『勝利と敗北と』


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47 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:28:45.41 ID:b3lX5/QgO

―――その日の夜―――

<D特殊実験戦闘部隊専用船・ラオホウ、調整室>

研究者A「―――以上で『調整』を終了します」

ギュウゥゥーーーン…………

助手「お疲れ様です。俺中尉」

俺「………………」

助手(あ、不機嫌な時の顔だ)

助手「あ、あのー……、何か……あったんですか?」

俺「いや、別に」

助手(絶対何かあったじゃん……)

助手「あのー、私で良ければ相談乗りますが……」

俺「…………はあぁー?おまえ何言ってんだ?」

助手「ですから相談を……」

俺「相談に乗るとか、流石は部隊のお荷物研究者。余程暇なんだな」

助手「い、いえ……。私はあなたの身の回りの世話を任されておりますので、相談くらいには―――」

俺「馬鹿にしてんのか?」

51 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:36:11.31 ID:b3lX5/QgO

俺「『頼まれたから聞きました!』なんて言われたって、欠片も嬉しくねーよ」

助手「い、いえ、私は……」

俺「気安い憐れみなんざ、侮辱と同じだよ」

俺「そんなんされるぐらいだったら、いっそおまえも道具扱いしてくれた方がマシってね」

助手「…………………」

俺(……何やってんだ俺は。こいつはそんなつもりじゃ―――)

助手「……しませんよ」

俺「…………は?」

助手「道具扱いなんかしません」

助手「だって、あなたと私は、こうして話しているじゃない。意志を通じ合わせているじゃない」

俺「………………」

助手「本当の道具は何も言わない。意志も無い。あのライフルやこのカプセルみたいなのを言うんですよ」

俺「矛盾だらけだな、おまえの発言は」 (意志も無い、か…………)

助手「…そうですか?私は自分の気持ちを正直に話しただけですが」

俺「ああ。立場と気持ちとやらが、まるで違う。正反対の方を向いちまっている」

俺「研究者らしからぬ発言だな」

助手「……そうかもしれませんね」

52 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:39:48.97 ID:b3lX5/QgO

俺「もういい、今日はもう船で寝る。基地に戻るのもめんどい……」

助手「今日の栄養補給がまだですが……」

俺「いらねー。どうせ点滴だろ?」

助手「いえ、今日はカ○リーメイトです」

俺「……何味?」

助手「フルーツ味です」

俺「じゃあ食べる」

助手「ふふっ、どうぞ」

助手(こういう所は子供みたいね……)

助手(って子供か……。まだ16歳だもんね)

俺「…………おまえだってまだ23だろ」

助手(……読まれたっ!?) ガビーン!

――――――――――翌日・基地内ハンガー――――――――――

俺「さてっ、条件は昨日と同じでいいよなっ?」

バルクホルン「………………」

53 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:42:57.09 ID:b3lX5/QgO

ハンガーの中で、俺中尉とバルクホルンが向かいあっている

両者すでにストライカーを履き、俺中尉は片手に、バルクホルンは両手に銃を持っている

勿論中身の銃弾は2人とも訓練用のペイント弾だ

俺中尉はバルクホルンに問い掛けるが、反応がない

俺「おいおい……、何だってんだよ。今日はどうした?ずっと上の空だな」

バルクホルン「あ、ああ、大丈夫だ。相手の言うこと1つ何でも聞く。それでいい」

俺「おーし、ルールは単純明快。相手に一発でもペイント弾当てりゃそれで勝ちだ」

バルクホルン「シールドはどうする?」

俺「禁止でいいだろ」

バルクホルン「いいのか?おまえは今ストライカーしか装着てないんだぞ」

俺「そんなんそっちも同じだろ?」

俺「それに俺はシールドは使わない主義でね。使ったら負けかなと思っている」

バルクホルン「慢心と過信は死を招くぞ……!」

俺「いいんだよ。……どーせ、死ぬときゃ死ぬんだし」

俺「さぁ!始めよーぜ!」

54 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:48:12.67 ID:b3lX5/QgO

俺「立会人、よろしく頼むぜ少佐ぁ」

バルクホルン「お願いします」

坂本「うむ、任せろ」

坂本「発進後、私が合図したら模擬戦を開始する」

俺「さぁーて、俺機、行くぜ!」 ドシューン

俺(あの野郎がいないと気が楽でいいなこりゃ)

バルクホルン「発進する……!」 ドシューン

両者と坂本が発進した。しばらく進んだら、相対しながら飛ぶ

坂本「では……、始め!!」 ピィーーー!

坂本が開始の笛を吹いた




俺「もらいっ!」 ズガガガガガガガガガガ!

まず俺中尉が仕掛けた。マシンガンを撃つが、悠々とかわされる

バルクホルン「当たるか!」 シュン!

上昇しつつ回避するバルクホルン。俺中尉がそれを後ろから追う形になった

55 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:52:07.97 ID:b3lX5/QgO

俺「こうも易々と背中を見せるなんざ!」 チャキッ

銃を構えて発砲しようとする俺。だがバルクホルンは急遽軌道を変更し、あっと言う間に後ろに回り込んだ。2人の立場が逆になる

俺「はぁぁ?何だそりゃ!?」

バルクホルン「そこだ……!」 ドドドドドドドドド!

両手のマシンガンから放たれたペイント弾の嵐に対し、俺は体を180°横回転させて足を上げてストライカーを上に放るような格好になる

俺「ちっ!」 ヒューン

そのまま、後ろに倒れ込みながら急降下しつつ躱し、撃ち返す

両者の放った弾丸が、互いのすぐ横を通過した

俺「今のを避けるたぁ、すっげぇじゃんかぁ!あははははっ!」

バルクホルン「おまえこそ……!」

しばらく一進一退の攻防が続く。撃っては躱し、躱しては撃ち返す

両者はそのうち、互いの能力の高さを認識し始めていた

バルクホルン(こいつ…戦法だけはまるでなっちゃいないが、動きと反応は本物だ……!それに―――)

バルクホルン「クッ」 サッ

すんでの所で右足をずらす。足のあった所を弾丸が通過していった

バルクホルン(なんて正確な射撃だ……!)

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/11/10(水) 19:52:18.91 ID:U0R/l91D0
しえん

58 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:56:04.58 ID:b3lX5/QgO

俺「くっ、こいつ…!…ちょろちょろとぉ」

俺(動きが読まれている……?翻弄されているってのか、俺が!)

俺「ちぃ!」

またしてもバルクホルンに後ろをとられていた。飛んでくる銃弾を回避しつつ撃ち返す

俺(正直ただのウィッチなんざと思っていたが……、ここまでやってくれるとはな)

俺(ネウロイなんざと戦うのとはまるで違う・・・。何だこの感じは……)

俺(楽しい・・・・・のか?)

俺「ふ・・・くくはははは、あははははははは・・・!」

自然と口元がニヤリと歪み、笑いが零れでる

バルクホルン(・・・・!?)

俺「おもしれぇ…おもしれぇよ、あんたっ!!」

両者の視線が交錯する

2人は間違いなく、エース以上の戦いを繰り広げていた

撃っては避け、避けては撃っての攻防が続く

やがて、バルクホルンが再び俺中尉の後ろを捉えた。だが―――

俺「ところがぎっちょん!!」 ズガガガガガガガガ!

俺中尉は振り返らずに銃だけを後ろに向けて発砲した。今までのパターンから、後ろのバルクホルンの位置を先読みしていたのだ

バルクホルン「!」 サッ、・・・ボフン!

それは見事的中した。バルクホルンは対応しきれず、とっさ真下の雲の中に入ってしまう

59 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:57:36.11 ID:b3lX5/QgO

俺(自ら視界を潰すとは!)

俺中尉は雲の中まで追うことはせず、上で待ち構える

俺「………………」

意識を雲に集中させる

向こうが雲から出てきた所を狙い撃つ

こっちは外に居る。向こうが出てきたらすぐにわかる

向こうは雲の中だ

雲から出た時、こちらを探すのにどうやっても時間が掛かる

俺(来い………………!)

その瞬間、視界の右端で黒いものが出てきたのが見えた

俺「!」 ズガガガガガガガガガ!!

一瞬で反応し、マシンガンの連射を浴びせる

何発ものペイント弾が着弾した

60 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 19:59:20.42 ID:b3lX5/QgO

だがそれは―――

俺「……銃!?」

それはバルクホルンが持っていたはずの2つのMG42のうちの1つ

俺(囮…?いや、違う。今のは―――)

一瞬の思考。事態の把握。俺中尉が状況を理解し終えるとほぼ同時に……


バルクホルン「はあああああっ!!」 ドシュン!


バルクホルンが後ろの雲の中から姿を現した

俺「俺の位置を探る為か!!」

『ジャキッ!!』

俺中尉が一瞬で振り返る。2人がお互いの体に銃口を突きつけたのは、全く同時だった

バルクホルン「…………!」

俺「…………!」

2人の間に電流が走った。しばしの沈黙

やがてバルクホルンが口を開いた

バルクホルン「……引き分けか」

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/11/10(水) 20:00:36.42 ID:DPNGCIouO
しえんぬ

62 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:03:22.86 ID:b3lX5/QgO

しかし―――

俺「いや……」

俺中尉が口を開く。そしてそのまま銃口の向きを上方へと変えた

俺「相討ちと言いたいが……俺の負けだな」

そう言ってトリガーを引いた


カチッ


だが……何も出ない。すでに弾を撃ち尽くしていたのである

すると、判定を下す為に坂本が近づいて来た

坂本「バルクホルン」

バルクホルン「…ああ」

バルクホルンは俺中尉と同様に、天に向けてトリガーを引く


パァンッ!


一発だけ。たった一発だけではあるが、確かに弾は残っていた

坂本「……よし、この勝負!バルクホルン大尉の勝利!!」 ピィーーー!

坂本が笛を吹き、宣言する


決着はついた


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/11/10(水) 20:03:36.23 ID:3ypD8qX5O
支援

64 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:06:45.59 ID:b3lX5/QgO

――――――――――基地内ハンガー――――――――――

俺「……俺の負けだ。何でも好きに命令しろよ」

バルクホルン「随分素直だな、いつもと違って」

俺「ほっとけよ。負けは負け、約束は約束だ」

俺「訓練だろうがスパルタだろうが何でも好きに―――」

バルクホルン「では俺中尉、今度の休日私に付き合え」

俺「―――命令しやが…………は?」

バルクホルン「聞こえなかったのか?今度の休日、私に付き合えと言ったんだ」

俺「……そんな事でいいのか?」

バルクホルン「ああ、それでいい」

俺「そう……。まぁ、あんたがいいならそれでいいけどさ」

バルクホルン「言っておくが一日だぞ?ローマの街に用事があるんだ。それに付き合ってもらう」

俺「りょーかーい」

テクテクテクテク・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/11/10(水) 20:06:45.37 ID:nvagVqLB0
支援

66 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:10:16.29 ID:b3lX5/QgO

俺(・・・・・・・・)

俺(……どうしてだ?)

俺(何故悔しくないんだ?)

俺(俺は負けたんだぞ……)

俺(それなのに、何なんだこの感じは……)

俺(嬉しい……のか?何が?)

俺(理解出来ない!俺は……敗者になりたかったってのか?)

宮藤「俺さ~んっ」 タッタッタッタッ

俺「お……、宮藤にリーネか」

リーネ「俺さん、お疲れ様でしたっ」

俺「見てたのか?ははは、何か恥ずかしいな」

宮藤「俺さん凄いよ!あのバルクホルンさんと互角に戦うなんて!」 キラキラ

俺「互角……、互角かぁ。結局は負けちまったからな」

リーネ「それでも凄いです!ほぼ引き分けだったじゃないですか」

俺「いや、負けは負けだ。僅差だ何だってのは関係無くな」

67 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:15:10.78 ID:b3lX5/QgO

俺(だから・・・なんなんだよこれは!)

俺(何故こうも平然として居られる!負けに対して潔くなれる!)

俺(格好をつけてる訳じゃない……!違う!何なんだ一体……)

俺「………………」

宮藤「俺さん……どうかしたの?」

俺「え?」

宮藤「何か凄い複雑そうな顔をしてるよ」

俺「そうか…?」

宮藤「はい」

俺「………………なぁ」

宮藤「うん?」

俺「……何で全く悔しくないんだ?」

リーネ「……え?」

俺「分からないんだ。理解出来ないんだ。自分の気持ちが」

俺「何故、俺は負けたのに、こうも平然としていられるんだ?」

俺「何故、こうも負けに対して素直でいられるんだ?」

68 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:19:25.43 ID:b3lX5/QgO

宮藤「俺さん…、今回俺さんは、全力で戦った?」

俺「ああ勿論。あれでもガチでやった」

宮藤「だったら簡単だよ!」 ニコッ

リーネ「うん!」 ニコッ

俺「……え?何で?」

宮藤「全力で戦ったんだもん、だからどんな結果だろうと正直になれる。受け止める事が出来る」

宮藤「俺さんは今、全力で戦えた事に満足しているんだよ」

俺「……………!!」

俺(……そうか、そうだったな)

俺(思えば、自分の意志で相手と全力で正々堂々と戦う―――)

俺(そんな戦い……、俺は今までしたことが無かった)

俺(俺は……満足しているのか。真剣勝負が出来た事に)

俺(なるほどな……、ふふっ)

俺「あははははっ、宮藤!リーネ!」

リーネ「お、俺さん?」

69 :-Prototype-試作品-5話[]:2010/11/10(水) 20:23:04.01 ID:b3lX5/QgO

俺「ありがとう」

宮藤「ふふ、悩みは解決しましたか?」

俺「…ああ!お前たちのおかげだよ」

俺「本当にありがとうな!あっはははは」 ポンッ

宮藤「あ…、どう致しまして///」 (また頭撫でられてる……///)

リーネ「///」 (恥ずかしい///)

宮藤(俺さん…、昨日とはまるで違う。こんな優しい笑顔も出来るんだよね)

宮藤(良かった……)

俺(俺は今、『人』として充足していたのか……)

俺(だけど……、今の俺にとっては、こんなのはもう……)



〈所詮は仮初めでしかない〉



〈所詮は偽りでしかない〉


俺(だが、こういうのも……)


俺(悪くは…ないな)
最終更新:2013年01月29日 15:02