精霊(クレヨンしんちゃん)

登録日:2014/08/21(木) 15:03:53
更新日:2025/01/20 Mon 01:14:14
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概要

臼井儀人原作の国民的ギャグ漫画クレヨンしんちゃんには、様々なエピソードがある。
基本『クレしん』は野原一家の巻き起こすドタバタを描いた日常生活を中心とした物語だが、
時たま現実ではまず起こりえないようなエピソードが挿入されることもある。
(公式ガイドブックによればパラレルではなくあくまでギャグパートと同一世界の話らしい)
その例としては天才科学者がひみつ道具を作り出す「北与野博士シリーズ」などが挙げられる。
しかし、『クレしん』で最も多い非日常的なネタは、

「野原一家の誰かしらが何らかの方法で超自然的な存在と出会い、不思議な力(or アイテム)を授かる」

という一連のお話だろう。
本項目では仮に「精霊」としたが、ここではそんな不思議な力を持った『クレしん』世界の住人たちを紹介する。

※なお、アニメオリジナル(映画含む)及び「ぶりぶりざえもんの冒険」や「クレしん童話劇場」などの完全にパラレルワールドと思われる作品はここでは除外している。

共通点

基本的に精霊の出るエピソードはワンパターンな構成であり、

①しんのすけ、ひろし、みさえ&ひまわりのうち誰かがぶらぶらと歩く
②精霊、あるいはそれに類する存在と出会い、何らかの方法でこれを助けてあげる
③精霊、あるいはそれに類する存在が「お礼」と称し不思議な力(orアイテム)を贈る
④騒動が巻き起こる

という体裁を取っている。
神道に「八百万の神々」という言葉がある通り、日本ではありとあらゆるものに神や精霊が宿るとされているが、
それは『クレしん』世界でも例外ではなく、『クレしん』世界の精霊は非常に細分化され、バカバカしい名前や役柄の精霊が数多く登場している。
その他、基本全員が濃い。出番が数ページしかないため、とてつもなくキャラが濃いのである。

またこういった超常的なエピソード以外のお約束同様、原則として「しんちゃんたち関係者になった人物が、善性を思い出したり発揮したりしたorそれを前提にしてもらった力やアイテムを行使した際には、結果的には全員にとっていい結果となる」展開になる。
その代わり普段の回でよくある「素行がよろしくない・職業人として問題あるやりかたや態度を取った人物やあまりよろしくない系統の欲にくらんだ人物が(多くはしんちゃんの無邪気な行動で)しっぺ返しを食らう*1」展開になることはあまりなく、なったとしても最後は問題なく元通りになる。さすがにこういった回でやると間違いなくシャレにならないからか。


一例

「はい少し黙ったわよ これで3つ目ね」
  • ちあきなおみの精
単行本21巻『しんちゃんと魔法瓶』に登場する。
しんのすけが拾った魔法瓶から飛び出した、常に無表情な太ったオバハンの姿をした精霊。
面倒くさがりな性格で、「4つのお願い」どんなことでも叶えるという素晴らしい能力を持つが
「なるべく早くしてね」とせかしたり、常に腕をボリボリ掻いていたりと態度が悪い。
しんのすけ「なんでちあきなおみ? なんで4つのお願い?」
精「あとでお父さんかお母さんに聞いてみな」

しんのすけはあっという間に3つの願いを使い切ってしまい、4つ目の願いを何にするか考えあぐねるが……。


「呼ばれて飛び出てパッパラパーッ!!」
  • 魔法瓶の精・ますお
『しんちゃんと魔法瓶』で、しんのすけが読んでいた絵本に出てきた精霊。
漫画家のマツウラセイジンが拾った魔法瓶から出てきて、
「スキーに行きたいので代わりに原稿を書いてほしい」
「どのスキー場でも使えるリフトの一生券が欲しい」
「壊れたスキー板を直したい」
という偏った願いを叶える。
その結果、マツウラセイジンは不幸な一生を送った。詳しくは本編参照。

モデルになったのは作者の担当編集の増尾徹氏で、後述のカロヤン増尾や悪田魔博士の手下のミスター・マースオ、
またずれ荘編で凸凹刑事コンビが追いかけていたヤクの売人「ステロイド麻酢尾」を始めとして
「くどい顔のキャラ」として幾度となくスターシステム的に登場している。
なお、増尾氏は笑っていいとも!のコーナーのひとつだった「あなたの知っているようで知らない世界」に出演した事がある。


「そんなことをしちゃ 絵がかわいそうだぜ」
  • さすらいの画家(絵の精)
単行本23巻『ミラクル・マーカーしんのすけ』に登場する。
カッコつけて去ろうとして壁にぶつかるなどドジな性格で、しんのすけには「さすらいの画家」と名乗ったが、「さすらいのバカ」と聞き間違えられ、上記の行動を見ていたしんのすけには「やっぱりバカだ」と呆れられる。
下手だからと自分の描いた絵をゴミ箱に捨てたしんのすけを冒頭の台詞でたしなめ、
どんな絵でも実体化するペンを渡して絵を描くことの楽しさを教えようとする。
しんのすけはこの記事を読んでるおまえらもそうするだろうと思うが大きな紙に美女(ななこお姉さん)を描いたものの、
画力が足りず不細工なバケモノが出現してしまう。
しかも「しんちゃんスキよ」と台詞を描いたせいでバケモノは実体化した後も「しんちゃんスキよ」と言ってしんのすけに纏わりつくのだが、
しんのすけがトラックに轢かれそうになった際には、ぶりぶりざえもんと共に、しんのすけの身代わりになるという健気さを見せる。
この一件で改心したしんのすけは、自分の描いた絵を再び手にした。

そして2020年!
記念すべき令和初の劇場版『激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』は本エピソードが原作となる
しんのすけが与えられた画材はマーカーから…本作のタイトルにもあるクレヨンとなった。


「アァンすごいわ! 5人同時にチェンジしたいだなんて!」
  • チェンジの精 スーザン
単行本23巻『野原一家大チェンジ!』に登場するガチムチでひげ面にも拘らずバニーガールの格好をしたオカマ精霊。
他人と入れ替わりたい願望を叶えてあげるという極めてピンポイントな精霊であり、普段は2者同士の入れ替えを行っている。
しかし野原一家は「ひろし→ひまわり→みさえ→シロ→しんのすけ→ひろし」と非常に珍しいことに5者で変身願望が成立しており、
面白がったスーザンはこれを叶えてしまう。
24時間以内に全員が「元に戻りたい」と考えなければ、野原家は一生このまま! 野原一家の運命やいかに!?

なお、同じオカマキャラのスーザン小雪とは関係ない……が、もしかしたらプロトタイプなのかも。


「育毛の精は毛深いのです ほら、背毛だってこーんなに」
  • 育毛の精 カロヤン増尾
単行本24巻『育毛の精の恩返し』に登場する精霊。
ボロボロのコートを纏った浮浪者のような男性の姿で、顔は当時カロヤンのCMに出演していた役所広司に似ている。
服を脱ぐと剛毛に覆われた肉体があらわになる。
そのさえない外見故にオヤジ狩りに遭っていた所を薄毛に悩む野原ひろし(35)に助けられ、お礼に超強力育毛スプレーをプレゼントする*2
ひろしはフサフサの髪を手に入れるが、しんのすけがイタズラしたせいで育毛剤の存在がバレてしまい、近隣の薄毛に悩むヤクザの組長(園長先生に非ず)はこの噂を耳にして野原家に殴り込みをかける。


「うう……う……かわいそうに なんてかわいそうな人なんだ……」
  • 夢枕獏太郎
単行本25巻『もらい泣きセールスマン』に登場する、幸の薄そうな外見の中年男性。
人間ではなく夢の世界の住人であり、現実に疲れた人間に好きな夢を見れる枕を販売するのが仕事。
他人の不幸な境遇を聞くと冒頭のようにすぐ泣くため、「もらい泣きセールスマン」の異名を持つ。
たまたま飲み屋で知り合ったひろしにお試し期間としてハート形のだっさい枕を貸し、
ひろしは大富豪に成り上がったり、映画の世界でヒーローになったりと好きな夢を見れて大満足。
とうとうひろしは味をしめ、現実に戻る気を失くしてしまう。
一向に目を覚まさず昏々と眠り続けるひろし。24時間以内に夢の世界から出ないと、永遠に夢の世界に閉じ込められるのだ。
野原家に呼び出された獏太郎は、ここぞとばかりに枕をみさえとしんのすけに売りつけようとするが、みさえに脅迫されてタダでレンタルすることに。
みさえ、しんのすけ、獏太郎の三人はひろしの夢の世界へと潜り込む。

『爆睡!ユメミーワールド大突撃』の原作…ではないが、「最終的には最初に事態に関わったメンバー以外の野原一家も夢の世界に参戦する」「元凶である人物は、もともとは悪意は無かった」など、いくつかの展開に類似性が見られる。

なお、『もらい泣きセールスマン』の元ネタはこの人物が主人公のタイトル漫画から。


「お礼に このスケスケおパンツをあげますケル」
  • スケスケおパンツの精 中見間出 透(なかみまで スケル)
単行本25巻『透明人間しんのすけ』に登場する精霊。
いくら『クレしん』定番のスケスケおパンツネタとはいえ、あまりにマニアックすぎなチョイスである。
外見はティンカー・ベルサイズの濃い顔の男性で、語尾に「ケル」を付ける。
風に飛ばされ、川に落ちそうになっていたみさえのスケスケおパンツをしんのすけがキャッチしたことで登場した。
しんのすけにはスケスケおパンツのピンチを救ってくれたお礼に、頭にかぶると3時間だけ透明人間になることができるパンツをプレゼントする。
もちろん、服は脱がないと服だけ空中に浮かぶことになっちゃうぞ。


「ウキ」
  • メガネザル
単行本29巻『メガネザルの恩返し』に登場する猿。
といっても現実のメガネザルとは異なり、ニホンザルのような姿をしている。目にかけているのは伊達眼鏡。
路上に落としたコンタクトレンズを探していた所にみさえが通りかかり、みさえがレンズを見つけたことで不思議な眼鏡をプレゼントする。
その眼鏡は自分の家族が超絶美形に見えるというものであり、しんのすけとひろしがとんでもなくイケメンに見えるようになったみさえは
今までの態度を一変し、二人を優しく扱うのだが……。


「ち~っす」
  • プチ悪魔
単行本32巻『プチ悪魔のサイミンシール』に登場する小悪魔。
何か書いて誰かの額に貼るとその通りになってしまう「サイミンシール」を家出したしんのすけに与える。
それを使ってひろしを色っぽい人妻、みさえを酔っ払い親父、ひまわりをへび、シロをしゃちほこにして楽しむしんのすけ*3
しかし、所詮は5歳児の書いたものであった為その内容が原因でかえって大変なことになってしまい、再び彼を頼るものの、プチ悪魔は「悪魔が良い子の願いを聞くわけねーじゃん!!」と一蹴してしまい…。


「あの子に渡して、よかったね」
「そうね」
  • 軍手の精「さくら一郎
単行本34巻『不思議な軍手』に登場する精霊コンビ。
路上に放置されていた軍手をしんのすけが拾ってピタリと合わせたことで登場した。
サイズはいわゆるティンカー・ベルのように小さく、さくらは金髪の美女、一郎はヤクザのような外見をしている男性。
ビニール手袋の精「ジュンとネネ」との戦いに敗れ、バラバラに封印されてしまっていたとのこと。
しんのすけに、「4回だけ効き目がある、どんなものも触っただけで直せる軍手」をプレゼントする。
4回しか使えないことを聞かされたしんのすけは家に帰って玩具やアイドルのポスターを修理しようとするが、うっかり3つまで使ってしまい……。


「復活!!」
「オラ死にそう」(しんのすけ)
  • 羽毛布団の精 西川
単行本39巻『空飛ぶフートン』に登場する精霊。でっぷりと太った、眼鏡をはめたワイシャツにネクタイ姿のオッサン。
3日間飲まず食わずで道端で行き倒れていた(しんのすけ曰く「そのわりには毎日食べすぎてる体型」)所にしんのすけが通りかかり、
たまたま持っていたチョコビを全部食ったことにより復活。
お礼に生きた羽毛布団「フートン」をプレゼントする。
最初は嫌がっていたしんのすけだったが、優しくてかわいい空飛ぶ羽毛布団フートンに野原一家は心を開いていく。
一方その頃、春日部では放火魔が出没していて……。
アニメでも放送されたが、展開が異なっており、特に終盤の展開は賛否両論となった。


「スーパーマンになってみないか?」
  • 倉亜久 兼人(くらあく けんと)
単行本40巻『スーパーサラリーマン HIROSHI』に登場する。
普段はごく普通の初老のサラリーマン風の男性だが、その正体は地球の平和を守るスーパーマンその人。最近は高齢のため引退を考えており、
たまたま出会ったひろしをスカウトしてスーパーマンの力の源「スーパーネクタイ」を貸し与える。
スーパーネクタイには筋力を66倍(ひろし曰く「微妙な倍率だな」)にする効果があり、
作中でこのネクタイを締めた倉亜久は土管を軽々と片手で持ち上げ、ひろしは素手で真正面から突っ込んできた車を止め
しんのすけは何十mも飛び上がって着地地点の車をペチャンコにしひまわりですら寝返りで壁をぶち抜くほど。
特に国からの謝礼金等はなく、時折お中元をもらったりする程度だが、女に不自由したことはなかったらしい。
ひろしは子供の頃の夢だったスーパーヒーローになれることを夢見てスーパーネクタイを締めて会社に行こうとするが、間違えて普通のネクタイを締めてしまう。
一方、しんのすけはスーパーネクタイを締めて街に出てしまい……。

ちなみに漫画アクションでは、クレしんと双璧を成す国民的漫画作者による、妻子持ちサラリーマンがスーパーマンとして活躍する漫画『中年スーパーマン左江内氏』*4が一時期連載されていたが、臼井先生が同作の存在を知っていたかは謎である。


「近頃の人間は時計を大事にしようとしない! 腕時計を使わずにケータイを見る始末だ」
  • 古時計の魔人 ケライヒン
単行本41巻『時を止める砂時計』に登場する魔人。
その名の通り大きなのっぽの古時計の人にそっくりな滅茶苦茶濃い顔をしており、常に上半身裸で胸毛ボーボー。あそこもボーボー。
ゴミ置き場に捨てられていた古時計に封印されていたが、しんのすけが長針と短針を合わせたことで封印が解ける。
しんのすけに冒頭の台詞を吐いてグチるが、その割に自身は腕時計を持っておらず携帯で時間を見ている。
解放してくれたお礼に、しんのすけにボタンを押せば時間を止めることができる砂時計をプレゼントする。
ただし、砂が全部落ち切ってしまうとその時点で消滅し、二度と使うことはできない。


「アンバランスでごめんね」
  • ミニスカポリスの精
単行本42巻『バック・トゥ・ザ・ビッグサイズ』に登場する精霊。
首から下は可憐なミニスカポリスだが、顔だけ不細工で無表情なオッサンというとんでもない姿。
池に捨てられていたミニスカポリスの写真集をしんのすけが偶然釣り上げたことで登場し、
しんのすけに「好きなものをミニミニサイズにする力」を与えた。
もう幾度となくこの展開につき合わされてきたしんのすけは「うーんなんかビミョーだぞ」と率直な感想を述べている。
家に帰ったしんのすけはみさえに叱られたことで悪態をつき、つい能力を使ってしまう。
そのせいでみさえは一寸法師のように小さくなってしまい、次々と大ピンチに。
やはりそこは5歳児であるしんのすけはみさえがいなくなったことに不安を抱き、「戻ってこないかな」と漏らし……。


「決して宮崎アニメのキャラではないよ」
  • シレン
単行本42巻『バック・トゥ・ザ・ビッグサイズ』に登場する試練の精霊。
しんのすけが使ったミニミニサイズの力を取り消すためにどこからともなく現れた、仮面をつけて全身を黒いマントで覆った謎の存在。
中身は毛深いらしい。
しんのすけに3つの試練と称したおしおき(「歯磨きした直後ミカンを食べる」「お笑い芸人のDVDを笑わずに最後まで観る」「部屋の片付け」)を敢行する。


「コレスッピンだし。寝起き画像見る?」
  • ガラケーの精霊 とし江
単行本新5巻『過去と話せるケータイ』に登場するガラケーの精霊。
旧では上記のケライヒン含むあらゆるキャラが全員と言っていいほどガラケーを使っていたことを思うと時代の流れを感じる。
(とし江と出会ったしんのすけは「PHSやポケベルの精霊もいるのかな」と発言していた)
しんのすけが路傍で拾ったガラケーから飛び出した妖精で、ティンカーベルサイズのコギャル。
外見は厚子ちゃん以上のゴテゴテの黒ギャルだが、本人はスッピンだと言い張る。
しんのすけに対し「過去の自分と会話することのできる魔法の携帯電話」を貸し与えた。
ちなみにクレしんの舞台になっているのは1996年である。


追記・修正はミニスカ姿で眼鏡をかけて軍手をはめガラケー片手に耳の上にマーカーペンを置きネクタイを締めてからパンツを被って行ってください。

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最終更新:2025年01月20日 01:14

*1 野原家がなにがしらのセールスを受ける→貧乏そうだからとあしらわれるパターンだとセールスマン側が直後に「商品見本が客の前で壊れる」などデカい失敗をする、野原家のニーズに応じて手を尽くそうとしてくれるセールスマンなら(結果的にひろしやみさえが買わなくても)大口契約を希望している顧客につく指示の電話が入って中座するか、野原家とは双方納得で取引中止としたうえで帰っていく、など

*2 ひろしの薄毛は初期からの設定であり、昼寝していた所をひまわりに抜かれて怒ったり、育毛シャンプーを全部しんのすけに使われて大泣きするといったエピソードがある。

*3 名前の通り、いわゆる催眠アプリみたいなものなのでひろしとみさえは「口調や行動、価値観がそういったものに変化する」、ひまわりとシロは「そういったポーズをとる」程度のものではある。劇場版とかでたまにある「本当にそれに変身してしまう」ではない

*4 しかも後にドラマ化された際のタイトルは『スーパーサラリーマン左江内氏』。