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過去編 第4話「嫉妬と粛清とからかい」









~4日目、病院~





今日も病室を訪ねてみた。


相変わらず暗い雰囲気のままで、食事にもあまり手をつけずにいる機嫌の悪そうなバルクホルン。
相変わらずどこか少し浮いたような雰囲気のままで、だが内心は黒色に蝕まれた俺。



そんな二人のせいか、病室はひどく濁っていた。





俺「なにかほしい物ありますか?近くの街で買ってきますけど」

バルクホルン「いらない」

俺「何かしてほしいことはありますか?」

バルクホルン「ない」

俺「……その無愛想な顔、似合いませんよ」

バルクホルン「……放っておいてくれ」

俺「笑えば、かわいいのに」




また沈黙が流れ、二人は口をつむぐ。
別に喧嘩しているわけではないが、自然とそうなってしまう空気に俺は若干ため息をついた。




俺「あの……やっぱり俺、迷惑ですよね。明日からもうこないことにしますので機嫌直してください」

バルクホルン「あ、いや、別におまえにあたっているわけではないんだ」

俺「でも俺がいるとやっぱり複雑なようなので……」

バルクホルン「……気にするな、私自身のことだ」

俺「何か、悩みでもあるんですか?」

バルクホルン「ないといえば嘘になる」

俺「あると思うから聞いたんですけどね」





バルクホルン「……おまえには、何に変えても守りたい大事なものがあるか?」

俺「大事なものですか?たぶん……自分の命、です」

バルクホルン「「いや、自分以外でだ」

俺「……ないですね。俺には自分のことだけで精一杯ですから」

バルクホルン「そうか。私にはな、自分の命を賭けても守り通したいものがあったんだ」

俺「それは、国ですか?」

バルクホルン「それもそうだが、答えとしては違う。もっと小さなものだ」

俺「もっと小さなもの……?」

バルクホルン「私にとってとても大切で、何にも代えがたいものなんだ」





ぎゅっとシーツを握りしめるバルクホルンの手を一瞥しすぐに目を逸らして部屋の隅を見つめる。
なんとなく、見たくなかったのだろうか。




バルクホルン「おまえにこんな話をするのはどうかと思うが……私には妹がいてな」

俺「……妹さんは今どこに、と聞いてもいいですか?」

バルクホルン「こことは違う病院だ。戦場で、ネウロイの破片を受けてな、精神的ショックもありベッドの上で眠ったままなんだ」

俺「戦場にいたんですか……」

バルクホルン「ああ、そうだ……。私が撃墜したネウロイの破片が妹に降り注いでしまった」

俺「確かに瘴気をまとった破片は一般人には毒ですが、目を覚まさないのはそれだけじゃないでしょう?」

バルクホルン「色んなものを……観てしまったんだ。今まで自分が過ごしてきた愛着のある物ものを」

俺「街は崩壊……したようですね、口ぶりからするに。だとしたら……多くの死人を目に焼き付けて……」

バルクホルン「おそらく……。なにせまだ幼い、精神的ショックは想像を絶するもののはずだッ……!」

俺「妹さんを……ずいぶん愛しているようですね」

バルクホルン「元気で明るくて、人懐っこいかわいらしい妹だ。そんな妹をッ!私は!私はッ!―――」





一瞬だけ時間が静止し、言葉を紡ぐのを一時中断したバルクホルン。
俺は何も言わずにただ続きの言葉を待つ。





「―――救えなかったんだ……ッ!」ギリッ





消え入るようなかすかな声。

それはバルクホルンにとってはとても残酷、かつ悲惨。

静かに涙を流させるには十分なほどの力だった。




目を伏せるバルクホルン。わずかに乱れる呼吸が静かな部屋に響く。
いつものように軽々しく言い返すことができなかった、なぜならどんな言葉も意味を成さないから。

でも目の前の少女を―なぜか―救おうとして、何かを言おうとする。

だけど、無理だった。



バルクホルン「こんな、話を聞かせて、すまない。迷惑だったな」

俺「いえ……」




深々とつもった罪悪感と無力さ、情け無さが少女の心を黒く支配しているのを垣間みて、自分にはどうすることもできない不甲斐なさに目をそらした。
若干発生に荒が混じった声が病室に響くのが、やけに寂しかった。



俺は一人の少女の泣き顔さえも笑顔に変えることができない無力さを密かに蔑んだ。










それから一週間、通いつめた。

毎日バルクホルンの病室をノックし、ただ様子を見て、ただ他愛のない会話をして帰るだけだった。

……いや、色々と要望も言ってくれるようにもなったな。




飲み物を入れたり、洗髪してあげたり、シーツを洗場に持って行ったり、ご飯を運んだりなどなど。

食べさせようとしたりしたら殴られたのはちょっと痛かった。

あとは背中を濡れタオルで拭いてあげたりもした。





わずかに心を許してきてくれているのか。

それでも笑顔は見せてくれない、体調はよくなっているはずなのでやはり精神的な問題だろう。





俺は今まであまり気づいていなかった。

いつのまにか、こんな状況になってもまだ立ち上がろうとする彼女に惹かれていることに。

まだ幼いながらも凛々しい表情を持っている彼女に魅せられていることに。

……誰かを守ろうとする、そんな自分の中にはない想いに引き寄せられていることに。

他にもあるだろうが、全部自分にないものばっかりだった。









~A/h~





今日で病院に通いつめて一週間と四日。


俺は部隊がとどまっている建物の一室で寝泊りをしている。
30cm四方の小さな窓一つ、固いベッド、薄汚れたシーツ、壊れたタンス、軋む床、蜘蛛の巣がはった隅、塗料のはげ落ちた壁。
そんな一室で寝泊りを続けている。
一応ではあるが、掃除はしているつもりで、しかし建物の元が悪いのですぐにこうなってしまうというわけだ。





俺「今日は何をお見舞いに持って行こうか……」




軍服の袖に腕を通し前のボタンを閉じてきっちりと服を着こなす。

そして床下に隠してあるお金を取り出してポケットへとしまいこんで、不衛生な部屋をでた。



男「やぁ」

俺「……なんのようだ?」

男「ちょっと聞きたいんだけどさ」



扉のすぐそばに寄りかかっていた小汚い男が俺を待っていた、理由は知らないが。
顔の歪み、荒れた髪の毛、光を失った目、腕のひっかき傷、血が染み込んだ爪。

気味が悪い、よく会う男。同じ部隊の者だからしかたないのだが。




俺「何のようだ?」

男「ふへ、まぁそんな怖い顔はよしてよ」

俺「さっさと言え。俺は用事がある」

男「最近やけに足しげくどっかに通いつめてるようじゃないの……」

俺「それがどうかしたのか?」

男「女?」



毒された気味の悪い表情、チックし続ける身体、まばたきしない目、開きっぱなしの瞳孔、異常な昂奮状態。
実に気味が悪い。今すぐにでも排除してやりたい。



俺「それがどうかしたか?」

男「俺にしちゃあ珍しいじゃん。女なんて」

俺「貴様には関係の無いことだ」

男「そうそう、バルクホルンちゃん、だっけ。かわいいよね~……何?体目当―――」




汚い言葉に一瞬で湧き出した激しい憤り。
体が蒸発ぐらいの熱さを感じた瞬間俺は躊躇なくその男の鳩尾へと渾身の蹴りをかましていた。


男「がぁッ!!」




急所を蹴りこまれた男が俺の前で膝をつき、あまりの衝撃に激しい嘔吐感を催したのだろう、胃液ごと何もかも古びた床へと盛大にぶちまけた。

両膝、片手をつき倒れたところにさらに追い打ち。

右手に氷柱を急速に生成、見下した男の床についた片手目がけ、重力に逆らわず力の限りに突き刺した。





男「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



俺「ふん、俺があいつの体目当て?ふざけるなよ、下衆?」




鼻が曲がりそうな異臭が漂う廊下で、俺は男を見下しながらさらに憤りを高める。
床に滲み出した血液、風穴の開いた手のひら、吐き出される嘔吐物。
久しぶりに怒りをまともに顕にした自分に驚いたが、それをしまいこみ、ただ冷徹に氷の刃を男の首へと押し付けた。




俺「おまえ、俺の後をつけていたのか?」

男「ごはッ……オゲェェェェッ……!」ビチャビチャ

俺「体目当て?俺をてめぇみたいなのと一緒にするなよ、蛆虫」



痛みのせいか、両手をついて立ちあがらない男に対し、軍靴を履いた足で、左手に向かって渾身の力を込めて足を踏み下ろす、親指の付け根を狙って。
ぐしゃりと音をたてて、砕けたであろう手。



男「うぎッ!うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!てっ……!手がッ!!」

俺「親指を潰せば手は使えないのと一緒だからな。さて、話の続きだ。どうして俺がてめぇみたいなのと同等だと思ったんだ?」



言葉を放ちながら、足をもう一度上げ、踏み下ろす。重なる悲鳴。



男「うぎぃぃぃぃい!!手がッ……ああぁぁぁっ!!!や、ヤメ――」

俺「おいおい、うるせぇよ。痛覚耐久実験ならこの部隊の全員がやってんだからもう少し耐えてくれ」

男「や、やめてくれ……!か、からかいが過ぎていた、ああ、謝るからよ……!」

俺「残念、遅すぎる。ついでに言っておくとよ、俺はあいつの元を訪ねるのは面白くて、興味が引かれるからだ。……おまえは、今まで自分が憧れる強さに出会ったことがあるか?」

男「やめ、ろ!!」

俺「人間の"強さ"ってなんだろうな。人を殺せば強いのか、ネウロイを倒せば強いのか、力でねじ伏せ地位を得ることか、はたまた精神的なものか。どれにせよ、あの子が内包している強さが……脆くも硬い強さの元に興味を惹かれたんだよ」




俺「まだ会って間もないし年端もいかない子だが、確実に、何もかもにおいて俺より強い」





その言葉の意味、それは自分が目指してきたもの。

軍にウィッチとして志願したのは、育て親に感謝するという名目もあるがそれだけではない。

俺が目指したものは……誰の目も引く強さ、何にも屈しない強さ、敵をなぎ払う強さ―――世界のどこかに自分の"居場所"を創る―――そんな強さ。

この世界の端っこに捨てられた自分が本当に存在するかの証明が欲しいのだ。




俺「俺が求めているものがあるかもしれない。だから、今日も会いに行くんだよ、わかったか?てめぇみたいなゴミは二度とあいつに近づくな。次は……ただの肉塊になるってことを覚えておけ」





振り上げた腕に血管が浮き出るほどの力を加え、狙いを定める。
俺は左手をギロチンのごとく、重力に従って力をこめ、男の床に張り付いた右手を目掛け氷剣を振り下げた。




氷剣―貫通―断骨音―肉裂音―血飛沫―両手損失―悲鳴―響渡。











その後シャワーを浴び、着用物をすべて一新、金を持って基地を出た。

空っぽの体を引き摺りように足を交互にだして。

目的の病院に向かって歩き出した。










~病院~








なんだか病室が騒がしい。

ガチャ



俺「どうかしましたか?」

ハルトマン「あ、俺!ちょっとどうにかして!」

俺「はい?」




病室に入るとものすごくかわいらしい人がいた……いや、物凄くきれいな少女がいた。
バルクホルンと同じぐらいの歳だろうか、恐ろしいほど目を惹きつけられる少女が今目の前にいる。




バルクホルン「おい!!やめろ、マルセイユ!」ガタッ

マルセイユ「バルクホルンはおとなしくしているんだな。おい、おまえ、俺って言うのか?」

俺「ええ、そうですけどどうかしましたか?」

マルセイユ「私はハンナ・マルセイユって言うんだ。おまえバルクホルンの世話なんかしてるのか?」

俺「ええ、してますよ」

マルセイユ「毎日?」

俺「入院中は毎日ですよ。毎日ここに来てますから」




マルセイユ「ふ、ふふふ、あはははははははっ!」

俺「???

マルセイユ「こんなやつのために毎日なんて、あはははっ!変なやつだな」

俺「は、はぁ」

マルセイユ「おまえかわいそうだな。大変だろう、バルクホルンなんかの相手は」

俺「いえ、そうでもないですが……」




マルセイユ「……よし、どうだ、これから私の世話係にならないか?」グイ ギュゥ





バルクホルン「なっ!?」
ハルトマン「えぇ!?」
俺「へ?」




俺の腕に抱きついてきたマルセイユという美少女の意図の見えない唐突な提案に素っ頓狂な声を同時に三人があげた。
だがマルセイユの目を見たとき、一つ気づいたことがある。
なんとなくそれに黙っておいて普通に接してみる。




マルセイユ「おまえの噂はハルトマンから聞いているからな。なかなか面白そうなやつじゃないかと思ってたんだ」

俺「はぁ、えっと、ありがとうございます」

ハルトマン「いや、そこまで面白いことは言ってないけど……」

バルクホルン「ま、待て待て!何を考えている、マルセイユ!」

マルセイユ「いや、普通のことだが」

バルクホルン「駄目だ駄目だ!俺も迷惑してるだろうからそういう冗談は控えておけ!」

マルセイユ「俺が迷惑してるだって?はん、それはバルクホルンの思い違いというやつじゃないのか?なぁ、俺?」



ちょっとのってみるか、なんとなく今日のバルクホルンの雰囲気が違うようだし。



俺「あ、え、えっと……」

マルセイユ「ほら、はっきりしないってことは、別にバルクホルンのところに執着しているわけではないだろうに」

バルクホルン「いーや、違う!明らかに迷惑してるだろう、見てみろ、やつの顔を」

マルセイユ「喜んでるじゃないか」

バルクホルン「お前の目は節穴か!」

マルセイユ「気になるんだが、バルクホルンはどうしてそこまで必死なんだ?俺に固執してるぞ」

ハルトマン「(確かに。前は迷惑だーとか言ってたのに……)」

バルクホルン「べ、別に固執しているわけではない!貴様の勝手な言動に迷惑している俺を助けてやっているだけだ!」

マルセイユ「だから別に困ってなんかないだろう、俺は」




俺「あ、あの……もう少し落ち着いて……」

バルクホルン「俺は少し黙っていろ!ニヤニヤしおって!」ヒュッヒュッ

俺「してな―――あぐふっ!ぐはっ!は、はい!!」ベシッ ドゴッ

マルセイユ「おー、怖い。なぁ俺、こんなやつよりか、私の方が扱いはいいぞ?」

バルクホルン「こら、マルセイユ!」

マルセイユ「バルクホルンの意見は聞いてないだろ、俺が答えれば話は済むだろう」

ハルトマン「(話が長い……ハンナもからかいが過ぎてるなぁ……ま、首突っ込むのも嫌だし黙っとこ)」

俺「(長い……!さっきから話がループしてる……)




煽るマルセイユとそれに顔を赤くして反応するバルクホルン。
病室に二人の声が飛び交い、はじけ飛ぶ。




俺「(たぶんであるけども、バルクホルンさんはこの人にからかわれていることに気づいてないだろう。それにしても……)」




バルクホルン「マルセイユ、前から思っていたが上官に対する態度がなっていないんじゃないか!?」

俺「(気が動転してるな……)」

マルセイユ「話が変わっていってるぞ、バルクホルン。話を元に戻すが、別に俺が了承すればもらっていいんだな?」

バルクホルン「くっ!」

ハルトマン「まぁ俺の意見次第だね。まぁでも……」チラッ

マルセイユ「さぁ、どうするんだ、俺。答えを訊こうか」

俺「……あー、えっと、俺は」

バルクホルン「……」



少しだけ頭の中で答えを整理するために口を止めた。
それに応じて部屋の全員がしんとおさまり、病室にはいつもの静寂が訪れる。

そして、少し考えた後三人を見回して、一つため息を吐いた後答えを告げるつもりだったのだが。






俺「そうですね。俺は―――バルクホルン「や、やや、やっぱり駄目だぁぁぁぁ!!」

ハルトマン「うわわっ!」




俺に有無を言わせず言葉を遮ってバルクホルンが突然大声を上げた。
その声を受けてハルトマンが驚き座っていた椅子から転げ落ちる。



バルクホルン「ダメだ!」

マルセイユ「なんでなんだ?」

バルクホルン「なんででもあるか!お、俺は!俺は私のために働くんだ!!」

俺「……ん?」

バルクホルン「だからマルセイユ!!貴様に渡すか!」



……気が動転したまま言葉を紡いだせいだろう。
耳まで真っ赤にしたバルクホルンがマルセイユという少女に向かって必死で理由を伝えているものの、突然の言動にバルクホルンを除く全員が虚をつかれ押し黙った。





バルクホルン「はぁ……はぁ……」

ハルトマン「あー、えっと」

俺「ば、バルクホルンさん?」

バルクホルン「ハッ!ち、違うぞ、俺!決してお前を下僕のように思っているわけでは決してない!ないからな!!」

俺「あ、はい。わかってますって」ニコ

バルクホルン「わ、わかってないじゃないか!」

俺「いえいえわかってますとも。下僕じゃなくて……奴隷、または使い魔的な」

バルクホルン「全然わかってない!い、今さっきのは誤解だ!」



焦って弁解するバルクホルンとそれをからかう俺。
なんとなく、初めての会話の感じに楽しくなった。





マルセイユ「ふ、ふふ、ふふふふふふっ。わかったよ、バルクホルン。今回のところは引いておいてやるよ」

バルクホルン「ぐっ!貴様、やっぱり上官に対しての態度がっ!」





俺「ああ、マルセイユさん、と呼ばれてましたね。からかいも、そのへんにしておいてください。バルクホルンさんが興奮しすぎると体にわるいので」

バルクホルン「そうだ、上官をからかうなんて―――は?」

マルセイユ「ちょっと過ぎたか。まぁ面白かったしこれで終わらせておくか」

ハルトマン「はぁ~、やっと終わった~。ハンナってばトゥルーデがからかいやすのはわかるけどやりすぎだって」

マルセイユ「ふっ、最後に口からこぼれたものが面白かったじゃないか。聞いた価値はあっただろう?」

ハルトマン「俺は私のために働くって……ちょっと酷いけどね」

バルクホルン「待て待て。どういうことだ。まさか私は……」

俺「ええ、からかわれてたんですよ。最初からマルセイユさんは俺を世話係にする気なんてさらさらないです」

マルセイユ「鈍感だな、バルクホルン」

俺「俺もちょっとのりましたが……。すみません、変なこと聞けてよかったです」

ハルトマン「私はめんどくさくて黙ってたけど」




バルクホルン「な……な……なっ!お、お前らなぁ!!」

マルセイユ「部隊のみんなへのみやげもできたしそろそろ帰るか、ハルトマン」

ハルトマン「そうだね~。邪魔しちゃ悪いし」

俺「あ、ちょっと待ってください。ここで俺一人置いて行かれたら……」






マルセイユ「じゃあな」

ハルトマン「ばいばい~。あ、俺が買ってきたチョコレートもらってくね~」



バタン



俺「え?あ、勝手に持っていったのか……まぁいいか。まだあるし」

バルクホルン「……」

俺「ば、バルクホルンさん?チョコレートは精神鎮静作用があってですね、イライラしてる時や落ち着かないときに食べるといい、なんて話を聞いたりするんですけど……」

バルクホルン「それが、どうかしたか?」

俺「えっと、食べませんか、なんていうのは今の空気的には無理ですかね?」

バルクホルン「そう、だな。久しぶりにいただこうか」

俺「あ、本当ですか!?よかった!はい、どうぞ、おいしいですよ」

バルクホルン「ありがとう、遠慮無くいただこう。だが、その前に……」

俺「?」

バルクホルン「ちょっと体が鈍っているからリハビリでもしないとな」

俺「……あれ?なんで手に包帯なんか巻いて……」





この後は大変だった。

看護師さんが止めに来てくれなかったら、おそらく俺もベッドの上で寝転がったままになっていたであろう。

バルクホルンさんにひと通り扶桑式謝罪を実行した後、いつもどおり背中を拭いたり、りんごを剥いてあげたり、色々とすることとなった。




痛かったが……それでも変にうれしかったのを俺は覚えている。

久しぶりに、元気な彼女を見たからだろう。

なんとなく、俺はうれしかった。

当初の目的は今でも注意深く探りをいれてはいるにしても、未だに進展もなくてわからないままだが、それでも今日は満足な一日となったのだ。






第4話終わり



最終更新:2013年01月29日 13:54