「蒼穹の絆4-3」

―遠隔点火―

 朝食の席に皆が座りだしたとき、警報が呻きだした。緊急出動の音色。
 皆、椅子を蹴飛ばしてハンガーへ向けて駆け出す。抜きん出て早いのがシャーリー。俺が続く。

 ハンガー内には整備兵が走り回っている。怒鳴り声、身振り手振り。誰もが急いでいる。しかし
 だれも発進線を遮って動くものはいない。混乱の中にも秩序は保たれている。

 靴を蹴り捨て、ユニットに接続する。整備兵が手伝って装具をつけつつ魔法陣を展開。エンジン
 を始動、インカムを装着し、テストしつつ武装に手を伸ばす。

管制「全隊員。発進後方位1-2-0、高度5に上がれ!編隊を組み終わるまでは速度4-0-0にて!」

シャーリー「コン!シャーリー!発進許可を!」
俺「コン!俺!発進許可求む!」

管制「シャーリー!発進ヨシ!俺!発進ヨシ!」

 シャーリーについで滑走を俺が開始。一気に全開。速度が乗ってから針路を120に向ける。背後に
 追従する隊員の声が聞こえる。

俺「隊長。装填及び試射許可を求む。射線方向安全ヨシ」

ミーナ「俺さん、了解。皆さんも各自試射して!」

 ずっしりと重量感を身体に伝えるブローニングM2HMGのボルトを確りと2回往復させる。馬蹄トリガー
 を親指で押し込む。気持ちのよい反動と共に空薬莢と空リンクが右に放出された。よし!親指の位置
 をずらす。安全装置などないが、海兵隊には必要ない。ベルト装弾のガイドの当たりを目視確認。
 よし。問題なし。

ミーナ「全機。シャーリーさんの位置で編隊を組みます!いつものペアで分隊を組んで。俺中尉は
 私の二番へ!三番は坂本少佐!」

 すっと二人でミーナ隊長の後ろで位置する。久しぶりの戦闘だ。尻尾が疼く。そうか、ケーニヒ。
 お前も今日はやる気だな・・・。

 ミーナ隊長はインカムに神経を集中している。

ミーナ「俺さん。余裕がないので、あなたの固有魔法の『遠隔点火』に頼りたいの。いいかしら?」

俺「了解。どのような状況ですか?」

ミーナ「小型が先行してロンドンへ侵攻中。大型二機がその後方7キロにて追従。小型は60機」

俺「7キロですね?了解。それなら問題はありません。では、私は単機で大型を攻撃します」

坂本「ミーナ。私も一緒に行って、その固有魔法を確認したい」

ミーナ「了解!わたしも見たいのだけど・・後で報告をお願い」

俺「駄目です。あなたに被害が及ぶ」

ミーナ「身体に危険が?」

俺「そうです。お願いだから来ないで下さい」

バルクホルン「距離を置けば、といっていたじゃないか」

 しまった。いっそのこと一緒に吹き飛ぶとか言えばよかったか・・・。

俺「了解。絶対に私から2キロは離れてください。敵と私はもっと距離を置きます。約束を!」

坂本「ああ。解った!」

バルクホルン「敵と2キロ以上?」
エイラ「どんな攻撃だヨ」

 眼が気に食わん。何かやらかしそうだが・・・今は四の五の言っている時間はないか!

ミーナ「大型との会合方位は速度600にて・・ベアリング1-1-8!」

俺「では!」

ミーナ「追加情報をサーニャさんから送ります!」

 空飛ぶレーダーサイトがいるってのは心強い!最大スピード!少佐のユニットがどれだけ出せるか
 しらないが!コルセアが震える。ああ、一体感!ケーニヒの尻尾が揺らめいている。そうか、お前
 さんも一体感を感じるか!俺たちはいつも一緒だ!

サーニャ「俺さん。前方2万。まもなく接敵します!」

坂本「見えた!高度差マイナス1!大きいな・・・くそ。見えるか?俺!」

俺「かろうじて。上昇しましょう。プラス2で!」

 目線をきらず、インカムに怒鳴る。眼を離したら見逃しそうだ。上昇開始。

坂本「攻撃手順を説明してくれるか?」

俺「私が合図したら、少佐は敵と相対距離を保ってください。決して俺についてこないこと!俺は前進
 して敵を破壊します。攻撃開始のマークをします。そうしたら眼を保護してください!瞼を瞑って、
 腕で眼を保護!事後衝撃波が来ます。シールド全力展開で対抗してください。」

坂本「そんなに・・・凄いのか?」

俺「網膜がダメージ受ける。焼けたら失明だ。本隊の皆も、マークが掛かったらこっちは見るナ!」

ミーナ「ミーナ了解。こちらは攻撃を開始します!」

俺「少佐。この距離で待機をお願いします。いいですね?決して近づかない!」

坂本少佐「ああ。私が責任を負う。行け!あいつらを行かせるな!」

 なんだか引っかかるが。今は攻撃を!義務を果たせ!!

 緩降下しつつ接近。お、撃ってきた。気が早い奴だ。それとも、何か感じたか?まあ、楽しみにナ。
 全部撃たれる前から解るのもスリルがない。

俺「全機へ。予告マーク。注意! 用意」

 二つ並んだデブを睨む。今日の気分は右だな。よし。
 右のデブを照準。意識を凝らす。・・・・・いいぞ。

俺「マーク!!!」

 一気に全魔力を目標に送る。俺も目を瞑り左腕で顔を覆う。尻尾が逆立った。
 一瞬後、オーブンのドアを開いたような熱気が身体を襲う。成功!でもまだ駄目だ。

俺「衝撃波に注意!少佐!」

 無線はもう駄目だろうが。 体がひっぱたかれる。くそ!
 インカムには雑音しか入ってこない。いつもそうだ。原因は爆発に起因するらしいが、どうにもナ。

俺「ミーナ隊長。応答を。ミーナ隊長。敵大型二機撃墜。繰り返す。敵大型二機を撃墜した」
・・・・・・
俺「ミーナ隊長。ミーナ隊長。敵大型二機撃墜。繰り返す。敵大型二機を撃墜」

ミーナ「こちらでも見えるわ。凄いわね!」

 今まで敵のいた場所に、きのこ雲が立ち上っている。でかい図体だと爆発もでかいわ。
 ターンし、少佐を拾いに戻る。あ、あそこかよ?近くないか?  

俺「少佐!大丈夫か!おい!」

ミーナ「どうしたの?俺さん!坂本少佐!」

俺「指示位置より近づいて見ていたらしい。全く!接触し確認する!」

ミーナ「急ぎ確認を。連絡して!」

 インカムの送信を殺し、思い切り悪態をつく。馬鹿女!ドアホウ!ガキかお前は!

 ひとしきり罵り、気分を晴らした。さあ、紳士に戻るぞ。紳士にナ!

 ああ、やっぱり。インカムをオン。

俺「隊長。俺です。少佐はちょっと待てば大丈夫。怪我はない。繰り返す。怪我はない。そちらは
 支援が必要か?」

ミーナ「よかったわ。こちら支援は必要ありません。まもなく殲滅できます。適宜連絡を下さい」

俺「了解。では気をつけて!」

 インカムを受信のみとする。少佐のインカムも同様に。聞かれちゃ困るんだ。目視距離に本隊が
 いないのは僥倖。

俺「少佐!しっかりしなさい!」

坂本「あ・・・・アア・・・・う ん・・  ウッン」

 こりゃ駄目だ。背後に回ろう。前に往生したことがあるしな。

俺「しっかりしろ!」

 両手で肩を掴んで揺さぶる。触れた瞬間、彼女がビクンと震えた。やれやれ!まったく!

坂本「俺・・・・抱いてくれ。キス・・・体が・・・疼く・・・」

 振り向いた顔は、目が潤み肌が赤い。緩やかに開かれた唇が扇情的だ。濡れた舌が艶かしい。
 ああ、いい女だよ!
 でも、それに応じるわけにはいかないんだ。思い切り揺さぶるか!墜ちるなよ!

 俺の腕から身を解いて、抱きついてきやがった。こら!

坂本「キス・・・おれぇ~きすぅ~~」

 仰け反る俺の首を舐めまわされた。引き剥がす。
 両頬にビンタ入れたら効くのは解っているんだが・・・不味いよな。
 ボディ?腹部なら気づかれ難いぞ。いや、まずいよなあ。無抵抗の女を殴るってのは。

ミーナ「こちらも殲滅!お疲れ様でした!坂本少佐?俺さん?」

 タイミングが悪すぎ!あ、ハンカチ口に詰めとけ。よし。もがもがいってろ。

俺「お疲れ様でした。少佐のインカムは不調の様子です。じゃ、基地に帰ります。では!」

ミーナ「俺さん?了解。では帰投してください」

 疑われるわなあ。送信カット。あ、窒息されても困る。ハンカチ出すか。
 おい、ハンカチにまで舌を伸ばすな! あ。ってことは・・・。あああ、不味い。

坂本「だめぇ~・・ちゃんと見るぅ?触ってもいいよ・・・」

 慌ててシャツを脱ぐ。ジャケットより下が長いから、これを着させて・・・着ろ!少佐!
 俺の手を胸に押し付けるな!ボタン嵌められないだろ!柔らかいのは解ったから。はいはい、
 でかいでかい。邪魔!!

坂本「もっと優しくしろぉ  うぅ あっ でも感じうぅ」

 シャツの裾を結んでと。擦りつけるんじゃない!

 よし!全力飛行だ!
 俺に触るんじゃねえ! 噛むな! 胸を押し当てるな! おい!

サーニャ「俺さん?少佐の反応と重なっていますが。ユニットトラブルですか?」

 うあ!誰だ!レーダーサイトをここに廻した奴は! あ、少佐!煩い!聞こえちまうってば。
 手で塞いでおこう・・・俺の指を舐めるな!いや、舐めて黙ってろ!ほれ、二本!

俺「ちょっと衝撃波でユニットの調子がよくないみたいでナ。現在飛行に問題なし」

ミーナ「大丈夫なの?応援したほうがいいんじゃなくて?」

バルクホルン「緊急事態を宣言するか?」

俺「ネガティブ!繰り返す!ネガティーブ!!いい飛行日和だね!あはは」

 もっと加速しろ!コルセア!お前は出来る子だ!音速超えてくれ!少佐のこんな姿見せるわけにゃ
 いかねえぞ!

ハルトマン「怪しいね」

リーネ「慌てていました・・・よ?」

サーニャ「トップスピードで飛行中・・・?」

シャーリー「あたし達も急いで帰ろ。なんか変だ」

ミーナ「ええ、変よねえ。シャーリーさん、あなたが先行して!」

シャーリー「よっし!任せとけ!」

――

 ハンガーでユニットを脱ぎ捨て、声を掛けてくる整備兵を愛想笑いで遮る。見なくていいんだ。
 少佐を抱きあげて風呂場へ走る。着衣のまま中に突入。

坂本「風呂場で愛してくれるのか?それも刺激的だ。刺激・・・早く・・・優しく・・・もう・・・」

 うっさい!冷水だ!ほれ!いいから抱きつくな!シャキッとしろ!

 腕を背中で捻りあげて確保する。どうだ、これなら?

坂本「ア・・・痛いよ  でも感じぅ・・・ もっとぉ ウァァ」

 そういう趣味があるのか、少佐。 

 少し落ち着いたかな?
 ああ、皮ジャケットが・・・ずぶ濡れだ。俺まで濡れる必要ないんじゃないか?くそ。
 ま、少佐を濡らしちまえば面倒も・・・やれやれ。タバコも濡れちまった。お、奥のはいけるか。
 へたり込んでピクピクしているのは放っておく。ライターはオケ。
 ふう。危なかった・・・。後は少佐さえ正気に戻れば。

 もうこれくらいでよかろう。これ以上やると風邪を引いちまう。このまま風呂に放り込むか。
 どれ、よいしょ・・・

ミーナ「俺さん?何をしているの?説明してもらいます」

 振り向いた俺の目に、ミーナ中佐のキラキラした目が見えた。あ、全員いるね。やあ、ども。
 とりあえず、コレをお湯に漬けとこう。これでいいかな。

 やれやれ、厄日だ。

―――

 濡れた足跡を残して向かった先は執務室。

ミーナ「つまり?あなたの『遠隔点火』魔法で、周囲の女性が『欲情』するの?」

俺「はい。因果関係とか難しいことは聞かないでください。わからんのです」

シャーリー「遠隔点火で女性も間接点火か。凄ぇ。あははは! あ、ごめん」

 俺も含めて冷たい視線を彼女に送る。笑い事じゃないよ、シャーリー。

バルクホルン「それで、くどくどと警告したのか。なるほど」

俺「余り・・・露骨に説明も出来なくて。したほうがよかった。済まない」

 俺以外が顔を赤らめる。

ミーナ「で、冷水シャワーを浴びると戻るの?」

バルクホルン「頬を二三発殴ったほうが早くないか?」

俺「殴っても効きますが、シャワーのほうが何かと・・・」

シャーリー「殴るほうが手っ取り早いよ、現地で出来るじゃないか」

 俺は黙ってシャーリーを見る。

バルクホルン「何で黙る?」

シャーリー「触り放題だから?悪い奴だなー悪い海兵隊だなー」

 三人の眼を見つつ、短く答えた。

俺「推察しろ。男だから言い難い事も有る!」

 三人とも漸くわかったらしい。目配せして頷いてやがる。

ミーナ「あ・・・ご配慮有難う。彼女の名誉を護ってくれたのね」

 俺はくしゃみ。男は濡れると風邪を引く、か。くそ。

―――

 着替えを持参して熱いシャワー。くっそ!風邪引いたぞ。

 リーネが皮ジャケットを陰干ししてくれるって持っていってくれた。ケツ見られたな。
 あの様子だと、幹部連は今回の真相を黙っているつもりらしい。まあ、じきにばれるだろうが。

 こりゃ、体の芯から温まったほうがいいか。寒気がする。風呂で漬かろう。少佐は大丈夫かな。

 アフリカではもっと酷かったっけ。マミは88ぶっ放してくるし、将軍たちにも虐殺されるかと
 思った。困った能力だ。

?<まあ、腐るな。役にはたつだろう?>

俺<やあ。ケーニヒ。久しぶり。破壊力が敵にだけ向かうといいんだが>

ケーニヒ<それでは、魔法の作用反作用が成り立たない。すまんが後天的に魔力を得た者にはそれ
 は必須なんでな。その代わり、お前が心を許したメスとお前とは・・・いや、これは今は言えない
 んだった。そのときが来たら話そう>

俺<作用反作用ねえ。でも、今は戦時だ。女の子がノックダウンするのは不味いよ。戦場だぞ?友軍
 の戦力を削ぐというのはちょっとなあ>

ケーニヒ<今は気にするな。戦の場でこそ、お互いが素の姿を曝け出す。番うによい相手を見つ
 けるがよい>

俺<またその話かい?生き残れたら考えるよ。今は何時死ぬか解らんし>

ケーニヒ<遅いか早いかの差だ。命は有限だ。出会いもな。慎重過ぎるのは愚だ>

俺<相手を不幸にするのか?哀しませるのか?俺は断る>

ケーニヒ<全くお前は頑固だな。お前の寂しさは知っている。意地を張るのは人間だけだ>

俺<ケーニヒ?それが人間なんだよ>

ケーニヒ<ここの仲間と話した。皆良い性格のメス達だとさ。強情を張らず、素直になれ>

俺<俺にも好みはあるよ。まあ、考えてみる・・・・>

ケーニヒ<お前が居てくれるから、私は邪悪な存在と戦うことが出来る。その礼の気持ちなんだ>

俺<ありがとう、ケーニヒ。文句を言って済まない。俺もケーニヒに感謝している>

ケーニヒ<感謝する、母なる大地の精霊を代表して。邪魔をした。では>

俺<またな>

―――

 好奇心の視線が後ろから付き刺さる。振り向くと、エーリカだった。この子、勘がいいぞ。見た目
 に騙されるなよ、俺。

ハルトマン「俺、ちょっと談話室行こうよ。熱いコーヒーでも飲みなさい」

 警戒モード全開でいくぞ。少佐は部屋で休んでいると。だろうな。ペリーヌが付いている?ウンウン。

ハルトマン「ミーナから許可が出てるから、ブランディ垂らして貰ったよ」

 リーネ君がマグカップでもって来てくれた。有り難い。まだ少し寒気がするんだ。
 一口啜ろうとして、アルコールで咽た。

俺「垂らすって言うより、注ぎ込んだんじゃないのか?」

 ケラケラ笑うエーリカ。横ではにかんでいるリーネ。サーニャが微笑む。エイラは何か言いたげだ。
 まあ、飲みますよ。文句言いません。
 妹達見ているみたいだな。まて?コレは怪しいな。幾らなんでも濃過ぎる。ハーフハーフ?

リーネ「今日のあれ、凄かったですね」

ハルトマン「うんうん。あんな爆発初めて見た。衝撃波も凄かったね」

俺「花火みたいに綺麗じゃないからナ。余り使えないし」

ハルトマン「そお?少佐は喜んでいたよ?」

 よし。予想の範囲内だぜ?ふふん。

俺「大型二機を一撃で沈めたからな。被害なし、ロンドンも安泰と♪」

リーネ「本当に有難うございました」

ハルトマン「今度私も近くで見たいなー!その瞬間を!」

エイラ「わたしも!サーニャも見ようヨ」

俺「近くは駄目!酷い日焼けになるぞ。ほれ、俺だって顔が赤い」

サーニャ「ヒリヒリはちょっと・・・」

ハルトマン「少佐は別の赤みだったよ。全身がさ」

 引っかかるなよ。この程度の心理トリック!

俺「冷水ぶっ掛けられて、そのあとお湯で急速加温されたからだろ。血行促進だナ」

ハルトマン「そうかな?面白いこと、あるんじゃない?」

エイラ「ナー、俺。私とハルトマンの二人で少佐の体拭いたんだヨ」

俺「俺が拭きたかった。お前等、入ってくるのが早すぎなんだ」

 ペースを守れ。戦闘と同じだ。相手のペースに巻き込まれたら殺される。
 リーネとサーニャは赤くなってる。この二人は除外か?

ハルトマン「そのとき、少佐の体がね」

俺「ありゃ脱いだら凄いだろ。見たかったナ!」

リーネ「だ、駄目です!」
サーニャ「・・・」

 この二名を仮想敵から除外。無害評価。

エイラ「その、ま、いろいろとサ。ふふ」

ハルトマン「女同士は解るんだよ?ほら、楽になろうよ」

エイラ「タオルがあたるだけでピクピクってサ」

ハルトマン「拭いても拭いても」

 二人して耳元で囁くな!確定。撃滅しろ!

リーネ「??」
サーニャ「??」

俺「男は解らん。あ、今度一緒に風呂でさ、その辺教えてくれよ!お前等のボディでさ」

エイラ「バ!バカ!男女が一緒の風呂にはいっちゃ駄目ダ!」
リーネ「ええっ!」
サーニャ「・・・」

俺「サウナは混浴が基本だろう?あ、それともあのサウナいんちき?」

エイラ「バカいうナ!ちゃんと妖精トントも住んでいるゾ!正統派ダ!」

俺「じゃ、みんなで入らなくちゃ♪」

エイラ「グゥーーーーー」

 ふふふ。撃墜1。問題はエーリカだな。顔色変えやしねえ。

ハルトマン「私はいいよ?タオル巻けばいいじゃん!それならエイラも入るよね?リーネもサー
 ニャも!サウナで査問調査会開催だ!」

 ぐっ!  まだまだぁ!

俺「陪審員としてバルクホルン大尉かシャーリーも絶対同席だナ。少佐か中佐もいいナ。スタイル
 いいし♪」

 どうだ。無理だぜ?ふふん。

ハルトマン「うん。話しつける。真相を聞かなくちゃ。っておい、私達だってスタイル凄いぞ!」

エイラ「アー!やっぱり!少佐の体触ったナ!えろ!スケベ!サーニャに近づくなァ!ガルルルル」

サーニャ・リーネ「・・・・」

俺「はいはいはい」

 あー、鼻水出てきた。朝飯も食いそびれた。気付かれた。すきっ腹にアルコールが効く。

 厄日だ。

―――

 夕方、少佐が訪問してきた。読みかけていた本を置く。もう、勤務時間も終わりだ。
 グラスにバーボンを注ぎ、差し出した。階級抜きで良いだろう。

俺「さ、どうぞ」

坂本「ありがたくいただく」

 おいおい。女がワンショット一気飲みかよ。注ぎなおす。

俺「あれだけ忠告したのに。駄目だよ」

坂本「すまん。好奇心に勝てなかった。それと・・・気を遣ってくれて済まなかった。礼を言う」

俺「いいさ。気にしないでくれ。俺も黙ってる」

坂本「有難う。この次からは、私が見張る。存分にやってくれ」

俺「まあ、状況を見ながら、ね。あれはあまり使う場所がないんで」

坂本「乱用はしない、か。そうか」

俺「負担なんだ。命を削っているような気がするんだ、あれ」

坂本「そんな!やめろ!其処までしてはいかん!」

俺「やらなきゃならんときはやるよ。今日みたいな時もあるし」

坂本「・・・しかし・・・」

俺「少佐だって、空に上がったときに覚悟を決めただろう?同じだよ」

坂本「・・・・」

俺「出来ることをするべき時にしなかったら、後で後悔する。俺はそう思っているからさ」

ケーニヒ<そうそう。後悔するぞ。このメスもいい子じゃないか?ちょっと猛り気味だが>
俺<静かにしないと、チキン食わないぞ>
ケーニヒ<意地悪だなー。解った。静かにする>

坂本「長生きはしたくないのか?」

俺「永遠に生きたいのか?無理だ、そりゃ。俺は自分の命に意味をもたせたい」

坂本「・・・・」

俺「男が後付で魔力を得たんだ。なにか意味があるんだろ」

坂本「生まれついてで無いのか?」

俺「ああ。ヤマカンは良かったけどね。ケーニヒ・・使い魔となった親友が付いたときに、
 ま、身に付いたんだ」

坂本「そんなこともあるんだな」

俺「あ。さっきの負担の件、中佐には内緒だぞ」

坂本「ああ。私もお前に秘密を知られたしな」

俺「忘れた!好きな男の前でが初めてさ、ナ?」

 坂本少佐が、初めてはにかんだ。髪をひっつめ、アイパッチに扶桑の詰襟制服姿の少佐。
 初めて見た少女の素顔だな。豪快に笑うより、この方が可愛いのに。損な子だ。

――――

ミーナ「美緒?ちょっといいかしら?」

坂本「ああ。かまわんよ」

 夜、ミーナが坂本の部屋を訪れた。
 少し、坂本が気まずそうにする。

坂本「今日は、私の好奇心で皆に迷惑をかけてしまった。済まなかった」

ミーナ「いいのよ。しょうがないわ。私だって近寄って見てしまったでしょうしね。ええと、
 それで来たのよ。ねえ、美緒。ちょっと聞きたいんだけど」

坂本「いや、その・・・恥ずかしいんだが。余り聞かないでくれないか」

ミーナ「美緒。人間である以上当たり前だと思いましょう?恥ずかしがっては駄目よ」

坂本「そ、そうだろうか。私は『はしたない事』と教わってきてな」

ミーナ「やっぱり。まあ、お国によっても違いはあると思うけど。私たちの国では、自然なことと
 考えているのよ。まあ、大声で言うのは・・・別だけど」

坂本「・・・・・・」

ミーナ「その辺は扶桑もカールスラントも同じみたいね」

坂本「そうかな・・・」

ミーナ「いままでにも、少しは今日のようなことが有ったでしょう?」

坂本「・・・・・・うん・・」

ミーナ「美緒。恥ずかしがらないでいいの。私も有るわ。みんなも多分そう・・・」

坂本「そ・・・・そうなのか?私を慰める為に言っているんだろう?」

ミーナ「ううん。本当よ」

坂本「そうか・・・少し、少しほっとした。私が弛んでいるからかと思っていたんだ」

ミーナ「今まではどうしていたの?」

坂本「訓練を増して、煩悩を追い払おうと・・・気力が足りないから、あんな夢を見るんだと」

ミーナ「処理はそれだけ?」

坂本「・・・・ああ、そうだが・・・」

ミーナ「やっぱり。あなたらしいわね。美緒、無理強いしないから、参考にこれを読んでみて?」

 持っていた封筒を坂本の前に置く。厚みはさほど無い。

ミーナ「カールスラントのウィッチの間で、先輩から後輩に代々受け継がれてきた物よ。ウィッチ
 としての義務を果たしながら、上がりを迎えるまで人間らしさを抑圧しないで済むように、と誰
 かが考えて作ってくれたの。これを読むと、今の美緒の気持ちが楽になるんじゃないかなって思
 って探し出したの。トゥルーデも、フラウもきっと読んでいるわ」

坂本「済まん・・・」

ミーナ「それを読めば、皆同じだってわかるわよ。あなただけじゃないの。私もそうなの。皆そう
 なのよ。それだけ伝えたくて」

坂本「有難う」

 封筒に手を伸ばしたが、中を確認しようとはしない。

ミーナ「それじゃ、おやすみなさい」

坂本「有難う、ミーナ。おやすみ」


 暫く躊躇っていた坂本が封筒に手を入れ、中のものを取り出した。
 上質とはいえない紙。いかにも手作り感あるガリ版刷りのパンフレット。悪戯書きも多数ある。
 何人もの手を経てきたのだろう。

 意を決した坂本が頁を開く。カールスラント語で書かれた文章。所々に挿絵もある。

 全部読み終え、溜息をつく。天井を見上げ、かすかに微笑んだ。

坂本「そうか。私が女として成熟したから、か」

 棚から酒をだし、飲み始める。

坂本「軍人である前に、一人の女であることを理解し受け入れよ、ねえ。そういうものかね。
 バルクホルンは読んだのかな?ふーむ」

坂本「軍人も、軍の人と書くものな。人間であることを忘れることは出来ないのか・・・ね」

坂本「恋も結婚も・・・自分には関係の無いことと思っていたが。身体はそうではなかったのか」

 酒を注ぐピッチが上がる。

坂本「それすら否定するなら、上がりを迎えることを受容できるわけもなし、か!」

坂本「有難う、ミーナ。今気付かせてくれて・・・」

 ほろほろと泣く坂本。

 暫し過ぎ、泣き止んだ坂本がまたパンフレットに手を伸ばす。

坂本「よし。大人の女性の嗜み・・・違うか?準備か!うむ、訓練だな!やってみるか!初陣で
 遅れをとるわけにはいかぬ!」

 数度該当箇所を読みかえし、着替えて消灯。そそくさと布団にもぐりこんだ。

 暫くすると荒い息が部屋に満ちる。

坂本「あ・・・・俺!」
・・・
・・・・
坂本「女として正常らしい。よかった。凄いもんだな。・・・・でも、なんで中尉のことを考えたん
 だろう・・・手近だったから?いやそりゃ悪い・・・よな」

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最終更新:2013年02月02日 12:17