『折れた翼』 その3 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






無数のネウロイ「―――! ―――――――――――――――――!!」 ビシュゥン! ビシュビシュゥン!! ビシュゥン!ビシュゥーン!!

俺「おおっとぉーっ!!」 サッ、サッ、サッ

バスターライフルの魔導変換に釣られて、無数のネウロイ達が俺を追いかけながらビームを放つ

無数の小型機と中型機。そして大型機が迫りながらビームで俺を狙う。前後上下左右が敵だらけ。まるで地獄絵図だ


しかし俺は全ての火線を躱す。躱し続ける。
四方八方から飛んで来る無数の火線を全て見切り、紙一重で避ける


遷音速連続性加速軌道転換飛行───エクストリーム・ブースト

それはリミッター解除により使用可能になる、航空機やストライカーの飛行を遥かに”超越”した、異様とも言える超高速可変飛行である。
常人が使用すれば勝利と引き換えに”死”を齎されるそれは、バスターライフルと並ぶ俺中尉の人外さの象徴と言える


無数のネウロイ達「――! ――――――――! ―――――――――!」 ビシュビシュビシュゥン! ビシュゥン!!

俺「甘いっての!」 サッ、サッ

無数のネウロイ達「――――――――――――――――――――!!!」

俺「悪いね、逃げる事は得意なんでなぁ!!」


この男、攻撃を”躱す”と言う行為において、右に出る者は居ないだろう。

ダルシム曰わく、あらゆる攻撃を見切れるシールド要らずの”超反射”。テウルギストの神髄、”エクストリームブースト”。そして持ち前の高い”空間認識能力”
俺は今それらをフルに活用して、迫り来る全ての攻撃の回避を続けている。常人ならビームの雨により蜂の巣通り越して粉々だ


ビシュゥンビシュゥン!!

俺「危ねー危ねー」 サッ、サッ

俺は反撃を一切しない。ひたすら無数のネウロイ達の間を、弾かれるかのように逃げ続ける。ストライカーが弧を描いて飛ぶのなら、テウルギストは鋭い角線だ

中型ネウロイ「――――――――――!!」 ビシュゥンビシュゥン!!

俺(回避ポイント無し・・・・・ちっ!) スッ

流石に敵の数が多すぎる。見切れても逃げる場所が無い。中型の放ったビームを、空いている左手を翳してシールドを張って防ぐ


ビキィッ!!


俺「う・・・ぐっ・・・・・」

シールドを張った為に体に激痛が走るが、痛みなんかに構っていられない

俺「くっそ、俺にシールドを使わせやがって・・・!」

現空域には味方どころか人間は俺一人しかいない。まさに孤立無援だ。
しかもネウロイ達は、バスターライフルのチャージに引き寄せられる特質を持っている。

魚の生け簀に放り込まれたエサ同然だった。


581 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:27:49 ID:af2OSnxA

だが、それでいい。こちらにはこの逆境を打ち砕く”切り札”がある


俺(『雑魚も群れれば始末に困る』…………02の言葉だっけか? 実感させられるなまったくよ・・・!)


俺は逃げ続ける。


その右手に持ったバスターライフルのチャージをしつつ、まるでネウロイ達を誘導するかのように・・・


俺(来いよ・・・! もっと追いかけて撃って来い。こちらの思い通りにな)


バスターライフルの本質は、大出力の火線による大多数目標の同時撃墜


───つまりは”殲滅”───


俺「魔導変換率100%・・・チャージ完了」


そして戦闘終了の合図となるそれが完了すると、俺は群れの中心へ移動する。俺に”誘導された”無数のネウロイ達が、黒い渦のように幾重にも俺を取り囲んでいる


582 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:29:58 ID:af2OSnxA

俺「さぁー、死出の旅路へご案内だ」


─────狙いを定める必要はない。 全方位全てを消滅させる─────


黒い渦の中心に飛び込みながら、俺は右手に持ったツインバスターライフルのもう1つのグリップを左手で掴んでロックを解除。

ツインバスターライフルの大きい銃身が、並んだ先の銃口の間から縦に割れて同一のライフル2丁に分離した



俺「オープンブラスト。ターゲット、その辺のを全部───────」


渦の中心に飛び込むと同時に、目一杯両腕を横に広げてバスターライフルを左右両方向に突き出す


俺「薙ぎ払う!」



ズゴォォォオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァーーーーッッ!!!!!




大出力のビームが両手のバスターライフルから発射され、左右両横に居た多数のネウロイが消滅した


グルッ・・・!


ビームが照射されたままの状態で、俺は体を横方向に回転。
当然照射状態の火線も共に回転し、更に多数のネウロイ達が巻き込まれる


ネウロイ達「―――― ――――― ――――――――・・・」 パシュゥーーン……



俺はそのまま体をグルッと回転させた


俺「あっはっはっはっははははははははははははははは!!」


ズゴォォォオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァーーーーッッ!!!!!



バルクホルン「な、何だ?」

バルクホルン(こっちにもビームが───────)


ズゴォォォオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァーーーーッッ!!!!!



俺は回る、回る、回り続ける。


照射状態のビームが円を描くように薙ぎ払われ、大中小無数のネウロイが次々と青い輝きに飲み込まれる


回る。回る。回る。回る。回る。


ネウロイ達「――――――――――・・・」 パシュゥーン……

ネウロイ達「―― ―――――― ――・・・」 パシュゥーン……

ネウロイ達「 ――――――― ―――――― ――――・・・」 パシュゥーン……

ネウロイ達「―――― ―――― ―――――――――・・・」 パシュゥーン……


禍々しき黒い渦は、内側から発生した青い渦により消し飛ばされて完全に消滅。雲散霧消した


俺「全機撃墜確認・・・・・殲滅完了っとォ」


オープンブラストショット、別名”ローリングバスターライフル”。

バスターライフルの全方位掃射攻撃により、250機程居たネウロイ達は1機残らず消滅した


俺「ははっ、あははははは・・・。何にも残ってねぇよ、あんなに沢山居たのに」

俺「我ながら酷ェな・・・、こりゃ」


若干の嫌悪感を抱きつつも、2つに分割された状態のバスターライフルを再び合体させて元の1丁に戻す

ちなみに助手曰わく、この基本状態───つまりデフォの合体状態がツインバスターライフル。
先程の分割されたそれぞれをバスターライフルと言うのが、正式な名称らしい。(呼称では大抵バスターライフルだが)

ガチャガチャン!

すっかり綺麗になってしまった空をボーっと眺めつつ、バスターライフルを元の状態に戻して体の後ろに再装着した

俺「これでよし───ゲホッ、ゴホッゴホッ・・・ぐっ」 ゲホゴホ


ドクン・・・!


俺「がっ・・・・・」

俺(くそ、タイムアップかよ・・・・・! まぁ、消費魔法力量的には当然、か・・・) スッ


懐に手を入れて、特効薬であるアラキドノイルを取り出すと、プラスチックの容器を折り開けて中身を一気に飲み干した。
即効性の効果により体中を這いずり回る激痛が消え、頭痛と動悸と呼吸の乱れと視界の明滅も治まって楽になった


584 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:33:24 ID:af2OSnxA

バルクホルン「う・・・」

バルクホルン「ん・・・・・?」 パチッ

バルクホルンはそっと固く閉じていた目を開ける。彼女はバスターライフルのビームが目の前に迫った時、急停止してシールドを張っていたのだ


バルクホルン「私は・・・生きてるのか」


実際彼女は幸運だった。ギリギリでローリングバスターライフルの殲滅範囲から外れていたのだ。
後数秒前進を続けていたら、トゥルーデという存在は跡形も無くこの世から消滅してしまっていただろう。とてもウィッチのシールドで防げるレベルの攻撃では無い

バルクホルン「そうだ、俺は!?」

間一髪の危機回避。自分の無事を喜ぶよりも先に、遠くに小さく見える俺を見つけると全速力で飛び寄って行った


――――――――――――――――――――


バルクホルン「俺ーーーっ!!」

俺「トゥルーデ・・・? 何でこんなに早く───」


ガバッ!


俺「おわっ!?///」

飛んで来た勢いも完全に殺さないまま、バルクホルンは俺に思いっ切り飛びついて力強く抱きしめる

バルクホルン「良かった。おまえが無事で、本当に良かった・・・!」 ムギュゥ~・・・


585 :集中読書週間開催中!詳しくはWikiトップページにて!:2011/03/29(火) 00:34:32 ID:6vfJ3t4.
帰ってきたら試作じゃねぇか
もうひと踏ん張りできそうだ
支援

586 :集中読書週間開催中!詳しくはWikiトップページにて!:2011/03/29(火) 00:35:02 ID:egDmT/Zg
いいね

587 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:35:30 ID:af2OSnxA

俺「トゥルーデ。く、苦しい・・・」

バルクホルン「おまえが死んでしまうかと思ったぞ・・・!!」 ギュゥ~

俺「っ・・・・・」

バルクホルン「いつもこんな無茶ばっかりして、心配させて・・・。バカ…………!」

俺「・・・ごめん。心配させて」

バルクホルン「ごめんで済むか。こんなとんでもない無茶ばかりして、心配する私の気持ちも考えてくれ・・・!」

俺「・・・そういうトゥルーデは、何でここに居るのさ」

バルクホルン「え?」

俺「”巻き込まれたら死ぬから絶対について来るな”って言っただろ。何でトゥルーデだけすぐに来れたの。他のみんなは?」

バルクホルン「いや、その・・・」 タラー・・・

俺「・・・トゥルーデ」 ジトー・・・

バルクホルン「あっはは。その・・・おまえの事が心配だったから……つい、な。 でも、ギリギリ攻撃には巻き込まれずに済んで───」

俺「バカヤローッ!!」 クワッ!

バルクホルン「うっ・・・」 ビクッ

俺「ギリギリ巻き込まれなかったぁ!? それって一歩間違えれば、巻き込まれてたって事じゃねぇか!」

バルクホルン「そ、それはそうだが・・・」

俺「何でそんな無茶したんだよ! 知らない間にあんたの事を………………殺しちまってたなんて事になったら、俺は・・・・・!」

バルクホルン「仕方ないだろう、何でかはわからないが、凄い・・・凄い嫌な予感がしたんだ。だから……」

俺「心配してくれるのは嬉しいよ。だけどそんな無茶して、あんたが落とされていたら・・・」

バルクホルン「・・・無茶をしているのはおまえだ俺。たった1人で250機もの敵を相手にするだなんて・・・!」

俺「しょうがねぇだろ。手段を選んでる時間なんて無かったんだから!」

バルクホルン「だからといって、他にやりようというものがあるだろう!?」

俺「ねぇよ!」

バルクホルン「ある!」

俺「ねぇって!!」

バルクホルン「あ!る!!」


俺「何でわかってくれねーんだよ。俺は───」

バルクホルン「何故わかろうとしない。私は───」


俺・バルクホルン「「あんたに(おまえに)傷ついて欲しくないんだ!!」」

俺・バルクホルン(・・・・・あれ?)


588 :試作な俺-18話 支援ありがとう:2011/03/29(火) 00:39:53 ID:af2OSnxA

俺「・・・・・・・」

バルクホルン「・・・・・・・」

俺「・・・ははっ」

バルクホルン「・・・ふふっ」

俺「おかしいな、同じ事言ってるのに、何で俺達喧嘩してるんだ?」

バルクホルン「おまえが頑固だからだろう」

俺「それはトゥルーデもだろう?」

バルクホルン「ふふっ、そうだな」

俺「あははっ、やっぱさぁ……、あんたと居ると本当に楽しいよ」

バルクホルン「私もだ。おまえと居ると楽しい」

俺「・・・あのさ、トゥルーデ」

バルクホルン「どうした?」

俺「俺さ、その・・・俺もトゥルーデの事が───」


シュン!!


人型ネウロイ「・・・・・・・」


俺・バルクホルン「「!!?」」


突如2人の前、何も無かった筈の空間に人型ネウロイが現れた


589 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:42:54 ID:af2OSnxA

ネウロイは2人の目の前。15m程前に前触れも無く出現した

バルクホルン「また増援・・・!?」

俺「オイ嘘だろ、もう戦うだけの魔法力なんて・・・」

バルクホルン「退がっていろ、私がやる・・・!」

自分も残弾がほとんど無い事も構わずに、バルクホルンは俺を庇うように僅かに前に出る。

バルクホルン「ネウロイなんかにやらせるか・・・! やらせはしない!」

バルクホルン「俺は私が・・・私が守る!!」 チャキッ

俺「トゥルーデ・・・」


しかしネウロイは動かない。じっと制止したままだ

俺「どういうつもりだ、コイツ・・・」

バルクホルン「わからない。 それにコイツは、あの時の・・・」

俺「あの時?」

バルクホルン「以前ブリタニアでも、このような人型のネウロイが出現した」

俺「そんな事が・・・」

バルクホルン(しかしコイツは、あの時のとは・・・)

この人型ネウロイは、以前バルクホルン達がブリタニアで交戦したのとは違う点があった

あの時のネウロイは少女っぽい丸みのあるフォルムだったが、このネウロイはどちらかというと男性のような角張った体つきをしている

そして何より目につくのが左腕。
右腕は以前の少女ネウロイと同じだが、左腕は肘の辺りから骨が突き出したかのように大きく厳つくなっており、まるで神話に出て来る悪魔のような鋭い鈎爪をしている


ネウロイは依然仕掛けて来ない。ただじっと、無い筈の目で2人を見つめている


バルクホルン(何が狙いだ、何故仕掛けて来ない・・・!)

バルクホルン(こちらから仕掛けるか・・・・・?) ググッ・・・

バルクホルンが銃爪(ひきがね)に掛けた指を引こうとした、その時───


《流石だ》


俺・バルクホルン「「!!?」」


突如2人の頭の中に声が響く。氷のように冷たく無機的な声が


590 :集中読書週間開催中!詳しくはWikiトップページにて!:2011/03/29(火) 00:44:16 ID:6YmAFyeg
くうきよまねぇな

いや読んでるのか・・・・・・

591 :集中読書週間開催中!詳しくはWikiトップページにて!:2011/03/29(火) 00:45:29 ID:LHQVkIQE
おぉ、新展開か

592 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:45:53 ID:af2OSnxA

俺(アイツか? ・・・いや、声が違う)

バルクホルン「何だ、この声は・・・」

俺(トゥルーデにも聞こえている。じゃあ、まさか───)

バルクホルン「このネウロイの声なのか・・・!?」


人型ネウロイ《素晴らしい力だな。”怒りし者”》

バルクホルン(怒りし者・・・?) ハッ

その時バルクホルンは気がついた。そのネウロイの顔が俺の方を向いている事。俺の事を見ている事に

バルクホルン(俺の事を見ている・・・。俺が怒りし者なのか?)

俺(何なんだよ、コイツは・・・!)


人型ネウロイ《また会おう》


シュン!!


バルクホルン(消えた! テレポートか!?)

バルクホルン(何だったんだ、今のネウロイは・・・。俺が怒りし者? 俺が怒っている・・・何にだ?)

俺「うぁっ・・・」 ガクッ

バルクホルン「! 俺!」


突如糸が切れた人形のように、俺が落下を始める。
バルクホルンは即座に飛び寄り、俺が落ちないように抱きかかえた


バルクホルン「どうした俺、大丈夫か?」

俺「あはは、緊張が解けたから・・・。魔法力もう尽きてたんだった、俺・・・」

バルクホルン「無茶し過ぎだ。まったく・・・」

俺「・・・ごめん」

バルクホルン「いいさ、こうして2人共無事だったんだからな。あのネウロイの事はミーナ達が戻って来たら相談しよう」

俺「ああ、そうだな・・・」

俺が力無く応える。魔法力を使い果たしたせいで、元気が出ないのだろう。
しかしバルクホルンは、自分の腕の中に俺が無事で居てくれている事に満足気だった

バルクホルン(あの時確かに、俺が消えてしまうような、凄く嫌な予感がした・・・)

バルクホルン(でも今、こうして俺は私の腕の中に居る。無事でいてくれた。やっぱり気のせいだったんだ。ふふっ) ニコニコ

俺「・・・ははっ」 ニコッ

バルクホルン「・・・!/////」

バルクホルンに微笑まれている事に気づいた俺が、彼女に優しく笑い返した


エーリカ「トゥルーデぇーーーっ!!」

宮藤「俺さぁぁーーーんっ!!」

後方からエーリカ達がやってくる

俺「みんな・・・」

エイラ「2人共大丈夫だったカ?」

バルクホルン「ああ、見ての通り2人共無事だ」

サーニャ「良かった・・・」

シャーリー「ところでー、何で2人は抱き合ってるんだ?」 ニヤニヤ

バルクホルン「えっ・・・///」

ルッキーニ「ラブラブだねー、俺とバルクホルンーっ」 ニヤニヤ

俺「なっ・・・///」

バルクホルン「こ、これは俺の魔法力が尽きたから、代わりにだな・・・」

エーリカ「じゃあ私が代わってあげるよトゥルーデ~♪」 ニヤリ

バルクホルン「駄目だ! これは私の仕事だ。俺は私が運ぶんだ!」

シャーリー「おぉ~、怖い怖い」 ニヤニヤ

エーリカ「心配しなくてもトゥルーデから俺を奪ったりしないよ~」 ニヤニヤ

宮藤(バルクホルンさん、いいなぁ……)

バルクホルン「手伝うなら装備を頼む。運びづらくてな・・・」

エイラ「ん、任せろ」

エイラとサーニャがツインバスターライフル。ルッキーニとシャーリーがテウルギストを1基ずつ。宮藤がブレイドライフルを持つ


エイラ「・・・っと、流石にちょっと重いナ」

サーニャ「でも、2人なら運べるわ」

ルッキーニ「うじゅぁー! カッチョイイーっ!!」 キラキラ

シャーリー「これが速さの秘訣か・・・。確かにこんだけゴツけりゃ、本当に重さを出力で補えそうだな」

宮藤(あ、これ剣になるんだ)


俺「すまないな、みんな・・・・・」

エイラ「ったく、仕方ない奴ダナ」 ふふん

シャーリー「今回の戦闘の功労者だからな。これくらいは気にするなよ」

ルッキーニ「またロマーニャを守ってくれたよねっ、ありがとー♪」

バルクホルン「安心しろ。おまえは私が運んでやるからなっ」 ギュッ

俺「あはは、ありがと・・・」

俺(ちょっと自分が情けないぜ……)

空が茜色に染まり始め、夜の訪れを感じさせる。バルクホルン達は基地への帰投を開始する。
俺はバルクホルンと向き合った状態のまま、しっかりと抱きかかえられている


594 :試作な俺-18話:2011/03/29(火) 00:51:17 ID:af2OSnxA

バルクホルン「綺麗だな・・・」

遠くの海に沈み行く夕陽を見て、バルクホルンがそっと呟く

俺「ああ、本当だな」


ギュッ・・・


バルクホルンは、俺を抱きかかえる力を強くして、更に体を密着させる

俺「・・・トゥルーデ?///」

バルクホルン「おまえが無事で、本当に良かった。凄い嫌な予感がしたんだ」

俺「嫌な予感・・・。それ、さっきも言ってたよな」

バルクホルン「ああ。自分でもよくわからないが、確かにしたんだ。まるで・・・、おまえが消えてしまいそうな……」

俺(虫の知らせって奴か・・・)

バルクホルン「だから、おまえが帰って来てくれて本当に嬉しいんだ」 ギュゥ~

俺「ちょっ、トゥルーデ。苦しいって。そんなに強く・・・」

バルクホルン「駄目だ、これはお仕置きだ。もうあんなのは無しだからなっ」 ムギュウ~・・・

俺「・・・善処します」

バルクホルン「ふふっ、わかればいいんだ♪///」

バルクホルンは、自分の腕の中で魔力が尽きて完全に自分に身を委ねている俺の返答を聞いて、満足気に微笑む


俺「・・・あのさ、トゥルーデ」

バルクホルン「何だ?」

俺「基地に戻ったらさ、話したい事があるんだ」

バルクホルン「話・・・?」

俺「昼の続き。聞いてくれないか?」

バルクホルン「! ああ、勿論だ」

俺「ははっ、良かった・・・」

バルクホルン「だから今は安心して、ゆっくり休め」 クシャッ・・・

バルクホルンは慈愛に満ちた顔で、俺の頭を撫でる

俺「・・・ありがとう、トゥルーデ」

バルクホルン「ふふっ」



戦いは終わった。


度重なる増援。強敵を退け、誰一人欠ける事なく戦いを終えて帰還する。


こうしてウィッチーズは勝利したのだった






だが───


俺「・・・ごばっ、ガアぁッ!?」 ビチャビチャ

バルクホルン「えっ・・・」



勝利の代償は、決して安くは無かった



突如俺が、夥しい量の血を吐き出す


シャーリー「な・・・っ!?」


俺「ち・・・血・・・っ? なん、で・・・???」

俺は口元に触れて、手にべっとりと付着した血を見て言う。
自分自身でも何が起きたのか全くわかってないようだ

俺「アラキドノイル・・・飲んだじゃん。どう、して・・・・・」


《やっぱりおまえってさぁ・・・、本当におめでたい大馬鹿野郎だよな》


ドクン・・・ッ!!


俺「あっ…………」




(この感、覚、は・・・・・・・・)



≪だから言ったじゃねぇかよ。”定め”は変えられねぇって≫


ドクンッ!  ドクンッ!


(い、嫌だ・・・)


≪現実から―――――≫


ドクンッ!!  ドクンッ!!  ドクンッ!!  ドクンッ!!



(嫌だ・・・! イヤだ!! いやだああぁっ!!!)



≪目を背けるなってな≫



  ド   ク   ン  ッ  !  !  !




俺「ぐふっ!! ガっ!? ギ、あ・・・ア・・・ッ・・・」



俺「ぐぎぃアがっ・・・ああああああ"あ"あ"あ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"アアアアアアァァァァァァァぁぁぁぁッ!?!?!?」




『シナップスシンドローム(時間切れ)』を遥かに超える、”死に等しい”激烈な苦痛が俺を襲った




<ラオホウ(実験部隊の艦)>

研究者B「プロト01のインプラント同調率が、低下していきます! 84…………82……81…………安定値を下回りました!」

研究者A「体内グリア値、レッドゾーンに入りました! 大佐、これは───」

ダルシム「馬鹿な・・・『拒絶反応』だと!!?」

ダルシム「いくらなんでも早すぎる・・・! 前回のデータではまだ先と予見されていた筈なのに、何故───Σ ハッ!」

ダルシム「まさか・・・! 先日の精神干渉による再覚醒実験(※16話)が原因で、発症周期が縮まったとでも言うのか!?」

助手「大佐! このままでは・・・あの子が!」

ダルシム「ぐっ・・・、わかっている! むざむざ死なせるつもりは無い!」


――――――――――――――――――――


宮藤「っ・・・・・!」 シュゥー……

バルクホルン「頼む宮藤! 俺を・・・俺を助けてくれぇっ!!」

宮藤「わかっています!」

宮藤(お願い、治って・・・!!) シュゥー……

バルクホルンが懇願して、宮藤が必死でもがき苦しむ俺に治癒魔法をかける。だが───

俺「あ、が・・・ッ!? アあアぁぁァァっ!!」

エーリカ「治癒魔法が効かない・・・?」

宮藤「何で・・・どうして治ってくれないの!? どうして!!」

宮藤の治癒魔法が効く様子はまるで無い。その間にも俺は見る間に衰弱していく

バルクホルン「しっかりしろ! しっかりしてくれ! 俺! 俺えええええええええっ!!」

俺「あ、が、ガ・・・ッ」

バルクホルンは、自分の腕の中でぐったりとした俺に必死で呼び掛けるが応答はない。

断末魔のような叫びも枯れ果て、もはや俺は苦痛の呻き声をあげるだけだった


『ザザッ・・・ザザザー・・・』


?『聞こえますか!?』

突如全員のインカムから、ノイズ混じりの音声が聞こえる

宮藤「この声・・・助手さん!?」

エーリカ(この声、この前の模擬戦の時に居た人・・・(※15話))

助手『急いで……っ、急いでその子をラオホウに連れ帰って下さい!!』

エイラ「え?」


助手『その子の命は・・・・・、その子の命は持ってあと20───いえ、15分です!!!』


一同「!!!」

助手『急いで下さい!! お願いします。その子を・・・その子を助けて!!』 ブツン


シャーリー「バルクホルン!!!」


バルクホルン「!」 ハッ!


通信が切れて即座にシャーリーが叫び、呆然としていたバルクホルンが我に返る

シャーリー「ルッキーニ、これ任せた!」

ルッキーニ「えっ、あ、うん!」

シャーリーが、持っていた片方のテウルギストをルッキーニに預ける。
一回は重くて支え切れなさそうなルッキーニだったが、すぐに宮藤が手伝い持ち直す


シャーリー「行くぞ!」

バルクホルン「あ、ああ!」


シャーリーが反対側につき、バルクホルンと2人で俺を基地へ運び始める。ストライカーのエンジンを精一杯に噴かし、ひたすら急ぐ。

2人は有りっ丈の速度を、全ての力を出して、速く、少しでも速く飛ぼうと死力を尽くす。

バルクホルン(俺・・・、俺!)

バルクホルンは飛びながら俺の顔を見る。しかし2人に挟まれている俺は、まるで糸の切れた人形のように動かなくなってしまっていた。呻き声も止まっている

俺「ぅっ、あっ・・・アっ・・・」

その時、俺が再び僅かな声を出す。搾り出したかのような、か細い声を


バルクホルン「俺、大丈夫か!?」

しかし既に、その声は俺に届かない。

俺「くる、シい・・・・、寒い・・・・・・・・・」

俺は只、苦痛の呻き声を漏らすだけだった。

そしてバルクホルン達には分かった。俺の体が、まるで氷のように段々と冷たくなって行く事に


俺「たす……けて・・・。父さ…ん……、か、あさん……………・・・・・・」


俺「トゥ、ルー…………デ・・・・・・」

バルクホルン「!」


これを最後に、俺は完全に意識を失った


バルクホルン「死なせるものかぁ!!」


意識を失った俺に、バルクホルンが叫ぶ


バルクホルン「私がおまえを絶対に助ける。おまえを死なせたりしない・・・絶対に!!」


キュイーン・・・


バルクホルンを包む魔法力の輝きが、眩く強くなる。それにつれてストライカーの噴射も更に強くなる。


彼女は今、己の限界を超えた。

シャーリー(バルクホルンが速くなった!?)


キュイーン・・・


シャーリーもまた、更に加速する

シャーリー(距離的に時間制限ギリギリだったけど、これなら何とか・・・!)


2人は駆け抜ける嵐の如く、ロマーニャ基地へ飛んで行った



<ロマーニャ基地・港>

研究者B「急いでくれ!」

実験部隊兵達により、ストレッチャーに乗せられた俺がラオホウ内部へ運ばれて行った。バルクホルンもついて行こうとするが───

研究者B「あなた達はここまでです。あとは我々にお任せを」

バルクホルン「な、何故だ! 私たちも中に───」

シャーリー「落ち着けって! あたし達が行ったって、邪魔になるだけだ」

研究者B「その通りです。あなた達が居ては治療の妨げになる。第一、ラオホウは第三者立ち入り禁止だ」

バルクホルン「しかし、私は───」

研究者B「わからないんですか? あなた達の相手をしている暇なんて微塵も無いんですよ。今だってそうだ。俺中尉を助けたくないんですか?」

バルクホルン「! ・・・わかった。その代わり、必ず俺を助けてくれ!」

研究者B「・・・善処しますよ」


タッタッタッタッ…………


研究者Bがラオホウに入っていき、その場にはシャーリーとバルクホルンだけが取り残された

シャーリー「仕方ないさ、あたし達が行った所で役に立てない。悔しいけど、今は待つことしか───」


フラッ・・・


シャーリー「お、おい!」 サッ

倒れそうになったバルクホルンをシャーリーが支える。限界を超えた力を使った為に、彼女も魔法力が尽きてしまったのだ

シャーリー「大丈夫か?」

バルクホルン「・・・すまないな。アイツがあんなになった時に、私までこんな…………」

シャーリー「無理するなよ。魔法力を使い過ぎたんだ、基地に戻って休もう」

バルクホルン「本当に辛いのは私じゃない。私じゃなくて、アイツだ・・・」


ベチャッ・・・


バルクホルンは軍服の胸の辺りに触れる。彼女の軍服の前側は俺の血が大量についていた為に、手のひらに真っ赤な血が付着した


バルクホルン(俺の血・・・真っ赤だ。この夕焼け空よりも、ずっとずっと・・・・・)

バルクホルン「どう、して…………こんな事に・・・・・」


ガクッ


シャーリー「バルクホルン!」

血で真っ赤に染まった手のひらを見た所で、バルクホルンは意識を手放して倒れた


シャーリー「ったく、仕方ないな」

気を失ったバルクホルンを背中に担ぐと、シャーリーはゆっくりと歩き始めた

背中にバルクホルンの温もりが感じられる


シャーリー(あったかいな・・・。俺の体は、氷みたいに冷たくなっていた)

バルクホルン「お・・・れ・・・」

シャーリー「・・・・・・・」

シャーリー(やっぱショックだよな、こんなのは・・・)

実際は彼女もかなり動揺していた。しかしここで自分まで取り乱しては隊を纏めるべき人間が居ないと、冷静になるように努めていたのだった


シャーリー(さっき・・・、実験部隊の奴らに俺を渡す時…………)


シャーリー(あの時……、あの時には、もう・・・・・)



シャーリー(俺の心臓…………動いてなかった)
最終更新:2013年01月29日 15:25