スーパーロボット大戦(小説)

登録日:2010/11/20(土) 02:52:26
更新日:2024/04/06 Sat 20:16:01
所要時間:約 8 分で読めます






【概要】


この項目で取り扱う『スーパーロボット大戦』とは、1998年に講談社マガジン・ノベルス・スペシャルから全3巻が刊行された団龍彦の小説作品。
アニメ版『マジンガーシリーズ』と『ゲッターロボシリーズ』の後日談の形式を取って語られる、ダイナミックプロ公認の外伝作品である。

団龍彦はかつて、ダイナミックプロの一員としてアニメ企画に携わった人物であり、本作は団氏自身が思い描いたアニメシリーズの完結編を想定した展開・内容になっている。
基本設定はアニメ版に準拠するが、それぞれ漫画版の設定も組み込まれている。

イラストは石川賢が担当し、ファンタジー的な世界観で美少女が多く登場する内容にもかかわらず、非常に男臭い画面を演出している。
しかし、石川賢の描くマッシヴなマジンガーはとても格好良い(後々の作品でプロポーションの参考にされるほど)。

サブタイトルにある通り、マジンガーVSゲッター、ゲッターVSゲッターなどの夢の対決が惜しみ無く展開し、終盤にはオリジナルメカのゴッド&デビルマジンガー(マジンカイザー)までもが登場、物語を彩っている。

余談だが永井豪も最終巻のあとがきに寄稿しているのだが、これら石川オリジナルマジンガーの描かれた表紙を見た時の感慨について「 僕の知らない マジンガーが戦っている」と述懐しており、マジンカイザーのデザイン者について物議をかもした。

【物語】


Dr.ヘル、ミケーネ帝国、ベガ星連合軍……数多くの勢力との攻防を経て、兜甲児は19歳になっていた。
ライオネル博士の発見した時粒子を利用したタイムトンネルの実験中、甲児は自らに語りかける謎の少女の声に導かれ、意思を持った機械の巨人「神聖騎士」の支配する暗黒の世界へと飛ばされた。
ヒューと呼ばれ蔑まれる人類を救うべく、鉄の城が咆哮する!!


【登場人物】


スーパーロボット軍団


本作の主人公。マジンガーZのパイロット。
時粒子によるタイムトンネルの実験中に未来に飛ばされる。

  • 弓さやか
ダイアナンAのパイロット。甲児と共に未来へ。
勘が良く解説役を務める。

グレート・マジンガーのパイロット。博士達がいないのでスーパーロボット軍団全体のリーダー的立ち位置。
甲児からはプロ意識から口うるさいと若干苦手意識を持たれているが、さやか曰く鉄也は甲児の事を兄弟のように思っているからこそ厳しい事を言っているとの事で、原作の後2人は無事関係を修復できた模様。
中ボスクラスまでには無敵。

  • 炎ジュン
ビューナスAのパイロット。
基本的にバックアップ担当。

ゲッターチームのリーダー。アニメ版準拠のため、優等生タイプ。
百鬼帝国との戦いの後も武蔵の死が心に暗い影を落としている側面が描かれており、それが原因でゲッターロボとの初戦では合体に失敗してしまう。
今回は鉄也に敬語で接していた。

クールで皮肉屋な名参謀役。
アニメ版準拠だが漫画版の設定が混じっており、「『ゲッターロボG』時代から独自のロボの構想を抱いていて、実はロボット工学志望」である事が明かされた。
そして、将来自らが生み出す事になるゲッターと対決する事に……。

  • 車弁慶
ゲッターチームの一員。
気は優しくて力持ち……つまり特別な活躍は無し。


ゼファ・ジタンヌ

神聖騎士の支配を逃れるべく戦うヒューのレジスタンス組織。
超能力を持った少女により構成される。

  • ティアナ
お姫様タイプの指導者。
……出番無し。

  • ユリカ
口伝者(サーナラーガ)。勇者=甲児がやって来る未来を告げた。
甲児が好き、だが……。

  • セイラ
サラの姉。

  • サラ
セイラの妹。ツンデレ美少女戦士。
こちらも甲児が好き。

  • ミク
時を操る力を持つ。
甲児を呼び寄せた本人で、その力をギャラハンに狙われる。

  • アンジー
甲児とさやかが最初に出会った幼い少女。
飛び抜けた超能力を持つが……。

  • トキ
アンジーにいつもくっついてる男の子。
超能力は持っていないようだが……?


神聖騎士(ゴーディアン)

世界を支配する機械の巨人達(クリーチャー)。ドミネーターとも。
いずれも中世の騎士のような姿をしており、自分達を生み出した「真心聖母(マシン・ハート・マザー)」を崇拝している。

  • シャムロック大帝
世界の支配者を気取る神聖騎士のリーダー……だが、ヘタレ。

  • ルナン
武人気質の神聖騎士で、ゲッターチームの窮地を救う。
シャムロック大帝に愛想を尽かし、甲児らに協力を申し出るが……。

  • ギャラハン
最強の神聖騎士。
シャムロックすら恐れるその正体は……?

  • パリアッチョ
ギャラハンに仕える道化師。
男女、両性の顔を持つ。詳細は後述。

  • ガムロン
甲児たちが現れたリンボ地区を治める神聖騎士。
槍を使う他に特異な能力はあまりなかったが、倒された後に動力が光子力エネルギーである事が判明し、甲児たちを驚愕させた。

  • ザクスン
マジンガーZ出現の報を聞き出撃した神聖騎士。
兜から伸びた髪の毛状の部分は光線の吸収/反射機能があり、マジンガーZをそこそこ苦戦させたが、新たな神聖騎士を生み出すはずのアルテミスから出現したゲッターロボに髪を切り落とされ倒される。


天座アルテミス

「真心聖母」が住むと伝えられる、黒き太陽とも月とも形容される存在。
旧ゲッターロボやメカザウルスを生み出し、スーパーロボット軍団を襲わせる。
果たして、その正体は……?


【登場ロボット】


スーパーロボット軍団


御存じ「鉄の城」。伝承に従い、幾世にも渡って封印されていた。
当初は整備不良が目立ったが、後に真価を発揮する。

タイムパラドラックスを考慮して、現代のマジンガーZは置いてきぼりとなったが、これが後に大きな意味を持つ。
実はある目的のために作られたマジンガーZのコピー機で、かつて甲児が乗っていたものと同一機ではない。

僕らの「偉大な勇者」。中ボスまでには無敵。
しかしラスボス戦ではグレートの存在が勝利の決め手となる。
この展開は後にマジンガーZ/INFINITYでもさらに拡大解釈された上で使われている。
本作では終始中点が付いた表記になっているが、団龍彦によれば「グレート・マジンガー」が正式名称だったとのこと。
本作では、その本来の製造目的も明かされた。

我らの「不滅のマシーン」。
旧ゲッター、ゲッターロボ號に加え、真ゲッターまでもが敵として登場するため、名勝負率が高いが、ラスボス戦では合体中に攻撃を食らって真っ先に脱落してしまった。
今回はゲッターチームの機体として活躍するため、近年は珍しくなった「正義のゲッターロボとしての立ち位置のゲッタードラゴン」が見られる。
正義のゲッタードラゴン対悪の真ゲッター1という対決が見れるのは、本作とα外伝くらいだろう。

  • ダイアナンA、ビューナスA
空気。一応ビューナスは最後の最後で地味ながら活躍する。
何気に新型スクランダーでダイアナンも飛ぶ。

  • コスモ・フリーダム
早乙女博士が開発した巨大空中ドック。挿絵では、『ゲッターロボ號(漫画版)』及び『真ゲッターロボ 世界最後の日』に登場したクジラに類似した外観となっている。


アルテミスの生んだ敵


天座アルテミスが生み出した最初の刺客。
パイロットはハチュウ人類と、クローン再生された武蔵。

パリアッチョ曰く、隼人が未来で作るマシーン。設計年度の都合上、概ねゲッターロボGと互角の性能を持つ。
パイロット、動力機関、正式名称は上記の設定上、本作では明かされず。
「ゲッターロボ號」という名前だけはパリアッチョが告げていったため、弁慶から「ゲッター號1」と呼ばれる羽目に(隼人は「俺がそんな名を付けるはずがない」と否定しているが)。

スペックはほぼアニメ版と同等だが、漫画版で一度だけ用いた「ソードトマホークっぽいエネルギー剣」を使用する描写があり、これはゲッタードラゴンのダブルトマホークより硬度が上であると説明された。
本作でのパイロットはクローンの武蔵×3人と思われるが、ゲッター號のパイロットの描写は一切なかったため不明。下手すると號達のクローンが乗っていた可能性も……。

パリアッチョが切り札として放った究極のゲッターロボ。
設定は漫画版に準拠しているが、旧ゲッターロボの改造機(と、竜馬が推測する)というスパロボ旧シリーズの設定も反映されている。
さらに凶悪な面構えになったクローン武蔵が操る。

本来の搭乗者が乗っていないためか、チート性能は発揮されないものの(ストナーサンシャインをぶっ放ちモーフィング変型はするけど)、機体スペックが桁外れに高いため、スーパーロボット軍団を窮地に追い込む。
本作ではゲッターチームの捨て身のシャインスパークによりストナーサンシャインを撃ったのに撃破されるという珍しい姿が見られる。竜馬達が乗っていないからだとファンは割り切ろう。

珍しく完全に悪の立ち位置であり、「臨界点を超え、制御を受け付けなくなったゲッターエネルギーで駆動する狂戦士」として描かれていた。元々凶悪なデザインなので特に違和感がないのも困る。

恐竜帝国の残党から提供された遺体よりパリアッチョによってクローン再生され、ゲッターチームをひどく動揺させた。
複数いて、最初のハチュウ人類が乗っていたゲッターロボを除いてゲッター系ロボは全てクローン武蔵が操縦していると推測されている(ゲッター號だけパイロットの描写なし)。
自我は持っていないが、遺体の脳髄から一部のデータを採取したため大雪山おろしまで使える。
挿絵を見る限り、パイロットスーツはかつて使っていたものと同じ。あの剣道具とヘルメットまでわざわざ複製したのだろうか


※以下、さらなるネタバレ。

















【黒幕】


  • 闇の帝王(ギャラハン)
ミケーネ帝国の永遠の支配者。
かつて、ダブルマジンガーの前に軍団が敗れた時にもその姿を現わさなかったが、密かにネットワークに潜み、機械を支配して、あの戦いから100年後に人類を淘汰、自らの最終目標である過去のミケーネ帝国に還るべく、遠大な計画を進めていた。

本作で明かされたその真の名は、ミケーネ帝国最後の皇帝「ギャラハン」。精神生命体として生き、暗躍してきた。
強大な超能力を有し、幻影とはいえ暗黒大将軍と七大軍団、ブロッケン伯爵、帝王ゴール、大魔人ユラー、ブライ大帝の姿を現出させ、スーパーロボット軍団を襲わせる。

前半は超然とした態度をとっていたが、終盤では狼狽えたり、甲児に恨み節を言うなどの意外な人間臭さを見せる。
非常に地味ながら、ゲッターチームの後日談に漫画版『號』が採用されているにもかかわらず、ゲッターエンペラーの誕生を阻止している(最低でも1万年以上の単位で誕生を遅らせている)という快挙を成し遂げていたりする。
(これは当時エンペラーが漫画版に登場していなかったため。つまり、存在が観測された時点で過去に戻って阻止しようとしてもエンペラーの誕生は阻止できないという設定が成り立たない)
尤も、アンドロメダ流国が力押しで何とかしようとした結果、ゲッターの力をさらに高めていく負のスパイラルに陥っている事を考えると、ゲッターに余計な力を付けさせずに取り押さえた闇の帝王のやり方は非常に理にかなっているとも言える。
が、別作品では自らの行く末にそのゲッペラーと泣く子も黙るZ至上主義者がなぜか一緒に待ち構えていることを悟ってしまうという凄まじい逆襲を受けた。

  • パリアッチョ
かつての名は「あしゅら男爵」。自身の語る所によると、Dr.ヘルに仕える以前よりギャラハンの下僕であったというが……。

5千年の時を越えた屈辱を晴らし、自らが支配者となるべく切り札デビルマジンガーを用意していたが……。

  • Dr.ヘル
ミケーネ帝国により地獄大元帥として復活させられるも、再び敗れた後、その脳髄を密かにパリアッチョが保管していた。
かつての二度の敗北の記憶から、激しい憎しみに捉われており、それ故にデビルマジンガーの中枢としてパリアッチョに選択されたのだが……。


【最終巻の登場ロボット】


  • 七大将軍&暗黒大将軍
所謂一つのかませ犬。デビルの餌。

神聖騎士ギャラハンの正体。
かつて、闇の帝王により蹂躙される地球を救うべくデュークの子孫シオン・フリードが搭乗し、宇宙から飛来したものの返り討ちに遭う。以後、闇の帝王=ギャラハンの肉体として使われていた。
闇の帝王が依代となったため、エネルギー補給も整備もしないで数百年は優に稼働できた。ちゃんと武器も使用している。

今回は正義のスーパーロボットとしてでは無く、あくまで闇の帝王の肉体としての登場であるので、闇の帝王の人間臭さを表現するためか、妙に人間臭いアクションを見せた。
デビルマジンガーに破壊されてしまうが、残骸は甲児たちに回収された。

  • アルテミス
天座アルテミスの正体。
闇の帝王の操る、髑髏を思わせる姿と形容される巨大空中要塞。動力源は光子力反応炉。

  • デビルマジンガー
兜十蔵が設計した「人の感情や、あらゆるエネルギーを吸収し、無限に力を増してゆく」究極のロボット。
「究極のロボット」としてのマジンガーZのプロトタイプだが、「負の感情」を増幅すればあまりにも危険すぎるために破棄されていたものを、秘密裏に設計図を入手したパリアッチョが完成させた。
圧倒的な力で闇の帝王を倒すも、Dr.ヘルの自我が目覚め……。

姿はグロテスクで、禍々しさを強調したもの。マジンガーの悪の側面を具現化させた存在であると言える。
顎は広く、四肢の付け根は異様に太く先端に行くにつれて鋭く伸びていき、
胸には恐ろし気な顔があるがエネルギーを吸収するとDr.ヘルの顔になっていく。
武装はそれほど多くはないが、いずれもダイザーとグレートの装甲を容易く貫くほどの威力を持つ。

  • ゴッドマジンガー
現代に残されていたマジンガーZをベースに改修された、デビルに対抗する力を持つ究極のマジンガー。
機体そのものはグレートをベースにより発展させた設計だが、甲児の搭乗を想定し、Zの改造を前提にしていた。

設計者は兜剣造。彼はデビルマジンガーの設計図が紛失したのを非常に気に病んでおり、それに対抗するための存在としてゴッドの設計図を遺していた。
そのため、最終的には弓教授とライオネル博士により、マジンガーZを改造して完成する。

見た目、能力はほぼマジンカイザーそのもので、「無限の力を持つ甲児専用のマジンガー」という設定も一緒だが、胸のエンブレムの位置がカイザーとは異なる。
ただし、どちらかと言うとZ寄りの特性(翼がスクランダー式など)があるマジンカイザーとは違い、ゴッドはグレート寄りの特性であり、翼が収納式である事、武装にサンダーブレーク相当の「ゴッドスパーク」を持ち、エネルギー実体化式のマジンガーブレードを振るう事が描かれている。
必殺技は、マジンカイザーの「カイザーノヴァ」相当の「スーパーノヴァ」。

最終巻でちょっとだけ登場。現代に残っていたボス達が時間稼ぎのために出撃し、デビルマジンガーと交戦したが一蹴された。
「ボスボロットが撃破されました!」という光子力研究所所員の台詞と共にボス達の安否は小説内では不明となったが、まぁ間違いなくピンピンしてるであろう。
ちなみにボスも鉄也達と共に甲児の救援に行こうとしていたのだが、周囲に「ボスまで行ったら誰が光子力研究所を守るのか」とおだてられたため、居残っていた。

こんなものでいかがでしょうか!


【余談】


ゴッド&デビルマジンガーの設定は同じく団龍彦が脚本・設定を担当した短編漫画『マジンカイザー』(作画は丸山功一。双葉社刊『スーパーロボット大戦F完結編コミック』に収録)に由来するが、元々「ゴッド・マジンガー」とは、マジンガーシリーズの完結編として企画されていたアニメシリーズ第3弾の企画名だった。
本来は、兜甲児を再び主役に迎えたその『ゴッドマジンガー』で、地獄大元帥及び闇の帝王との決着が描かれるはずだったらしいが、結局はお蔵入りとなり『UFOロボ グレンダイザー』が製作される事になったのだという。
だからって本作のダイザーの扱い酷くないですかね

よって、マジンカイザー=ゴッドマジンガーと見る事もできるが、マジンカイザーはマジンカイザーとして新たな展開がなされているのは周知の事実。

なお、永井豪が想定していた「ゴッドマジンガー」の物語ではマジンガーが世界を滅ぼすという案があったらしく、これらのアイディアは『冒険王』誌にて連載された桜多吾作版『UFOロボ グレンダイザー』、後年の古代を舞台とした同名異作『ゴッドマジンガー』、未完の大作『マジンサーガ』、第3の魔神が世界消滅の危機を起こす『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』等といった作品群に引き継がれる事になる。


追記、修正、マジーン・ゴー!!

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最終更新:2024年04月06日 20:16