「蒼穹 EX-6」

―捜査―


シャーリー「緊張しないのか?」

俺「図太いんでね。戦闘のたびに緊張していたら身がもたないよ?」

ハルトマン「さすがというか鈍いのかも」

俺「心臓に毛が密生しているんでね。緊張して給与が上がるなら頑張るけどさ」

バルクホルン「作戦中に私語は慎め」

俺「アイ。大尉」

 私と二人でいるときも、私を中尉として扱うように念を入れておいてよかった。かなり手こずったが。

ミーナ「俺中尉はペリーヌ中尉と組んでください。一番を俺中尉」

 うーん。緊張すると怪しくなるな・・・。真面目だからだろう。この子は余り強制しても駄目だ。

俺「了解。ペリーヌ、よろしく」

ペリーヌ「はい。頑張ってついていきます」

坂本「目標確認!12時。小型多数!大型無し!」

ミーナ「小型は40機。全機全速!突撃!」

・・・・・・
・・・・・・・・・・

バルクホルン「俺、見事だった。撃墜9だ」

俺「よく見てますね。ペリーヌ中尉のサポートが良かったからですよ。ありがと、ペリーヌ」

ペリーヌ「いえ・・・私は俺中尉についていっただけですわ」

俺「謙遜の美徳!さすがガリアのエースだね。というわけで共同撃墜で9機」

バルクホルン「そのやり方だと、ペリーヌの分と合算して2で割って7だな」

俺「ペリーヌ中尉は6じゃなかったっけ?」

坂本「大した落ち着きだ!三度目の戦闘でこれか。肝が練れているな!」

ペリーヌ「いえ。5でしたわ」

俺「へ?フォアグラならありますけど。酒飲むから。あれ、5だった?ゴメン」

坂本「はっはっは!飲みすぎには注意だぞ!お前のは食えん!」

ペリーヌ「いえ、良いんですのよ。わたくしもとても楽に飛べました」

ハルトマン「ねえ、ミーナ。帰ったら宴会やろうよ、宴会!」

 ミーナとバルクホルンが私の顔を見る。これだから素人さんは。君たちの心は読まないよ。そっけ
 なく眼を逸らす。

ミーナ「ええ。そうね。やりましょうか」

バルクホルン「親睦会も兼ねて、な」

坂本「よし!思い切り飲もう!宮藤!リーネ!頼むぞ」

宮藤・リーネ「はい!」

 折角だ。酔ったふりをして接触走査するか。親しくならん程度に。二人が俺を見たのもそれを提案
 してくれたんだろう。

――――――――――

俺「隊長。俺中尉です。入って宜しいですか?」

ミーナ「はい。どうぞ。俺さん」

 坂本少佐がいる。ミーナ隊長に目配せ。

ミーナ「美緒、それでお願いね」

坂本「ああ。じゃあ!」

 退室して少し待つ。魔力で確認。誰もいない。顔を戻す。

ミーナ「どうしました?俺中佐」

俺「俺中尉、ですよ。隊員の調査を終了したので報告に来たんです」

ミーナ「ごめんなさい、つい。・・・どうでしたか?誰か・・・」

俺「いや。全く問題は無い。全員潔白。よかったね」

 中佐が深くため息を漏らした。血色も戻った。

俺「というわけで、隊員以外となるわけです。ここ最近、ストライカーパイロット以外でこの基地から
 居なくなった者はいますか?」

ミーナ「え?ええ。整備部で一名、管制で二名。病気や怪我で」

俺「ほう。3人」

ミーナ「3人ともブリタニア空軍関係者でした。欠員はカールスラントの要員で補填しました」

俺「ネズミの駆除は終わったようだ。あなたもなかなか感がいいね」

 意識せず笑う。中佐も笑っていた。

ミーナ「ちょっとお聞きしたいんだけど、いいですか?」

俺「なんでしょう?」

ミーナ「ちょっと前にお聞きした犬のお話は・・・本当ですか?」

俺「ああ、あれですね。楽しい思い出です」

ミーナ「そうですか。ほっとしました」

 なに?ま、仕事には関係ないな。
 ああ、この機会に謝罪しておこう。短い付き合いなのだから出来る時にしておかないと。

俺「ミーナ中佐。今更で申し訳ないんだが、この前の夜の一件は深く謝罪する。年頃のレディには過酷
 なことをしてしまった。済まなかった」

ミーナ「いえ。お仕事ですもの。仕方がありません。お互いが警戒しあっていましたし」

俺「そう言って貰えると救われる。済まなかった」

ミーナ「もう気にしていません。トゥルーデにも私から伝えておきます」

俺「私から謝罪するのが筋だが。彼女もなかなか一人にならんし。自室に押しかけるのも非礼だ。お願い
 します」

ミーナ「ええ。しっかり伝えます。そんなにお気になさらず」

俺「では、失礼しました」

 謝罪出来てよかった。罪の意識が軽くなった・・・。

ミーナ「あれがブリタニアの紳士、なんでしょうね・・・。犬のときと同じ目をしていたわ」

―――――――――――

宮藤「あ、シャーリーさん。俺さん知りませんか?」

シャーリー「俺?さあ、知らないよ?」

宮藤「そうですか。夜食作ったんで、暖かいうちにと思ったんですけど」

ルッキーニ「夜食!あたしたちの分は?ねえねえ、ヨシカー」

宮藤「ちゃんとありますよ。食堂に来てくださいね! 俺さんどうしようかなあ・・・」

シャーリー「ミーナ中佐の部屋かなあ?あいつ、最近良く顔出しているみたいだよ」

宮藤「え?ミーナさんと仲がいいんですか?」

シャーリー「バルクホルンも一緒だよ。仕事でしょ。出てきても顔が真面目だし」

ルッキーニ「恋人だったらぁ、ニヤニヤニコニコしているよね?イヒヒー」

シャーリー「なかなか笑わないよな。ブリタニア人って皆あんなかな?」

宮藤「リーネちゃんは笑いますよ?でも、俺さんどうしよう。困ったなー」

シャーリー「隊長に聞いてみれば?其処に二人いたら手間が省けるよ?」

宮藤「あ、そうですね。行ってきまーす!」

ルッキーニ「芳佳、俺が怖くないのかなあ?」

シャーリー「宮藤は誰とでも仲が良くなるからな~。私も俺はちょっと苦手だよ」

ルッキーニ「だよねだよね。なんか、話しかけ難いよ。拒否されてるみたいで」

シャーリー「そうそう。なんでだろ、心を閉ざしてるよな、あいつ」

―――――――――

ペリーヌ「俺中尉?お花好きなんですか?」

俺「あ、やあ。うん。好きと言うほどでもないけど、綺麗だよな」

ペリーヌ「園芸とかなさるのですか?」

俺「いやいや、とんでもない。見るだけしか脳は無いよ」

ペリーヌ「宜しければ、基本をお教えしますけど・・?」

俺「うーん?軍を辞めてから、かな。一所に落ち着けないし」

ペリーヌ「その時は是非!楽しいですわよ?」

俺「うん。・・・それまで生きながらえたら・・・。ありがとう。じゃあ」

 夕方の水遣りをしながら、ペリーヌは考える。確かに戦死の可能性はあるけれど。普通は、自分
 だけは大丈夫と思い込むものなのに。

ペリーヌ「ブリタニア人特有の『悲観論』なのでしょうか?あまりいい考え方ではありませんね・・・」

―――――――――

ハルトマン「ねえ、トゥルーデ。最近良く、俺と話しているじゃない」

バルクホルン「そうか?仕事での話だが」

ハルトマン「仕事以外に話さないの?趣味とか。あ、トゥルーデに趣味はなかったね」

バルクホルン「そんなことは無いぞ!いつもクリスのことを考えて――」

ハルトマン「それは趣味とは言わないの」

バルクホルン「違うのか?そうか・・・」

エイラ「私もサーニャは、俺と話しは殆どしてないナ」

ハルトマン「でしょ?普通はもっと話すよね」

バルクホルン「人と・・・話すのが嫌いなんだろう」

リーネ「私も・・・あまり話したことが無いですね」

宮藤「え?そうなの?リーネちゃん。私は結構話していると思うけど」

リーネ「わたくしとは園芸のことでお話してくださいましたけど」

坂本「戦闘技術とか心構えは、結構話をしたぞ?話も合ったな」

ハルトマン「恋人沢山いるんでしょ?話さないで付き合いが始まるの?」

坂本「ぺちゃくちゃ話が出来ないと駄目かな。なら、私も駄目だ。仕事以外の話をしたことがない。
 相手も軍人ばかりだ」

ハルトマン「話題がちょっと偏ってるね」

エイラ「少佐も大尉も仕事の話カ。あ!もしかして、俺ってホモかナ?」

「「「「「「ええええ!」」」」」」「ほ・・も サピエンス?」

エイラ「恋人ってだけで、彼女とか女性対象の言葉で聞いていないゾ」

リーネ「・・・男同士で、ですか・・・」

バルクホルン「それはないだろう」

坂本「ふむ・・・男色というやつか」

ハルトマン「ホモとかゲイって、身体を鍛えるか鍛えないで女の子のような身体にするって聞いた
 ことがある」

サーニャ「げ・・い?」

坂本「あいつは、見事に訓練された体だな」

エイラ「そっち系カ」

ハルトマン「マッチョ」

サーニャ「エイラ・・・教えて」

エイラ「だから、女が苦手で話さないトカ。えっとね、サーニャ。ゲイとかホモはね・・・・」

サーニャ「!! ウッ・・・気分が・・・」

エイラ「サーニャ!大丈夫?ゴメンヨゴメンヨ」

ペリーヌ「おぞま・・・しい・・・」

リーネ「・・・・怖いです」

宮藤「え?え?じゃあ、私とは何で?」

エイラ「女として見られていないんじゃないカ?胸もツルペタだシ。ペリーヌもそうだナ」

宮藤「ええーーーーー!」

ペリーヌ「ギリギリギリ」

サーニャ「・・・・嫌」

リーネ「ホッ」

バルクホルン「さて、明日のご飯はなんだろうなぁ?」

ハルトマン「何急に言い出すの?トゥルーデ」

―――――――――

ミーナ「あ、悪いわね。トゥルーデ」

バルクホルン「いや。どうした?」

ミーナ「鍵をかけてこっちに来て?」

バルクホルン「? ああ」

ミーナ「ありがとう。こっちに座って。俺さ・・・あの人の履歴が解ったの。正確には、二年ほど前まで。
 情報部に配属になったと思われるその後は不明だけど」

バルクホルン「情報部も頑張ったか」

ミーナ「ええ。三軍を総当りして、年齢とかで絞り込んで送ってきた資料の一つにあったのよ。オリ
 ジナルは、他のと纏めて返却したわ。該当者なしって」

バルクホルン「うん。利口だな。で?」

ミーナ「海軍の中佐。偽名ではないわ。カールスラント撤退戦とガリア撤退戦で、敵後方での破壊活動に
 従事していたの」

バルクホルン「前線と被占領地でか?」

ミーナ「ええ。メモに書き写したわ。見て」

 6枚の紙にぎっしり書かれたメモ。読み方がどんどん早くなる。

バルクホルン「こういう作戦もあるんだな。しかし、これはまた・・・」

ミーナ「ええ。私たちのように眼で見える戦闘ばかりじゃないのね」

 敵占領地域の橋梁爆破、道路の破壊、敵集積地への破壊工作。避難民の誘導そしてダムの破壊・・。

バルクホルン「この・・・指揮官を射殺、軍法会議で無罪 とあるのは?」

ミーナ「えーと。ガリアの避難民が橋の向うに多数残っているのに、ガリアの現地指揮官が爆破を命じ
 た。それに抗命して、俺さんが引き延ばしを図った。激怒した指揮官が発砲し、抵抗、射殺。三日間
 其処に残って避難民を受け入れて、陸戦型ネウロイを橋とともに爆破。戻ったところで逮捕。で、無
 罪となった。避難民はみな後方に退避できたそうよ。人数はざっと5万人」

バルクホルン「三日の余裕があったのか。無能な指揮官だ。5万人を見殺しにしようなどと」

ミーナ「この時、私も其処に居たと思う。急遽航空支援に行ったと記憶があるの。既に誰もいないはず
 なのに、なんでこんなに人が、って不思議に思った記憶がね」

バルクホルン「おや、戦友だったんだ」

ミーナ「不思議な偶然、ね。非情にもなれるけれど、まともな人の様子よ。でも、あの夜は怖かった」

バルクホルン「本当に怖かった。あの眼は・・・私達とちがう地獄を見てきたからなのかな・・・」

ミーナ「でもね。整備のマスコットいるでしょ。あの子達をとても優しい目をして可愛がっていたの」

バルクホルン「仕事が絡まないときは、優しいのかな。あ、犬といえば私のフリッツの事もやけに詳し
 く話したな。私が聞いたのは犬の名前だけだ。クリスのことも気にかけたし。ちゃんと謝罪もしてく
 れたし。ふむ。普通の優しい性格なのか」

ミーナ「ええ。そう思うわ。可哀想な人ね・・・」

バルクホルン「どうした?母性本能が目覚めた?」

ミーナ「トゥルーデ?あの人はきっと一人で死ぬの。誰にも気付かれないで。寂しすぎるわ。そういう人
 を見て可哀想だと思わない?」

バルクホルン「そうか。仲間がいないんだな。寂しいだろうに・・・」

ミーナ「女性遍歴多し、とあったけれど、それかも」

バルクホルン「一時の恋愛に逃げているのか。私ならどうなるんだろう。酒か麻薬かな」

ミーナ「トゥルーデ!あなたには仲間も妹さんもいます!馬鹿なことを言わないで!」

バルクホルン「すまん。ホモ疑惑が持ち上がってな。女が恋愛対象でよかった」

ミーナ「ホモ?違うわよ、『特定多数の女性との恋愛行動』って書いてあったわよ」

バルクホルン「安心したよ、同性愛でなくて。で、何でそんなにむきになる?」

ミーナ「トゥルーデ。勘弁して頂戴。同性愛は軍ではご法度です。私がむきに?何に?」

バルクホルン「さて、な。下に行ってリーネに紅茶でも貰おうよ、ミーナ」

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最終更新:2013年02月02日 12:22