「蒼穹の絆4-8」
―スタート―
俺が自室に戻った。壁を遣って伝い歩きも出来る。勤務に戻った
シャーリーも、ルッキーニも暇が
あれば俺を支援している。
昼食後の休憩時、葉の落ちた中庭の散歩道を三人がゆっくり歩いているのをバルクホルン大尉達が
遠めに見ている。
バルクホルン「微笑ましいな」
ハルトマン「中睦まじいね。でも、トゥルーデはもっと手厳しいと思ったけどなー」
バルクホルン「どういうことだ?」
ハルトマン「カップルに厳しく当たるかと思ってた」
バルクホルン「規律を乱しているわけでもない。今も、ああして早く前線に復帰しようとしてリハビリ
に頑張る二人だ。何を言う必要がある?」
坂本「そうだな。まったくいい組合せだよ、あの二人と一人は」
ミーナ「私の思ったとおりね。いいお手本を見せてもらってるわ」
ハルトマン「お手本って?」
ミーナ「男女の付き合いの基本、じゃないかしらね?」
バルクホルン「情熱に走りがちだからな・・・」
ミーナ「ええ。ウィッチとして軍に居る限りは、それはご法度。でもあの二人は、もっと強く精神的に
結びついているから」
ハルトマン「なるほど」
坂本「私も、ミーナと彼らのお陰で成長できたよ」
ハルトマン「ミーナのお陰?」
ペリーヌ「ミーナ中佐の?」
坂本「ああ。あるテキストを貸してもらってな・・・。いままで眼を背けていたことを直視できるように
なったんだ」
ミーナ「あ、あの本ね?お役に立てたならよかったわ」
ペリーヌ「どうかなさいまして?ミーナ中佐?」
ハルトマン「ああ!丸秘マニュアル!」
ミーナ「フラウ!声が大きいわよ!」
坂本「あ、そうだ。ミーナ、バルクホルン、ハルトマン、ちょっとこっちへ」
坂本「あのテキスト・・・マニュアルか。あれを若い者に読ませるべきだと思うんだが」
ミーナ「そうね・・・そうしたほうがいいのかしら」
坂本「私のように歪に成長するほうが危険じゃないかな」
バルクホルン「余り期待させすぎても、無視しても良くないだろう」
ハルトマン「いいんじゃない?オナニーぐらい」
三人が顔を少し赤らめる。
ミーナ「じゃあ、そうしましょう。年齢を考えて」
坂本「そうだな。私が貸してもらったのをペリーヌに渡すか」
バルクホルン「私は・・・シャーリーはもう要らないだろう。エイラに渡すよ」
ハルトマン「じゃあ、リーネ」
ミーナ「ある程度、説明もしてあげてくださいね?頼みます」
バルクホルン「ミーナ。私はやっぱり自信がない。ミーナからエイラに。頼めるか?」
ミーナ「ええ。いいわよ」
坂本「ペリーヌ。今日、風呂の後でいい。私の部屋に来てくれるか?」
ペリーヌ「はい!坂本少佐!」
リーネ「いいなぁ、恋人って・・・」
エイラ「うん。仲がいいのに自然だナ。ね、サーニャ」
サーニャ「・・・素敵・・・」
ハルトマン「エイラ、ミーナが話があるって。あそこで待ってるよ」
エイラ「ウン、ワカッタ。サーニャ、行こう!」
ハルトマン「ねえ、リーネ。今晩パジャマパーティーしない?」
リーネ「わあ!はい!お菓子と紅茶用意しておきます!」
ハルトマン「お茶菓子!ヤター!あ、二人っきりでね」
リーネ「はい!」
三人が眼でアイコンタクト。ミーナがバルクホルンにアイコンタクト。
――――
ハルトマン「ねえ、シャーリー」
シャーリー「ん?なんだい?ハルトマン」
ハルトマン「シャーリーは、俺のどこに惹かれたの?」
エイラ「あ!わたしもそれに興味があるナ!」
坂本「ふむ。良ければ聞かせてもらえないか?私も興味がある」
シャーリー「うーん・・・。余り考えたことがないんだけど。あいつ、初対面のときからあたしの眼だけ
しっかり見ていたんだよ。今まで会った男は、皆私の胸ばかり見ていたのにさ。眼を見ながら笑って
くれてね、そして私が胸でジョークいっても、サラッと流して・・・。それが凄く印象に残ってるんだ」
リーネ「あ!解ります!」
エイラ「厭らしい眼で見る男って結構居るよナ」
バルクホルン「そうか?余り気にしたことがないが」
ハルトマン「鈍感!トゥルーデだって口さえ開かなければ美少女なのに」
バルクホルン「どういう意味だ?それは。ハルトマン?」
ハルトマン「なんなのかしらね、お姉ちゃん?」
バルクホルン「クラッ」
坂本「なるほど。性的対象としてシャーリーを見ていなかったわけか」
リーネ「人柄・・・も見ていたのかしら」
サーニャ「うん。きっとそう・・・」
エイラ「サーニャ。私たちもそうだよね」
サーニャ「うん」
シャーリー「あとね。凄く嬉しかった事がね。あたしが将来、きっと温かい家庭を持てるって。
そう言ってくれたんだ。寝たふりして聞いていたけど・・・・泣きたくなるくらい嬉しかったんだ」
ハルトマン「あ!海辺の焚き火パーティーのとき?」
ルッキーニ「ウヂュ~。あたし寝ちゃってたんだよね」
坂本「ああ。朝方、三人で仲良く寝ていたな。親子のように見えたよ」
ルッキーニ「親子以上だよ!あたし達!」
リーネ「本当にいい組合せ・・・」
ペリーヌ「ええ・・・」
サーニャ・エイラ「ニコニコ」
バルクホルン「良かったな。リベリアン」
――――――――
三人は海岸沿いの径を歩いている。年末が近いのに、今日は風もなくて暖かい。
俺「シャーリーとこうして歩けるなんてナ。夢見ているみたいだ」
シャーリー「あはは。夢じゃないよ。お互いボケてもいないだろ!」
シャーリーと俺は腰に手を廻しあっている。まだ、俺の歩き方はぎこちない。背中を庇っている。
俺「夢でもいいよ。ずっと二人で見る夢だもの」
シャーリー「だね。あ、ルッキーニを忘れたな?」
ルッキーニ「トラにぃ!それ駄目!あたしも一緒なの!」
俺「すまん。悪気はなかったんだが」
シャーリー「ルッキーニが背が低いから見落としたのかな?」
俺「あれ?ルッキーニは何処?」
ルッキーニ「ああ!シャーリーまで!ひっどーい!」
ぴょんぴょん跳ねるルッキーニ。三人とも大笑いする。
ルッキーニ「あ!あそこ!花が咲いてる!ちょっと見てくるね!」
二人が足を止める。海が良く見える場所。海風が微かに吹いている。
俺「なあ、シャーリー」
シャーリー「ん?」
俺「お前、スピードにチャレンジするんだろう?これからも」
シャーリー「いいかな?やりたいんだよ」
俺「一つだけ約束して欲しい。ちゃんと帰ってきてくれ。それだけ・・・頼む」
シャーリー「・・・いいの?」
俺「夢は実現させるべきだ」
シャーリー「約束する。絶対お前から離れない。いつも一緒にいるよ」
二人が正面から抱きあう。シャーリーが爪先立ちをした。もう一度。
シャーリー「うん。
ガリアのときは必死に耐えたんだ。お前が・・・私のことをどう思っているか解ら
なかったから」
俺「済まなかった」
シャーリー「ううん。謝るのはあたし。堪え切れなくて、俺の肩に噛み付いちゃったし」
俺「そう。いいんだ」
シャーリー「これからは、噛み付かないと思うよ?」
また爪先立ち。
ルッキーニ「ウキァォーー!キスしてるぅ!いいなーっ!シャーリィ!トラにぃ!」
遠くからも嬌声が聞こえる。
―――――――
1948年6月
旧501JFW基地跡の城に1台の車が止まった。
中から、3人の軍服姿の男女と一人の少女が降り立つ。
城から出てきた男に、軍服姿の三人が挨拶をした。男はすぐに中に戻る。
四人はのんびりと歩き出した。一人だけの男はリベリオン海兵隊のサービスユニフォーム。
磨き抜かれた黒革靴。年長の女性はリベリオン空軍の青いユニフォーム。年少の女性は
ロマーニャ空軍のユニフォーム。女性二人はローヒールの革靴。少女は10歳くらいだろうか。
白いワンピース姿。四人ともにこやかに笑いつつ、あちこちを指差して話しをしている。
少女も三人の会話にくわわって、明るい笑い声をあげる。
俺「あそこでよくルッキーニが眠っていたんだよね。枝に毛布掛けてさ」
少女「ルッキーニさん、本当に木の枝で寝ていたんですか?」
シャーリー「ああ。冬以外は外ばかり!この基地に数十箇所は秘密基地作っていたんだ。
毎朝二人で探して回ってさ。な?ルッキーニ」
ルッキーニ「へっへーん。この基地はあたしの秘密基地そのものなの!イーデスもやってみる?
気持ちいいよ~!」
シャーリー「やめとこうね、イーデス。ルッキーニは規格外だから」
ルッキーニ「シャーリー!褒めすぎ!」
イーデス「えーと、止めておきます!私、お兄さんとは違うもん!」
ルッキーニ「トラにぃの妹なのに~」
四人が笑い転げる。
ルッキーニ「あ、トラにぃ!シャーリー!ここだよ!覚えている?」
俺「ああ、ここだった」
シャーリー「忘れるわけがないよ。変わらないね・・・」
イーデス「ここは?」
ルッキーニ「二人がね、ちゃんとしたキスを始めて交わした場所なの!」
イーデス「わぁ!ロマンティック!」
笑いながら見詰め合う二人。二人で頷く。
俺「ルッキーニ、イーデス。ここで結婚式を挙げるよ。ここしかない」
俺をシャーリーが見上げる。微笑む二人に歓声があがった。
――――終――――
ケーニヒ<このメスでよいのか?決めたのだな?>
俺<ああ。この人しか居ない>
ケーニヒ<解った。今後、点火魔法を使っても今までの反作用は起こらない。許しを得た>
俺<発情なし?本当に?>
ケーニヒ<ああ。お前が望むとき、お前が愛するこのメスだけとなった。破壊は伴わない>
俺<有難う。それで構わないよ>
ケーニヒ<良い番となれ>
俺<ありがとう、ケーニヒ。あ、許しとは誰から?>
ケーニヒ<大自然の精霊をつかさどる者から。あのままでは、お前が選んだメスが心配する。
最初から、この日が来たらと決めていたのだよ>
俺<いろいろ有難う>
ケーニヒ<お礼はスルメでいいよ。では>
合衆国海兵隊ロバート・ハンソン中尉と妹さんのイーデスさんへ。
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最終更新:2013年02月02日 12:19