過去編 第2話「お見舞い」








~ブリタニア、病院~




上官の口車に乗って、その娘の情報を探して来たのはいいものの……なにを言えばいいんだ。
正直人とまともな会話をするなんて軍に入ってから初めてだし、女性と話した経験なんてものはほとんどない。





俺「……なんとかなるか」




久しぶりにまともな女性と話をするな。覚悟を決めるか。



長イスに横たわったじいさんに、少女の風体を述べ場所を聞くとすんなりと教えくれた。
廊下をこつこつと歩き指定された部屋の前へとたどり着く。




コンコン



俺「失礼します」

ハルトマン「あ、ちょっとまって……って遅いか」




微妙に引っかかる声が聞こえた気がしたがそれを無視して入室すると、目当てのウィッチはお着替え中だったからだ。

白い肌に、さらっと流したきれいな髪、かわいらしい丸い目と気品のただよう口元、発展途中であろう胸部、形のいいへそ。

そして突然の事態に顔を歪め怒りを顕にした表情と困惑した表情もプラスして。





バルクホルン「で、でていけぇぇぇぇ!!!!」ブン

俺「うぐあッッ!」ドゴッ





顔を赤く染めた少女が豪速で投擲したのは、何kgかの重いダンベル。

見事俺の鎖骨にヒットし、なにかミシッという妙な音をたてたため俺は顔を歪めた。

熊にでもあったかの如く俊足で部屋を出る、なんで入ってきてそうそうこんな仕打ちにあわにゃならないんだ……。




エーリカ「入っていいよー」


ガチャ……


俺「……ぐっ……げ、元気そうですね」

バルクホルン「……おまえは確か……どこかで?」

俺「腹部の傷は順調ですか?あまり無理をしないように」

エーリカ「治療されたからもう大丈夫だよー。あのときはありがとね」

バルクホルン「ちょっと待てよ……腹部の怪我を知っているということは……おまえはまさか……!」

俺「はぁ。そのとおりです。再度自己紹介すると、俺と申します」

バルクホルン「私はゲルトルート・バルクホルンだ。……よく、のこのこと私の前にこれたものだ」

俺「はい?」

バルクホルン「腹部の傷といったな!貴様、私の軍服をひっぺがして、ててて!み、見ただろう!」

俺「えっと、いろいろと見てないと言えば嘘になりますね」

バルクホルン「よくも顔を見せられたもんだ!そこになおれ!おまえの記憶が飛ぶまで殴ってやる!」

俺「なぜ!?」

バルクホルン「なんででもだ!」

エーリカ「トゥルーデは年頃の女の子だから恥ずかしいんだよ~」

バルクホルン「ハ、ハルトマン!!貴様その口をとじろ!!」

俺「お、落ち着いてください。傷でも開いたら……」




ガタガタとベッドの上で暴れようとするバルクホルンに対し俺は近づいて静止を呼びかける。
顔色は若干土色が入っているものの、原因は疲労であると思うので休めばすぐに治るだろう。
それよりもさっきからずっと警戒されているようで居心地が悪い。



バルクホルン「判決・死刑!!」ヒュッ

俺「ぶべらっ!!!」ドゴッ


ガッシャーーーン……


俺「い、いたっ……いででで……」

バルクホルン「おまえなんか出て行け!私の目の前から消えろ!!」

エーリカ「トゥルーデ、さすがにやり過ぎだって~。この人に助けてもらったんだよ?」

バルクホルン「うぐっ……」

俺「まさか殴られるとは思いもよりませんでした」

バルクホルン「う、うるさい!それでも勝手に人の体を見た貴様は許さんぞ!!」

俺「別にみたくてみたわけじゃありませんって……。ケガの箇所を確認して止血しなけれなならなかったからです」

バルクホルン「なにをぬけぬけと……」





エーリカ「うーんと、とりあえず謝るか感謝するかはしたほうがいいと思うけど……」

バルクホルン「くっ……。……あの時は……助けてくれてありがとう……ご、ございました。殴ったことは謝らないぞ!」

俺「はぁ……かまいませんよ。私とて死にかけを放って逃げる趣味はありませんから」

バルクホルン「ふん、感謝はする。だがこの屈辱、忘れはせんぞ」




俺「でも」

バルクホルン「ん?」

俺「元気そうで安心しました。元気な方があなたはかわいいと思いますよ」ニコ

バルクホルン「なっ!も、もうおまえはかえれー!!!!」ヒュッ

俺「うおっ!か、帰りますよ。では、お元気で」ヒョイ

バルクホルン「ふん、次来たときは茶くらいだしてやる……」

俺「ははっ、感謝します。では、また―――」




……一瞬だけ言葉を止めた。俺はなぜ、また来る、と言うつもりだったのか。

一回だけ、体調を見るだけのつもりで来たはずなのだが……。

バルクホルンの顔を見つめると睨み目で返してきたが、なんとなくそんなところも凛々しくて。





エーリカ「……?どうしたの?」

俺「い、いえ、時間があれば、ね。では、お元気で」

エーリカ「うん、じゃあね~。次来るときはお菓子ね!」

バルクホルン「ハルトマン……まずおまえの態度をたださなければ……」


ガチャ パタン




エーリカ「うーん……どう思った?あの俺って人のこと」

バルクホルン「しらん。私はもう寝る」

エーリカ「……あの俺って人、なんか生きてるって感じがしない人だったよね」

バルクホルン「……確かに妙な作り笑顔だったし、目は死んでいたな」

エーリカ「うん……ここに来たときちょっと怖かった」

バルクホルン「でも危害を加えなかったってことは、敵意もないのだろう。恐らく大丈夫だ」




エーリカ「まぁ根は優しい人って感じじゃない?」

バルクホルン「……あんなやつしらん。別にこなくてもいい」

エーリカ「また拗ねちゃって~。トゥルーデ、あの人が見たことになにも反応しなかったのが腹たったんでしょ?」

バルクホルン「誰が!そんなわけあるか!た、確かに私はそこまでスタイルがいいわけでもないが!」

エーリカ「どうどうどう。あれじゃあ女の子なら誰でも腹が立つよ。まぁ次来たときは、あまり腹を立てないようにね」

バルクホルン「むっ……わかった」






エーリカ「あと……無理に強がらなくても……いいからね。ものすごく無理してるよ、今のトゥルーデ」

バルクホルン「っ!!」




的を射たハルトマンの発言に言葉をつまらせるバルクホルン。
その言葉にまゆを暗くして顔を伏せる。
真っ黒な不安と恐怖、そして後悔、さらに罪悪感を心に渦巻かせながらつぶやく。



バルクホルン「……わかって、いるさ。そんなこと……」












そんなこんなで特になにもなく、俺は自分の部隊へと戻った。
そして上官にすぐに呼び出され、面倒だなと思いつつも上官の元へと足を運ぶ。


部屋に入ると椅子に腰を浅くかけ、机に真っ黒な軍靴を履いた足をのせ、さらに退屈そうな顔で指をくんでいる女がいた。
そんな態度の悪い上官を見て、ため息をつきつつ、今日あったことを色々と省きながら話しをした。




~A/H~





上官「それで、のこのこ帰ってきたのか」

俺「まぁ特になにかするわけでもありませんし」

上官「つまらないな、上官命令、明日も行って来いよ」

俺「は?」

上官「聞こえなかったか。明日も行って来いよ。それと複合ウィッチの研究があるから明日は私いないから」

俺「ああ、あの……。確か二人のウィッチを一つの人間に収める、みたいなものでしたっけ」

上官「そうだ。まぁいわゆる二重人格の上位存在だな。ウィッチとしての才能を二つ合わせ持つ、ということが目的だ」

俺「精神崩壊させるのだけはやめてください。ああいう人を落とすの苦労しますから」

上官「落とすのに苦労したといえば、リミッター解除のウィッチとかな」

俺「結局人体が持たなくて落ちましたけど」

上官「あれは苦労した。前の基地はぼろぼろにされたもんな」

俺「あれを落とすのだけに……13人が犠牲になってます」

上官「あのまま放っておけば危険だっただろう。幸い情報ももれずに済んだしいいことじゃないか」

俺「……まぁそれはそのへんにおいといて。しょうがないのでまた明日も向かいます」

上官「ああ、また面白い話でも聞かせてくれ」







第2話終わり







最終更新:2013年01月29日 13:53