「蒼穹 EX-2」
―新任務―
久しぶりに古巣を歩く。ブリタニア情報部特別作戦部。通称SOE 。
目的の部屋に入る前に、トイレで小用。どうせ話は長いんだ。鏡で服装を確認。海軍のこの制服を
久しぶりに着た。ネクタイも曲がっていないな。どれ、行くか。
秘書「お久しぶりです。俺中佐。時間ぴったりですね」
俺「君に逢いたかったよ。ジェニー。今日は一段と綺麗だ」
秘書「あら?ブロンドの可愛い彼女さんが出来たって聞きましたわよ?」
俺「おや。耳が早いね。でももう終わっ―――」
?「来たな!この海軍の面汚しが!5分前に来いと何度言ったらわかる!俺!さっさと入れ!」
閉まったドアから悪態が聞こえた。思わず溜息。いつもと同じく性急だ。
秘書「軍帽、お預かりしますわ。さ、中佐。お入りください」
静かな微笑を浮かべる彼女に眼で礼を言って、軍帽を預ける。どれ、仕事の時間だ。
俺「おはようございます。提督」
提督「元気そうだな!怪我は治った様で何よりだ。さて、新しい仕事だ。二つある」
俺「二つですか?」
提督「ああ。まず難しいほうから。第501統合戦闘航空団というのを知っているな?」
俺「連合軍の選りすぐりのパイロットを集めて、
ガリア反攻の要となっている部隊、でしたっけ?」
提督「そうだ!俺にこの部隊に入ってもらう!」
俺「目的は?」
提督「不安分子のあぶり出しだ!連合国間の協調を乱すものが居るらしい。それを確認し排除しろ!」
俺「国家間の国益は現場には無関係では?」
提督「ああ。かもしれん」
俺「政治家同士で仲良く腹を割って話した方が妥当でしょう」
提督「政治屋は政治屋同士で話してもらうさ。問題は軍人だ」
俺「軍が暴走している可能性があるわけですか」
提督「その可能性が高い。軍の名前で政治が介入できないこともある。わかるな?」
俺「ええ。他国の情報部は?協調行動ですか?」
提督「世迷言を言うようになったか。お前もそろそろ限界か?」
にやりと笑いあう。
俺「私もですね、血なまぐさいことよりシッポリ美女とメイクラブしてい――」
手で制止された。なんだ?いつもはこの手の話を好む提督が。
提督「今回の作戦は、わが国だけで行う。理由はすぐに解る。 どうぞお入りください」
横のドアがカチャリと音を立てた。
初めて開くのを見た。
入ってきた軍服姿の二人を見た瞬間、椅子から飛び上がり敬礼する。一体どうなっているんだ!
?「俺中佐だね。よろしく」
答礼を返された。一呼吸して俺も腕を下ろしたが・・・軍帽を被っていないことに今頃気付く。醜態だ。
?「エリザベスです。はじめまして、中佐」
心臓が痛い。頭が冷える。今度は軽く頭を下げることが出来た。
提督「国王陛下。エリザベス王女。彼が今回のキーマンとなる俺中佐です」
いつもはパイプの灰で白くなったカーディガンなのに、今日は綺麗だなと思ったのはこれか!
俺「ブリタニア海軍中佐、俺です。国王陛下、王女にお会いできて光栄であります!」
国王「英雄にあえて嬉しいよ。楽にしてくれたまえ。私も・・・堅苦しい挨拶は苦手なんだ」
あまりお話しするのが得意でないと聞いたことがあったな。いいのか?国王だぞ・・・。
陸軍の制服を着た王女がにっこり笑ってくれた。では従おう。
俺「有難うございます。仰せに従います」
提督「陛下。王女。こちらにおかけください」
二人が腰を下ろしてから、私達も椅子に腰掛ける。
国王「今回の依頼は、国益よりも諸国間の調和の為、と思ってください。発案者はエリザベスとマーガ
レットの二人です」
物静かに語る国王。マーガレット?ああ、エリザベス王女の妹君。
国王「私も海軍の人間ですが、軍はコントロールの難しいものです。まだ確認できた情報でないのですが、
不穏な動きがある様子。ここまでは私が得た情報。娘たちが気にしているのは、それが原因でウィッチ
隊に不利益が起きる事。ここだけの話ですが、エリザベスもウィッチです。なので、ウィッチ隊には
深い関心と同情を寄せている次第です」
王女に目礼をする。同じく返された。
国王「状況を調査し、それを報告してください。必要があれば行動を。中佐にはその資格が与えられて
いると聞きます。・・・・過酷な手段も選択肢に含みます」
さすが、総司令官だ。調べてあるのか。頷いて答えるに留めよう。王女もいらっしゃる・・・。
国王「私からはこれで御終い。エリザベス?何かあるかね?」
王女「軍に不名誉な事態が発覚しても、ここは断固として処置すべきと考えます。中佐、よろしくお願い
します」
近衛連隊の連隊長を名目だけでなく実務されているとか聞いた。さすが将来の女王。
俺「はい。かしこまりました。陛下、王女」
国王「ありがとう。よろしく頼みます」
王女「気をつけてください」
二人が私に握手を求めてきた。顔が紅潮するのを覚えつつ膝を屈して手を握る。力強い握手・・・。
二人が去った後、提督と私は気が抜けたように座り込む。急に疲れがでた。
提督「こんなに親しく話をさせていただいたことが無かった・・・。緊張したよ」
俺「提督。お願いですから、前もって仰って下さい。私の心臓が持ちません。タバコ失礼しますよ」
提督「陛下から許可をいただけなかったんだ。すまんな。私にも一本くれるか。紙巻で構わん」
二人で放心状態のまま、タバコを吸う。
提督「では、仕事の話に戻るぞ」
二人でタバコをもみ消す。
提督「というわけだ。解ったな。しっかりやれ!で、次の仕事だが」
俺「あ、待ってください。私はどのように501に潜り込むんですか?男ですよ」
提督「それが何か問題かね?」
このジジイ。楽しんでやがる。
俺「ウィッチ隊は全員女性でしょう?整備?防衛隊?雑用もありますな」
提督「ヤキが回ったな。正面から行け!正規に辞令を出す。誰にもばれんよ。空戦技術は退役した
ウィッチに教えてもらえ。二ヶ月だ!それと。絶対に、もう一度言うぞ。絶対に!隊員に手を
出すな!今度の相手は上がりを迎えているわけじゃない。わかったな?」
俺「はあ。まあ、しょうがないですね」
提督「もし手を出してみろ。私が自ら引き金を引く。これは国王陛下と約束したことだ。いいな?」
俺「国王陛下の命に従います」
提督「教官役のウィッチにも手を出すな。彼女の夫は私の知り合いだ。いいな?」
俺「了解しました」
提督「信用するぞ。さて次だ。嫌な仕事だ。裏切り者がいるらしい。最終確認し処理しろ」
―――――――――
ある将校のアパート自室に潜り込む。早速調べると、短波の送受信機を発見。一見、アマチュア無線
愛好家が持つような自作品に見えるが・・・真空管がダミーだ。基盤自体が異文化。引き出しにも音声変
換の乱数表がある。有罪確定。
二つあるクローゼットのうち、一つが寝具用なので其処に入ることにする。ナイフで内側から孔を
揉み空けて見えるようにする。トイレを拝借してから拳銃を抜いたままで中に入り、扉を閉めた。
数時間経過。玄関ドアが開く音がする。続けて明かりがついた。入ってきたのは30歳前半の中尉。
本部詰めだ。
シャワーから戻った中尉が、酒を注いだグラスを片手に書類を捲りつつメモを取り出した。引き出し
から何かを取り出して、唸りながら何かはじめた。定規で確かめている。さっきの乱数表の列か?
素人が。時間が掛かりすぎる。
さて。どうする。送信を終えてから襲うか。その前にするか。
定時連絡ということは無いだろう。ならば、今すぐ襲っても問題ないな。
そっと拳銃を持った手でクローゼット扉を押し開けていく。音を立てずに毛布の上から下りる。
後頭部に照準したまま、口をあけて呼吸しながら接近。
中尉が硬直した。やっと気配に気付いたか。
拳銃のハンマーに親指を挟み、グリップ底部で思い切り頭を殴る。昏倒して机に突っ伏す。零れた
酒で証拠が汚れぬよう、書類をすばやく床に落す。
―――
中尉を椅子に縛りつけ、猿轡を嵌めた。作りかけの書類を封筒にしまう。通信機も同様。
本部から持ち出した書類を確認。ほお、501隊の資料だな。縁がある。
魔力を展開。私の腰に尾羽がでた。頭にも羽。
ズボンをナイフで裂いて下半身をむき出しにする。酒棚からスピリッツを取り出し、股間に垂らす。
タバコに火をつけ、ライターの火をそのまま股間に移した。青い炎が上がる。
中尉「 ・・・!」
俺「眼が覚めたか。騒いだら殺す。騒がなければ裁判だ。解るな?」
中尉が眼を血走らせて激しく頷く。水差しの水を股間にかけて火を消した。
俺「これから猿轡を緩める。騒いだら殺す。解ったな?それと。嘘をついたり喋らなくても痛い目に
あうぞ。いいな?警告したぞ?」
ゆっくりと猿轡を緩め、舌を噛み切ることは出来ず、声が出る程度に締め直す。
俺「よし。まず、お前は誰と取引をしていた?」
中尉「お、オラーシャとだ」
俺「そうか。では」
スティレット(錐刀)を抜き、椅子の肘掛に縛ってある男の手先に近づける。唸りだしたが遅い。
スッと爪に刃を押し込んで揺する。くぐもった絶叫が猿轡から零れた。刃を跳ね上げて爪をはぐ。
俺「喋りたくなるまで頑張れ。20枚爪はある。それが終わったら次に移ろう」
4枚目でギブアップ。
中尉「す、すまない。本当は、相手は・・ネウロイ、だとおもう」
真正情報だな。は、なるほど。
501隊の隊員情報など、入手するのは何処の国でも難しいものではない。まあ、ここにあるのは各隊員
の初潮年齢と月経周期まで書かれたものだが。
俺「どうやってコンタクトを取って来たんだ?ネウロイは」
中尉「人型だったんだ。夜、ここに来た。言うことを聞かないと、両親と恋人を殺すと・・・」
俺「それをそのまま、信じた?」
中尉「両親と彼女の映像を見せられたんだ!空間に映画みたいに・・。どうすることも出来なかった!」
俺「訪問はその後あったか?」
中尉「二度だ。最初と、通信機を持ってきたときだけだ。ただ、声が聞こえ・・頭に入ってきたことは
何度もある。催促と脅迫だった!」
俺「通信手段はあれだな?連絡時間などは決まっているのか?周波数は?頻度は?」
中尉「特定の時間は無い。いつも待機しているらしい。周波数は変更できない。頻度は二週間に一度
程度」
俺「向うから情報のリクエストがあるのか。さっきの方法で」
中尉「そうだ」
俺「今までに送った情報を言え。すべて、だ」
・・・・・・
俺「また、爪がいいか?それとも、二度と女を抱けないようになりたいか?」
中尉「もう、俺を殺してく―――」
俺「生ぬるいのは嫌いでな。じゃあ、ペニスを一寸刻みで切り落とす。止血しといてやろう。」
中尉の革靴から靴紐を抜き取り、縮み上がった物の根元をしっかり縛る。暴れるので、股間の座面
を足で踏んで固定。
悲鳴を上げる中尉の股間にスティレットを降ろしていく。何処まで耐える気だ?
二時間後、私は車に荷物を乗せて帰路に付いた。残っているのは頭に9ミリの孔が空いた中尉だけ。
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最終更新:2013年02月02日 12:20