ウィン・D・ファンション

登録日:2010/05/18 Tue 11:22:35
更新日:2025/07/25 Fri 18:10:43
所要時間:約 3 分で読めます





殉ずるが良い


己の答に


ARMORED CORE for Answer』に登場するインテリオル・ユニオン所属のリンクス
カラードランクは3。
CV田中敦子


説明書では「ファッション」になっているが間違い。正しくはファション


【概要】

旧レオーネ・メカニカ社における最高位戦力と噂された霞スミカの後任というべきインテリオル・ユニオンの女性リンクス。
ランク3というだけあって実力は凄まじいものがあり、僚機選択画面の紹介文で「出撃数、成功率ともに完璧な、理想的な傭兵」とまで呼ばれているのは彼女くらいなもの。
EN系の高火力武器を巧みに扱い、『GAの災厄』とまで呼ばれ、前衛の兵士達からは蔑視も込めて「ブラス・メイデン」の異名で呼ばれる。
これは直訳すると“真鍮の乙女”の意で、レイテルパラッシュの真鍮(ブラス)色のカラーリングと、「ブラス(brass)」には“図々しい人”や“娼婦*1という意味のスラングでもあることに掛けたものと思われる。

性格はとにかく真面目で「硬い」人物。
カラードの傭兵のトップが開く集会「お茶会」には欠かさず参加し発言も積極的。
ACの傭兵では珍しいことに市民を守るための正義感に篤いという一面もあり、これは各ルート終盤で顕著。
レイヴンは基本的にあくまで金と自由意思で戦う傭兵であり、リンクスも元々は企業に所属する軍人、『fA』の時代でも名目上は傭兵だが実質的にはかつてのままと、いずれにせよ雇い主から「どこそこを攻撃してこい」または「あれこれを守ってこい」と言われてその通りにしに行くのが仕事である。
その点ウィンは体制側の戦士として、秩序とその庇護下にある市民を守るためにテロ対策に力を尽くすというレイヴンとはまるで対極、あくまで「秩序の維持」だけが目的の王小龍などとも異質な思考を持つ。

企業とORCA旅団との密約によりORCAを放置することが決定された際も「秩序側、曲がりなりにも市民の庇護者」としての役割を放棄しようという企業上層部に怒りを滲ませており*2
ダリオからは「何を気張ってやがる、メス猫が。所詮は傭兵だろうが」、ローディーからも「矜持が要るのか?」と問われて「…当たり前だろう そうでなければ、誰が殺しなど(ひさ)げるものか…」と、自分が傭兵であることを割り切っている彼らとは逆に誇りを持てない仕事への不満を堂々とぶちまけている。
結局この後ウィンは信頼できそうな伝手を辿り、クライアントの意向を無視して勝手に出撃するなど全く傭兵らしくない行動に出ており、
作戦参加率と成功率という意味では説明文の通り「理想的な傭兵」かもしれないが、本人の理想は「高潔な戦士」寄りなせいで精神的な適性という意味ではむしろ「傭兵」とは程遠い

全く歯に衣着せない率直な物言いもよく目立つ。
「お茶会」に全く出ないジェラルドの代役(?)として参加して来たダリオ・エンピオ「老人たちも存外不足か、とな」とダリオや彼を寄越したローゼン(オーメル)上層部を皮肉ったり、
明らかにネクストに乗り慣れていないドン・カーネル「あれでリンクスとはな 粗製とはこのことか」
前代未聞過ぎて大体みんな呆れ果てた反応を示す「パッチの命乞い」に対しても「阿呆だな」「まあいい、消えろ 興味もない」
(おそらくは)「核」や「大グレ」といった大火力な武装を有するがリンクスとしては劣等なメルツェル「…火力だけか それでORCAとは、笑わせる」
その後メルツェルとヴァオーが巨大なビル群で撃破された事に対して「デカい墓標だ」
……などなど、辛辣な発言が多くこう見えて割と皮肉屋でもある。

口癖は「不足」と「存外」。
前者は「力不足」だったり「過小」だったり逆に「必要十分」だったりと場面によって様々な意味で使い分けられている。


ここまでだとまるで前作のメアリーとは別の意味でキツい女性を想像しそうになるが、一方企業ルートの終盤に協力関係になる主人公に対しては別にそこまで親密な関係でもないこともあってかかなり優し気な口調で語り掛けて来る。
ウィンからの二人称もなんと「あなた」に変更される。
僚機として出撃する機会も何度もあるが、何れも自分が先に落ちたら非常に申し訳なさそうに撤退するという高慢な者の多いトップランカーの中では珍しく(仲間には)礼儀正しい面もある。


独立傭兵における最高位戦力、ロイ・ザーランドとは面識が有るようで、お互い愛称で呼び合う仲でもある。
傭兵としての実力も互いにかなり信頼している模様。


因みにプレイヤーからの愛称は『少佐』。
理由は推して知るべし。


【搭乗機体】

レイテルパラッシュ


「レイテル(Reiter)」はドイツ語で騎兵、「パラッシュ(Pallasch)」はハンガリー生まれの騎兵向けの片刃剣を指す。
ブロードソードの一種なのだがパラッシュは概ねサーベルと似た「護拳の付いた幅広の片刃剣」なので、エンブレムに描かれているのとは別。

インテリオルの最新鋭機Y11-LATONAをベースに軽レールガン「RG03-KAPTEYN」、レーザーブレード「LB-ELTANIN」、パルスキャノン「PC01-GEMMA」、そして忘れてはならない『少佐砲』こと、デュアルハイレーザーキャノン「HLC09-ACRUX」を装備している。
旧標準機からそのまま引き継いでいるFCSを除き全身『fA』の新作パーツ

「突撃」そして「近距離張り付き」を意識した軽量機であるラトナに、その特徴の一つである豊富な積載量を活かして重火器を多数盛り込んだ重武装機。
積載量とジェネレータが軽いのもあって多くのネクストが重量過多になった後期レギュでも範囲内に収まっているため全レギュレーション通して高速で飛び回る。
距離を離せば二連装のハイレーザーキャノンを同時に発射するという軽さの割に驚異の破壊力を持つ少佐砲が飛んで来る、距離を詰めれば瞬間火力の高いパルスとブレードが飛んで来る上にそもそも近距離帯は軽量機のフィールド、どんな距離でも高い威力と弾速とPA貫通力を併せ持つレールは一定以上の脅威……と距離を詰めるのが得意な上に最悪離れた距離帯でも戦える万能機である。
主力武器は勿論少佐砲だがそれ以外の武器も馬鹿にならず、少佐砲を撃ち切らせても油断は禁物。

一方、攻撃に振り切った性能故に防御力、特に実弾防御力は非常に低いため高威力の実弾武器が直撃したら一撃で瀕死に追い込まれかねない。
本人は心底呆れ見下げ果てているワンダフルボディに近付き過ぎた結果散弾バズの直撃を貰ってしまいすごすご撤退という様は誰もが一度は見たことがあるだろう。
またFCS「LAURA」は射撃戦特化型FCSであり、ブレードの使用にはあまり向いていない。その辺りはウィンの腕前でどうにかするつもりだったのだろうか。


戦闘面はお察しの通り、自身は前衛でドカスカやって僚機は必然的に援護に回ると言った戦闘スタイルを主軸に据えている。
遠距離からのミサイル支援に長けたロイのマイブリスとの相性はかなり高いと言える。



各ルートにおける少佐

ルートによって立ち位置が大分変わるが、殆どのルートにおいて重要なポジションに居る。
ぶっちゃけもう一人の主人公。

【企業ルート】

ORCA旅団が旧GA本社「ビッグボックス」を拠点としていることが判明し早速壊滅に向かう「ORCA旅団本隊撃破」にGA所属故に勝手知ったるローディーを差し置いて立候補、自らの手で速攻で片を付けるべく主人公と共に出撃する。
迎撃に出たメルツェルとヴァオーを撃破し、いよいよ残りも……という所で企業上層部はメルツェルとの裏取引によりORCA旅団を黙認することが決定されてしまう。

それに納得できないウィンは企業を無視して主人公に個人的に協力を依頼、独断で共にクラニアムに向かう。
その際、

もうすぐクラニアム中枢だ
貴方には…感謝している
嬉しかったよ

というらしからぬ優しい口調で主人公に語り掛けて来る。

ミッション中は真改は自機に突撃して来るので大抵テルミドールはウィンが相手取ることになるが、防御力の低い軽量二脚機かつ火力に乏しいアンサングを相手にウィンが負けることは滅多にない
オッツダルヴァ真改を倒してクレイドルの人々を救うと、企業に無断で勝手に行動しつつも結果オーライということでかウィンと主人公は最悪のテロ組織から市民を守った正義のヒーローと讃えられるところで終幕。

「人類」を守ることを目指したテルミドールに「人類など、どこにもいないさ」と言い放った彼女が守りたかったのは「人類」などという漠然としたものの為の生贄にされかかっている「今を生きる一般市民」だったのは依頼文などを見ても明白。
そんな彼女が世界の真相をどこまで知っていたかは謎である。


【ORCAルート】

単独でか僚機と共にかは不明だがこちらのルートでもビッグボックスでメルツェルを破っている。

更にORCA旅団の最終目標、アルテリア・クラニアムを制圧すべく向かったテルミドールはウィンとロイに撃破され、テルミドールは主人公に全てを託す。
それを受けた主人公はクラニアムに向かい、迎撃に出た少佐とロイを相手に。
なおロイがウィンに着いたのは曰く「美人の涙が最優先」。彼の言う通りウィンが美女ということなのか単なるいつもの軽口なのか。

「お客さんだぜ、ウィンディー」

「貴様も、人類のためには人の死を厭わないか」

「ならば自分で、死を実践してみせろ テルミドールと同じようにな」


当ミッション「アルテリア・クラニアム襲撃」は普通にどころか結構難しい。
どちらも強烈な攻撃力のデュアルハイレーザーを装備した重武装機で、それ以外も高火力のミサイルにパルスキャノンの嵐と、まともな機体で「防御力で耐えて凌ぐ」のは難しい。
ハイレーザーには不向きな近距離に張り付いても、レイテルパラッシュにはパルスとブレード、マイブリスにはガトリングガンがあるので近付いても怖い。

……が、登場後にスタート地点の狭い通路に逃げ込むと、何故か入口でロイと共にウロウロする。スナイパーライフルやスナイパーキャノンのカモ。長距離狙撃アセンならノーダメ撃破は軽い。
中央の大きな段差の向こう側に行った場合も同様。
ハード時は水没王子が追加されるが、同じ戦術で楽勝。

正々堂々と挑むならEN防御力を高め、まずは動きの鈍いマイブリスを速攻で撃破しウィンとの一対一に持ち込むのがお勧め。
武装も、天敵とも言える散弾バズーカやそれに近い性質を持つスラッグガン等の瞬間火力に秀でた実弾武器を備えるのが良いだろう。

撃破された後、ウィンは「1つの生命を想う それを愚かと呼ぶか」と、一般市民を犠牲にしようとするORCA旅団とそれを野放しにすることを決定した企業上層部を歪んでいると称しながら事切れる。


【虐殺ルート】

オールドキングと共に一般市民約1億人の虐殺を行った主人公は偽の依頼「アルテリア・カーパルス占拠」で呼び出され、リリウム、ローディー、ORCA旅団に戻ったオッツダルヴァ、そしてウィンというカラードのランク1から4勢揃いという豪華メンバーにて二人の抹殺に挑む。
ハード時は元ナンバー16、セレン・ヘイズも参戦する。

「危険極まりない殺戮者」の粛正というお題目を掲げる彼らをオールドキングは「選んで殺すのが、そんなに上等かね」と皮肉るが、ウィンは冷めた口調とも常軌を逸した凶行に対する怒りともショックとも取れる静かな口調で「殺しすぎる、お前等は」と言い放つ。

ウィンに撃墜されると「死んだか…慰めにもならん」と、やはり静かな怒りを滲ませる。
このミッションでもやはりレイテルパラッシュの火力は脅威だが、今回は強力な実弾武器を持つローディーも参加しているのでE防に偏らせすぎる訳にも行かないのが悩ましい。
何にせよ4機の中でも特に火力が高い本機は真っ先に落としたい。



余談

名前の由来はイギリスのファンタジー小説『魔法の国ザンス』の主人公の妻カメレオンと思われる。
月の満ち欠けと連動して知性・性格と容姿が反比例する魔法がかけられており、時期によってあまりに別人過ぎるので美しいが馬鹿な時は「ウィン」、中間時は「ディー」、醜いが賢い時は「ファンション」とそれぞれ名乗っている。

『fA』とは言ってみれば「人類の将来的な可能性」と「大多数の市民の今現在」を秤にかける壮大なトロッコ問題であり、どちらも立場によって「美しいが馬鹿な決断」とも「醜いが賢い決断」とも受け取れる。
本作の3つのストーリーの結末の全てに関わるウィンにはぴったりとも皮肉気味な名前とも取れる。





言葉を飾ることに、意味はない

君の追記修正を待つだけだ


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月25日 18:10

*1 正確には「brass nail」。

*2 理由の説明は受けていないのでメルツェルとの密約があったことは知らない筈だが、何かしらの取り引きがあったことを察しているかのような様子もある。