幕間『君と積み上げるもの』


スオムス繁華街

クリスマスを目前に控えたスオムスの街はネオンで着飾り、華やいでいる

街の人々は皆どこか浮足だっており、俺もその例外ではない

俺「イッルおっせぇな・・・」

今日は二人の関係が”幼馴染”から”恋人”に変わって初めてのデートの日

しかし・・・

もう30分以上の遅刻だ

俺「付き合うってなんなんだろうな・・・」

10年以上想い続けた恋が実り、浮かれていた俺が直面した問題は大きかった

関係は確かに変化したが、それはあくまで表面上だけで実の所なにも変わってはいないのだ

俺「わっかんねー・・・」





おいおい!なんであいつあんなにリラックスしてんだよ!!

こっちがどんなに緊張してるかも知らないで!!30分も待たせてるんだから少しは焦れよ!!

だいたい、いつもいつもスカした顔しやがって私が平静を保つのにどれだけ苦労してるかも知らないんだろう!

それなのにあいつがあんなに普段と変わらなかったら・・・

エイラ「私がこんなに頑張ってオシャレしてきたのが馬鹿みたいじゃないかヨ・・・」

新しく買ったコートを羽織って髪は可愛くお団子頭、お姉ちゃんに結ってもらった

こんな可愛い格好が私に似合うかは不明だが、お姉ちゃんが『可愛い』って太鼓判を押してくれたから勇気が持てた

どうせ私の格好を見てもいつも通りの『可愛いな、意外と』みたいな舐めた反応が返ってくるのが見えてるのに!!

これじゃ私はピエロじゃないか!!

あいつが焦る素振りを見せるまでこの物影から絶対に出ない!!

誓ったからな!!





俺「!?」

ふと待ち合わせ場所の噴水の近くにあるゴミ場に目をやれば

その物影に見覚えのある髪色の物体がヒョコヒョコしてるのが目に付いた

俺「はぁ・・・」

ゆっくりと、固有魔法のステルスを使い近づいていく

エイラ「うわ!!」

いつもと違う、その特徴的な髪形を鷲掴みにした時点で気付いたようだ

エイラ「お、お前!ステルス使ったナ!!ズルイゾ!!」

俺「なにがズルイんだよ」

俺「で、これはなんだ?」

エイラ「お、お団子頭!可愛いダロ?」

イッルが満面の笑顔で誤魔化すために笑いかける、正直他の事がどうでもよくなりそうだ

俺「なんの真似だと聞いているんだ」





イッルがなぜ物影から出てこなかったか、その理由を聞いて少し考える

俺がいつも平静な態度取っててそれが気に食わないって?

無表情だって?

俺「それはお前・・・恥ずかしいからに決まってんだろうが」

何が楽しくて10年来の知り合いに毎回ドキドキしてる事を顔に出して伝えなくちゃいけないんだよ

俺「それに無愛想なのも、とっくに知ってるだろ?生まれつきこういう顔なんだよ」

エイラ「そんなの知ってるけどサ・・・」

変わらない・・・

やっぱり俺達の関係は、俺が思い描く”恋人”という形とは程遠いものみたいだ



そもそも恋人の条件とはなんだろうか?

恥ずかしい話だが、そこに”愛”がある事がやはり一番重要な事だと俺は思う

愛・・・ねぇ

今まで俺達が通わしてきたものはきっと”恋”だろうな

自分勝手で、相手の事をあまり省みない物

うん

それがいずれ実を結んでお互いを思いやれる愛となるわけだ

俺達にはきっとまだそれが無いんだろう

よし!

俺「イッル」

エイラ「あん?」

少し、不機嫌な彼女がこちらを見る



その唇を奪う



人前で・・・とか

周囲の苛立ちを感じる痛い視線が・・・とか今は気にしない

俺は名前の知らない誰かより、今隣にいる恋人が大切だから



気がつけば、俺はいつも受け身だった

初めて出会った時、話しかけてくれたのもイッルから

イッルがウィッチになって故郷を離れる時も会いにきてくれたのはイッルから

雷の夜、一緒に寝た時もイッルが俺の部屋にやってきた

頬にキスしてくれた時もイッルから・・・

この間の想いを伝えあった時だってそうだったじゃないか!

俺は今までイッルに対して何も自分からアクションを起こしていない

だからこれからは・・・

そっと唇を離せばイッルはその白い肌を真っ赤にさせ、俯いている

俺「イ、イッル?」

エイラ「い、い、い、いきなり何すんだヨ!!これじゃ単なるバカップじゃないカ!!」

俺「嫌だったか?」

エイラ「い、嫌じゃないけど・・・」

エイラ「その、心の準備ってもんが・・・」


あー、やっぱ可愛いじゃねぇか!



俺は今まで、イッルへの恋を10年以上維持してきた

そしてその恋は幸運にも実ったわけで

それは本当に嬉しい事だ

しかし、これから先を望むのであればきっと俺は変わらなければならない

恋は維持する物だが

愛って奴はどうも二人で積み上げていく物みたいだから


俺「イッル」



エイラ「な、なんだヨ!まさか!ま、またキスする気カ!!??」



未だに顔が赤いままのイッルが唇を抑えて警戒している




俺「好きだよ」




エイラ「え!?」

心底驚いた表情だ



エイラ「わ!私だってそうサ!!」




こうやってゆっくり積み上げていこう・・・まだまだ、俺達の関係は始まったばっかりだ
最終更新:2013年01月29日 14:38