「蒼穹の絆2-13」

―乙女の純情?―

シャーリー「おーい。ラスカル。ちょっと話があるんだけど、いいかい?」

俺「いいぞ?なんだい、話って。タバコ失礼」

シ「・・・なぁ。ぶっちゃけ、聞くけど。ラスカルは誰に恋しているんだ?」

俺「ぶっ!」

 火をつけかかっていたタバコに咽る。かなり派手に火の粉が散って火口が吹っ飛んだ。

俺「なんだよ、薮から棒に!」

シ「真面目だよ、わたしは。具体名は出さないぞ。自分で考えろ。何人かが、お前に惚れ始めている。
 まず、これを事実として受け止めて。いい?」

 はあ、と頷くラスカル。そうだったですか?という顔をしている。タバコを灰皿に捨てた。

シ「問題なのは、その中の数名が友人同士だということ。解る?このままだとどうなるか?」

俺「・・・・友情にヒビが入る可能性がある」

シ「うん。そうなる恐れが高い。多分、どっちも互いには退かないだろう、と思うんだ。まあ、わたし
 のカンだから違うかもしれないけどさ。お前が行動しないと・・・だな。そうなると、下手すれば
 組織として成り立たなくなるかも」

シ「もしかしたら、お互いに足の引っ張り合いをするかもしれない・・・。女は怖いんだぞ?解ってる?」

俺「ああ。まあ、一応解っている」

シ「どうする?ラスカル君」

俺「ふむ。転属しよう!」

シ「名誉勲章が有る限り無理だろ?政府の肝いりだぞ、ラスカルの配属は!」

俺「やっぱりそうか・・・。んじゃ、戦死するか?」

シ「戦死なんて軽く言うな!」

俺「すまん。いや、すまん」

シ「まったく。お前の好きな相手に告白して、結果を出すというのは?恋人同士にチョッカイを出して
 相手の男を横取りするんじゃないから、スムーズかもと思うんだ」

俺「それも考えたことがある。前にバルクホルンに言ったことを否定することになるんだけどな。
 でも、振られればいいけれど。上手く行っちまったら?
 1.彼女を怯えさせることになる。何時俺が死ぬか解らないし。
 2.戦死したら最悪・・・。いうまでもなかろ?
 3.この逆も起こる。
 4.部隊の組織運営に影響が残るかもしれない。 
 なんともはや、だよ。黙って消えるほうが?被害は・・・言い方がよくないのは解るんだけど、敢えて、
 被害は少ないと思う。最高なのは、全員から肘鉄を貰うこと。これが最良」

シ「一理あるかもな。考えたことがあるって事は、うすうす気付いていたのか」

俺「ああ、ちょっと、ね。そうか。俺の思い上がりと思っていたんだがな」

シ「ここに来たのはサ。ラスカルにケツを上げてもらって、結論を出させることだった。誰を選ぶの
 か、ってさ。でも・・・そうか。旨くいっても、お前と彼女が辛くなることもあるのか。ラスカル・・・
 おまえ面倒くさい奴だなぁ」

俺「・・・すまん。ウィッチに男が紛れ込むのがそもそも間違いなんだ・・・」

シ「それだよ、それ!女の園だよ?男を派遣した段階で予想しろって!誰だ、責任者!」

俺「全ての女の子を彼女にすればいい、とか思ってんだろ。『海兵隊!突撃!占拠せよ!』」

シ「なるほど!それも解決案だな!あははははは」

俺「えーと。楽しい?」

シ「ヤケクソ。そうだ!お前、女になれ!あれ切っちゃえ!坂本少佐にやって貰うか!」

俺「気持ちは解るけどな、ヤケクソ過ぎるぞ。さて・・・このまま黙って、戦争が終わるのを待つか?
 すっとぼけ続けてさ」

シ「(ラスカルの真面目に考えている顔、戦闘以外で初めて見たかもな・・・・)」

シ「または全部袖にする。でも・・・なあ、ラスカル。敢えて動くのも手かもしれないぞ?悪い方向に
 ばかり目を向けるのも、な?お前、好きな相手が居るんだろ?」

俺「余り楽観的に物事を考えると、ドツボに嵌ってお陀仏だぜ?」

シ「中庸を選べ!臨機応変!上手くやれ!ってそういう考え方もあるだろう?」

俺「行き当たりばったり、だぞ、それ」

シ「あはははっははは!」

俺「笑うなよ・・凹むじゃないか」

シ「悪気は無いんだ。ラスカルは弄ると面白いから。根は真面目だし。まあ、もうちょっと考え
 ようよ・・・。ラスカルも考えるんだぞ?」

俺「うい。参ったなあ・・・。仲間にヒビを入れるなんてなあ・・・」

シ「で、誰に惚れているんだよ?話してみ。聞くだけだけどな」

俺「ルッキーニ」

シ「!!!!ダメ!絶対ダメ!お前それは犯罪だ!せめてリーネかペリーヌ!」

俺「うっそ!前にも言っただろ?歳の離れた妹だよ。悪いがお前にも喋らん。喋った後、俺が
 死んだらどうなる?」

シ「成程。さすが女垂らしだw。気配りが出来てるわ。なあ、坂本少佐はどうだ?ちっと問題も
 あるかもしれないけれど。彼女なら収まるぞ?」

俺「有難うな・・・心配してくれて」

シ「いえいえ♪仲間だぜ?(黙殺しやがったよ。やっぱりいい奴だな!)」

俺「どうしたもんだか・・・」

*********

サーニャ「ねえ。エイラ・・・」

エイラ「ん?ナンダ?サーニャ」

サ「ちょっと占って。・・・恋占い・・・・」

エ「サササササーニャ!(私ト!私は怖くて出来なかったンダ!サーニャから言い出されタ!
 どどどどうしヨ。結果が悪かったらどうしヨ!占いなんてやらなきゃよかった)」

サ「・・・・駄目?・・・」

エ「そんなこと、無いサ!(アア!神様!)だ、誰と・・・・誰ダ?(ヨシ!気絶して逃げるゾ!)」

サ「えと・・・・ミーナ隊長とバルクホルンさん」

エ「!(ナンダ)アア。それ。(助かったゾ)」

サ「・・・・がラスカルさんとどうか・・・」

エ「エエ? エエーーーーーーーーーッ!」

サ「どうしたの?そんなに吃驚して・・・・」

エ「イヤ!三人でラブラブチュッチュは不味いヨ!//////とりぷるぱーそんぷれい・・・///」

サ「・・・・・エイラ。違う///////」

エ「へ?」

サ「ラスカルさんと、お二人がどうか占って?・・・解る?」

エ「あ!そういうことカ!はいはいはい(・・・危ない想像ダッタ・・・でも見てみたい//)」
・・・・・
・・・・・
エ「アレェ??」

サ「どうしたの?」

エ「イヤ・・・何か間違えたカナ。大尉が?そんなアホナ」

サ「?」

エ「二人とも、ラスカルに恋してるってデタ。アレェ?」

サ「・・・そう・・・やっぱり」

エ「も、もう一度やるよ!今度はしっかりやるゾ!」

サ「ううん、エイラ。もういいの。有難う」

***********

 戦闘終了。本日も無事に終わった。
 ラスカルさんから大きな飴玉を貰って、みんなで頬張って帰投中。
 ハルトマンさんとルッキーニちゃんは二つ口に入れて飛んでいる。両の頬っぺたが膨らんで、
 まるでリスみたいw。
 ああ、甘いものを食べると、体の疲れが解れるわ・・・。ラスカルさんもタバコじゃ無くて、飴に
 すればいいのに。お父様もパイプ党だけど、煙を吸い込むって変。

 のんびり飛行。いつも空が平和なら・・・。太陽の日差しを浴びてふと思う。飛ぶことは大好き。
 戦いのない空なら、何時までも飛んでいたい・・・。

 ふと、一番機のミーナ隊長の視線に気付く。俺さんを見ているのね。でも、話しかけるわけでも
 ない。ただ、静かに見ている。なんだろう?私がなにかへまなことをして、注意を受けるときの
 目とは違うし。ただ、静かに見ている。表情はとても柔らかい。うん?

 さりげなくみんなも見てみると・・・。バルクホルン大尉とハルトマン中尉もそんな感じ。
 シャーリーさんとルッキーニちゃんは、その三人をちらちら見ているのかしら?
 ペリーヌさんは・・・普通かな?前方に視線を向けて飴を食べてる。
 サーニャちゃんは、ラスカルさん気味だけど、他の人もちゃんと見てる。
 エイラさんは・・・うん、サーニャちゃんだけw。

 うーん・・・ラスカルさんはお喋りしながら全体を見ているのね。

 もしかすると?もう一度、三人を・・・。うん。やっぱり視線はラスカルさんへ。

 私も、ラスカルさんにはちょっと思うことがあるし。でも、恋というのとはちょっと違う。
 一番上のお兄ちゃんに感じる安心感と信頼感、存在感がもっと強くなった感じ。強くて、安心して
 頼れるお兄さん、なんだろうな。憧れもあるけれど・・・。いつも頼っていたい憧れのお兄さんね。
 ミーナ隊長やバルクホルン大尉、ハルトマン中尉は、ラスカルさんに恋しているのかしら?
 サーニャちゃんも?
 シャーリーさん達は?・・・・・・うーん?

俺「・・・任せなさい!、材料あるかな?リーネ」
エイラ「おーい、リーネ?ドウシタ?」

リーネ「あ!はい!なんでしょう??」

エイラ「なんだヨ。聴いてなかったのかヨ。ラスカルがローストビーフ作るんダ。材料あるカ?」

リーネ「ごめんなさい。エエと・・・ひれ肉ですよね?10ポンドくらいありますよ。スパイスは大丈夫
 です。いいお塩もあります」

俺「オッケー!後でサンドイッチで食べる分も含めて作っちまえ。夜間哨戒は・・今夜もサーニャ達か、
 サンドイッチ沢山持っていけよ。肉全部貰っていい?リーネ」

リーネ「はい!私も手伝います!」

サーニャ「有難うございます。・・・よかったね、エイラ」
エイラ「うんうん!サンドイッチなら私も作る!得意だゾ!」

シャーリー「うひょー。久しぶりだな!」
ルッキーニ「キャホーゥ!楽しみ楽しみっ!」

バルクホルン「私も手伝う、というか、教えてくれ。ラスカル?」
ハルトマン「わたしもー!教えてよ!ラスカル!」
バルクホルン「ハルトマン。頼むからお前は椅子に座って見ているだけにしてくれ!」
ハルトマン「え”ーーー!いいぢゃん!」
俺「ブブブッ・・・」

ミーナ「あらあら。私からもお願いするわ、ハルトマン中尉。私にも教えてくださいな。ワイン
 を持っていくわね。美味しいのがあるのよ」

シャーリー「私も手伝うよ。役に立つよ?」

俺「んじゃ、エイラとサーニャ、ペリーヌはサンドイッチのほう頼むわ。ルッキーニは摘み食い
 担当な」

ルッキーニ「ヤッタァ!話わっかるぅ!大好き!」

 ローストビーフは火加減が難しい・・・。教えてもらおう♪
 あれ?三人が集うの?やっぱりそうみたい。私の今後のために、そっちも教えてもらおう・・・。

*

シャーリー「ほれ、コーク。飲めよ」

俺「おう、サンキュ。ビールでもいいけど?」

シ「勤務中は、だ・め!これで我慢しなさい」

俺「アルコールだな、問題は。アルコール無しで酔っ払える奴はないのかね?」

シ「そりゃ無理だろ!あはははは」
俺「だな!」

俺「さっきは有難うな。うまく立ち回ってくれて・・・」

シ「なんだ、ばれてたか。いいさ、気にすんなよ」

俺「気にしないようにしようとすると、逆になあ~」

シ「モテモテは辛いねえ。この幸せ者」

俺「疲れるよ・・・。大統領に直訴してみようかな・・・・」

シ「でも、そうしたらお前、片思いの相手とも離れちまうぜ?いいのか?」

俺「・・・・しょうがないだろう」

シ「まあ、短気は損気、かもしれないぜ?状況をよく把握し行動するんだ!軽挙妄動は慎め!
 マリンコ!」

俺「アイ、マァム」

*******

夕食。銀の大皿に乗ったローストビーフをラスカルが切りつつ、各隊員にサーブして廻る。
これは男の役目だ!と頑として譲らなかったラスカル。いまは砥ぎ棒でナイフにタッチアップ
する姿が妙に様になって笑いを誘っている。
テーブルには、シャーリーが作ったというスモークドサーモンも盛られている。ちゃんと
ケーパーも散らしてある。

ミーナ「はい。俺さんありがとう。では皆さん、今日もお疲れ様でした。乾杯!」

「「「「「「「乾杯」」」」」」」

ペリーヌ「!美味しいですわ!このワイン」

ミーナ「なかなかでしょう?でもガリアのじゃなくて。ごめんなさい?」

ペリーヌ「いえ!とんでもありません!カールスラントのワインですの?」

ミーナ「ええ。そうよw」

 ニコニコしながら、ワインを含むペリーヌ。
 ちらりとラスカルを見るミーナ。ああ、あのワインね、と微笑むラスカル。

ハルトマン「おいひい!!お肉と魚で幸せ!」

ミーナ「お肉もお魚も美味しい・・・。俺さん、シャーリーさん。凄いわね」

サーニャ「・・・・美味しい・・・」
エイラ「鮭♪牛♪」

リーネ「いい火加減です。塩コショウも。美味しい♪」

バルクホルン「シンプルな料理だったのに・・・美味しいものだな・・・」
ハルトマン「うんうん。美味しいよね。お肉しっとり。燻製ってレモン汁が合うんだ!」

ルッキーニ「あたし、おっかわりぃ!両方!山盛りぃ♪」

シャーリー「あ!サーモンの前に、ビーフジャーキーも燻したんだ。あとで酒飲みながら
 摘もうよ。リベリオン大西部時代の味、美味いんだよw。ウィスキーに合うんだ!」

俺「シャーリー!でかした!!いい嫁さんになるぞ!どうだ!」

ミーナ・バルクホルン「「!!」」

シャーリー「(この馬鹿ぁ!)ラスカル以外だ、相手はね!(お前は全く!)」

ミーナ・バルクホルン「「ホッ」」

俺「また振られた。他を探そう。どこかで誰かがきっと待っていてくれるさ。俺を愛して
 くれる人が」

ミーナ・バルクホルン「「♪♪」」

シャーリー「(おい、刺激するなよ。変態アライグマ)あ!おい、ルッキーニ・・・」

 ルッキーニが水の入ったボウルを持ってきて、ラスカルの前に置く。

シャーリー「ラスカル?アライグマは食事の作法に五月蝿いんだろ?(和ませろ!)」

 キョトンとしてシャーリーを見たラスカルだったが、すぐにニヤリと笑った。

俺「うむ。まずだな、こうする」

 耳と尻尾を出してローストビーフを揉み洗いをはじめた姿に周りが凍りつく。

俺「アライグマは必ず食べ物を水で洗うのだ。洗う姿が可愛い。さて、こんなものかな?」

 両手で掴んでムシャムシャと食べる。

ペリーヌ「美味しいのですか?」

俺「涙が出るほど不味くなっちゃった」

『ウェー』な表情に全員爆笑

美味しいものは人を幸せにする。悩みも一時忘れさせてくれる。

**************************************************************************************************10下

警急当直で、ハンガー脇の小部屋でラスカルとペリーヌが詰めている。
警報がなるまではひたすら暇。ペリーヌは本を読み、ラスカルは窓から遠くに見える空戦訓練を
眺める。

ペリーヌ「ラスカルさん?どうぞ、タバコお遣りになってくださいませ」

俺「ん?暖かい空気汚しちまうからいいよ。窓開けると寒いしな」

 ほんのちょっとの気遣いが嬉しく感じる。

ぺ「有難うございます。ラスカルさんは坂本少佐に似ておられますね」

俺「そうかねえ。エレガントじゃないぜ?俺」

 思わず笑い出すペリーヌ。ラスカルも笑う。

ペ「豪放磊落なところですとか・・・。安心してついていけます」

俺「ありがと。変態だけどな」

ペ「口だけですから、大尉は。そういえば、あの時何を囁かれたのですか?少佐に」

俺「ん?なんだっけ?」

ペ「魔法の『登録』の時です。ほら、一番最初が少佐でした」

俺「ああ!危うくサムライソードで体が左右に泣き別れさせられそうになったw!」

ペ「ええ」

俺「んー?何を囁いたっけかな・・・。プロポーズだったかな」

ペ「あら。ええと、謝罪?ですか?」

俺「だったと思うよ?命乞いしたんだろう。『お願いです!見逃してください!』って」

ペ「またそうやってはぐらかすのですね」

俺「忘れちまったよ。まあ、今も軽口叩いていられるからいいじゃないか」

ペ「それではそういうことにw。(聞かないでおきますわ・・・)」

ペ「大尉は、どのような女性がお好みなんですか?」

俺「うーん。好きになった人、だな。過去を顧みると・・・一生懸命に生きる人が共通項かね。
 あ、笑顔は大事だといつも思っているよ?」

 ペリーヌは何事か考えている。返事が無いので振り向いたラスカルがその姿を見る。

俺「タイプは決して・・・画一的なもんじゃないよ。不思議とね」

ペ「501では・・・誰でしょう?」

俺「ここで、ねえ?・・・・。すまん、答えられないわ」

ペ「(一番大事なところなのに)どうしてです?」

俺「だって、全員一生懸命だものw。皆、笑顔も素敵だ」

 完全に肩透かしされても、なぜかペリーヌは安堵した。私も認めて下さった。・・・それなら、
 それでいい・・・。きっと大尉は私以外の人を見ておられる・・・。でも、優しい人に憧れることが
 出来たんですもの・・・。

**********

ハルトマン「ねぇねぇ、ラスカル。ちょっと銃を見てよ」

俺「ん?いいよ。お、バルクホルンも持ってきたんだ?」

バルクホルン「ああ、済まないが見て欲しい。ボルトが妙に汚れるんだが、理由が解らないんだ」

俺「二人とも?同じ様に汚れるのか?」

 頷く二人。持ってきたのはMG42が4挺。

俺「あれ?1挺多くないか?」

ハルトマン「うん。ミーナのもそうなんだよ」

俺「なるほど。ボルトの汚れ、ね?撃ち殻ある?作動は問題が無いんだな?装弾のロットは?」

バルクホルン「空薬莢は無い。海に落ちてしまうからな。作動は問題ない。弾は、古いものから使って
 いるけれど・・・。さて?」

俺「じゃあ、射撃場で撃ってみよう。今は・・・ああ、綺麗だな」

 三人で、ゾロゾロと射撃場へ。二人が銃を持ち、ラスカルは弾薬とバッグを抱えている。
 到着後、1弾倉を其々連射。ラスカルは作動を横で見つつ、撃ち終わった銃の汚れを確認する。
 次に薬莢を調べだす。程なく、何個かの空薬莢を脇に出した。

俺「これだな。ほら、雷管に穴が開いちまってる。雷管突破、って奴だ」

 雷管に残った撃針の打撃跡。通常は綺麗に凹んでいるが、それらの薬莢は、その凹みに小さな亀裂
 が生じている。

俺「雷管の底の厚さも若干違うんでね。撃針が長いとこうなるのさ。各部品の製造公差の問題もある。
 カールスラント製品だから完全に同じものというわけじゃない。弾は仕入れ時期をずらして持って
 きたから、弾の問題じゃあない。オーバーホールしてからこの症状が出たんじゃないか?」

 うんうん、と頷く二人。

俺「なら、それだな。しかし新品部品を組んでそれで撃てるというのは凄いぜ。普通はアタリ調整が
 必須だし。いいな、カールスラント製品は」

バルクホルン「穴が空いたということは、ガスがボルトに廻ったんだろう?ボルトも交換したほうが
 いいのかな?」

 三人で分解。ラスカルがボルトの薬莢底が当たる部分をしげしげと見ている。

俺「大丈夫だろ。ガスで撃針ホール周辺が殆ど抉れていないから。撃針本体もダメージというほどの
 ものは無いと思うよ。焼入れ・焼き鈍しを念入りにやるからね。撃針の調整をしておくわ。そうすれ
 ば、高温高圧ガスで変質したかもしれない部位は取り除ける。ただし、撃針のスプリングは変えよう。
 撃針やボルトほど強度がないから、念を入れて、ね」

 ボルトも分解し、撃針の先端をオイルストーンで丁寧に磨き出す。ハルトマンが撃針スプリングを
 を装備部に取りに行き、魔法瓶に入れたコーヒーも持って帰ってきた。
 作業が終わると、また1弾倉を撃って確認。汚れは付かなくなった。薬莢を確認しても大丈夫。

俺「よっしゃ。これで大丈夫だ。武器担当には言わないほうが良いかもな。ほんのちょっと、だった
 んだ。ミスではない。よく君たちが気付いた、というべきだろ」

ハルトマン「だって、命が掛かってるもの。ユニットと同じように気を使うよ」

バルクホルン「ありがとう。ラスカル。器用だね。リベリオン海兵隊は皆できるのか?」

俺「俺が機械が好きなだけだよ。凝り性だしw。たまにゃ、こうして美女のお役にたてることもある」

ハルトマン「はー。意外だ」

俺「おい。雑学の王者だぞ?こう見えても。専門外は女性心理学だ。ありゃ、フロイトに任せる」

 コーヒーカップを抱えて、三人で話し出す。4月が近づき、ちょっと春の陽気だ。

バルクホルン「ラスカルは彼女いないんだよな?」

ハルトマン「トゥルーデ、何処で情報仕入れてんのさ。驚いた!」

バルクホルン「前に聞いたんだ」

俺「ああ。海兵隊に入った時にバッサリ!振られた」

ハルトマン「馬鹿な奴~♪」
バルクホルン「全くだ。しょうもない」

俺「ほっとけ!」

ハルトマン「ラスカルじゃないよ。相手の子!」
バルクホルン「そうだ。ラスカルの何を見ていたのやら」

俺「んー?何だろう?家かも」

バルクホルン「名門なのか?お前」

俺「リベリオンには名門なんてないよ。皆、移民の子孫だ。州の議員をやっていたんだよ、オヤジがさ。
 母親と一緒に交通事故で死んじまったけど」

ハルトマン「え!それじゃ・・・一人ぼっち?」

俺「そう。12歳で天涯孤独。途端にビンボーになってw。知ってる?リベリオンには伝統がないからな、
 上流階級かどうかは持っているカネで決まるんだぜ?その辺も絡んだんだろ。
 俺は奨学金で大学をでて海兵隊。この辺も絡むんだろうな。コイツの未来は知れたもんだってさw」

バルクホルン「そうか・・・。大変だったな」

俺「俺が選んだ道。その他は過ぎたこと」

ハルトマン「で、今まで何人彼女いたのさ?」

俺「ステディだったのは、その振られた子一人だけ。こう見えても、俺は奥手だぞ」

バルクホルン「ステディ?勉強??」

俺「うんにゃ。大勢とでなく特定の相手とだけ付き合う、って意味」

ハルトマン「おお!結婚意識していたんだ!奥手っていうわりには早熟だよね」

俺「手ぇ出してねーよ。リベリオンで出鱈目なことしてみろ。相手のオヤジに射殺されるわ」

バルクホルン「好都合だったな。なあ、フラウ!」
ハルトマン「うんうん!!もう吹っ切れてるよ、トゥルーデ!」
バルクホルン「遊んでもいなそうだし」
ハルトマン「身持ちが結構堅いね」

 二人でにっこりしてラスカルを見つめる。

俺「何の話しをしているんだ?」

バ・ハ「いやいや、こっちの話」

俺「なんか、空気が怪しいぞ?」

ハルトマン「ラスカル?私、バルクホルン、そしてミーナの三人がね」

俺「・・・」

バルクホルン「あ~・・・その、お前のことが好き・・・で、な」

俺「!」

ハ「で、誰を選ぶの。私?ミーナ?トゥルーデ?」
バルクホルン「ああ。選べ!お前誰が好きなんだ?」

俺「・・・・あっ!」

バルクホルン「どうした?ラスカル」
ハルトマン「なに?ラスカル」

俺「すまん。軍医に検査に来るよう言われていたわ。もう時間だ!じゃ!」

ハルトマン「こらー!敵に後ろを見せるのか!海兵隊!」
俺「阿呆!戦術的転進といえ!」
バルクホルン「おい!ちょっと!」


バルクホルン「逃げられた!私達でない相手に恋慕しているのか?あいつは」

ハルトマン「シャーリーは違う。ルッキーニも違う。エイラはサーニャ。サーニャは不明。リーネ
 も不明。ペリーヌは怪しい。サーニャ、リーネ、ペリーヌ?」

バルクホルン「ふむ!」

ハルトマン「ただし。ラスカルは年が近いほうを選ぶと見る!」

バルクホルン「フラウも消えたな」

ハルトマン「どさくさにまぎれて何言ってんの?テントに強襲かけようかなー。押しの一手ある
 のみかも。可愛い下着選んでさ♪ 誘惑するなら全裸かなぁ。下着は要らないねw」

バルクホルン「ハルトマン!カールスラント軍人がそのような!」

ハルトマン「その前に、一人の恋する乙女だよ。トゥルーデだってそうじゃん?」

バルクホルン「・・・・////」

ハルトマン「ミーナだって、今頃そう考えていても不思議じゃないよ?ずっと頭いいんだからね?」

バルクホルン「夜襲か...(私も自己訓練は・・・それなりにしているな///。仕掛けるか・・・)」

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最終更新:2013年02月02日 12:10