Episode16 『死神』

缶蹴りから数日後・・・

夜・・・

---ブリーフィングルーム---

ミーナ「あれから1ヶ月・・・今日も満月ね・・・」

今日でちょうどハングドマンを打ち倒してから1ヶ月が経とうとしていた。

エーリカ「なんだかもう終わったはずなのに、いざ満月になると気になっちゃうね。」

エイラ「職業病みたいなもんダナ。」

ゲルト「そういえば・・・宮藤はどうした?それにリーネも・・・」

珍しく宮藤とリーネの姿が見えない。

ミーナ「そうね・・・どこへ行ったのかしら?」

バタン!

そこへ誰かが強く扉を空け入ってきた。

ミーナ「リーネさん!?」

リーネ「ハァ・・・ハァ・・・」

息を切らせているリーネ。よほど急いでいたようだ。

ミーナ「どうしたの、リーネさん?」

リーネ「芳佳ちゃんが・・・」ハァハァ

リーネ「芳佳ちゃんがいないんです!!」

坂本「なんだと!?」

ペリーヌ「お部屋にはいませんの!?」

リーネ「はい・・・どこを探してもいなくて・・・」

ミーナ「とにかく探しましょう!俺さん、サーニャさん。あなたたちも魔導針で探して!」

俺「はいっス!」

サーニャ「やってみます!」

ミーナが自身の固有魔法、三次元空間把握能力によって捜索を開始する。

俺とサーニャの二人も魔導針を発動させる。

俺(どこっスか・・・宮藤さん・・・)

サーニャ(芳佳ちゃん・・・!)

ミーナ「・・・いたわ!!」

ミーナがいち早く宮藤の存在を発見する。

シャーリー「見つかったのか!?」

ミーナ「ええ・・・滑走路の一番端に・・・でも・・・」

ルッキーニ「でも?」

ミーナ「宮藤さんだけじゃなくてもう1人・・・これは・・・」

ミーナ「・・・僕さん?」

ゲルト「僕?あいつは部屋にいるんじゃ・・・」

ミーナ「何か嫌な予感がするわ・・・とにかく、滑走路に向かいましょう!」

全員「了解!」

---基地内滑走路---

暗い闇が湛える夜を、月が明るく照らしている。

そんな中、滑走路の先で月を見上げるひとつの影・・・

僕「綺麗な月だ・・・」

ツカツカ…

僕「?」

後ろからはもう1つの影が近寄ってくる。

僕は足音のするほうを振り返る。

そこにはいつも自分を避けていた少女がいた。

僕「宮藤さん?」

芳佳「探しました。」

しかしどうも様子がおかしい。

使い魔を発現させているのはいつものことだが、彼女の目は両方とも朱色に染まっていた。

僕「探すって・・・僕を?」

芳佳?「はい。ここで何をしているんですか?」

抑揚の無いどこか無機質な声で喋る宮藤。

僕「気がついたら自然とここへ来ていたんだよ。」

僕「なぜか月を見ていると、不思議と落ち着くんだよね・・・」

芳佳?「・・・忘れたのですか?」

僕「え?」

芳佳?「9年前、私とあなたは一度会っている。」

僕「9年前・・・?」

芳佳?「ようやく分かりました。初めてあなたを目にしたときから感じる、この感情の正体。」

芳佳?「あなたはダメ・・・あなたは・・・『敵』・・・」

僕「僕が・・・敵・・・?」

訳の分からない言葉に戸惑う僕。

だが、海面に映った月光が視界に入った瞬間、一つの記憶が彼の脳裏にフラッシュバックする。

僕「! そうだ・・・今夜と同じ満月の日・・・」

僕「ずっと前・・・9年前にもこんな・・・」

芳佳?「そう。私とあなたは9年前に会った。」

芳佳?「お互いに、敵同士として。」

僕「僕は・・・誰だ?」

僕「グッ・・・」ズキズキ

頭に走る痛み。

そして彼の中にあった記憶が更に断片的にフラッシュバックする。

僕「ハァ・・・ハァ・・・君は・・・誰だ・・・」

芳佳?「私は『ヒュプノス』。」

ヒュプノス「対ネウロイ非常制圧特殊生物兵装。ネウロイを倒すために生まれたネウロイ。それが私に与えられた役目。」

僕「倒す・・・ため・・・?ネウ・・・ロイ・・・?」

ヒュプノス「そしてあなたの本当の名称は・・・」

その名は以前からウィッチーズが追っている存在。

究極の存在と言われるものの名称。

ヒュプノス「『デス』。」

ヒュプノス「9年前、私が封印したネウロイ。」

僕「ネウ・・・ロイ・・・」

ザザッ…

僕「そうだ・・・あの日だ・・・」

ザザザッ…ザッ…

僕「僕は、あの研究所で生まれた・・・」

呼び起こされた記憶を辿りながら彼は語る。

僕「僕は・・・13番目のネウロイ・・・みんなが僕を・・・デスって呼んでた。」

僕「でも、僕が生まれたときに、力の一部が砕けて散らばった・・・」

僕「あの時の僕は・・・不完全だった・・・」

ヒュプノス「それでも、あなたの力は想定を超えていました。」

ヒュプノス「倒せない以上、残された道はこの身を呈して封印することだけ。」

ヒュプノス「そしてあの場に、封印の器としてたりるものはただ1つ。」

ヒュプノス「偶然そこに居た、人間の少年以外に無かった。」

ヒュプノス「もはや私に選択の余地などなかった・・・」

僕「『俺』くん・・・」

僕「そうか・・・僕はずっと彼の中に居たんだ・・・」

僕「12の力の破片に引き寄らせられるようにって、僕が彼を誘った・・・」

僕「そして・・・」

一度言葉を詰まらせる僕。そして、俯いた顔を再び上げる。

僕「・・・・・そうか。今・・・分かったよ。」

ヒュプノス「・・・・・」

僕「全て思い出した・・・」

僕「僕が誰で・・・どういう存在なのかを・・・」

ヒュプノス「私は・・・あなたを倒すために生まれた存在。」

ヒュプノス「私も、ようやく本来の役割を思い出しました。」

ヒュプノス「この少女の中に居たことで・・・」

ヒュプノス「私は、あなたを倒す。それが私の役目。私の任務。」

僕「・・・君も、ネウロイなのにかい?」

ヒュプノス「はい。私は、確かにネウロイです。」

ヒュプノス「いわばあなたも同胞・・・ですが、人工の存在である私を、氾濫分子としてあなた方は追い立てた・・・」

ヒュプノス「もはや私はネウロイとしても居場所を失ってしまった。」

ヒュプノス「そこへこの少女が現われた。そして、私に居場所をくれた。」

ヒュプノス「この少女には借りがあります。だから私はこの少女を守らなければならない。それがたとえ同胞を裏切ることになっても・・・」

そう言い終わるや否やヒュプノス・・・もとい、宮藤は両手を僕へと向ける。

ヒュプノス「消えてください。」シュンシュンシュン

手から数多の赤い火線が放たれる。

それは勢いを失うことなく僕のほうへと着実に向かう。

ズゴオオオオオオオォォォ!!

しかし...

僕「やめるんだ・・・ヒュプノス・・・」

ヒュプノス「!?」

僕は生きていた。

彼は自分の目の前にシールドのようなものを展開している。

僕「・・・ごめん。」

そして彼は右手を翳し、何か衝撃波のようなものを放つ。

ヒュプノス「かはッ・・・!」

ドサッ!

少しの距離を吹き飛ばされ、そのままヒュプノスは動けなくなった。

ヒュプノス(申し訳ありません・・・宮藤芳佳・・・)

薄れ行く意識の中、ヒュプノスは宮藤にそう告げた・・・

数分後・・・

坂本「宮藤いいいぃぃ!!」

リーネ「芳佳ちゃん!!」

他のメンバーが駆け寄ってくる。

坂本「おい、宮藤!しっかりしろ!!」

ミーナ「大丈夫。意識を失ってるだけみたいね・・・」

俺「僕・・・お前、なんでここに・・・」

僕「・・・・・」

ゲルト「どういう訳か・・・説明しろ・・・」

硬く閉じた口をゆっくりと開く僕。

僕「全て・・・僕のせいだ・・・」

ペリーヌ「あなたが・・・あなたがやったって言うんですの!?」

坂本「やめろペリーヌ。あいつは戦う意思を見せていない。」

ミーナ「説明してもらえないかしら・・・あなたは、何者なの?」

僕「僕は・・・君達が『ネウロイ』と呼ぶものとほぼ同じ存在なんだ・・・」

エイラ「オマエが・・・ネウロイ!?」

僕「僕はネウロイから少し進んだ存在・・・12のネウロイが全て交わって生まれる、『宣告者』さ・・・」

サーニャ「宣告者・・・?」

僕「さっき・・・全てを思い出した・・・ネウロイの正体・・・そして、僕自身の恐ろしい正体も・・・」

僕「信じられない・・・!こんな事って・・・」

ミーナ「ネウロイの正体を知っているの・・・?」

僕「知ってるよ・・・」

シャーリー「なにっ!?」

僕「ネウロイたちの目的・・・それは・・・」

僕「『母なるもの』の復活。」

僕「死の宣告者・・・その存在に引き寄せられて、母なるものは目覚める・・・」

俺「死の・・・宣告者・・・それがお前だって言うのか・・・」

僕「そうだ・・・」

ルッキーニ「母なるものって・・・なに・・・?」

僕「大いなるものさ。君達の言語に、当てはまる言葉はない・・・」

僕「9年前、1人の人間の手によって無数のネウロイのコアが1つの場所に集められた。」

僕「そこで僕は生まれた。でも、なぜか僕は不完全なまま外に放り出され、そして、そのまま目を覚ました。」

僕「その後、僕はヒュプノスと相打ちになった。」

サーニャ「ヒュプノスって・・・この前聞いた・・・」

僕「そう、今ヒュプノスは彼女・・・宮藤さんの中で生きている・・・」

ミーナ「宮藤さんと融合したネウロイが・・・ヒュプノス・・・」

僕「あの子は僕を封印しようと捨て身で挑んできた。」

僕「そして僕は、たまたまそこに居た1人の子供の中に封印された・・・」

僕「その子供は僕を宿したまま成長し、そして偶然か運命の悪戯か・・・一番目のネウロイの眠るこの地へと降り立った・・・」

僕「君達の部隊の・・・新しい仲間としてね・・・」

エーリカ「新しい仲間・・・それって・・・!」

全員が1人の人物を驚いた表情で見つめる。

僕「そう、君だよ。俺くん・・・」

僕「僕はずっと、彼の中に居たんだ・・・」

俺「は!?」

俺(あいつが俺の・・・中に居た・・・?)

シャーリー「中に・・・居た?」

僕「そして、僕の影響で彼は魔力を覚醒させウィッチとなり、この地へ降り立った時、1番目のネウロイが目覚め、それに連鎖して世界中に散らばった12のネウロイが満月になる度に順番に目覚めた。」

僕「彼の中の僕と・・・1つになるためにね・・・」

リーネ「僕さんは死の宣告者で・・・俺さんの体の中に入っていた・・・ってことですか・・・?」

ペリーヌ「いきなり言われて・・・信じられるわけありませんわ!そんなこと!」

僕「全て・・・僕が原因なんだ・・・ごめんよ・・・」

僕「それに・・・君達にはまだ・・・大事なことを・・・つた・・・え・・・」ドサッ

エイラ「僕!?」

僕は意識を失い、その場に倒れた。

ミーナ「ひどく消耗しているようね・・・今日のところは引き上げて休ませましょう・・・宮藤さんの件もありますから。」

ミーナ「話の続きはその後ね・・・」

僕の口から語られた真実。

彼は9年前から俺の中で12のネウロイとの接触を待っていたという。

俺(ならあの『アニマ』は・・・俺の中に居たころの『僕』・・・?)

俺(・・・・・)

今は何もかも、彼が語らなければ分からないことばかりだ。

重苦しい空気の中、宮藤と僕を連れて基地へと戻った・・・

翌日・・・


---ブリーフィングルーム---

仲間達が神妙な表情で座っていた。

少し離れた場所で、僕がパイプ椅子に座り、俯いていた。

宮藤だけは、依然意識を失っているためこの場には居ない。

ミーナ「全員、集まりましたね。」

ルッキーニ「僕、もう大丈夫なの?」

僕「ありがとう、ルッキーニちゃん。僕なら大丈夫だよ。」

僕「それに僕には全てを伝える責任がある・・・」

坂本「早速だが、聞きたいことが山ほどある。質問に答えてもらうが、かまわないな?」

僕「はい。大丈夫です。」

ミーナ「あなたは昨日、ネウロイたちの目的が『母なるもの』の復活にあると言った。」

ミーナ「まず教えてほしいの。あなたたちネウロイとは、一体なんなの?」

僕「ネウロイは・・・君たちの人間の負の心が集まって生まれた存在だ。」

俺「負の心・・・?」

僕「そう、君たちの中にある悪い心の・・・特に、死んでしまいたいと思う心・・・それが僕たちを作り出す。」

ペリーヌ「死んでしまいたいって・・・私たちはそんなこと思っていませんわ!」

僕「君たちはね。でも、世界中の、他の人はどうかな。」

ペリーヌ「! ・・・」

僕「争いが起って、大切なものを失ったり、他人に傷つけられたり・・・そこから立ち直れずに死んでしまいたいと思う人もいるんだ。その心が、僕たちを作るんだよ。」

ミーナ「・・・・・」

僕「・・・話をもどそう。ネウロイは、人々の負の心が大きければ大きいほど、その姿は大きくなり、負の心を持つ人々が多ければ多いほど、ネウロイの数も増える。」

僕「やがて、たくさんのネウロイ同士が集まって、より上の存在である12のネウロイが生まれる。それが君たちがアルカナネウロイと呼んでいたものだ。」

リーネ「あなたも、アルカナネウロイなんですか・・・?」

僕「そう、僕は12のネウロイがさらに集まって生まれる宣告者。13番目のネウロイだ。」

シャーリー「その宣告者・・・ってのはなんなんだよ・・・」

僕「宣告者は、ネウロイの母たる存在をこの星へと呼び寄せる存在。僕は、母なるものを呼び寄せるためだけに生まれたんだ。」

ミーナ「・・・ちょっと待って。母なるものとは・・・何?・・・復活すれば、どうなるの?」

僕「母なるものは太古、この星に『死』を授けた僕らネウロイの母たる存在さ。」

僕「目覚めれば、星は純粋な死に満たされて、全ての命は消え失せる・・・」

シャーリー「命が・・・消える!?」

坂本「それは・・・絶滅するということか・・・?」

僕「いや、正確には・・・『生きることを止めてしまう』と言った方がいいかな・・・」

エイラ「生きることをやめる・・・絶望病カ・・・?」

すでに世界中で絶望病が蔓延していた。

絶望病というその言葉もメディアで多く報道されたことにより、一般市民の間でも広まっていた。

そして僕の言葉を聞き、皆も同じことを連想していた。

俺「全人類があんなんになったら・・・」

僕「いや、そうして君たちが無気力になったところで、母なるものと全てのネウロイが惑星規模の破壊行動を開始する・・・」

坂本「瘴気による汚染に、ビームによる虐殺・・・人類、いや・・・生き物の全てはたちまち死に絶えるだろうな・・・」

それはまさに、星そのものの滅びであった。

ミーナ「それがグレゴリも言っていた滅びなのね・・・」

エーリカ「でもさ、そうだとしても何か防ぐ方法とかあるんでしょ?」

僕「・・・・・」

ペリーヌ「ちょっと・・・どうして黙ってるんですの!?・・・まさか、防げないとか・・・ないですわよね・・・?」

僕「すまない・・・」

ペリーヌ「どうして...なぜあやまるんですの!?」

リーネ「そんな・・・決まってるってことなの・・・?」

僕「そうさ・・・鐘が鳴ったのを聞いただろう・・・あの時、全てが決したんだ・・・」

僕「僕は死の宣告者・・・僕は・・・存在そのものが滅びの確約なんだ・・・」

全員が言葉を失った。

もはや滅びは免れられないという。

僕が現われたこと自体が、滅びの確約なのだと・・・

シャーリー「な・・・なあ。それって、いつ来るんだ?その・・・滅びは・・・」

僕「おそらく、次の春はもうやってこないだろう・・・」

俺「それって・・・すぐじゃないか!!」

サーニャ「・・・・・」

エイラ「お・・・オイ、みんな・・・なにビビってんダヨ・・・?」

エイラ「滅びだかなんだか知らないケド、今までだって乗り越えてきたじゃないカ!」

エイラ「ウィッチに不可能はない!そうダロ!?」

ルッキーニ「そうだよ・・・倒すだけだよ!!」

僕「それは無理だ。」

僕「母なるものの前では、力の大小なんか問題じゃない。」

僕「死なない命が無いように、母なるものを消し去ることなんて決してできないんだ・・・」

エイラ「そんナ・・・」

しばらく沈黙が続いた・・・

その沈黙を断ち切るように僕が口を開く。

僕「僕は・・・怪異が集まって出来た存在・・・」

僕「なのに人の姿をしていて、君達とこうして話せたり、喜んだり、悲しんだりも出来る。これは多分・・・僕が彼の中に居たからだ・・・」

僕「・・・・おかげで僕は、君達に選択肢を与えられる・・・・・」

サーニャ「選択肢・・・?」

僕「母なるものの訪れは・・・もはや避けられない・・・でも、その日までを苦しまずに過ごすことは出来る。」

俺「え・・・?」

僕「僕を・・・殺せばいい。」

ミーナ「なんですって!?」

僕「宣告者である僕が消えれば、人の記憶から、アルカナネウロイに関する一連の記憶は全て消える。」

僕「つまり、君達の記憶からこの救いのない現実を消すことが出来る。」

僕「もうなにも・・・決して思い出すことはない・・・当然、僕を宿していた事で、俺くんのことも忘れてしまうことになるけどね・・・」

僕「滅びの訪れは一瞬だ・・・何も知らずに迎えるなら、苦しまずに済む・・・」

ペリーヌ「全てを・・・忘れる・・・?」

僕「そうさ。今までのように、君たちはネウロイを倒すだけの日々に戻るんだ。それはそれで、辛いものがあるかもしれないけれどね。でも、滅びを怯えて待つよりは、ずっと楽なはずだ。」

僕「それに、僕を殺せば滅びまでの時間も少しは長くなるかもしれない・・・本来、僕の性質は母なるものと同じ。だから殺すことなんて出来ない。」

僕「でも、彼のおかげで・・・今の僕にはわずかだけ人の性質がある。俺くんの手でなら・・・たぶん出来るはずだ・・・」

ルッキーニ「僕・・・」

僕「もし僕を殺さなければ、全てが今のままになる。避けられない間近な死を怯えて待つ、救いのない日々がただ続いていく・・・」

僕「・・・僕はそんなのは嫌だ・・・君達に苦しんでほしくない・・・そんな目に、あって欲しくないんだ・・・」

俺「そんなの・・・出来るかよ・・・」

僕「優しいね、君は・・・」

サーニャ「・・・です・・・・・。」

エイラ「サーニャ?」

サーニャ「記憶がなくなるなんて・・・嫌です・・・!」

サーニャ「私、俺さんの事も、僕さんのことも忘れたくないです!」

サーニャ「みんなでここまで過ごしてきた記憶は・・・とっても大切なもの・・・それがなくなるなんて嫌です・・・」

エイラ「そうダナ・・・それに、忘れれば楽だなんて単なる逃げダ!」

僕「逃げることは・・・悪いことなのかな・・・?」

僕「逃げなければ、君達の想像を超えた、途方もない絶望が広がっているんだよ?」

僕「絶対に死ぬ・・・その怖さを君達はまだ知らないんだ・・・今の気持ちだけで簡単に決めない方がいい。」

しばしまた沈黙が流れる・・・

僕が静かに立ち上がった。

僕「すぐに決めなくてもいい。少しだけだけど、まだ時間はある・・・」

僕「12月31日。ニューイヤーズイブって言ったかな・・・その日までに考えておいてほしい・・・」

僕「それを過ぎると、僕は母なるものと1つになり、君達の触れられない存在になる。」

僕「どちらにせよ僕は、母なるものの訪れと共に役割を終えて取り込まれるだけの存在だ・・・」

僕「僕の心配はいらない。31日になったら、また来るから・・・」

僕はそのまま出口へと歩き、扉を出た。

俺「おい、待てよ!!」ダッ

扉を開け、廊下を見渡す。

しかし、そこに僕の姿はもうなかった・・・

俺(消えた・・・)

掻き消えてしまった。まるで、アニマのように・・・

ミーナ「また来る・・・ね・・・」

僕の口から語られた真実はあまりにも絶望的だった。

俺たちに与えられたのはただ死に方の選択だけ・・・

立ち向かう術は皆無だと言う・・・

各々が死について意識し始める。空気が次第に重くなっていくのが感じられた・・・

そんな中ミーナが口を開く。

ミーナ「・・・・・今日は解散とします。今は・・・私たちに出来ることを精一杯やりましょう・・・」

しかし誰もが黙ったままだ。

この日は重い空気のまま会議が終了した。


僕・・・もとい、デスの告白から一週間。

世間では絶望病が蔓延し、次々にネウロイの被害者が出ていた。

世界中の政府はついに外出禁止令を敢行。

世界中の街には軍の兵隊と陸戦専用ストライカーを履いたウィッチが配備された。

それにより治安は守られたが、人々の不安は日々募ってゆくばかりであった。

---基地内ラウンジ---

宮藤は意識を取り戻したが怪我がなかなか治らず、いまだ安静にしている。

ペリーヌ「あれから1週間ですわね・・・一体どうするんですの、これから?」

リーネ「ペリーヌさん・・・落ち着いてますね・・・」

ペリーヌ「悩んだって仕方がありませんもの。それに、ここ一週間のこの重苦しい雰囲気。正直耐えられませんわ。」

ミーナ「確かにそうね・・・」

エーリカ「人間って7日を過ぎるとどんな環境でも適応を見せるんだってさ。あのさ、ここはちょっと冷静に話し合ってみない?」

エイラ「・・・・・」

シャーリー「バルクホルン・・・お前はもう決めたか?」

ゲルト「さぁな。・・・だが逃げる気はさらさら無い。」

ミーナ「あなたは、母なるものと戦う道を選ぶということ?」

ゲルト「ああ。どんな相手かも分からないしな。まぁ、倒せないという話らしいが・・・」

ゲルト「リベリアン、お前こそどうなんだ?」

シャーリー「そうだな~・・・正直ここまで死ぬことについてここまで深く考えたのは初めてだよ・・・」

シャーリー「でも、どっちか選ばなきゃいけないってならあたしは立ち向かうほうを選ぶよ。」

シャーリー「何もしないで死ぬほうが、よっぽど辛い気もするしな。」

ゲルト「そうか・・・。ミーナはどうなんだ?」

ミーナ「そうね・・・私も、最前線の隊長をやっているはずなのに、死ぬことをどこか遠いことのように感じていたわ・・・」

ミーナ「これじゃあ隊長失格・・・ね・・・」

エーリカ「そんなことないよ。ミーナはよくやってくれてる。ミーナのおかげで、みんな今まで死ぬことをあまり考えずに済んだんだ。」

ミーナ「ありがとう、エーリカ・・・」

ミーナ「私としては、苦しいよりは、楽なほうが良いに決まってるわ・・・」

ミーナ「でもそれで、彼を殺すというのは・・・ね・・・」

ミーナ「それに、どの道死ぬだなんてのも、ちょっと気に入らないわ。」

リーネ「じゃ・・・じゃあ、僕さんには何もしないってことで一致でしょうか・・・?」

エーリカ「リーネはどっちなのさ?」

リーネ「わ・・・私は・・・」

エーリカ「まぁ、どう死ぬか選べとか言われても、そんなの選べないよね。」

エーリカ「そうそうエイラ達は?もう決めた?」

エイラ「いや・・・」

サーニャ「・・・・・」

ペリーヌ「どうしたんですの?まさか今更怖気づいたんじゃ...」

エイラ「ああ、怖いサ!死ぬんだゾ!?」

サーニャ「エイラ・・・」

エイラ「みんなも何ご立派な事いってんダヨ!絶対死ぬって意味考えたのかヨ!?」

この事について、エイラは人一倍悩んでいた。

彼女は固有魔法に未来予知をもつおかげで今まで幾多の死線を無傷で潜り抜けてきた。

それ故、彼女は他人の死を意識する事はあっても、自分の死についてはあまり意識する事がなかった。

なにしろ、今の一度も死ぬという状況になったことがなかったからだ。

しかし、彼女がここまで深く悩んだ理由は他にもう一つあった・・・

彼女の言葉に返す言葉もなく、皆が押し黙ってしまう。

ミーナ「ならどうするの?殺すの、彼を・・・?」

エイラ「ワタシに出来ることなんてないサ・・・殺せるのは、一人だけなんだから・・・」

エイラが俺のほうを見る。

エイラ「原因は・・・明らかにオマエから始まってるんだ・・・」

エイラ「気づかなかったのカ・・・?アイツが中に居るってこと・・・」

俺「・・・・・」

エイラ「滅びは・・・お前が呼んじまったんダ・・・」

エイラ「お前さえ来なけりゃ、こんな事にはならなかったんじゃないのカ!?」

俺「っ!!」

サーニャ「エイラ!!」

俺「いいんだ!!」

俺が大声で反駁する。

サーニャ「俺さん・・・」

俺「いいんです・・・エイラさんの、言うとおりっス・・・」

俺「俺が来なけりゃ、こんな事には・・・」

サーニャ「違う・・・それは違うわ!!」

俺「違わない!!俺の、せいなんです・・・」

ゲルト「俺・・・」

俺「すみません、俺、今日この後哨戒あるんで、失礼します・・・」テクテク

エイラ「・・・・・」

バタン

俺はそのままブリーフィングルームから出て行った。

シャーリー「大丈夫かあいつ・・・あんな状態で哨戒に出たら・・・」

ミーナ「そうね・・・でも、サーニャさんのストライカーが今、整備中だから代わりが居ないのよ・・・」

スクッ

エイラ「・・・サーニャ?」

タッタッタ

バタン

---基地内廊下:俺の部屋前---

サーニャ「・・・・・」

コンコン

「・・・・・」

コンコン

「・・・・・」

サーニャ「俺さん、あけてください・・・」

「・・・・・」

返事は返ってこない。

サーニャ「ならそのままでいいです。聞いてください・・・」

「・・・・・」

サーニャ「一人で、抱え込もうとしないで・・・」

「・・・・・」

サーニャ「あなたのせいなんかじゃ・・・ないです・・・」

「・・・・・」

サーニャ「・・・それだけです。また、来ます・・・」

トコトコ

「・・・ごめんなさい。」


深夜

---バルト海上空---

俺は哨戒の為、夜の空を飛んでいた。

しかし、海はいつもと様子が違い、波は大きくうねりをあげ、大しけの状態であった。

俺「・・・定時連絡。HQ、応答してください。」

本部《ザザッ…こちらHQ。》

俺「0430。S-13地点。異常なし。」

本部《了解。帰投せよ。》

俺「ウィルコ。」

そうして俺が基地へ帰投しようとしたその時だった。

ボフッ!

俺「!?」

突如、ストライカーが煙を上げる。

やがて煙はどんどんと大きくなり、ストライカーは制御を失い、俺は海へと落下してゆく。

ヒュゥゥゥ~

俺(はは・・・ばちが当たったかな・・・)

俺(俺の人生も19年ぽっちか・・・せめて20までは生きたかったな・・・)

俺(でも、世界に対してこんな仕打ちをしたんだ・・・死んでも、仕方ないよな・・・)

――俺さん。――

俺(あはは・・・こんな時まであの子の顔を思い出すなんてな・・・やっぱ俺、結局あの子の事あきらめきれてないんじゃん・・・)

俺(あの時、顔合わせときゃよかったかな・・・)

俺「サーニャさん・・・」ボソッ

ドポン

その日、俺一等兵が基地へ帰還することは無かった・・・

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最終更新:2013年01月29日 14:20