ゴッドマジンガー(漫画)

登録日:2018/05/31 Thu 20:30:59
更新日:2024/12/16 Mon 19:40:34
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『ゴッドマジンガー』は、永井豪の漫画作品。
1984年に放映された同名のアニメ作品の原作者によるコミカライズ作品だが、例の如く基本的な舞台設定や登場人物の名称等が共通している以外は、完全な別物と呼べる作品となっている。


【刊行の歴史】

1984年に小学館のてんとう虫コミックから全4巻の書き下ろしで刊行。
1986年に年齢層を考慮しない加筆修正を加えて角川書店から『魔神伝説』と改題して全3集で刊行。
同作は1998年に、大都社から再びタイトルを『ゴッドマジンガー』に戻して、全2巻が刊行されている。
後に2009年には小池書院からコンビニコミックが全2巻、2013年には講談社から全3巻の形式で刊行された。

本項目では、加筆修正されて他の永井豪作品とも関連付けられる立ち位置となった『魔神伝説』以降の内容を記述していく。
この他、永井泰宇、団龍彦、園田英樹らの共著による、アニメ・漫画ともまた異なったストーリー展開のノベライズ版(全10巻)が存在*1


【執筆の経緯】

以下はネタバレ含む。

『ゴッドマジンガー』というタイトルは、幻に終わった『マジンガーZ』から続く、東映版マジンガーシリーズ完結編のタイトルとなる筈であった『ゴッド・マジンガー』から取られている。

……更に言えば、このタイトルは『グレートマジンガー』の元タイトルでもある。
永井豪とダイナミックプロにとっては、非常に因縁深いタイトルと言える。

一応は、本作も『マジンガー』シリーズの一つと位置付けされてはいるものの、
アニメ版の制作が東京ムービー新社となり、余りの多忙から永井が原作を描ききれなかった為に、内容や設定自体は永井の名義だけを借りた状態で東京ムービー新社主導で作られたこともあり、
従来の『マジンガー』とは大きく違った設定と雰囲気(SFロボット物→SFファンタジー物)を持った作品となった。

しかし、そうした企画のスタートを迎えながらもアニメと並行する形で執筆された漫画版はアニメと全く内容が違うのは当然として、永井の筆が乗ったこれぞダイナミックプロな作品に仕上がっており、クライマックス部分のマジンガーによる世界の滅亡は、それこそ永井が『ゴッド・マジンガー』で想定していた、世界を滅ぼすマジンガーの姿その物である。

このイメージは後に、永井による『マジンガーZ』のリメイク作品である『マジンサーガ』にも引き継がれることになった。
正体を含めた、その後の『マジンガー』シリーズとのアイディアの推移みたいなものを考察すると、マジンカイザーマジンガーZEROの源流と言えるのかもしれない。

上記の様に、企画その物は永井の手による……と呼べる作品では無かったものの、漫画版はとても永井豪とダイナミックプロ色の強い作品に仕上がり、尚且つ以降のダイナミックプロ作品にも影響を与えた、という意味でもアニメ版以上に重要な立ち位置となった作品である。

実際、世界をも滅ぼし得るマジンガーの他、ヒロインであるアイラ・ムーのキャラクターは永井のお気に入りとなったようで、数年後に連載を再開する『バイオレンスジャック』にも登場する等、永井作品のヒロインの中でも知名度を獲得していくまでになっている。
『バイオレンスジャック』には、アイラ以外にも本作からの登場キャラクターが客演している他、物語の骨子が似通っている部分もある等、執筆時期の近さからか共通した要素も多く見受けられる。


【物語】

およそ二万年前の超古代、ムー大陸に巻き起こったムー王国とドラゴニア帝国の戦乱は時を超え
現代にまでその影響をおよぼそうとしていた!

テクノロジーによる栄華が極まりつつあり、それとは逆に破綻も見えつつある現代日本に生きる少年、火野ヤマト……。
自分でも持て余す程の“力”を持つ彼は、時を超えて送られた“魔神”のビジョンとアイラ・ムーのメッセージを受け取り、落ち着かない日々を過ごしていた。
そして、ある日の遠足の途上で“その時”は遂に訪れた。

魔神山の山中で制御不能となったヤマトとクラスメートを乗せたバスは、かつて見た“魔神”のビジョンに飛び込むと共に、二万年前のムー大陸の戦場のど真ん中へとタイムスリップしてしまったのだ。

混乱の中、なんとか幼なじみのカオルを連れ出して守ろうとしたヤマトだったが、アイラ・ムーのテレパシーを受け取ったヤマトの姿は戦場から消え、ムー王国に伝わる神像“ゴッドマジンガー”の下へと導かれる。

そこで、アイラからムー王国の予言を聞かされたヤマトは半信半疑ながら伝説の通りにゴッドマジンガーと一体化。

動き出したゴッドマジンガーは天変地異すら操る強大な力でドラゴニア帝国の恐竜軍団を退けると、ヤマトはムー王国の人々から救世主として迎え入れられるのであった。

……一方、ゴッドマジンガーの力を目の当たりにした、自らも強大な超能力者であるドラゴニア帝国の黄金王ドラドは、ゴッドマジンガーの底知れない力を感じ取り、これを攻略する為の策を練る……果たして、ヤマト=ゴッドマジンガーとドラゴニア帝国の戦いの行方や如何に!?


【登場人物】


ムー王国

古代のムー大陸に存在していた国家。
指導者はアイラ・ムー。
強大なドラゴニア王国の侵攻に際し勝ち目は薄かったが、伝説の守護神“ゴッドマジンガー”が目覚める。
実は、アイラのように王家の人間といった純粋なムー人は、何世代も前に肉体改造によって地球に入植した天使の様な宇宙人の末裔である。


■火野ヤマト
本作の主人公で、高い剣の才能と常人離れした超能力を持つ少年。
アニメとは違い、最初から“超人”である。
現代では優れた力を持ちながらも、折角の“力”を振るう場所が無いとばかりに色々と好き放題し、父親と継母をバカにするような態度を取る、結構なDQNであった。
物語序盤では超能力を使ったスカートめくりに興じており、 全校集会にて、密かに露出癖を抱えている風紀委員のノーパン姿を衆目に曝したりもしていた。

……しかし、自らを呼ぶ“アイラ・ムーの幻”に触れ、実際にムー大陸へとタイムスリップして“救世主”として迎え入れられたことにより、次第に行動に落ち着きが出て精神的にも成長していくようになる。

タイムスリップ後の世界にて、剣を携えたムーの戦士の装束へと着替えるのは漫画・アニメ共に同じだが、白兵戦がたびたび行われていたアニメに対して、
漫画版だとこの格好になって以降はヤマト自身が剣を振るって戦う場面は一切描かれず、ゴッドマジンガーによる戦いが大半を占める形となる。

着替えた後の服装は、防具も何もないチュニックー枚だけ、とかなりの軽装。
しかも上は肩と腋を露出したノースリーブ、下は股下ギリギリの膝上丈でふともも丸出しの実質ミニスカートと、こういったスカート風のチュニックが特段珍しくない世界とはいえ、非常に露出度が高い。
そんな格好で身軽に動き回るものだから、漫画・アニメ共にしょっちゅう裾のヒラヒラがめくれ上がってはブリーフらしき布をチラ見せしている。
なんなら漫画版だと立っているだけでガッツリパンモロしてる場面もあったり。

ゴッドマジンガーと一体化出来る唯一の人間であり、その点についてはアニメと同一だが、
しかし漫画版の方の彼はしばしばゴッドマジンガーの力に呑まれて制御を失いかかっているかのような描写が見られ、これはラストに繋がる伏線となっている。


■カオル
ヤマトの幼なじみで、彼に変わらぬ好意を抱くも、ある時期から粗暴な振る舞いをするようになったヤマトのことが理解出来ずに付いていけなくなっている。
幼なじみだけにヤマトの超能力のことを知っており、自分にもテレパシーがあると嘯いているが、実際にはヤマトの気を引くための嘘である。
ヒロインみたいなポジションに見えて、しかし全くの重要キャラクターではないという、中々に不憫な立ち位置におり、
タイムスリップ後は早々にヤマトに置き去りにされ、一人でジャングルの中を彷徨っていた所を食人種に襲撃されて裸にひん剥かれたり薄い本まっしぐらの散々な目に遭い、
最終的には彼女を拾ったエルドの手によってケモ化…もとい、のような見た目のペットへと姿を変えられてしまった。
アニメではなんとヤマトの妹となっており、名前くらいしか面影のない、立ち位置が全く異なるキャラとなっている。


■アイラ・ムー
ドラドに騙し討ちされた先王より指導者の地位を引き継いだムー王国の若き女王。
予言の書では敗北と記されていながら、民の思いを汲んで戦いに向かわなければならないムー王国の未来に涙するが、一縷の望みを賭けて、ムーの守護神“ゴッドマジンガー”の目覚めと、それを動かせる勇者“ヤマト”の到来する奇跡を信じていた。
彼女自身も純粋なムー人の末裔らしい人智を越えた超能力の持ち主であり、戦いの中でその力も増していく。
アニメ版とは容姿が大きく変わっており、黒髪で妖艶な大人の美女として描かれている。
永井は彼女のことを気に入ったのか『バイオレンスジャック』等で彼女を登場させている。

■ソニヤ
ドラゴニアの襲撃により滅びたソートの戦火から勇気と力で逃げ延び、首都ヒラニピアへドラゴニアの脅威を報せた勇敢な美女。
その功績が認められ、願い通りに軍に加えられる。

■ムラジ
ムー王家に仕える大将軍で、四剣士を従えるムーの最高指揮官。
亡き先王の無念を背負い戦いを決意したアイラを支える。
アニメ版では途中退場するが、漫画版では最後の全滅まで無事である。
『バイオレンスジャック』でも、主人公の一人である逞馬竜の軍師として登場している。

■ギロン
■ゾルバ
■デリヤ
■ノロー

ムー王国の四剣士。
アニメとは全く容姿が違う
ノローは特殊能力を持っている描写がある等、設定も独自のものになっている模様。
アニメではそれぞれに活躍が描かれているが、漫画版では尺の都合もあって殆ど出番が無い。
アニメではギロンの声が兜甲児

■マーモ
ヤマトの世話役として付けられた少年(多分)。
子供らしく、ヒーローを見る目でヤマトに接している。
アニメには登場しないが、敢えて似た立ち位置のキャラクターにアイラの世話役であるマドマがおり、彼女もヤマトに憧れていた。

ドラゴニア王国

ムー王国の平和な統治に突如として反逆の狼煙を上げた蛮族の集団。
恐竜軍団を操る等、その戦力は圧倒的であったが“ゴッドマジンガー”の目覚めにより形勢を逆転される。
更に、母星を滅ぼした強大なロボット兵器をも有するが、環境への配慮から地球での使用は禁止されている。


■黄金王ドラド
ドラゴニアの支配者。
その名の様に素顔を不気味な黄金の仮面で覆っている。
アニメ版の無機質な仮面とは違い、怪物的な如何にも古代文明を思わせるデザインが秀逸。
単なる蛮族の長などではなく、その正体は宇宙からやって来て肉体改造によって地球に適応しようとしたドラ星の王である。
強大な超能力を持ち、その力は人間としてなら作中でも最強と思われるが、ドラゴニアの肉体改造技術の限界によって生命が尽きかけており、
それを回避する為に何世代も前に完全な肉体改造を成し遂げてムー人を地球に適応させた、ムーの秘宝“神櫃(エルムー)”を求めている。
何故ドラドのみ生命が尽きかけているのか、何処までがドラ星の民が肉体改造を受けた存在なのか等は不明。

■エルド
ドラドの息子で、腹心のヨミトの思惑もあり、父に代わってドラゴニアの支配者となる野望を持つ。
まだ肉体は崩れていないが、ドラドと同じ理由で“神櫃”を求める。
“ゴッドマジンガー”を倒す為にドラ星の生態系を破壊し尽くした、核や科学兵器を搭載した“機械兵(メガロ)軍団”を起動させてヤマトと合体前の石像を破壊することに成功するが、このことが“ゴッドマジンガー”による大破壊を呼び込むきっかけになったと思える面も……。
保護したカオルをペットに改造してしまう等、性質は残酷。
アニメ版ではヤマトのライバルラスボスとして、もう一方の主人公とも呼べる立ち位置だったが、漫画版ではヤマトとの邂逅の機会すらなかった。
上半身裸の腰布一枚で椅子に座りながら、一糸纏わぬカオルの裸体を満足げに眺めるシーンは色々と強烈。


■ヨミト
魔導師部隊の長。
ドラドに次ぐとも言われる超能力を持ち、エルドを利用して支配者の地位を奪おうとしている。

不死女(フシメ)
シャーマン部隊の長。
ドラドの相談役として働く。
アニメ版のヨナメに相当。

■ダモー
魔竜部隊の長。

■ブラー
恐竜部隊の長らしい。
ドラ星の者では無い模様。


現代の人物

主要な物語とは別の時間軸に登場してくる人物達。

■早見青児
オカルト雑誌をメインに活動しているらしいフリーライター。
火野大和町の山岳部で消失したヤマト達のバスの調査にやって来る中で、偶然から古代ムー大陸の神話を伝える火野家に導かれる。

■如月さつき
あだ名は“ハニー”で、青児と共に『キューティーハニー』からのスターシステムでの登場。
女性週刊誌のレポーターで、事故現場で意気投合した青児と共に火野家へと。
……果たして、エピローグでの青児とのやり取りは真実なのか否か……。


【登場兵器】


■ゴッドマジンガー
ムー王国の守護神として祀られる、巨大な石の彫像。
マジンガーと呼べなくもないデザインの大魔神の様な武人の姿をしている。
頭頂部のレリーフには二万年後の未来より現れるムー人の末裔たる若者=ヤマトの姿が刻まれており、伝承の通りに光と化したヤマトと一体化することで、ただの巨大な石像である筈のゴッドマジンガーが生物の様に動くことになる。
ちなみにアニメでは普通に一体化していたが、漫画だと一体化するのはヤマトの肉体のみ、つまり合体する度に服が脱げて全裸の姿になってしまう。
その力は強大で、自在に天変地異を操れる他、ヤマトと合体していない状態でバラバラに破壊されてもヤマトが同化しただけで再生したり、次元を切り裂いて遠くの地へ出現することも可能等、異常な力を持つ。
ゴッドマジンガーの出現に対しドラゴニアも魔竜部隊やハデスといった更に強大な戦力を持ち出したばかりか、遂にはエルドが機械兵軍団を起動させることになったが、それでもゴッドマジンガーを止めることは叶わなかった。
……そして、戦場の興奮が最高潮に達した所でゴッドマジンガーはヤマトの意志を越えて暴走を開始。
マジンガーの引き起こした空前の天変地異はムー大陸を飲み込んでゆく。

■恐竜部隊
野生の恐竜を利用したドラゴニアの主力部隊。

■魔竜部隊
恐竜に生体改造を施した生物兵器。
恐竜部隊を凌ぐ力を持つ。

■ハデス
“冥府の魔王”と呼ばれる、ドラ星が生んだ究極の生物兵器。
ドラゴニアの守護神とまで呼ばれる程の力を持つ。
ドラゴニアの民が乗ってきた、地の底に封印された巨大なマザーシップの中に封印されていたが、強大なゴッドマジンガーに対抗するべく、地割れにより眼前に導かれたゴッドマジンガーに襲いかかった。
姿は変幻自在で、最初は複数の首を持つ巨大なヒドラの様な姿であったが、弾けさせた頭部から無数の触手を生じさせたり、マジンガーに切り裂かれる度に変異し巨人の様な姿になったりと、定まった形を持たない。
実は、変形し続ける巨体による物理攻撃以上に危険で強力なのが、相手の精神に干渉して幻を見せて汚染する能力であり(劇中では“くさらす”と表現)、これがハデスの切り札となっている。
巨体をゴッドマジンガーの放った炎で焼き尽くされたと思われたハデスだが、内部から液体の様な不定形の体が出現し、ゴッドマジンガーに纏わりつく。
そして、ヤマトにマジンガーが敗北したという幻を見せ、更にはカオルや同級生の姿を利用した悪夢によりヤマトを屈服させようとするが……。

機械兵(メガロ)部隊
エルドが禁忌を破って宇宙戦艦と共に持ち出したドラ星のロボット兵器。
新天地たる地球を綺麗なままで欲しがったドラドに封印されていた。
レーザーや高圧電流、細菌兵器や強酸性の雨に核兵器等、考え得る最悪の大量破壊兵器を用いてムー王国軍を蹂躙する。
かつてのドラ星は、現代兵器の延長線上に在る、これらの超兵器によって環境を汚染され尽くされた末に破壊されてしまった模様。
尤も、復活したゴッドマジンガーの敵となるような物では無かった。






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最終更新:2024年12月16日 19:40

*1 永井泰宇が1・4・7・10巻、団龍彦が2・5・8巻、園田英樹が3・6・9巻、と各著者が交互に執筆するスタイルで刊行された。