・だから、女さんに協力したのか」

俺「そうさ!」

坂本「そうか」

 ・・・

坂本「お前がそう思うのなら、仕方あるまいな」

俺「え・・・」

 ・・・

坂本「・・・さてと、試合をするんだったな。俺。予備の刀はまだある。取って来い」

 ・・・

俺「・・・遠慮する」

坂本「何故だ?」

俺「気分じゃない」

坂本「そうか・・・ならば、今日はやめておくか」

俺「・・・」

坂本「ほら、宮藤、リーネ、ペリーヌ、お前達は射撃訓練だ。行くぞ」スタスタ

宮藤「・・・坂本さん?」

リーネ「は、はい・・・」テクテク

ペリーヌ「しょ、少佐!お待ちください!」タッタッタッタッ

 ・・・

俺「・・・」

ゲルト「・・・俺、話がある。私とハルトマンの部屋へ来い」

俺「断る」

ゲルト「ほう?何故だ?」

俺「気分じゃない」

ゲルト「・・・これは上官命令だ。私達の部屋へ来い」

俺「断る」

ゲルト「上官命令だぞ」

俺「知ったことじゃない」

ゲルト「・・・貴様!」グッ

ガシッ

ゲルト「・・・!?」

シャーリー「よせよ、バルクホルン」

ゲルト「リベリアン・・・お前は!」

ミーナ「・・・俺軍曹」

俺「なんだよ」

ミーナ「あなたは今日一日、自由行動とします」

俺「・・・」

ゲルト「ミーナ!?」

 ・・・部屋に戻るか。

スタスタ

サーニャ「・・・俺さん」

俺「・・・っ」

スタスタ

「・・・ひねくれてた俺に逆戻り、か」

風に乗って、ハルトマンの声が俺の耳に届いた。

俺「・・・」

 ・・・

 ・・

 ・

最終更新:2013年01月28日 16:12