~オアシス~

統合戦闘航空隊とその他各国の部隊が駐留するこの場所でひとりの少年がさまよっていた。

「ここ、何処だろ?」

俺である。

訓練を終え、自分の寝泊まりしているシュミット大尉のテントを目指していたはずなのに、
そのとんでもない方向音痴のせいでいつまでたっても目的地につかない。

「たしかこっちだと思ったんだけどなぁ?やっぱり無理せず道聞けばよかった。」

「あら、俺じゃない。なにやってるのこんなとこで。」

とほほ、と肩を落とした俺の近くを通りかかった圭子が声をかけた。


「あ、圭子さん!よかった助かった!あの男性用宿舎ってどっちでしたっけ?」

「男性用宿舎?それなら反対方向よ?こっからさきは女性用。」

そう言って彼女は後ろを指差す。そこには有刺鉄線が横たわり例の「男性お断り」の看板がたっている。

「で、男性用宿舎は整備テントのすぐ側だけど・・・
 ちょうど整備テントに用があるし一緒に行きましょうか?」 

「ありがとう圭子さん!やっぱりたよりになるなぁ。」

「ふふ、ありがとう。じゃ、いこっか?」





~整備テント~

圭子にここまでつれてきてもらった俺は、そのまま彼女の用事に着いていくことにした。

整備テントの入り口を潜ると、機械油のにおいがする。

いろいろな装備が置いてあるテントの中を暫く歩いていくと、
大砲のような大きな銃と、それを弄っている中年の男性がいた。


「氷野曹長、例のものができたそうだけど、それかしら?」

「はい大尉どの。まだ微調整がのこっとりますが形になりましたのでお越し願いました。」

「ふ~ん。なかなかいいんじゃない?重さは?」

「弾を含めて1tほどですな。あの88mm対空砲をもてた稲垣軍曹なら軽いもんでしょう。」

そういって氷野曹長はバンバンとその改造40mm対空砲を叩いた。

「これ、真美さんが持つんですか?」

俺が驚いて問う。

「ええ、あの子すっごい力もちなのよ。このアフリカじゃ航空型のネウロイも大物ばっかだし、
 これから 先は地上支援も多くなりそうだしね、ありがたいわ。」 

たしかにこれならたいていのネウロイは一撃で粉々になるだろう。


「ところで大尉どの、とうの軍曹は一緒ではないので?」

氷野曹長が問う。

「ごめんなさいね。マルセイユがあの子に扶桑料理を食べさせろって言うから、
 その準備にいま忙しいの。 
 試射は明日にするからそれまでには調整しといてね。」

「了解しました。」

そう言って氷野曹長は再び作業に戻っていった。


「真美さんって料理ができるんですか?」

俺が圭子に問う。

「らしいわ。私も最近知ったばかりだけど結構手慣れてるみたいだったわね。」

「そうなんですか。僕、扶桑料理って食べたことないんです。いいな~」

「なら、あなたも一緒に食べにくる?」

「いいんですか!?あ、でも僕男だし・・・」

俺はさっきみた看板を思い出してがっくりと肩を落とす。

「ん~マルセイユしだいだけど、俺ならたぶん大丈夫よ。でもそうね、その格好じゃだめね。」

そういって彼女は俺の姿をみなおす。
訓練から帰ってくる最中だったので、全身砂まみれだ。

このテントに入る前に幾らか払ったもののまだかなり残っている。
その時彼女はある悪戯を思い付いた。

「よし、じゃあ着替えとタオルを持ってきたら、私についてらっしゃい。」

彼女の頭には使い魔の狐耳が生えていた。




~オアシス 水辺~

「あわわ!け、圭子さん!ひとりで洗えますよ~!」

「いいじゃない、いいじゃない♪」

圭子に連れられて俺はこの水辺にやってきた。

「ほらほら、観念しておねぇさんに捕まりなさ~い!」

からだを洗えばいいのかと納得した俺は、物陰で服をぬぎ、腰にタオルを巻いていざゆかんとした。

その俺にこれまた裸にタオルを巻き付けた圭子が私が洗ってあげると言い出したのだ。
当然俺は恥ずかしがって逃げようとしたわけだ

「よっ・・・と、はい捕まえた♪」

「うぐぅ。ひとりでできるのに・・・」

「まぁまぁ、ほら水かけるわよ~」

むくれてしまった俺をなだめながら圭子は俺のからだに着いた砂を落としていく。


「結構がっちりしてるのね。男の子ってみんなこうなのかしら?」

「どうでしょう?部隊の大人たちは科学者ばっかだったから・・・
 よく分かりません。」

「そっかぁ・・・よし、頭はこれでいいわね。じゃあ次は下洗うからタオルとってちょうだい。」

そういって彼女は俺の腰に巻かれたタオルを奪いとろうとする。

「いやいやいや!流石にそこはやめてください!」

「え~いいじゃない。減るもんじゃなし。」

「減ります!だからやめて!」

なんとかやめさせようとして俺は手をばたつかせる。すると圭子の身躰を包んでいたタオルに指がひっかかり、

「え?きゃっ//」

「はえ?・・・!!」

ポロリ、とその見事なプロポーションの身躰があらわになった。



急いで目を塞ぐ俺。
圭子はタオルを拾って身躰を隠した。

「……見た?」

「み、みてません!おっきくてやわらかそうなまあるいやまふたつなんてみてません!!」

「///……まぁいいわ。ふざけたのは私だし。そろそろ時間だから、あがるわよ。」

「はい!」

しばらくふたりとも真っ赤だった。




~マルセイユのテント~

「あははっ!なにそれ傑作!」

「笑いすぎよ。まったく・・・」

テントの中にマルセイユの笑い声が響く。

あのあと顔が赤いままこのテントまで来た俺達は、
圭子の帰りを待っていたマルセイユに捕まり、
その理由を問いただされ、洗いざらい喋らされた。

「あーおかしかった。でも俺、いいものみたわね?こんどは私といこっか?」

「あはは;;そのときはおてやわらかにおねがいします。」

「お、いうわね。ふふ、気に入った。
俺、こんどからは好きに私の宮殿をたずねてきてもいいぞ。私が許可する。
いいわね?マチルダ。」

「鷲の使いの御心のままに」

そうしているうちに、真美とライーサ、それとシャーロットが料理のお盆をもって現れる。


「みなさん、お待たせしました!」

「なんだか楽しそうな声が聞こえたけど?」

「ちょうどいいときに来たわね、実はケイがねぇ……」

「ちょ、ちょっと言いふらさないでよ!」

『?』

3人に先ほどの話をしようとするマルセイユを圭子が止める。
マルセイユは悪びれた様子もなく、どうしよっかなーとからかう気満々だ。

「こんばんは、真美さん、ライーサさん。シャーロット」

そんなふたりのやり取りに首を傾げる真美たちに俺が声をかける。

「あれ、俺君?どうしてここに?」

「君も真美の料理を食べにきたの?」

「はい、圭子さんから聞いて、連れてきてもらったんです。」

「ついでにケイに体を洗ってもらってなw」

「ハンナ!もうかんべんしてよ……」

「 い や ♪ でもお腹減ったし、さっさと夕食にしようか。」

「あ、じゃあ並べますね。」

「僕も手伝います。」

そうして俺たちは夕食会をはじめた。




~1時間後~

「ふぅ、扶桑料理ってのは初めて食べるけどいいわね。おいしかったわ」

「なんだか、なつかしい感じがする味でした。」

マルセイユと俺が料理の感想を述べる。
夕食が終わった後、俺たちはソファーに座って談笑していた。

「ありがとうございます。久しぶりだったから上手できるか
 ちょっと心配だったんですけどそういってもらえて嬉しいです。」

食器をかたづけながら真美はふたりに礼をいう。

「また、たのむわね。
 さてと……俺にシャーロット、おいしい飲み物があるんだけど、飲まない?」


どこに隠していたのかマルセイユが酒瓶を取り出して俺に声をかける。

「え?なんですか?」

「おいしいものならぜひ。」

彼女はグラスになみなみとその中身を注ぐと、俺たちに手渡した。

『いただきます。』

そういって俺とシャーロットはグラスを一気に飲みしてしまった。

「ハンナ、ふたりになに飲ませてるのよ!?」

「ティナ、さすがにそれはまずいんじゃない?」

圭子とライーサがマルセイユをたしなめる。

「大丈夫だって、どうふたりとも、おいしいでしょ?」

マルセイユが俺たちに感想を聞く。

「ふぁい、おいしいですねぇ、こんなの初めて飲みました……ヒック」

「なんかのどがヒリヒリするけど気持ちがいいです。……ヒック」

「大丈夫、俺、顔、赤いよ?……ヒック」

「シャーロットだってそうじゃないか……ヒック」

酔っ払って顔を真っ赤にし、頭をふらふらさせて俺たちはそういった。

そしてしばらくその状態でいた後、シャーロットがバランスを崩して俺にもたれかかり、俺はそれを支えきれずに倒れる。そしてふたりは抱き合うように眠ってしまった。

「おや、想像以上に弱かったな。もうすこしいけるかとおもったんだけど……」

「どうするのハンナ。この子たち、一度寝たら起きないわよ。」

いまの時間からシャーロットはともかく、
自分達が彼を男性用宿舎に送るのは風紀の面等から問題がある。

「うん。なら、ここに泊めてやるか。潰したのは私だし、責任はとってやらないとね。
 マチルダ、寝床を用意してやってちょうだい。」

「わかりました。鷲の使いよ。」

~翌日 男性用宿舎~

「朝……か、結局俺君はどうしたんだろうか?」

夕飯をご馳走になってきますといって出て行ったきり、俺は帰ってこなかった。
いつまでたっても帰ってこない俺に心配になったシュミットは寝ずに待っていたが、
とうとう朝になってしまった。

「とりあえず、迎えにいってみるか?」

朝になったことで、有刺鉄線のところまでは行けるだろう。
そう考えてシュミットはテントをでた。しかしそこで意外な人物に会う。

「おや、マチルダさんじゃないか。どうしたんです?」

「なに、鷲の使いから届け物を預かってきたのでな。」

そういって彼女は背中に背負っていた、いまだに寝ている俺を預けて去っていってしまった。

「えっと、これは朝帰り……なのかな?」

呆然とする彼をよそに、総員起床を告げるラッパが響く。

きょうもまた、オアシスの一日が始まろうとしていた。
最終更新:2013年01月30日 14:38