「今度はちゃんとあってんでしょーねぇー?今度違ったら承知しないわよ?」
と電話に言い、
ウェディングマーチは通話を終了した。
追っての指示は『メールで連絡する』らしい。
この前もバツイチイケメンの情報を教えてもらった代わりに
ソロぴを
連れて帰る雑用を請け負ったが、どう考えてもイケメン(過去形)はハズレだった。
して今度もそのメル友からの"お願い"があった。
丁度今日は知り合いの女傭兵数人で食事でもと予定があったのだが、そこに招待してほしい、
なんなら『マーチに仲良くしてほしい』人がいると言う。なんでその食事会があるのを知ってるかは
さておき。
当然メル友の知り合いの子の紹介なのかと思ったら、なんとこっちは知ってるけどあっちからは
面識ゼロだと。
なんでそんな奴を誘わなきゃいけないんだと聞いたら、画像が返信された。
なるほど。そこまで、手放しで大絶賛と言ったノリではないが、なかなかイケメンだ。
してそのAC乗りと関係を持ってほしいと。
理由は知らない。今までも彼女から頼まれてやったことの理由ははぐらかされてきたから。
ただそれで困った目に合ったことは無いし、なんなら『お礼』としてACのパーツさえもらえた。
なんなら今度も予備をくれると言ってくれた。
だから特に断る理由もなかった。
して今度は"また"イケメンだ。…前はイケメンじゃなかったけど。
今回のお目当てはアーキバスの傭兵らしい。
本日のアリーナに出るから帰るところを出待ちして捕まえろと。
「何ー?企業のお抱えにハニートラップでも仕掛けろってこと?」
と聞いたが、別に篭絡する必要はなく、ちょっと関係を作ればいいと言う。
情報でも取りたいのだろうか。
友達たちにちょっと遅れる旨を伝えておき、グリッド051のアリーナの観客席で、お菓子でも食べ
ながらお目当ての機体が出るのを待った。
そして、出てきた。
アーキバス所属。
V.N ステラ。Bランク。
試合自体は、相手が格下のランカーなこともあって勝利だった。
ただ、
ステラ(星)の名の通りドローンと、昔
海を越えた時
ぶりに見た光波のブレードが星みたいに美しかった。
そして、またメールを貰い、作戦を決行に移すことにした。
目的は、あのACに乗ってるらしいイケメン、『
ステラ』を連れて行ったり、仲良くすること。
私としてもイケメンと関係を作るまたとないチャンスだ。
アリーナの選手の出口で待ち構える。
一番大事なのは、押し切る事。実戦も恋も。
そうして、出口の近くの路地までついた。
相手をしたACは次も戦うらしいので、出てくるのが彼なのは確定だ。
私は物陰から出口を見つめ、写真のイケメンが出てくるのを待った。
そして人影が出てくる。
…あれ?小柄だな、イケメンだけど背が小さいのはなぁ…。
などと思ったのは束の間。
「は?」
出口から出てきたのは、先程の写真とは似ても似つかない銀髪の美少女だった。
どう考えても目の前にいる少女は写真の男とは似てもいない。
しかし、あのパイロット以外が出てくるのはあり得ない。
流れるように写真を撮り、それを電話で確認する。
『ちょっとケイト!?出てきた人がまったく違うんだけど!?これってどういうこと!?
ステラさんどこ行っちゃったの!?どうすればいい!?』
一瞬で通話は繋がった。なんだこの暇人。
『いえ、それで合ってます。彼女が
ステラです。』
『は?どう見ても写真と違うじゃん!!整形とか大怪我ってレベルじゃないよ!?性別まで違うし!!』
すると、『いえ。あの写真は10年前のものですね。人間の身体を操作する技術は凄い物です。』と返って来た。
…え?つまり、この女の子が…、この男だったと…?
『本人の意思ではないようですが、"実験"台としてこの姿になったようです。』
は…?人間の業もそこまで至るとは…引くわ…。他人の意思で美少女になった元イケメンかぁ…。
ただ約束はしちゃってお礼も貰う以上、しっかりやり遂げなければならない。
電話を切る。
覚悟を決めた。
「そこのおじょーさん。」
「……」
無視!?流石にヘコむ…いやめげてらんない。
「おじょうちゃん?聞こえてる?」
とそっちを向いて少し大きな声で言うと、彼女は振り向いてくれた。
「な、何です…?」
「ちょっと道教えて欲しいんだけど…」
と言うと怪訝な表情を和らげた。
「何処に行くんです?」
「えーと、ここの食事屋なんだけど…」
と言うと、丁寧に道を教えてくれた。いい子じゃん。
あとはこの子をそこにお招きするだけだ。
「ねぇ、君。アーキバスの
ステラでしょ?」と聞くと『ギクッ』と擬音語が鳴りそうなくらい大きく震えた。
「君、男だって友達から聞いたんだけど、そうなの?」触れずにいて後から切り出され辛くなってもアレなのでズカズカ踏み込む。
またまた面白いくらいにギクッとした
ステラは、多少震えた声で
「そ…、そうです…けど、何で知ってるんですか?」と言った。
「私の友達にゴシップ通がいてね。。未婚のイケメンも悪くないって思って来てみたけだんだけど、美少女がいた。」
と言う。
「え、じゃ、さっき事実を知ったばかり…?」
「ま、そーいうことになるね。」と返す。
「ねぇ、私、今からそこで友達とご飯食べるんだけど、スーちゃんも来ない?」
「ス…?」自分の呼び名であろうものに困惑していると、畳みかけるようにぐいぐい来た。
「私スーちゃんとことが好きになっちゃった。優しいし可愛いし」
「可愛っ…」といい
ステラは顔を真っ赤にする。その初心で初々しい反応が、マーチの琴線をくすぐる。
「だいじょーぶ、皆優しい人達だから」と言い、マーチは両腕で
ステラの腕を挟んで抱く。
ステラの腕がマーチの豊満で柔らかな胸に腕が押し付けられる。抜け出そうとすると腕がさらに胸に当たってしまうし、
そもそも
ステラの頭は空っぽで、「抜け出す」という選択肢すら残っていなかった。
「は、は…い…」
人のよさが発動し、"せっかく誘ってくれた"ということで断り切れずに受諾してしまう。
「おーさっすがスーちゃん!ノリいいね~。じゃ、行こっ!」
と言って手を引く。ギリギリ意識を保っているだけの
ステラは引きずられていくだけだった。
To be continued...
最終更新:2024年01月02日 14:15