~501戦隊基地 脱衣所~

「ここが脱衣所です。ここで服を脱いでもらって、お風呂はその先になります。」

「ありがとうございます。芳佳さん、すみませんねこんなことしてもらって。」

「いえ、坂本さんが提案してくれたことですから。」

あの笑劇的(誤字にあらず)な出会いの後、
俺はこの501戦隊の戦闘指揮官:坂本美緒少佐に引き合わされ、自分の事情を話した。
彼女はその話に半分呆れながらも上官に伝えてくれると約束してくれ、
その間に身だしなみをととのえるよう、俺に風呂を勧めたのだ。

そしてその場所まで芳佳に案内してももらい、今にいたる。

「お風呂からあがったらさっきの場所に来てくださいね?
 たぶんそのころならミーナ中佐も帰ってきてるだろうし……」

「何から何まで申し訳ないです……それではまた後で。」

そう言って俺たちは分かれた。



俺と分かれたあと芳佳は本日の仕事である洗濯物を干す作業にもどった。

「おはよう、芳佳ちゃん。」
「おはよう、リーネちゃん。」

洗濯場にはすでに彼女の親友リネット・ビショップが洗い物を干し始めているところだった。

「ごめんね、おくれちゃって。」
「ううん、大丈夫だよ。それで芳佳ちゃん、さっきの人は?」

リーネはそういって朝方にあったぼろぼろの青年のことを聞く。

「さっきお風呂に案内してきたよ?
 でもなんであんなにぼろぼろになるまで迷子になってたんだろ……あれ?」

ふと空を見上げると、輸送機が一機こちらにやってくるのが見える。

「あれはJU52……ミーナ中佐が帰ってきたんだ。」

その輸送機はそのまま滑走路に降り立ち、ハンガーへと入ってくる。
ふたりはいったん作業を中断し、ミーナの出迎えにむかった。




~格納庫~

「お帰りなさい、ミーナ中佐!あれ?」

「ん?……君、誰?」

輸送機のハッチが開き中に乗っていた者が外へ出てくる。
芳佳はそれと同時に出迎えの言葉をかけたが、その相手は自分のしらない人だった。

「わ、わたしは宮藤芳佳です。あの、あなたは?」

「私?私はハンナ・ユスティーナ・マルセイユ。
 悪いけど、サインはしない主義なんだ。」

覇気に満ち溢れた笑顔で彼女はそういった。




~501戦隊基地 ブリーフィングルーム~

「あった、さっきの人だ。すごい、本に載ってるんだ~」

芳佳は人物図鑑をめくりながらそういった。リーネが読み上げる。

「えっと、ハンナ・マルセイユ、カールスラント大尉
第31飛行隊「ストームウィッチーズ」所属で200機撃墜のスーパーエース!」

「200機……すごーい。」

そんな数を落とせるのはこの501戦隊のカールスラント勢だけだと思っていた
芳佳は感心の声をあげる。

「しかも容姿端麗で、カールスラントにとどまらず世界中に彼女のファンが多数!
 それに近年、戦災孤児を引き取って育てていることで福祉の面からの支持も多い。
 通称「アフリカの星」……ですって」

「アフリカの星!かっこいいな~サイン欲しい……あれ、アフリカ?」

そういえばさっき案内した俺という名の青年は、
たしか「アフリカ」という名の部隊の所属と言っていなかったか?
なにか関係があるかもと、と後で聞いてみることした。

その後、
芳佳はシャーリーにマルセイユのサイン拒絶主義について聞かされてがっかりしたり、
バルクホルンから昔の彼女について聞かされたりして時間を潰した。

しばらくして、ようやくミーナがマルセイユをつれて現れる。

「みなさん、もう知ってる人もいるだろうけどあらためて紹介します。
 こちらはハンナ・マルセイユ大尉、今回の作戦のため、
 はるばるアフリカから来てくれました。みんなよろしくしてあげてね。」

「よろしく。」

さっき会ったときのように不遜な態度でそう言う彼女の姿が、バルクホルンの堪にさわった。

「おい、お前、なんでここにいる。」

「おいおい、聞いてなかったのか?今回の作戦の手伝いさ。」

「今回の作戦に参加するのは私とハルトマンのはずだ!」

馬鹿にされてさらに声を荒げるバルクホルン。

「ふたりとも、そこまでにしなさい。」

「しかしミーナ、なぜこんなヤツを!」

「上層部からの支持です。それに彼女のパートナーはあなたよバルクホルン大尉。」


「なっ!私がこんなやつの……」
「無理だな」

バルクホルンが言い切る前にマルセイユが口を挟む。

「バルクホルン、あんたじゃ私のパートナーはつとまらない……」

「どういうことだ。何が言いたい……!」


「言葉通りさあんたの実力じゃ私の背中を預けるには値しない。
 作戦の成功はもちろん、
 私は絶対に生きて帰らなきゃならないんだ。それがあの子との約束でね。
 そして私の背中を守る、それが出来るのは……。」

そういって獲物を捕らえた猛禽のような瞳でエーリカをみつめる。

「どこをみている?……おまえの上官を上官と思わないその態度……変わってないな!!」

使い魔の耳と尻尾を出してバルクホルンはマルセイユに掴みかかる。

「ふんっ、今は同じ階級だ!」

それに対してマルセイユも同じように対応し、
ふたりの魔法力がぶつかり合って周囲に破壊をもたらし始めた。

「きゃっ!」

「よ、よそでヤレーー!!」

その余波で周りのみんなにも被害が出るが、ふたりはやめる気がない。

「ストーープッ!!わかったよ、わたしがマルセイユのパートナーをやるよ。
 それでいいんだろ。」

エーリカの言葉にようやくふたりは争うのをやめた。

「ハルトマン……」

「オッケーだ。楽しみだなハルトマン?……ふふっ」

そういってマルセイユは勝ち誇った笑みをうかべたのだった。

「はぁ、ではほかに彼女に質問があるひとはいるかしら?」

「あ、はい!」

ミーナの言葉に芳佳が手をあげる。



「あ、あの、マルセイユさんは「アフリカ」って名前の部隊をご存知ですか?」

「ん?ああ知ってるぞ、わたしの31飛行隊もその戦闘団の一部だ。それがどうかしたのか?」

「あ、いえ、さっき「俺」って名前の男の人が来て、
 その「アフリカ」所属だって言ってたから何か関係があるのかと思ってって……マルセイユさん?」

芳佳の言葉を聞いたとたんマルセイユが信じられないことを聞いたとばかりに硬直する。

「マルセイユ大尉?」

その姿にミーナが心配になって声をかける。
すると突然マルセイユはその場から駆け出し、芳佳の胸倉をつかむと彼女に詰め寄った。

「おい、お前、その名前をどこで聞いた!」

「うわっ、え、えっと、だからさっき会ったって……」

「じゃあアイツはこの基地にいるのか?……どこにいる、言えっ!!」

物凄い剣幕の彼女をだれも止めることができない。

「えっと、ぼろぼろだったからお風呂に案内して……ってマルセイユさん!」

芳佳の言葉を最後まで聞かずに彼女は部屋を飛び出していった。

「な、なんだったんだ?」

先ほどまでとうってかわった様子のマルセイユにバルクホルンは呆然としてしまう。

「……」

「シャーリーさん?どうかしたの?」

腕を組んで考え込んだシャーリーにミーナが尋ねる。

「ん、いや……ところであいつ、風呂の場所わかるのか?」

「あ!」

「とりあえず、後を追いましょう。」

~501戦隊基地 中庭~

「迷った……」

風呂を堪能させてもらい、替えの服として整備員のつなぎに身をつつんだあと、
俺はブリーフィングルームを目指して脱衣所を出た。

つれてきてもらった道をそのままなぞればよかったはずなのだが、
それはこの男、生来の方向音痴が発動してすっかり道に迷ってしまった。

「はぁ、どうしようかな……ん?」

途方に暮れていると向こうから小さな女の子が走ってくるのがみえた。
その子は自分の前まで来たところで躓き、転んでしまう。

「だ、大丈夫かい……?」

「うっ、うぇ、ぐすっ、うぇぇ。」

転んだときに膝をすりむいた痛みで、その子は泣き出しそうになる。

「ああ、よしよし、泣かないで、えっとほら、痛いの痛いの飛んでけ~!」

なんとかして俺はその子に泣き止んでもらおうと必死に努力する。

「うぇぇ、ひっくっ、ぐす、ぐすん、ぐす……」

そのかいもあってか何とか本格的に泣き出してしまう前にその子の涙をとめることに成功する。

「よしよし、うん、泣かなかったね、えらいよ~」

「ほんと?アンジェ、えらい?」

「ああ、えらいとも!きっとご両親もほめてくれるさ。」

「おかーさんが?うん、じゃぁアンジェ泣かないもん。」

そういってその子は顔を手で拭いだす。
俺はその顔を手に持っていたタオルで拭いてやりながらその子の容姿に思いをはせる。

「(この子、髪の色こそ黒いけど、髪形も顔の形もどこかティナさんに似てるような……?)
 ……ねぇ、君はどこから来たの?」

ここは軍事基地だ、
こんな子がここにいるのはあきらかにおかしいので、その旨を尋ねてみる。

「えっとね、アンジェ、おかーさんといっしょにあふりかからきたの!」

「へぇー、すごいね、お兄さんも昔アフリカにいたんだよ。」

「ほんと?」

「うん。ほんとほんと、ところで君のお母さんって……」

「俺!!」

「えっ!?」

突然呼びつけられて振り向くとそこには息をきらせ、肩を上下させてこちらを見つめる
マルセイユがいた。

「えっ、ティナ、さん?なんで……?」

「それはこっちのセリフだ!……ねぇ、ホントに俺なの……?」

信じられないものをみたという表情でマルセイユがそう尋ねる。

「おかーさん!」

「はい?」

ぱぁっと雲の向こうから太陽が現れたような笑顔で女の子がマルセイユに駆け寄って行く。

「アンジェ!?部屋にいなさいって言ったでしょ!!」

「ごめんなさい、おかーさん♪」

「まったく……ってそう、ねぇ俺、幽霊じゃないんだよね?」

女の子を抱き上げるながら、もう一度マルセイユが俺に問う。

「えっ、ええ、はい……生きてますよ。」

「俺……!」

我慢しきれなくなってマルセイユは俺の胸に飛び込む。
俺は思わずそのからだを抱きしめた。

「死んだと思ってた……ほんとに、ほんとに生きてるんだね。」

「はい、約束しましたから……ごめんなさい帰ってくるのが遅くなって。」

「ううん、いいの……ねぇ、俺、帰ってきたらなんでもしてくれるっていったよね。」

「ええ、言いましたね。」

「じゃぁ、キスして。」

そう言って彼女は俺を見上げる。

「うぇっ!こ、ここでですか!?」

「そう、今、ここで。」

「で、でも、ほら誰かにみられたら、そ、そうです、その子がいますよ!?」

「 ? ねぇ、おかーさん、きすってなに?」

「ふふっ、そっかアンジェは知らないよね。
 そうね、あなたにはまだ早いかもしれないけど、ま、いいか。
 じゃあキスがどんなものか見せてあげる。
 ……ほら、俺、早くしなさい。それとも約束をやぶるつもり?」

「うっ!……わかりました。それじゃぁいきますよ?」

「うん……んっ……」

そういって女の子の目の前で、ふたりの距離はゼロになった。
そのふたりを祝福するかのように空には番の鳥が高く高く飛んでいった。





俺とマルセイユがキスを交わしたその時、
飛び出していったマルセイユを追いかけてきた501のみんなが中庭に姿を現した。

「ま、マルセイユさ~ん、待ってくださっええっ!?」

「はぁ、はぁ、芳佳ちゃん、どうしたの……はわわ!」

「うそ~!?」

「おい、ハルトマンじゃまだ……な、なんだって……?」

「あらあら……」

「こ、これは……」

「さ、サーニャ、見ちゃ駄目ダ!」

「え、エイラ、なにが起きてるの?」

目の前の光景にみんなが口々に声をあげる。


「やっぱりあの噂はホントだったのか……」

「むっ?シャーリー、何か知ってるのか?」

やっと納得がいったというふうに頷くシャーリーに坂本が尋ねる。

「ん、ああ噂だよ、あのマルセイユに実は恋人がいるってはなしさ。
 まぁそいつは3年前に死んだって聞いてたけど……生きてたらしいな。」

「そうなのか……」

視線を戻した先では泣き出してしまったマルセイユの背中を叩いて慰めている俺の姿があった。


「うぅ……ぐすっ……」

「ああ、ほら、泣き止んでくださいよ……まいったな。」

泣き続けるマルセイユを宥めながら、俺はどうしようと途方に暮れる。

「おかーさん?どこかいたいの?」

女の子が心配そうにたずねる。

「ん……ううん、どこも痛くないよアンジェ、心配してくれてありがとうね?」

「ほんと?よかったぁ!」

女の子の顔に笑顔が戻った。

「あ、あの~、ティナさん、ちょっといいですか?」

「ん?なに?」

「その、お母さんってどうことです?」

「ああ、そういうこと、そりゃ、私が生んだから。」

「……え?」

「お前がいなくなった後、しばらくしてからだけどな。」

表向きには戦災孤児を引き取ったことになってるんだけどね。
と、彼女はいたずらが成功した子どものように笑った。

「とにかくこの子は私の子だよ。ほら、アンジェ、挨拶しなさい?」

「うん!
 えっと、『アンジェリナ・シャルロッテ・マルセイユ』です。
 よろしくお願いします、おにーちゃん。」

「え、ええ、よろしく……あの、そうなると父親はもしかして……?」

「他にいると思ってるの?お父さん?」

「あ、やっぱり?」

「 ? おにいちゃんがアンジェのおとーさんなの?」

ふたりの会話を聞いていたアンジェリナが尋ねる。

「そうさ、アンジェのお父さんのことについては話しただろう?
 それがこいつさ。」

「えっと、そうみたです。あの、アンジェちゃん?」

「ふわぁあ~~~!」

マルセイユの言葉にアンジェリナの顔に光が増していく。

「アンジェ、ずっとおとーさんが欲しかったの!」

「そうなのかい?……アンジェちゃんは僕がお父さんでも、いいのかな?」

「うん!」

「そっか……じゃあ、これからよろしくね?」

「うん、おとーさん!!」





<マルタ島攻略戦終了後>

~輸送機 カーゴ~

「あ、そうだ。俺、アフリカについたら覚悟しといてね。」

「はい?何をです?」

突然何かを思い出したマルセイユは俺にそういった。

「私を孕ませたことで、おっさんたちから話があるとおもうから、
 たぶんそれだけじゃなくて、ケイたちも話したがるだろうし。」

「それはつまり……」

「うん、せっかく帰ってきたんだから、死んじゃだめだぞ?」

「……はい……」

このあとアフリカについた俺は統合戦闘団「アフリカ」のみんなだけじゃなく。
駆けつけたアフリカ全将兵から、ぼっこぼこにされたのだった。






~エジプト カイロ~

「はぁ、いままで何度も死にかけたけど、今度ばかりは駄目かと思いましたよ……」

「はっはっは!まぁ、あのアフリカの星をモノにしたんだ。
 それくらいは痛い目みてもらわんとな!」

葉巻をスパスパと吹かし、俺の背中をバンバンと叩きながらながらパットンが笑う。

「ふん、出会い頭に拳を叩き込んだヤツが言うことではないなパットン。俺君、一本どうだい?」

タバコを吹かしながらロンメルがパットンに皮肉を言う。

「あ、いただきます。」

俺はロンメルからタバコを受け取り、火をつける。
マルセイユの趣味に付き合った結果、俺もかなりの愛煙家になっていた。

「君が言えた口かね?副官が止めなかったらその腰の拳銃を叩き込もうとしていたくせに。」

ゴホゴホとこの中では唯一煙を呑まないモントゴメリーがそういった。

「ハンッ!そういうおまえさんはどうなんだモンティ、
 アフリカ中の将兵に情報を流したのはお前さんだろうに。」

こんどはパットンがそういって茶化した。

「あはは、あれはそういうことだったんだ……」

遠い目をしながら俺がそう呟く。
アフリカ将兵の『親父の一撃』は凄まじく、最終的には戦車まで繰り出してきたほどだ。

正直アンジェリナが止めてくれなかったらホントに死んでたかも……
もしあの子が、実は俺とマルセイユの娘だとばれたらどうなるのかは予想がつかない。

「ま、とりあえずこれでおまえさんも義理は果たしたんだ、
 もう文句をつけるヤツもいないだろうよ。とにかく、今夜は飲もうや。」

話を切り替えて将軍たちは俺の帰還祝いと酒盛りをはじめる。

すると……

「おとーさん!」

4人がいるラウンジにアンジェリナが入ってきた。

「おや、アンジェ、どうしました?」

「帰ってくるのが遅いからっておかーさんが迎えにいけって。」

「おお、アンジェちゃん、どうだいいっしょに、お菓子もあるぞ!」

「ふむ、ジュースはあったかなモントゴメリー。」

「ああ、この間取り寄せた最高のものがある。さてと子供用の椅子は……」

突然やってきた孫娘の姿に将軍たちがデレデレになる。

「わぁあ、あ、でもケイおねーちゃんが夜におじいちゃんたちから
 食べ物もらっちゃだめっていってたからめー。」

そういってアンジェは将軍たちの誘いを断る。

「うぅむ、そうか、虫歯になったらまずいしな。
 いや、それにしても言いつけをちゃんとは守れるとはえらいな。さすがワシの孫!」

とパットンが言い、

「おいパットン、ドサクサ紛れに何を言ってるんだ私の孫だぞ?」

ロンメルがそれに続き、

「ふたりとももう酔ったのか?アンジェリナ君は私の孫に決まってるだろう。」

モントゴメリーが場に止めをさす。

「あ、あはは、ロンメル将軍って酒飲んでませんよね……」

俺の突っ込みは綺麗に無視される。

「……抜けぇい、貴様等ぁ!!」

不毛な言い争いについにパットンがキレた。

『望むところだ!!』

ロンメルとモントゴメリーがそれに応じて立ち上がる。

しかし、


「ケンカしちゃめーーー!!」

「うっ!!」

アンジェリナの声に3人の動きが止まる。

「ケンカしちゃめーなのよ、みんな仲良くしなきゃめー!!」

『ご、ごめんなさい……』

「…ぷっ、くすくす……」

俺はその姿に噴出しそうになるのを堪える。

人類の英雄達も、孫娘には勝てないか。

「ふぅ……じゃぁすみません。呼ばれてるみたいだし、続きはまた今度ということで。」

「まぁ、仕方あるまい、子供もいるんだ、くれぐれも節度のある付き合いをな。」

「はい、じゃあアンジェ、行きましょうか?」

「うん!あ、そうだ、アンジェおとーさんに言うことがあったんだ。」

「ん?なにかな、アンジェ?」

俺が尋ねるとアンジェは片手を腰に当て、もう片手で俺を指差して怒りはじめた。

「おとーさん!昨日の夜おかーさんのこといじめてたでしょ。」

「いっ!?」

『ブフォッ!?』

アンジェリナの爆弾発言に場の空気がシベリアもかくやと凍結する。

「ア、アンジェ、見ていたんですか!?」

「ううん、何してたのかはアンジェ見てないよ?
 でもおかーさんがやめてっていってたのにやめてあげなかったでしょ。
 ずっとおかーさんの泣き声が聞こえてたもん。」

「い、いやそれはティナさんがそういうプレイがしてみたいっていうから……はっ!?」

ぷりぷりと怒る自分の娘を何とか誤魔化し、
なだめようとする俺の背筋にドライアイスのように冷たい悪寒が走る。
それと同時に俺の肩に手が置かれた。


「俺君、ちょっと詳しく聞かせてもらおうか……
ああ、アンジェちゃん、マルセイユ君に伝えてくれるかな、

 いまからおじいちゃんたちは君のお父さんととっても大事な話があるから、
お父さんはしばらく帰れないって。」

「えーっ!、でもおかーさん怒るし……」

「ほら、明日なんでも欲しいもの買ってあげるから、ね?」

「……わかった。じゃぁおとーさん早めに帰ってきてね!」

「ちょ、ちょっとアンジェ、僕を置いてかないで……」

俺の哀願もむなしく愛娘は扉の向こうに消えていった。


「さぁ、俺、覚悟は、いいな?」

「あ、あはは、はい……」

その日結局俺は帰ってこなかったそうだ。

おしまい






オリキャラ設定

『アンジェリナ・シャルロッテ・マルセイユ』


表向きはマルセイユが引き取った戦災孤児。
実際は俺とマルセイユの実の娘。

容姿はマルセイユをそのまま小さくした感じで、髪の色が俺と同じ黒色をしている。
母親の遺伝によりアホ毛搭載。

年齢のわりに成長が早く、すでに5歳くらいの思考力もある女の子。
おかーさん大好きっこでアフリカの将兵の心のオアシスとなっている。
最近帰ってきたおとーさんのことも大好き。

「アフリカ」のいろんな人に囲まれながらすくすくと成長中。ウィッチの片鱗あり。

3将軍の壮絶な決闘の末、ロンメル将軍が名づけ親となっている





後日談後の『俺』

身長が伸び、1945年次のマルセイユより少し高めの身長になっている。
42年時の失踪時、たまたま降ってきた岩に押しつぶされず、地底湖に逃げ込む。
その後地下水脈を流れつつ地上に出る出口を発見、
このあとはずっとアフリカのトブルクを目指して放浪するが、
いつもの方向音痴で各地をさまようことになる。

45年に501戦隊基地に到着。その後アフリカに帰還。
帰還後は陸戦ウィッチの随伴歩兵隊の一員として行動する。

娘の何気ない一言で癒されたり、命を狙われたりする今日この頃。
最終更新:2013年01月30日 14:40