登録日:2011/11/21 Mon 12:45:59
更新日:2025/01/10 Fri 09:27:01
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…時に忘れ去られた者は静かに滅びを受け入れよ
この世において、全てはかりそめの客…
『吸血鬼ハンターD』は菊池秀行の長編小説であり彼の代表作。
表紙、挿絵は天野喜孝が全て担当している。
シリーズ累計1000万部以上を誇る、SFと西部劇とオカルトアクションを融合した唯一無二の世界観で人気を博す、菊地秀行氏の『吸血鬼ハンターD』シリーズ。
現在42巻まで発売されており、初刊である「吸血鬼ハンターD」(1983年1月)からすでに40年以上が経ってもなお連載中という大長編作品である。
2023年、遂に生誕40周年を迎えた。
「狼男」や「フランケンシュタインの怪物」などと並ぶ、古典的ホラー・モンスターの代表格「
吸血鬼」は、吸血鬼映画の原点にして最高傑作、1931年に公開されたホラー映画『魔人ドラキュラ』が製作されて以来、『吸血鬼ドラキュラ(1958年)』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ドラキュラ(1992年)』『ブレイド』『トワイライト〜初恋〜』など、幾度にも渡って描かれ続けてきた不朽のテーマであり、世界的にも知名度の高いモンスターでもある。
一定の地域に集中してではなく、世界中いたるところに吸血鬼伝説がある。
同じく古典的モンスターであるフランケンシュタインの怪物よりも、吸血鬼のほうが圧倒的に多い。
歴史を振り返ると、古くから「吸血鬼」伝説は世界の至る所にあった。
それも民間伝承だけでなく、現代の小説に至るまで。
なにせエイブラハム・リンカーンが吸血鬼ハンターであったという話まで作られるほどである。
何故昔から吸血鬼伝説は世界各地に存在するのか。
恐ろしいはずなのに、なぜ吸血鬼は我々を惹きつけてやまないのか。
死者が血を求めて動きまわるのは、ただそうするだけではなく、動機がある。
生きていた時の怨みや悲劇、その土地にまつわる因縁。
体に喰らいつくという性的な意味。
血を流すことで象徴される生と死。
そういった死者を吸血鬼にさせる理由が、フランケンシュタインの怪物以上に、私たち人間の感情や身体感覚を捉え続けているがために、我々は吸血鬼の物語に惹かれるのだろう。
そんな吸血鬼を日本を代表する人気伝奇作家・菊地秀行氏が、独自の視点から新しいゴシック
ロマン・ヒーローとして誕生させたのが『吸血鬼ハンター“D”』であった。
これまでの欧米の伝統的な吸血鬼観を踏襲しつつも、魔力と知識によって世界を支配し、数多いる魔の頂点に君臨する存在という独自の吸血鬼像は国内外問わず以後の吸血鬼作品に大きな影響を与えている。
[影響を受けた作品]
代表的なもので
…等々でほとんどの後発の作品は大なり小なり影響を受けている。
[あらすじ]
…かつて1万年もの間、地上に君臨し栄華を極めた「貴族」達の世も終わりを迎え地上は再び人類の時代を迎えようとしていた…
しかしそれでもなお貴族の脅威は辺境において猛威を奮い、人々の生活を脅かし続け、それは人を超えた能力を持つ「吸血鬼ハンター」の誕生を促すことになった。
その吸血鬼ハンターの中で最強と称される一人の吸血鬼ハンターがいた。
トラベラーズハットをかぶり、背中に長刀を背負った美貌の青年の名はD。
彼は貴族と人間の間に生まれ堕ちた者、ダンピールであった…
[世界観]
その中世的な文化や魔物の存在といった世界観から間違えやすいが、吸血鬼ハンターDの時代は西暦で換算するなら、
西暦12000年代という他の文学作品と比べても屈指の超未来である。
Dの世界では吸血鬼が地球を支配し、人間は食料同然に扱われている。
劇中の文化や生活が中世的なのはあくまで貴族文化の名残りであり、そのため劇中では超科学の遺産がたびたび登場する。
例えば、衛星軌道上や冥王星からの狙撃を得意とする敵や星間転送装置によって戦場が一瞬で火星に移り変わるなど、一場面ごとに予測不能な展開が次々と繰り広げられる。
吸血鬼ハンター第42作品目『D-魔王谷妖闘記』では、Dは一億光年の彼方にある星に飛ばされたが帰還した(いったいどうやって帰還したのか、描写が一切ないので不明)。
西暦一二〇〇〇年代――人類による核戦争後に、世界に覇を唱えたのは、〈貴族〉こと吸血鬼であった。
その不死と不老をもって宇宙すら我が物としかけた闇の生きものたちは、しかし、やがて謎の種的衰退に陥り、塵芥のごとく扱っていた〈人間〉たちの反抗を許すことになる。
また、作中では吸血鬼は外宇宙生命体(OSB:アウター・スペース・ビーイング)と地球の覇権を巡って戦争までしている。
OSBは『
遊星からの物体X』(原題:The Thing)に登場する異星生物がモデルだと思われる。
他の生物を吸収して姿をコピーできる点や、取り込んだ生物の記憶まで受け継ぐ性質はまさに「遊星からの物体X」である。
作中、吸血鬼は人間よりヒエラルキーが高い存在で「貴族」と呼ばれている。
超絶的な科学力をさりげなく駆使し、荘厳華麗でありながらこの世に生きる生命として滅びに向かう悲哀を漂わせつつ、人間を震え上がらせている貴族たちは、不死性や再生能力といった吸血鬼の特性に加えて、科学技術を駆使して高度な文明を築いている。
貴族が生物工学によって創り出した魔獣や邪神なども多数登場する。
Dの世界の時代設定はおおむね
1999年以前 人類支配を企む吸血鬼とまだ支配には早いという吸血鬼同士の戦い
1999年 世界は核の炎に包まれる、人類衰退
2000年代 貴族、地上へと降臨、覇者として君臨する
魔物(ミュータント)放射能の影響により誕生
5000年代 OSB(外宇宙生命体)が外宇宙より侵攻、以後3000年間にわたる戦争が続く
8000年代 OSB謎の撤退、貴族側の勝利
9000年代 地球大改造計画始まる 貴族文化絶頂期へ
11000年代 人類の反乱始まる、貴族、支配者からの転落
12000年代 「吸血鬼ハンターD」開始、人類の時代
貴族、滅亡への佳境へ
…といった具合である。
1万年以上先の未来なためすでに空間や時間をも超越する技術が開発されており、運命すらも数学的に解明される程に科学は進んでいるのだが、あくまでそれを扱えるのは貴族だけであり、現在では半ばロストテクノロジーと化しており人類の生活水準は大半が中世のレベルのままである。
人間たちは反旗を翻したとは言え、依然貴族に支配され続けている。
一方の吸血鬼も永遠の生命に退廃し、繁栄の全盛期から徐々に下っている印象を受ける。
貴族の中には永遠の生命に嫌気がさし、邪神を召喚して地球上の生命ごと貴族も滅ぶ計画を遂行するものまで現れるようになった。
当然、その計画は吸血鬼たちの支配者〈神祖〉によって阻止され、邪神は封印された。
吸血鬼ハンター第41作品目『D-暁影魔団』では、Dの世界においてある重要な設定が判明した。
Dの世界の宇宙には終着点があることと、Dでも心が折れ、生きる気力を失くしてしまったほどのロクでもない地獄が存在すること。
宇宙の果てで見てはいけないもの(見ただけで死んでしまうほど恐ろしいもの)を見て舞い戻ってきた女貴族ギャラクシアも登場した。
宇宙の果てで見たものとは、果たしてどれほどの絶望をもたらすものだったのか……。
『吸血鬼ハンターD』の世界観にも、外宇宙生命体(OSB=Outer Space Being)の襲来が関わっているなど、『吸血鬼ハンターD』はクトゥルフ神話と関係がある。
凄腕の吸血鬼ハンター、主人公“D”も「邪神の落とし子」みたいな要素が多い。
Dの世界にはクトゥルフ神話の邪神が存在することは、「吸血鬼ハンターD」の世界を舞台に、OSB<外宇宙生命体>との三千年戦争を戦っていた貴族=吸血鬼の側から物語を構築する姉妹編シリーズ「貴族グレイランサー」で語られている。
そもそも、なぜDの世界にクトゥルフ神話の邪神が存在するのかというと以下の通りである。
人類の破滅をもたらした核戦争後、新たな世界を構成した貴族たちは、彼らの血に脈々と流れる“過去”への執着を次々と具現化していった。
人間の都市の廃墟は見渡す限りの荒野に変わり、魔性の棲むべき森と山々が点綴された。
貴族たちはここに人口の魔獣、妖物を配置したのである。
山が手足を得て動き、川は流れを変え、海は大陸ほどの眼を持った。
火を吐く龍は三つの首の巨鳥の餌となり、その血と肉を求めて地下の魔物や妖精たちが入り乱れた。一千年の間に世界へばら撒かれた妖物の数は一二四三万七七八種類と言われる。
この行為は、思わぬ副産物を生み出した。
貴族たちの〈人工妖物〉とは別に、本来この星に存在し身を潜めていた魔性も甦ったのである。
その最たる存在が、地水火風を司る“神”たちであり、“風の神イタカ”もその一柱であった。
貴族たちも、その斃し方を知らぬ“神”との遭遇は、杭と刃以上に貴族たちを危うくした。
“神”は彼らを殺そうとはしなかった。連れ去って帰さなかったのである。貴族たちは死よりも失踪を恐れた。
……以上、『貴族グレイランサー』「第六章 慈悲深き領主」より引用。
つまり、貴族が高度な生物工学によって魔獣や妖物を創り、地球を魔窟にしたことで、太古から地球で眠っていた邪神が活動し始めたからだった。
「D-邪神砦」にはその名も“クルル”という触手を持つ邪神が登場する。
まぁ菊地秀行先生が選んだ神さまだから当然某創作神話的な邪神なわけで……。
反神祖派の貴族が召還した“神”。不死の貴族が願う滅亡とは地球そのものの死滅。
“神祖”の手で封印された“神”を邪神と呼び、形態的な特徴の触手を備え、これに追い打ちをかけるように「クルル…」と来れば、もう疑う余地はないだろう。
クルルとは「何のこと?」と思うかもしれないが、
クトゥルフのことである。
クトゥルフやクトゥルーが一般的な呼称だが、
日本語では他にもクルルゥやクルウルフ、ク・リトル・リトル、クルウルウ、チュールー、ズールー、クートゥリュウ、トゥートゥーなどとも表記される。
そもそも、クトゥルフ神話の邪神の名称は本来人間には解読・発音不能の呼称を強引に人間の言語に直したと言う設定なので正しい発音というものがなく(人間では正しく発音できない)、名前が統一されていないのもその為。
菊地秀行はクトゥルフと
ヨグ=ソトースを互角の敵対者として自分の作品に登場させることが多い(作品としては『妖神グルメ』『ヨグ=ソトース戦車隊』『美凶神YIG』『魔界都市』などが該当する)。
ということは〈神祖〉はヨグ=ソトース(もしくはそれに相当する存在)なのだろうか?
もしかしたら〈神祖〉はナイアルラトホテップ(もしくはそれに相当する存在)かもしれない。
ナイアルラトホテップは「混沌」そのもの。
吸血鬼ハンター第10作品目の「D-双影の騎士」では、〈神祖〉が混沌の領域に存在し、ミアを召喚したことと、吸血鬼ハンター第13作品目の「D-邪神砦」で、貴族たちが〈神祖〉を「神」と崇めていることが判明。
そして、吸血鬼ハンター第24作品目の「D-貴族戦線」では、〈神祖〉の四体の巨像には頭はあるが顔はない=「無貌」であった。
無貌の神は、クトゥルフ神話に登場するナイアルラトホテップの異名。
ナイアルラトホテップは、不思議な科学や魔法のような知識を持つ謎の人物としてクトゥルフ神話に登場する。
さらに、ナイアルラトホテップの化身が女性を孕ませる描写は珍しくない。
〈神祖〉は貴族ですら理解不能な超技術や知識を持つ謎の人物として作品に登場する、吸血鬼ハンター第2作品目『風立ちて“D”』では、〈神祖〉が無数の女性(少なくとも数千万)と交接をし、数十万の赤児(失敗作)が誕生したことが判明している、様々な魔術や秘法、機械などを登場人物に与える、姿を変えることが出来る、シルエットこそ人型であるが、闇のように黒い姿で現れる、夢に現れることもある、など共通項が多い。
能力も含めて、ナイアルラトホテップと共通点が多く、〈神祖〉は『吸血鬼ハンターD』版ナイアルラトホテップとも呼べる。
とは言え、現在までに判明した情報・設定による推測であり、まだ確定したわけではない。
また、「貴族グレイランサー」では映画『バンパイアハンターD』(英題:Vampire Hunter D: Bloodlust)で“D”と死闘を繰り広げた貴族マイエルリンクが“風の邪神イタカ”と対峙した。
作中では地水火風を司る神が甦ったとされているため、今後の作品でナイアルラトホテップや
クトゥグア、ハスター、ヨグ=ソトース、
シュブ=ニグラスなども登場するかもしれない。
[登場人物]
辺境を旅する最強のバンパイアハンター
鍔広の旅人帽に曲線のかかった長刀を背負った黒衣を纏う絶世の美青年、胸には貴族の技術を無効化する青いペンダントを下げている。
貴族と人間との間に生まれたダンピール。
貴族の天敵である日光を一定時間耐えられる、貴族と渡り合える身体能力を持つなど貴族と人間両方の長所を兼ね備える。
しかし、それ故にどちらの世界にも属する事のできない孤高の狩人。
非常に寡黙であり、2行以上の言葉を話すことも稀、滅多に帽子を脱ぐ事もない。
だが、わずかな会話や時折見せる仕種から、本当は情に熱く優しい青年であり、自分が認めた相手には笑顔を見せる事がある。
すでに1千年以上生きており、どこか達観したものの見方をしている。
その卓絶した剣技と、左手に寄生する人面疽の魔力、そして彼自身に秘められた血の力によって無敵の力を持ち、その名は辺境中に轟いている。
鍔広の旅人帽と長衣を包むロングコート、胸に輝く青いペンダント。
背には一振りの長剣。
月光すら恥じらう超絶な美貌の持ち主。
男らしく濃く太い眉、すらりとした鼻梁、意志の強さを表すきりりと締まった唇。
切れ長の黒い瞳は憂いを秘めて妖しく輝き、美の結晶を完全に仕上げる。
その錆を含んだ声は、聞くものをうっとりとさせる。
男も女も老人も子供も、Dの美貌の前には顔を赤らめ目を伏せる。
Dの顔面を正面から1秒以上見つめられる人間は存在しない。
Dの美貌を認識したとたん、脳が蕩けてしまうからだ。
彼は貴族と人間のハーフ――貴族の闇と人間の光を併せ持つ存在。
過酷な運命はDに孤独の試練を与えた。
吸血鬼である貴族の宿命か、ときには吸血本能に襲われるが、壮絶な自制心で抑え込む。
ちなみに欲情すると吸血したくなる。
その身を捧げる美女はいくらでもいたが、一度たりとも牙を向けなかった。鉄壁の精神力だ。
きわめて無口で冷静沈着。無愛想で鉄仮面のように表情も変わらない。
ごくまれに微かな笑が唇に浮かぶこともある。
冷徹なようでいて、実は面倒見がいい。とくに健気な少年や可憐な少女に弱い。
Dはとにかく強い。
凄絶な剣技は速く鋭く、不死である貴族の再生能力をも奪う。
白木の投げ針は闇を絶ち、貴族の心臓を貫く。
両目から閃く深紅の光には催眠効果があり、見るものを支配下に置く。
Dの眼の光――“神祖”が与えた力なのだろうか。
ギルゼン公爵曰く、「おお、その眼……にらまれただけで、身体のない身体が引き裂かれそうだ。――そうだ、もしや……もしや、あなたは……あなた様は……」。
そして何よりの武器はその美貌である。
天工が彫り上げた美の結晶のような美しさに、容姿の優れた貴族でさえ、声もなくひれ伏す。
飢餓に狂った凶獣は頬を染め、吹く風もDの顔に触れれば恍惚となる。
ミランダ公爵夫人曰く、「まるで――まるで、あの御方の若い頃を見るような――いえ、私がはじめて拝謁の栄に浴したときはもう、大宇宙を思わせるご風采でしたから、想像でしかありませぬが、まこと、若ければこの騎士殿のような――」、ギルゼン公爵曰く、「おれは“御神祖”に拝謁したことがある。おまえによく――」とのこと。
絶対的な美貌と圧倒的な強さを併せ持つ、“神祖”に「ただひとつの成功例」と言わしめた、闇色の血が相応しい男――それがD。
ダンピールであるがゆえに貴族からは裏切り者と蔑まれ、人間からは悪鬼として憎悪される。
Dはその卓越した能力と引き換えに、深い孤独を抱えて生きねばならない。
そんな孤独を和らげるのは、左手に棲む人面疽の存在。
陽光の下で活動するDは、ときに体調不良を起こす。
左手は“地水火風”の四大元素をエネルギー源にDの体力を復活させる。
破損、負傷は治療させ、死滅した肉体をも再生する。
豊富な知識でDにアドバイスをあたえ、ときに励まし、叱咤する。
下品で口は悪いが、ここ一番で役に立つ有能な相棒である。
Dはクールでストイック。
ハンターとして徹底したプロ意識のもと、仕事の邪魔になるものは絶世の美女でも冷徹に排除する。
だが、辺境の地で必死に生きる人間たちには限りなく優しい。
貴族の牙から姉を守ろうとする少年に手を差し伸べ、村のために闘う少女を助ける。
ダンピールのDは、決して人間の社会に受け入れられることはない。
それでも人の温かさに惹かれ共鳴する。
そして美しい唇に微笑みが浮かぶことがある。
Dの微笑みを見たものは、繰り返し、それを浮かばせたのは自分だと思い出し、真っ直ぐな生き方を貫くという。
貴族ある限り、Dは左手の相棒と荒野をさすらう。
孤高の後ろ姿に問うてみる。
Dよ、何を求めて何処へゆくのか。ゆく手には何が待っているのか。
Dの左手に寄生する謎の疽。
寡黙なDに代わって皮肉や憎まれ口をたたき、読者にDに代わって解説も行うジジィ。
実は四大元素を吸収し生命エネルギーを生成したり、この世のあらゆるものを吸収できるという作中屈指のチート能力を持つ存在。
触れた相手の思考も読みとれる事もできるがスケベでもある。
こいつがいなかったらDの旅は第1巻で強制終了していた。
神祖を“やつ”と蔑んだり、“あの方”と呼んで畏怖したり、複雑な感情を抱いている。
Dと共棲関係にありながら、まだ隠している秘密があるようだ。
『D-双影の騎士』に登場したDの双子の兄弟…というよりもう一人のD。
同じ条件で、同じ母の胎内に育ち、千分の一秒と違わないタイミングで生まれたDの片割れ。
自己陶酔癖を持つDの双生児。鏡を見て毎回うっとりしていた。
世界の覇権を貴族の手に収めるようにプログラムされている。
大洞窟の大施設でDとともに生まれたD&Dダッシュは、まったく同じ条件で同じ女性の子宮の中で育ち、千分の一秒と違わぬタイミングで分娩されたが、背中が癒着していたために母親の胎内から摘出手術で取り上げられた。
そっくりなのは、美貌と身体能力だけ。性格はまるで違う。
陽気でおしゃべり、感情の起伏が激しく、なぜか言葉は江戸っ子調子。
Dと同じ顔で怒ったり拗ねたり照れたりする。
自分の美貌にうっとりするナルシスト。
もちろん“左手”は普通の手。
Dには世界が与えら、 自分は封じられたことを根に持っている。
神祖の跡取りとして世界制覇を志す。
大洞窟の大施設を作動させる準備のため、大陥没を起こした。
ジャンケンは弱いが約束は守るタイプらしい。
その袖口には
モーターつきの投射器が仕込まれていて、千分の一ミクロンの不可視鋼線を投射する。
その衣類はDのものと異なり、再生能力を持った素材でできている。
神祖の後継者を目論み、ムマの地でDと対決するが、Dの左手を計算に入れていなかったために敗れ去る。
貴族たちの頂点に君臨する絶対的覇者。
この作品における最大のキーパーソン。
貴族たちからは神の如く崇められており、彼らの文明と世界を築き、支配者としての法(のり)を完成させた(『吸血鬼ハンター"D"』参照)。
人類の衰退以前から存在し、衰退後は地上へと降臨し貴族を栄華へと導いた。
意外と名君らしく、吸血鬼と人類との宥和政策を行うも失敗する。
いかなる貴族も畏敬する君臨者。
“あのお方、ド○○○○伯爵”その名を口にするとき、いかなる貴族も深い畏敬の念を表す。
まさに神のごとき存在。
相貌はDそっくり、身長2メートルの美丈夫(『D-血闘譜』に登場したマキューラ男爵のセリフによれば、神祖の身の丈は二メートルらしい)。
Dの出生の秘密は“神祖”にあるのは明白。
Dは“神祖”を探し出し、(たぶん)滅ぼすために辺境を旅している。
旅の先々で“神祖”の足跡を見出すが、いまだ実体は確認できていない。
D曰く「すべては彼奴から始まったのだ。すべての夢も、すべての悲劇も」とのこと(『風立ちて“D”』参照)。
神祖の目的は
新しい血族の誕生(『D-ひねくれた貴公子』参照)。
しかし、成功例はたった1人だけ……。
全ての貴族から畏敬の念を持って崇められているものの、滅多に人前に姿を現すことはなく貴族の間でも半ばその存在は伝説と化している。
貴族と人間との融合による完璧な生命の誕生を目指していたようだが…
上記とは別に
- 「運命」の数学的解析を可能にし、それを全文明の歴史的必然に重ね合わせた貴族科学院が、その研究成果の発表をすべて中止し、非難の矢面に立たされた時に、千年ぶりに姿を見せ、事態を収拾した
- 三百二十年前、地中より噴出した恐るべき毒素で半数が死に絶え、残りも全身を腐り爛らせ死を待つばかりとなったバルバロイの里の住人の命を救った
- およそ二百年前、北方大山脈(ノース・グレート・マウンテン)の麓近くで移動街区に乗り込んですぐ、町長ミンに向かって「この街の住人から、知力、体力ともに秀れた男女を五名ずつ供出せよ」「余の申し出を受ければ、一族に千年の栄光あらん。拒否すれば、この街は未来永劫呪われた存在として、死の荒野をさまようであろう」――と宣言した
- 秋のある日に「村」から少し離れた森の中で十七歳の少女シヴィル・シュミットを吸血した
- 人間や貴族をあまりにも殺しすぎる貴族を粛清
- 凍てついた最北の海辺の村フローレンスでは、人間に暴虐の限りをつくした貴族、マインスター男爵を滅ぼし海に封じ込めた
- ジャン・ドゥ=カリオールに直接、魔法手術の手ほどきを授けた
- 三十年前、クラウハウゼン村で出会った駆け出しのチンピラだったフィッシャー・ラグーンに、独力でビッグ・バン加速器を製作できる理論を教えた
- 実験のために自分の精子を提供したフィッシャー・ラグーンに「神祖のお墨付き」を与えた
- 地球どころか全宇宙を永遠の闇に閉ざす兵器の使用を禁止
- 貴族の下僕用サイボーグ技師にムマという城砦を造らせた
- 神祖直属のエネルギー開発センターに五十年をかけて揺曳炉(エネルギー炉)を開発させた
- 完成までに貴族十万人近くが衰弱死したエネルギー炉の開発記録の破棄を命じた
- セドク村から百キロほど北に住む占い師ノア・シモンの一人娘、ミア・シモンの血を吸い、Dと彼の双生児「にせD」のうち生き残った方を守る役目を与えた
- 神祖の技術が封鎖された時期、謁見(面会)に訪れたローレンス・ヴァルキュア大公に「あること」を伝えた
- 最初は神祖に「成功例」と言われたにも関わらず、五千年後にはそんな事は言われなくなり、まことしやかに「唯一の成功例」というものができたという噂が聞こえ始め、それに怒り、絶望し、憎んだ結果、反乱を起こしたヴァルキュアを宇宙に追放した
- 別の太陽系から導かれた直径1万Kmの小惑星を地球激突からそらす
- アカシア記録、俗に言う“アカシック・レコード”に手を加え、他者の運命を操り自分の思い通りに行動させた(おそらくDと異なり保管庫に赴く必要がない)
- 五千年前、宇宙に放逐された“絶対貴族”を宇宙から地球へと戻した(絶対貴族と呼ばれ、神祖に星のかなたに封印されたヴァルキュアは、神祖の意向により再び地上に返され、地球には神祖が「唯一の成功例」と呼ぶ「D」という存在がいる――つまるところ、ヴァルキュアの役目はその「成功例」たるDに「斃されるため」だけに宇宙から無理やり帰還させられた)
- 先史時代の伝説の名工ダイダロスの手で造られた「ミノス王の迷路」を、忠実に再現
- 某創作神話的な邪神とそれを崇める貴族を粛清
- 疑似吸血鬼率いる無法者集団<黒死団>に自らの血を与えた
- 一万年前、銀河の彼方から地上にやって来た侵略者――異星人の存在を探り当て迎え撃った
- 上記の異星人の化学兵器は貴族を凌駕していたが、いかなる兵器も不死者である貴族を斃せなかったことで、貴族は異星人の宇宙船を破壊し、数百名を殲滅、十名足らずを捕虜にしたが、神祖は異星人の即刻処分を命じた(ギルゼン公爵曰く、「“神祖”が即刻処分を命じたのは、恐らく奴らの技術を自分以外の者が身につけるのを嫌ってのことだろう。私が地の底深くに埋められたのは、反神祖の戦いの先鋒に立ったこともあるが、『これ』に背いたからよ」とのこと)
- 上記の命令に逆らって、異星の技術を身につけたギルゼン公爵を暗く冷たい地の底に埋めた
- 人間との融和政策を打ち出した(『D-魔道衆』参照)
- かつて貴族の研究室があった孤島で一度Dに倒され、灰となった貴族を復活させた(『D-不死者島』参照)
- 一度、自らの手で星間船を組み立てて一年ほど宇宙を旅し、なぜか地球ではなく、火星と木星の間にある小惑星帯のひとつ(研究所)に帰還してから、OSBと貴族と人間の遺伝子を操作し、何者かを作り出した
- 上記の実験で誕生した生命体のせいで十日もしないうちに、小惑星がひとつ消滅したため、OSBと貴族と人間の三種の遺伝子合成の研究を永遠に封じた
- 貴族を纏めて滅ぼせる究極の兵器を開発
- 一万年ほど前に実験施設を造った
などを行っている。
言ってしまっては身も蓋もないが、早い話がドラキュラ伯爵のこと。
いかなる大貴族も畏敬の念を払う最高権威、まさに神のごとき存在である。
小説の文中には「ドラ」までが台詞として登場しただけで、分かっているが敢えて明言してはいけない「名前」として封印されている。
ミナへの執着が原因で一度は灰になる。貴族科学院で「運命」をめぐる騒動の時、千年ぶりに姿を現したとの記述があり、どうやら灰になった後で蘇ったらしい。
身長は二メートルを越す。広い肩幅、胸の広さと厚さもかなりあるらしい。
〈神祖〉の眼は燃える宝石のように赤い。
タエ曰く、「……暗闇の中で、いつも、いつも……二つの赤い眼だけが宝石みたいに燃えて、あたしを見つめていました……」「……真っ赤で、鋭い……こちらの身もこころも呑みこんでしまうような眼です……一度見つめられると……もう……何も考えられなくなって……。――そう言えば……」「そう言えば……どこか、あなたに……何故かしら?……そうだわ……とっても、哀しそうな」、サベナ曰く、「……大きな方……でした。……とても、大きな……はじめて会ったとき……私は何も言えずに……あの方を……眺めていたわ……あの方も、じっと……私を……燃える石みたいな紅い眼で……ああ、あの情熱……世界の何にも替えられない……」――この二人の台詞から分かるように、神祖の赤眼にもDの赤眼と同じ催眠効果がある。
貴族の最高位たる〈神祖〉は、ひとりの係累も持たぬ孤高の存在(『D-黄金魔』参照)。
“貴族”は一万年前に忽然として誕生した新興の種ではなく、地球創成の頃に始祖を置く、人間の歴史など及びもつかない古の種族であることが、『D‐白魔山』に登場したギルゼン公爵の口から語られたことにより、貴族は数十億年の歴史を持つようである。
少なくとも〈神祖〉は40億年以上の歴史(地球の歴史が46億年)を持つことは間違いない。
彼は少なくとも地球創成=地球の誕生時(約46億年前)から存在していたので、実は地球外生命体、あるいは外宇宙の“神”である可能性もある。
〈神祖〉は地球の誕生と同時に発生した存在なのか、外宇宙から創世して間もない地球に飛来した存在なのか、それすらも定かではない。
人間ではないが、貴族から信仰を受けたのなら、彼は吸血鬼ではなく――神と呼ぶべきだろう。
〈神祖〉の出自はきわめて神秘的な謎に包まれている。
これも噂だが、いわゆる“神祖”と呼ばれる伝説の貴族の王が、ある呪われた実験に憂身をやつしていた。
一般の貴族から見ても、“神祖”という大吸血鬼は理解しがたい存在だったと、貴族の遺した資料や手記にある。
“神祖”の呪われた実験は、大陸で一億近い人命を奪ったが、ただひとつ、成功例があったそうだ(『D-邪王星団』参照)。
全貴族に君臨したこの大魔王は、五千年ほど前に忽然と姿を消したが、その寸前まで極秘の実験を行っていたということが、卑俗な歌謡や言い伝えに残っている。しかも、最近の研究によると、貴族と人間双方の根本的存在にかかわる大実験であったという。
数千を数える学者から山師までが、〈神祖〉関連の遺跡に殺到し、〈神祖〉に関する様々な情報が乱れとんだ。結果は、何ひとつ本物ではなかった。他の貴族なら易々と判明している事実も、〈神祖〉に関しては謎のままであった(『D-五人の刺客』参照)。
さらに『D-悪夢村』では、グレイランサー卿の口から語られた伝説――〈神祖〉は自らの手で星間船を組み立てて一年ほど宇宙を旅したことから、おそらく彼はいくつもの星を渡り歩いているのだろう。
地球のような惑星だけでなく、宇宙そのものが〈神祖〉の実験場なのかもしれない。
また、「貴族グレイランサー」では貴族世界最高の議決機関“枢密院”の最高議長であることが判明した。
どんな状況、いかなる理由であれ、神祖に対する誹謗中傷は、絶対的な禁忌、法度として全貴族を金縛りにする。その姿を消してから十世紀。神祖は今なお、この世界の闇に君臨している(『D-魔道衆』参照)。
批判的な言動を尽くしても、他人が堕としめれば、いかなる貴族も火となってそれを償わせようとする(『D‐妖兵街道』参照)。
“貴族の森”で“神祖”の悪口を言うと、それまで死んだ人間と貴族が墓から出て、悪口を言ったものを八つ裂きにするらしい(『D-悪夢村』参照)。
『D-悪夢村』での左手のセリフによれば、〈神祖〉は別のDを創り出そうとしているようである。
Dほどの存在がいないことを考えると、彼の試みは成功しておらず、〈神祖〉は今なお虚しい実験を繰り返している。
神祖が滅びたという話は幾つもある。だが、それが真実だという保証は何処にもない。だから伝説である。
生きているとも言えない。生か死か――どちらにせよ、我々が目にするのは“神祖”の幻だろう。
いいや、ことさらによったら、貴族の文明そのものが幻かも知れない。
全ての貴族の原点にして頂点なだけあって、その力は未だに底が見えない(短編「D-ハルマゲドン」を除けば、本編ではまだ戦っている姿が描写されていないのもあって)。
〈神祖〉とはどういう存在なのか――彼の正体はおろか出自すら不明であり、一体いつの時代から存在しているのか、などは約40年以上経った現在も一切明らかにされておらず、非常に謎の多い存在と言える。
ある意味では、『吸血鬼ハンターD』世界の「神」とも言える存在であり、いまだ謎多き存在ではあるが、吸血鬼ハンターシリーズの根底を成すキーパーソンであることは間違いない。
『神祖』と呼ばれるDの○○が、ただ一度その思いを叶えることができなかった美貌の女性。
異魏罹須(
イギリス)という地に存在したと言われている。
神祖はこの美奈が原因で灰になったともいう。
神祖の言によれば、その血潮は「かつてないほど甘く、かぐわしく感じられた」らしい。
ハルマゲドンの地では、神祖の幻影製作機構が生み出した実体なき幻影の女として登場。
当然ながら、神祖の想い人でありDの母であるはずだが、劇中にその描写は一切あるはずもなし。
神祖が彼女と別離してから既に一万年の歳月が流れている。
モチーフは、ブラム・ストーカーが執筆したゴシック恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』に登場する「ウィルヘルミナ・ハーカー」(愛称は“ミナ”、旧姓はマリー)と思われる。
人間の画家。
西暦四〇一八年に自宅で食事中、一八七八年のロンドンで美女の寝室を襲う「ある貴族」の姿を目撃。
三カ月がかりで一枚の肖像画を描き上げた。これは以降六千年近い歳月にわたって「神祖」像の最高傑作とされるにいたる。
ほぼ完璧な防音設備が張りめぐらされた病院の七号室で眠り続ける十七歳の少女。
金髪に瞳は黒。
白いドレス姿でDの夢にも何度か現れる。
秋のある日に「村」から少し離れた森の中で貴族の口づけを受けて倒れているのを発見されて以降、三十年間眠り続けている。
しかし実際は貴族の口づけを受けたあと、村を放逐され森に捨てられてしまい、村と村人を含めた世界の夢を見続けた。
しかし夢を見続けることに疲れ、Dを招んで夢を終わらせようとしたのだった。
すでに三十年間存在してしまった村人たちは、シヴィルが夢から覚めると消えてなくなる運命にあるため、必死にこれに対抗する。
タエを連れ去った貴族。
グラディニアの城主かどうかは、実のところは不明。
もし城主だとすれば、バイパー婆さんに倒されたのと同一人物のはず。
バイパー婆さんの手によってグラディニア城から助け出された娘。
貴族の「隠されっ子」である。
十歳の時にさらわれて八年間もグラディニア城で下女とされていたことから、十七、八歳らしい。
両親はすでに死亡し、兄夫婦が家業の農家を継いでいる。
背にかかる黒髪で、粗末な肌色のワンピースを着ているが、農夫(ランス)と戦闘士(クレイ・ビューロー)を闘わせるほどの美貌の持ち主でもある。
しかし残念ながら、お腹には燃える宝石のように赤い眼を持った貴族の子供――「奴」の子種を宿していた。
Dの言によれば、兆候に気づいてから約半年で生まれ、普通のダンピールにはならないらしい。
バーナバスの町に着いたその日に兄嫁の激しい罵りを浴びて、家を飛び出した。
バイパー婆さんの幌馬車の裁縫機で作った赤ん坊の肌着を持って、バーナバスの町を去って行った。
物語の中では生まれていないが、もし生まれているとすると、Dの異母弟誕生(?)ということになる。
相変わらず困ったお父さんである。
ヴラド・バラージュの息子にして男爵。
深い海の色のような
マントを着用。
したたり落ちるような金髪と碧眼。凄まじい美貌の持ち主。
Dにクラウハウゼン村までの同行と父ヴラドの誅殺を依頼する。
バラージュ家は陽光さえささなければ、バイオリズムの低下は免れないまでも、闇中のごとく行動し得る希少の例。
これは大貴族の一族に限られる。
マントから殺人光を発し物体を切断する。
柩のなかは「息が詰まる」と発言する変わり者。
多少の以心伝心の法を使えるらしい。
人間がそばにいながら、その飢えを自制できるのは、母の胎内にいるときに神祖によってある処置を受けたため。
この処置に母は反対したが、父であるヴラドは押し切り、処置は実行された。
その影響で右手は義手になっている。
誕生後、神祖に三か月間引き取られていたという。
実の父はヴラドではなく、神祖といっているが、ラグーンが提供した精子がもとかもしれない。
二十年前にクラウハウゼンの父の元から出奔した。
機械いじりは昔から得意だった。
ヴラドを「破壊者」の力を用いずに倒す。
タキに襲われたことで吸血鬼の本性に眼醒め、自らを依頼人としてあえてDに滅ぼされた。
クラウハウゼンの村で西部辺境統制官を務める貴族。
男爵バイロン・バラージュの父。青紫のマントを着用する。
青紫のガウンも着用。マントとお揃いのところを見ると、お気に入りの色らしい。
バイロンより頭ひとつ高い――二メートルを越す長身。
正方形に見えるほど肩幅が異常に広い。
面長の顔は黒く、金属の光沢を帯びている。
はだけた漆黒の胸もとには黄金と宝石を散りばめた胸飾りをしている。
深紅の宝石を頭部にはめ込んだ黄金の笏杖を持っている。
妻コーデリアの反対を押し切って、その胎内の息子バイロンに神祖の処置を行う。
神祖の覚えめでたく、神祖の息のかかった老魔導士ジャン・ドゥ=カリオールを使って奇態な実験にふけっていた。
材料は、年端もいなぬ赤ん坊や少女たちだったという。
ジャン・ドゥ=カリオールの実験によって「破壊者」に取り憑かれた者を笏杖の一撃で倒す。
Dとの戦いで切断された右肘から先は、電子義手にしている。
義手をチタン合金製のものに変えているが、描写は左手になっている。
握力五〇トンの義手が作る直径一ミリにも満たない
水鉄砲の水流はマッハ三を越え、Dの胸を貫通する。
Dとの戦いの傷が癒えぬまま「案内人」と合体する。
クラウハウゼン村に住む辺境統制官ヴラド・バラージュお抱えの医師。いわば典医である。
神祖から直接、魔法手術の手ほどきを受けた。
また、男爵バイロン・バラージュの母コーデリアにつき添い、バイロンの出産を担当した博士で、バイロンの幼年期と少年期での、最も優れた下僕であり、教師であり、心の師であった。
フィッシャー・ラグーンの館の主。実はハゲ頭。
なめし皮みたいに黒光りする顔に隻眼の大男で、神祖の実験に手をかした。
三十年前、駆け出しのチンピラだった頃、クラウハウゼン村で神祖と出会っている。
ラグーンの館が領主の目の前で繁盛しているのも「神祖のお墨付き」をもらっているから。
神祖の実験のために自分の精子を提供した。
同じ街にいながら、ヴラド卿とは二十年以上会っていない。
フィッシャー・ラグーンの館とは、ヴラド・バラージュが統治している領地にある『クラウハウゼンの村』の西の外れにそびえる大城館――大遊戯館にして、娼館でもある。
西暦八〇〇〇年代に出現した貴族。
またの名を“退廃者”グーリッツと呼ばれた。
貴族でありながら、吸血行為のおぞましさについて五百冊もの著作を残し、自身もそれを中断すべく、あらゆる行為を試みたがことごとく失敗に終わり、自説を撤回してすべての著作を火に投じたという。
飢えの渇望に勝利した貴族が皆無であることの証左のひとつ。
セドク村から百キロほど北に住む占い師ノア・シモンの一人娘。
セドク村の死体行進事件とセドク村に来るDを予知した母親から告げられて、北の村からやってきた。
年齢は十六、七歳。右の尻に黒子がある。
子供の頃から母の指導で占いとそれに追随する術を学び、五感を鋭敏化する訓練を受けている。
心臓の動悸を抑える制御の法や自らの幻を作り出す、分身の法術を使う。
地下を走るエネルギー・パイプを認識でき、原子弾で破壊しようとする。
強盗団の
放射線を浴びて、『都』でしか治せない火傷を左半身に負った。
神祖(?)に血を吸われ、DとにせDのうち生き残った方を守る役目を与えられた。
最後はDと別れ、ムマに残った。
ミア・シモンと同じくらいの身長の、しかし年齢は七十歳以上に見える顎鬚の老人。
黒光りするほど垢じみ、皺で埋めつくされているが、実は貴族の下僕用サイボーグ技師で、神祖の命令でムマを造った。
貴族の下僕用サイボーグともなれば、脳の保存器には絶対金属が使用される。
神に生贄を捧げて、大施設の地下牢で五千余年も生き延びていたが、自身の妄想が作った“神”の高エネルギー波を浴び、ミアに看取られて死亡する。
サイボーグ老人ギイの姪で魔道女。
ギイとともに地下帝国(=大施設)で働いていたが、その苛酷な実験に発狂寸前になり、何名かの仲間と亜原子炉を暴走させて逃亡した。
凍てついた氷河の谷間の村に住いを構え百年を過ごしたが、夢の中での神祖の呼び掛けに耐えきれず村を後にした。
それから三百年、幽鬼のごとき姿で辺境をさまよい歩き、セドク村の北の丘陵地帯に居を定めたが、家ごと焼かれて三年前に死亡したと伝えられる。
村人に殺される前夜、夢に現われた神祖の手で取り替えられた心臓のために、死ねない幽霊となっている。
神祖の侍女だった。ムマの入り口に引き込む能力は“あのお方”の秘書として身につけた能力。
死人街道でDを馬車に乗せた生きる死体。
他の生きる死体と同様、ボロをまとった青白い肌の娘。
以前に“奴”に血を吸われていた。
ムマでの試練は、最後の試練まで残ったが、DNAを注射され
ミイラ化してしまう。
「物質消滅の技法」を駆使し、また復活の技法をも体得している最凶最悪の貴族。
南部辺境第三区管理官として南部辺境区最大の領土を誇った大男の貴族で、その力は神祖に次ぐと言われている。
その凶暴さ、残忍さ、冷酷さは並ぶものがなく、面白半分としか考えられないやり方で領民を苛み、彼だけが解読し得た超古代の技術を領民たちの身で試しては虐殺を重ねた。
虐殺した人々の死体に防腐処置を施した上でピラミッド状に積み重ねると、その高さは五百年で地上三千メートルに達したという。
他の貴族にも蛮行を働き恐れられたが、異星人との戦争においてその軍勢を初戦で破って「ギャスケルあり」と謳われた勇猛な将軍でもある。
その個性的で孤高の存在は、貴族を調べる人々に対するアンケートでは、第三位を大きく引き離して「興味ある貴族」と「会ってみたい貴族」の万年第二位。
ちなみにその両方の第一位は「神祖」。
その神祖の覚えはめでたかったとの記述がどの本にも記されている。
二百年ほど前、人工血液と称して近隣の貴族に毒を贈り、全員を毒殺。目的は領土の併合であった。
被害者の領地を合併した罪で、『都』の貴族院に、陽光による滅びを命じられる。
“Gの乱”を起こし、「物質消滅の技法」を駆使して五十年にわたって『都』の軍勢と攻防を繰り広げた。
ついに捕らえられ、領土の最高峰ギャスケル峰の頂きにある太古の遺跡で陽光にさらされ、灰と化す。
自身、復活の技法を習得していたとも言われるが、第十一長篇『ダーク・ロード』での復活は神祖との契約によるものらしい。
復活後、Dを倒すために七名の凶悪無比の貴族を招集するが、Dとの戦いに敗れ自ら城を崩壊させ逃亡する。
その後『邪王星団』で、宇宙から帰還したヴァルキュアに殺され、無残な死体となってDと再会することになる。次も復活できるかどうかは不明。
燃えるような赤毛の髪の長い十七、八の美少女。
ヤライの店でバイトをしていた仮称「虐殺の村」の唯一の生き残り。
貴族に咬まれた影響で、女子供のパンチ以上のスピードを発揮できる。
辺境では滅多にお目にかかれない出来の料理を作り、素晴らしい歌い手でもある。
ギャスケル城の東の塔の最上階に幽閉される。
拉致されて以降は眠ったままだが、ときおり二重存在として出現し、Dのさまざまなことを伝える。
実は神祖の石板に記された刺客の最後のひとり。
Dを油断させて斃すために、覚醒するまで本人にも自分の正体がわからなかった。
神祖の残留意志から、自分たちがDに斃されるべく生まれたことを知っていた。
全身から「気の塊」を噴出し、それが巨大な獣じみた形を取って相手を襲う「イドの怪物」攻撃を得意とするが、大将軍ギャスケルの攻撃さえ受け付けないはずの「怪物」もDの剣技はやすやすと斬り捨ててしまい、その傷はロザリア自身にも波及して倒されてしまう。
シューマ男爵の叔父さん。
神祖の宮殿で「究極戦闘要員」のトレーニングと武器の開発を担当していた。
クラクフ村近くにある瀑布の裏に隠されていた人間の宗教儀式を掃討した現地指揮官。
性格的には諧謔味に富んだ男で、ために神祖の配下でありながら神祖を滅ぼす武器を開発してしまう。
しかしまた意外と小心者で、完成した武器に怯え、自分が掃討した人間の宗教儀式の遺跡に武器を隠した。
隠し場所に遺跡の溶解に使用した生体機器を護衛として待機させていた。
昏睡したDを廃墟の土中から連れ出そうとした
レディ・アン聖騎士が出会った老人は、灰色の頭巾付きの長衣をまとい、腰にまかれた細い紐から粗末な皮製のパウチやガラス瓶をぶら下げており、自らを「アドルカ司祭」と名乗った。
三年ほど前に引退したという老僧は、失われた宗教の秘密を求めて廃墟を調べていたが、その成果は愛娘アンを発見して怒り狂うゼノン公ローランドの振り回した長槍によって出現した。
槍の一撃で崩れた岩壁の裏から現れたそれは――一万年前の聖者の磔刑像だった。
宇宙空間に放逐された“絶対貴族”。
限りない凶暴さゆえに神祖の手で宇宙空間に放逐されていたが、5千年ぶりに帰還した。
その瞬間、北部辺境区の半分が壊滅する。
その上半身と下半身の境目のくびれは、瘤のような腹筋に覆われ、尻から腿にかけては優美の極致。
手に掲げた直刀“グレンキャリバー”は、鋼のかがやきを帯び、触れるのもをすべて断たずにおかない妖剣。
己れの追放にかかわった貴族と手を貸した人間の子孫を滅ぼすために、7人の刺客を従えて、復讐を開始する。
ヴァルキュアは“神祖”から「たった一つの成功例」と言われたことを誇りにしていたが、あるとき殺戮に狂いだしたせいで「成功例」から排除され、更には宇宙に追放させられ、『D-邪王星団』で地上に戻された。
異星人の科学力で貴族を超える最狂の貴族。
1万年前、神祖によって地下深くに封じられた“悪鬼ギルゼン”。
日中を闇と化して歩き、異星人の科学力によってテレポート能力も有する。
肉体の回復力は貴族をも凌ぐ。
自らの肋骨を剣に変え、Dを串刺しにする。
「聖なる従護衛騎士団」を従え、神祖とは違うやり方で貴族の未来を作ろうとする。
『D-闇の魔女歌』に登場した貴族。
〈神祖〉が重用していた貴族と言われるが、正体は謎に包まれている。
〈神祖〉には数名の特に重用していた貴族がいる、彼らは〈神祖〉により、人間と貴族の関係について、とりわけ重要かつ危険な禁断の知識を伝授され、いまなおそれを駆使して、奇怪な試みを行っている。
ローランヌの領地には昔から妙な噂があった。
先代のローランヌ卿は稀代の悪鬼と呼ばれ、苛政を敷いていたが、ある冬の日、忽然と姿を消し、いまのローランヌ男爵が後を継いだが、領民たちは“とどまった”と四〇〇年ほど前の記録にある。
〈神祖〉に重用されていた先代のローランヌ男爵だったが、四百年ほど前に代替わりした現在のローランヌ男爵は普通の〈貴族〉と異なり、領民に慕われる温厚な性情を示していた。
ローランヌ男爵は先代のローランヌ男爵――父を始末し、人間と貴族双方のために善政を敷こうと努めた。
人間なら触れただけで〈貴族もどき〉……陽光の天地を自在に走り、“D”の放つ白木の杭を受け止め、仲間を復活させる化物――もう“もどき”とも呼べない〈新種〉に変えてしまう、貴族でも重篤で寝込むか発狂する、〈滅び〉の病いに罹った女性。
一年前までエレノアは人間だった。
だが、ある冬の晩、黒ずくめの大きな旅人がやって来た。
エレノアの夫ボリス・ウィチャリーは危ぶんだが、一夜の宿を請われたエレノアは受け入れてしまった。
そのときはもう、憑かれていたのだろ。
その男の顔を見た途端、ボリスも何も疑えなくなったらしい。
次の日、エレノアはボリスと同じベッドの中でこと切れており、旅人は姿を消していた。
不思議なことに、ボリスは怒りも悲しみも湧かなかった。
あの男――旅人は何者だったのか。
ボリスは呆けたような状態で、妻エレノアのそばに寄り添った。
何故か――生き返るような気がしていた。
その晩、陽が落ち星がまたたきはじめた頃、エレノアは甦ったという。
妖術を身に着けたエレノアの夫ボリスが、 未知の病を治すべくローランヌ男爵の居城を目指して旅立った。
実は彼女は幼い頃にDに会ったことがある。
幼いエレノアがある貴族の牙にかかったとき、彼女を救ったのはDだった。
彼女の内部(なか)では、あの貴族とDの血が流れている。
あの貴族とは偉大なる神――偉大な貴族の王――「あの御方」のこと。
『D-血風航路』に登場した貴族。
第四艙にいる“積み荷”の主。
あの御方の館であの御方とともに美麗なる御子であったDを見たことがある。
ゼビア公爵夫人は、あいつのとりわけのお気に入りだった。
彼女があいつに気に入られた理由は、その美貌ではなく、頭の切れであった。
『D-暁影魔団』に登場した貴族。
陽光も水も克服できる貴族を創り出す館の
管理人兼運営者。
遠い遠い昔、あの方から聞いた覚えがある……成功したのはひとりだけだ、と。
『D-暁影魔団』に登場した真紅の女貴族。
彼女の宇宙船は沼の底に速度を落とさずに墜落した。
その理由(わけ)は、宇宙(そら)の涯を見たからだった。
宇宙(そら)の涯で、見てはならないものを見て来た。
曰く、「私を救ったのは、無限エネルギーを管理するAIの力であった。それでも、私は生きる意味と術(すべ)の大半を失い、いまも虚無の中にいる。死すらも、私を救い出すことは出来ない」という。
誰であろうとギャラクシアに死を与えようとした者は、彼女が見て来たものを見なければならない。
自らが宇宙の涯で見た光景を再現することができる。
ギャラクシアは自分の見てしまったものを、この世界のすべてに見せてやるために戻って来たのだという。
彼女は宇宙の涯にあるものを、あらゆる生物と行ける死人に見せつけるために行動した。
彼女ひとりが、絶望に耐えながら生きていくことなど出来なかった。
だから、万物に見せつけようとした。
アンガーギャスリン公爵が自分を恒星探検のひとりに選んだのは、ある思いを理解していたからだった。
しかし、それは不死をもってしても手の打ちようがない絶望を、貴族すべてに知悉させるための旅だった。
地球へ戻りながら、ギャラクシアは自分の任務について考えていた。
貴族がこの宇宙の支配者ではない、と思い知らせること――これが結論だった。
宇宙(そら)の涯を見たという公爵。
アンガーギャスリン公爵は、貴族の不老不死が何のために与えられたか――不老不死が叶えるのは、全宇宙の征服だと考えている。
曰く、「降り注ぐ放射線の雨も、灼熱の或いは極寒の星の上も、いかなる敵の攻撃も、貴族には脅威にもならぬ。我々はこんなちっぽけな星に留まらず、時空の涯も知らぬ世界へと赴かねばならぬ。それが貴族というものの運命であり、使命なのだ」という。
1999年にアメリカで先行公開され、2001年に日本で公開された映画「Vampire Hunter D: Bloodlust」と、
PlayStationビデオ・ゲーム『バンパイアハンターD』に登場した女吸血鬼。
チェイテ城に住む伯爵夫人。かつてバンパイア王と共に貴族の栄華の時代を築いた。
ゲームでは「エリザベス・バートリー・カーミラ」と名乗った。
「流血の伯爵夫人」と呼ばれ、恐れられる残虐な女貴族。
自らの若さを保つために大勢の人間の血を奪った。
そのため、5000年前に神祖に封印される。
カーミラの居城の名前は、史実のバートリ・エルジェーベトと同じく、チェイテ城。
モチーフはホラー小説に登場する女性吸血鬼のカーミラと思われる。
『カーミラ』(Carmilla)は、アイルランド人作家ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュが1872年に著した怪奇小説、およびその作中に登場する女吸血鬼の名前。
ホラー小説「カーミラ」における吸血鬼の造形は、アイルランドの吸血鬼伝承が基になっており、貴族的、美形、棺桶で眠る、心臓に杭を打たれて死ぬ、などの特徴はブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」に引き継がれ、以降の吸血鬼作品の定番となった。
逆にドラキュラとの違いでは、太陽光線を浴びても平気である(尤もドラキュラも日中にロンドン動物園を訪れている場面があるので、完全に動けなくなるほどの弱点と言う訳ではない)、賛美歌を聴くと身体が震えて動けなくなる、といった点がある。
小説の「カーミラ」は、16世紀に実在したハンガリー王国の貴族、「バートリ・エルジェーベト」(ドイツ読みで「エリザベート・バートリ」)をモデルにしたと伝えられている。ただし、真偽は不明。
バートリ・エルジェーベトは、連続
殺人鬼として知られ、「血の伯爵夫人」とも呼ばれている。
なお、ドラキュラ(Dracula)のアナグラム(逆さ読み)である「アルカード(Alucard)」という名や、それに近い発音の「アーカード」という名前はよく知られている。吸血鬼関連の映画はもちろん、小説、漫画、アニメ、ゲームなどでも、その名称は多彩に使用されている。
この要素もまた、カーミラ(Carmilla)の本当の名前がマーカラ(Mircalla)で、もうひとつの偽名もアナグラム(文字置換法)であるミラーカ(Millarca)だった……というところに由来しているのかもしれない。
[重要用語]
吸血鬼の呼称。
かつて人類の衰退後に地上へと君臨し、その人知を超えた身体能力と、魔力、そして超科学によって1万年の長きにわたって地上を支配してきた種族。
実は“貴族”は一万年前に忽然として誕生した新興の種ではない。
その遙か以前、地球創成の頃に始祖を置く、人間の歴史など及びもつかない古の種族。
不老不死の肉体を持ち、その栄華は永遠に続くかと思われたが3000年
にわたるOSB(外宇宙生命体)との抗争と、隷属させてきた人類の反乱による疲弊、そして種としての寿命の限界によって支配者の座から退き、滅びの時を迎えている者たちである。
しかし今なお、その絶大な力は健在であり、
辺境においては依然として貴族の統治、もしくは脅威を受けている地域は多い。
ごく稀に慈愛をもって領地を治めその徳を称えられる者や、貴族の矜持をもって厳正な統治を行った者もいるが、大抵の貴族は「人類=家畜」と見なしており、気まぐれで人を襲う人類にとって災厄以外の何物でもない存在。
日光、流れ水、十字架、ニンニク、金属や白木の杭による心臓破壊など、吸血鬼としての典型的な弱点を持つため滅ぼすことは可能。
しかしこれらはあくまで霊的宗教的魔術的な弱点であるため、
地球外でならば日光を浴びても全くの平気だし、科学兵器によって肉片一つ残さず原子分解されても再生可能である。
物語のお決まりとして、中には弱点を消している者もいる。 特に日光が効かない者は多い。
それでも白木の杭まで効かなくなっている者はまずいない。
↓以下の弱点は存在しない
初めて訪問した家では、その家人に招かれなければ侵入できない
種などを見るとその粒を集めなければ気が済まない
貴族の世界には〈大貴族会〉、〈中央政府〉、〈貴族祭〉など様々な組織や行事が存在する。
しかし、これらの詳細は不明である。
上級貴族は出席しなければならない“大夜会”と呼ばれる集会もある。
ちなみに“大夜会”の開催場所は静止軌道上にある“浮遊都市”である。
どこにあるかわからないが、“貴族たちの墓地”と呼ばれる貴族の墓所が存在するらしい。
『D-悪夢村』で明らかになった設定によると、貴族は、太陽を消すつもりだった。
貴族は太陽が苦手という弱点は変わらず、生物学的には克服できていなかった。
そんな彼らにとって、必ずどこかの面が太陽に向いているこの星――地球は、実は貴族にとって宇宙で一番棲みにくいところなのかもしれない。
月の裏側には貴族のための恒久都市も建設された。
人工凍眠装置などは必要なく、大事故が起きても、貴族は真空服も無しで宇宙空間へ出て修理も可能。
強烈な放射能や宇宙線が渦巻いている過酷で危険な場所でも生存可能。
硫化水素だけの大気も清浄な空気と同じように吸い込める。
何より、乾燥血液さえあれば、食料など一切なくても生きていける効率の良い生命体――それが“貴族”。
だが実のところ、貴族が外宇宙に出て行かなかったのは二つの説がある。
ひとつは貴族の精神的タブーによるもの。
つまり、貴族は実は光を愛している、という説。
その例として、上記の月の裏側に建設された『都』は、百年も経たないうちに、廃棄されてしまった。
そしてもうひとつの説は、「アウター・スペース・ビーイング(外宇宙生命体)」、略して「OSB」の存在。
今から五千年前に貴族が初めて接触したOSBとの戦いは、二千年にも及んだ。
そのせいで、貴族の中枢部は壊滅的な打撃を受け、二度と立ち直れなかった、という説。
ちなみに〈神祖〉がOSBに興味を持ち始めたのは、この頃からだというが……。
全世界の貴族を束ねる千名の貴族を指す。
通常の貴族より強靭な精神力および体質を持つ貴族のなかの貴族。
陽光さえ射さなければ、バイオリズムの減少は免れないまでも闇中のごとく行動し得る。
バラージュ家がその千名の貴族のうちのひとつである。
ギャスケル大将軍も大貴族との描写があるが、神祖に次ぐ大貴族であるから、正確には大貴族を束ねる「魔王」であろうと思われる。
将軍の呼んだ「招きびと」のなかにも数名の大貴族がいる模様。
あまり知られていないが、吸血鬼は自分の生まれ育った土地の「土」に拘束されており、その見えない絆の影響から逃れることはできない。
生まれ育った土とともに「生きる」ことになるが、吸血鬼が移動時に柩の中に自分の領土の「土」を敷き詰めるのはそのためである。
神祖や大将軍ギャスケルといえども、この法則から逸脱することは不可能。
吸血鬼にとって弱点にも等しい特性であるが、逆に、太陽光が致命的な結果をもたらすのは、土の上に立っている時だけ、すなわち、地球上でのみ太陽光線に弱いという逆説的なロジックを生み出し、吸血鬼たちが外宇宙へ進出することを可能にした。
地球の吸血鬼=貴族はいかにあがいても陽の出に立ち会うことは不可能だが、宇宙の夜明け――映画『二〇〇一年宇宙の旅』のオープニングなら胸を張って拝むことができる。
貴族は太陽系の星々すべてを支配下に収め、OSB(アウター・スペース・ビーイング)(外宇宙生命体)との抗争を契機に、遙か外宇宙の海原へも歩を進めていた。
数千万光年の彼方に貴族の旗が翻り、広大な都市も築かれた。
当時の恒星間ルートはいまなお使用され、数十年に一度、新たな探検隊が新たな星の国を求めて虚空の深淵に挑んではいるが、宇宙の広さはなおも貴族たちの挑戦を冷ややかに見つめているのだった。勝利するのは無限か不死か(『D-暁影魔団』参照)。
貴族は人工太陽の下では自在に動きまわることが可能。
また、他天体――例えば月面で太陽光を浴びても平然としている。
貴族は地球上で陽光を浴びたときのみ塵と化す。
貴族が従者を選ぶ場合、その性質獰猛な者ほどアンドロイドのような絶対服従の機械を選ぶ。
人間や同類では気に障るからである。
水――とりわけ流れ水は貴族には致命的な効果をもたらす。
雨に打たれた貴族はバイオリズムが極端に低下し、その動作は緩慢に、思考は散漫になる。
貴族の墓を暴く時には噴霧器やバケツで水を浴びせるのはこのため。
襲われた者が雨中に飛び出して助かった例もあり、また、貴族対策に水の入った壺を持ち歩く旅人も多いという。
貴族及び“もどき”が雨を含む“流れ水”を弱点とするのは、実は単なる水滴の集合体にすぎぬ雨が、致命的な身体的化学的な力を有しているためではない。
そういう“伝説”或いは“言い伝え”によるものだ。
貴族が太陽光の下で朽ちる現象を解明すべく、世界中の
物理学、生物学者たちが、貴族の肉体と太陽光の組成を調査分析し、人工太陽を製作、捕らえた貴族と“もどき”に照射したが、何の効果もなかった。
それを見た科学者たちは、こう結論せざるを得なかった。
我々の努力は失敗に終わった。陽光の下で貴族が塵と化すのは、熱のせいでも、光に含まれる何らかの素粒子のせいでもない。
単に邪悪なものは光に弱いという「認識」にすぎなかった。
水に弱い、心臓に杭を打ちこまなければ滅びない――そういうものなのだ(『D-暁影魔団』参照)。
貴族は水を嫌うが、それゆえに平気で流れ水に近づけ手を入れることができる男は、貴族の女に無条件でもてはやされる。
そういう例外的な貴族にヴァルハラ卿やゼノン公ローランドがいる。
貴族同士は必ずしも友好的な関係を保っていたわけではなく、戦いに明け暮れていた日々の方が遙かに長い。
それゆえ、敗者の逃亡貴族たちは、隣国の救いを求めて亡命し、あるいは人里離れた深山幽谷や地底の洞窟、深海の都市などに逃避した。
その名残は廃墟として残っている。
捜索者の放ったメカや逃亡者のガードが生き残り、現在も徘徊している。
海人たちを呑み込む大渦や大海魚もそれらの生き残りの戦闘兵器であることが多い。
アウター・スペース・ビーイング(Outer Space Being)=外宇宙生命体の短縮呼称。
五千年紀後半から激しくなったOSBの地球攻撃によって、大陸のいくつかは沈み、太陽系内の貴族の基地は灰燼に帰した。
その超科学同士の対決は地球の大陸と海洋を覆い、貴族勢力衰退の遠因となったとも言われる。
その後一千年をかけて貴族の反攻が開始され、さらに一千年の互角状態が続き、OSBは銀河系内から忽然と撤退した。
貴族の歴史書には「その意図不明」と記されている。
『貴族グレイランサー』の設定では、外宇宙生命体(OSB:アウター・スペース・ビーイング)と呼ばれるエイリアンは母星が滅びる前に、五千年の歳月を掛けて船団を作り、旅に出た。
その数万年後、彼らは旅の途中で貴族の探査船を発見し、地球に進路を向けた。
その千年後、OSBに適した惑星を発見し、その惑星を百年以内で新たな母星にした。
更にその千年後にOSBは地球圏に到達し、貴族との戦争が始まった。
貴族は五千年前にOSBと遭遇し、それから貴族とOSBの戦争は二千年もの間続いた。
これらの情報から、貴族暦4800年頃に、OSBは貴族の探査船を発見したことになる。
OSBは、少なくとも「二万七千年」以上も昔から存在していた種族であることは間違いない。
血管の塊のような姿をしているOSBは吸収・変身能力を持ち、吸収した時に相手の記憶を読み取ることが可能。
しかも貴族とも合体できる驚異的な生命体である(『D‐悪夢村』では貴族との合体は不可能であった。これも設定の相違)。
長い隷属を経て貴族から支配者の地位を奪還しようとしている種族。
長い年月の間に貴族によって様々な遺伝的改良を加えられた結果、厳密な意味では我々の直接的な子孫ではない。
そのためなのか極稀に人知を超えた能力を持つ者が生まれ、彼等は貴族に対抗できるものとして「吸血鬼ハンター」へとなっていった。
この世界に住まう生物。
太古の昔の核戦争によって誕生したとも、貴族によって作り出されたとも、それ以前から存在したともいわれるが
共通するのは人を襲い、脅威であること。
そのためこれらを狩る各種ハンターも存在する。
数あるハンターの中で、吸血鬼ハンターが最高位に存在するように
貴族の中にはこれら魔物たちを飼いならしている者も存在する。
吸血鬼と人間の混血。
貴族と人間の間に生まれ堕ちた者たち、貴族と人間の利点を併せ持つある意味で完璧な存在。
しかし、人間からは貴族と同類に見られ、貴族からは鬼子として双方から忌み嫌われ迫害される孤独な存在である。
普段は人間と変わらないが、激怒すれば吸血鬼の魔力をふるう。
吸血鬼ハンターになるものが多いが、吸血鬼となり依頼主を襲うこともある。
人間には忌み嫌われる存在。
程度によるが、吸血鬼の能力の半分ほど力を受け継いでいる。
全身骨折、内臓破裂であっても、三昼夜くらいで完治。夜でも見通せる。
自制心の少ない者は人の血を吸う。
しかし、被害者は吸血鬼に吸われたように操り人形にはならない。
基本的な生理現象は貴族のそれが優先。
筋力、視力、聴力、あらゆる物理的パワーを正確に吸血鬼の半分まで身につける。
バイオリズムは深夜を頂点にして、正午に最低レベルになる。
昼の攻撃に耐えるダンピールは一割にもみたない。
晴雨を問わず、昼にあたる時間は肉体的生理が休息を要求する。
日の差さぬ場所に逼塞しても、意識を保っているだけで八時間が限度である。
陽光下を歩き回り、立ち回りを演じれば、まず四時間で仮死状態に陥る。
超A級の吸血鬼ハンターがかろうじて五、六時間のフル活動を可能にする程度。
一九九九年人類滅亡以降の貴族史年表を大まかに鳥瞰すると次のようになる。
一九九九年:全面熱核戦争勃発。人類文明はほぼ壊滅。
放射線や宇宙線によるミュータント生物の脅威。
三〇〇〇年頃:一千年が経過するうちに、諸文明は中世レベルまで後退。
この頃より吸血鬼が歴史の表舞台に登場。
五〇〇〇年頃:吸血鬼登場から二〇〇〇年で超科学と魔法による文明を確立。
七〇〇〇年頃:リィ家が発生。
OSB襲来。
八〇〇〇年頃:貴族、OSBに反撃を開始。
退廃者グーリッツ出現。
八〇〇〇年末:吸血鬼文明の凋落顕著化と人類の大反抗開始。
数十回の和平条約が結ばれては破られる。
貴族は数を減らしていく。
九〇〇〇年頃:地球大改造計画始まる。
対OSB戦争、双方互角の膠着状態が始まり、以降一千年にわたって拮抗する。
OSB、突然撤退する。
一二〇九〇年:西部辺境でDとドリスが出会う。
この世界の貨幣にはアリストクラート・コインやダラス、ダントなどがあるが、『D-邪王星団』では神祖金貨などというものも存在が確認された。
三千年前の西暦九〇九〇年頃に行われた貴族の計画。
これによりドリスの農場一帯は永久妖土化されたらしい。
多くの貴族たちが持つ特徴。
超科学技術を持ちながら未来的な建造物が少ないのは殆どの貴族がこれを持つため。
ただし、中世的なのは外見だけで、見えない部分は超科学が使われている。
建築、衣裳、装飾、絵画――あらゆる美術分野における、貴族のゴシック趣味。
いかなる土地にも三日あれば『都』なみの大都会を建設し得るだろうに、辺境の荒涼たる山河や暗鬱な森はそのまま残し、近代的なビルやドームの代わりに、破風や尖塔で埋もれたような、古風な城館を造り上げた。
道路はすべて石造りであり、時折、超高速移動のために専用道路が建設された。
貴族の柩は寝所どころか、住居や避難ポッドになるため技術の粋を集めて作られている。
五十年ほど前に行われた廃墓所の一斉調査では三次元空間拡張回路をとりつけた品が二百個近く出土し、うち数個は順調に作動していた。
このため死亡した調査員の例は枚挙に暇がない。
居住性は抜群らしく、生まれてから一度も柩の外に出てこない貴族もいると記録されている。
貴族たちの墓所は、人間の眼と破壊から隠蔽するため、あらゆる努力が払われた。
地下の大墓所は定番として鬱蒼たる森、峨々たる山中、凍結湖など、ありとあらゆる場所が改造され、あるいは柩を呑み込んだ。
地上を遙か離れた成層圏を漂うステーションにもおびただしい数の墓所が設けられた。
昔ながらの風習を尊ぶ者たちも、三次元幻像や、錯覚ゾーン、迷路などを駆使して墓暴きたちを阻止した。
一時期、電子機器、化学兵器、生物兵器など貴族の科学技術の粋は、もっぱら墓所を守るために使用された。
衝撃には強いが熱には比較的弱いという風評あり。
標準装備は次のようになっている。
しなやかな車体は三次元レーダーと超音波破壊板を兼ねている。
精緻微妙な彫刻の多くはレーザー・ビームや超小型
ミサイル、あるいは槍の穂や鉄の矢を射ち出す発射装置になっている。
ドアを閉めれば完全密閉の要塞となる。
貴族の位に応じて、科学者が奇想天外の武器と防御装置を車体に装備する。
サイボーグ化された馬。辺境を旅するにはもってこいの交通手段。
骨格は軽合金製。飼葉が必要らしい。
その使用によってスタンダード・タイプ、カスタム・グレードなどの種類が存在する。
性能もそれに応じて差が生じる。
しかし、Dの手にかかると、平凡なスタンダード・タイプでも、カスタム・グレードも追いつけない性能差を発揮する。
ちなみに、時速で三十キロ、耐久力で二割の差があるツェペシュ村の保安官のカスタム・グレードが、Dの騎乗するスタンダード・タイプにはまったく追いつけなかった。
知能や感性は並みの馬以上だが、ニヒリストにはならない。
貴族愛用の高級モデルなら、首がちぎられても走ると言われている。
貴族に血を吸われたあとの、喉についた傷跡をいう。
この傷跡により、吸血した貴族の実力がわかる。
貴族の犠牲者となり、再生した者。
貴族の犠牲者は、その貴族的特徴をおおむね受けついで再生する。
つまり血を吸った貴族が変身能力を有すればそれを、獣を使いこなせればその力を受けつぐ。
ただし、その能力は純粋の貴族より数段劣る。
血とはいわゆる命の源。
その血を吸って吸血鬼は不老不死の肉体を得ている。
ならば、なぜ血を吸われた被害者も吸った者と同じ吸血鬼になるのか、様々な議論がなされている。
中にはウイルス説もみられるが、真偽のほどは定かではない。
吸血鬼は霧にもなり、
コウモリになって飛ぶことも、狼になることもできると言われている。
現実にいたとしたら、人間のほとんどが吸血鬼になっているだろう。
窮極の科学技術の産物たる完全自動管制都市(サイバーネーション・シティ)。
貴族の超科学の粋を極めた都市。透明金属で構成された建物が建っている。
これは七つの大陸ごとに存在し、ここを中心に超高速ハイウェイが縦横に走っている。
が現実には都の建物の壁面には埃がつもり、ハイウェイもほとんどが半ばで崩れ落ちている。
そのため、自動管制都市としての役割はほとんどない。
かつて貴族たちが建造し生活していた都市であるが、都市機能は人類によって破壊され、今では人間たちの政治の中心となっている。
人間は、吸血鬼たちが作り上げたこの都市の機能の万分の一の恩恵も受けずに暮らしている。
周辺から危険な魔物は一掃されており、この世界においてもっとも安全な場所と言って良い。
貴族が設置した完全自動の防災システム。
ある程度の広さや美術、学術的な重要性が認められる地域を大災害や大自然の変動から守るために設置された。
例えば火災が起これば、消化スプレーが飛来してたちまちのうちに消火剤を散布する、といった具合。
貴族が自分のものと信ずる土地の周囲に設けたさまざまな防御・攻撃施設のひとつ。
あらゆるメカニズムの電子系を狂騒させてしまう。
移動街区の進路に出現した磁気嵐の谷は、平均幅四・七二キロの磁気帯を持ち、街をすっぽりと呑み込んでしまい、甚大な被害をもたらした。
一億キロの宇宙の彼方から、一瞬で地球の大気圏外に瞬間移動し、地表を壊滅させる『都』の小惑星ミサイルの一つ。その質量はなんと五億トン。
貴族の脅威が残る田舎。
危険な魔物が跋扈し、村人が全滅するなど、何か起きても不思議ではない危険な土地。
この地に住む人々は都の政策によって勝手に引っ越すことは禁止されている。
危険なだけあって、装備はともかく射撃の腕などの人間としての実力であれば、辺境の農民は都の戦闘士を超える。
さまざまな貴族たちが領地を統治し、領民を恐怖せしめ、あるいは友好関係を維持し、あるいは他の貴族と戦い、ある者は落魄し、ある者はいまだ権勢をふるい、貴族文明が滅んでなおそれに対する畏怖が強烈に支配する地帯。
はっきり言って何が起こってもおかしくない土地。
妖魔妖獣魑魅魍魎の跋扈は数知れず。
景観としてはもっぱら「西部劇」の砂漠地帯の様相を呈する。
○全面核戦争で人類はほぼ壊滅。生き残りの人々は数年に及ぶシェルター生活を余儀なくされ、文明は後退する。千年後に文明は中世レベルにまで落ち込む。
○西暦3000年ごろ、吸血鬼が人類に代わり、地上に君臨する。
○西暦5000年ごろ、吸血鬼による超科学文明が確立する。
○西暦7000年ごろ、外宇宙生命体来襲。
8000年ごろに貴族文明が衰退し始める。
○人類の反抗が始まる。
○西暦12090年現在、貴族は滅びつつあり、辺境の一部で人々を脅かしている。
○Dの生年は不明だが、見た目は20歳前後。西暦12090年現在で1万歳を超えていると思われる。
○Dは“神祖”の研究していた「闇と光の融合」の「唯一の成功例」だという噂だが、定かではない。
○少年時代に左手と融合する(『D-白魔山』参照)。以来、ともに旅をしている。いつから吸血鬼ハンターを職業にしたのかは不明。
○「最高の吸血鬼ハンター、その名は“D”」と辺境の人々に語られる。
○西部辺境の小村ランシルバを訪れ、“貴族の口づけ”を受けたドリスの依頼を受けリイ伯爵と闘う。ここから新たな伝説が始まる。
果たして、“D”を名前と言っていいのかどうかわからないが、その名を聞いた者はいずれもある種の感慨にとらわれるらしい。
『北海魔行』でフローレンス村の女漁師スーインは「格好いい名前。哀しそうな風に似てるわ」と答えた。
『戦鬼伝』の戦闘士ダイナスは「寂しそうないい名前だなあ」と快活にもらした。
みんな詩人である。
Dが使用する長剣は、多くのハンターが愛用する直線型の剣とは異なる優美なカーブを描いている。
黒光りする柄には、油を塗った蔦が巻かれている。
鞘には高分子ザイルが巻いてあり、鍔には通し穴がある。
高分子ザイルは刀身、あるいは鞘ごと放った刀を引き戻したり、ふり回して敵を威嚇するため。
Dの胸に下がっている青いペンダントには、マグナス・リイ伯爵の城のはね橋を自動的に下ろし、城の警戒装置を外す能力あり。Dの手からダンに渡った。
第二長篇『風立ちて“D” 』以降でも身につけているところから、現在は「二代目」であるというのは有名な話。
Dはいくつも持っているか、どこかですぐに調達できるらしい。
Dの枕詞。修業者グレンに対して使うこともあるが、それはあくまで“この世”のもの。
Dの場合は“あの世”のもの――じゃなくて、この世ならぬ人外のもの。
同じ三文字だが、意味する次元はおのずと異なる。
夜の森の昆虫たちも知っているDに対する不可欠の形容詞。枕詞。
だからといって“あの世”のもの
というわけではない。
- 「おれは姉さんと君に、貴族を倒すと約束しよう。必ず守る。君もおれに約束しろ。これから先、君が泣こうとわめこうと、それは君の勝手だ。好きにするがいい。だが、姉さんだけは泣かしちゃならん。 君が泣くことで姉さんが泣きそうだと思ったら我慢しろ。君がわがままを言って姉さんが泣き出しかけたら、笑ってあげろ。君は男だからだ。――いいな」
姉のドリスが、“貴族の口づけ”を受けたことを知り、ショックで泣き出したダンを叱咤する、シリーズ初の長セリフだ。
Dがこんなにも熱く他人を励ますことは今後もないだろう。
Dはもちろん約束を果たす。
このとき交わした約束はダンの生涯の誇りとなり、生きる力になる。
のちに姉弟にあった巡回医師の話では、ダンは一人前の男のように姉さんを助け、農場も広がったという。効果抜群だ。
「運命」の数学的解析を可能にし、それを全文明の歴史的必然に重ね合わせた貴族科学院が、その研究成果の発表をすべて中止し、非難の矢面に立たされた時に、全貴族の頂点に君臨した『神祖』が千年ぶりに姿を見せ、事態を収拾した際にふと洩らした言葉。
悠久に流れる歴史という名の大河と、ひととき穏やかな流れの上にとどまるうたかたの文明。
その担い手を“神祖”は「かりそめの客」と呼んだ。
はたしてそれは、“貴族”か、“人間”か――神祖にしか分からない。
この『神祖』のひと言は誇り高く、栄光に満ちた貴族の歴史の中で、ただひとつ、全貴族の疑惑と否定の眼差しを受けた、神にも等しい神祖の言葉として有名である。
それをなぜ、Dが知り口にするのか。Dと“神祖”の繋がりを匂わせるセリフだ。
- 「人間であることは、光の中に生きることだ。個々の生命レングスで考えた場合、人間は貴族には遠く及ばない。生物学的にみてもあまりにも脆弱だ。しかし、種全体のポテンシャル・エネルギーからすると――」
このセリフの後に、リナの「光は闇にまさる」というセリフが続く。
Dのねぐらでリナと交わすこの会話は、シリーズ史上最長ではないかと思われる。
リラの「どこから来て、どこに行くの? 貴族は? そして人間は?」という質問から始まり、なんと、6ページにもわたる。
貴族が不老不死であっても、人間にまさる身体能力を有していても、滅びゆく闇の遺伝子の運命には逆らえなかった。
Dは光と闇の遺伝子を併せ持つ。
どこから来て、どこに行くのか。そして何故生まれたのか。
この永劫の命題のためにDの長い旅は続く。
- 「あいつめ、差をつけやがった。――仕方がない。お前は優等生だったらしいからな」
これは“にせD”のセリフ。
Dの左手がミアの背中の傷を治癒させたのを見て、ひがんで拗ねる。
美貌も姿も戦闘能力も、何から何まで同じ(性格がかなり違うが)、双子のような二人の差は、Dの左手の存在だった。
この左手の有無がDと“にせD”の運命を分けることになる。
ここで言う“あいつ”とは、もちろん“神祖”のことだ。
心理攻撃を受け、父の名を聞かれたDが口にした言葉。
もちろん、このあとに続く言葉は決まっているのだが、
同人誌に「えもん」と続けさせるネタを無数に提供したことでも有名。
神祖が時折(というかいつも)もらしている言葉だが、特に『D‐蒼白き堕天使』では、自分の精子を神祖の実験に提供したフィッシャー・ラグーンが「貴族と人間の合いの子でも造る気か」と問うた質問に対する神祖の答え。
その唯一の成功例が何ものを指すのか、言うまでもなかろう。
でもその「唯一の成功例」が、ラグーンの精子から造られたとは思いたくないのも、言うまでもなかろう。
だってラグーンは禿げ頭だよ。
リイ伯爵の居城の広大な地下広場、全高十メートルもある石壁には「神祖」の肖像画がかかっている。
貴族たちがそう呼ぶ者は一人しかいない。
貴族の文明と世界を築き、支配者としての法(のり)を完成させた者。
全ての貴族が崇め奉る最高権力者。伝説の貴族の王。
Dの父親のこと。すなわち神祖。
全貴族が例外なく畏敬の念をもって口にする。
貴族たちの頂点に立つ大吸血鬼=王の中の王。
その名は吸血鬼ドラ○○○。
燃える宝石のように赤いその眼は、ヴェネッシガー侯爵より大きく威厳のある貴族の眼。
十歳の時に貴族であるヴェネッシガー侯爵に拐われ、以降八年間グラディニア城で下女として働かされた人間の女性タエによると、そのまなざしは哀しげでDに似ているという。
Dは赤い眼の主について「君臨するもの」と説明している。
D曰く「貴族の威勢が落日に向かうこの世界にあっても、その黒い翼は多くの運命に不可思議な風を送る」という。
フローレンス村での神祖の呼び名。
言い伝えでは、ある日、貴族以上の力を持った旅の男が船でやって来て、貴族たちを広場に集め、彼らの残虐な仕打ちを面罵した。
怒った貴族たちが戦闘馬車(チャリオット)に乗って押し寄せると、男は黒マントのひと振りで、戦車どころか別荘まで根こそぎ吹き飛ばし、恐れをなした貴族は、ひとりを除いて、みな土地を去った。
マインスター男爵だけは、旅の男の命令と力に楯ついた。
戦いは、貴族たちが立ち去った翌日、マインスターの城で行われた。
貴族たちの別荘が一瞬にして朽ち果て、あらゆる生物が死に絶えた上、山の形まで変わるような争いの結果、マインスターは敗れ、二度と陸へは戻れないような処置を施された上で、死体は永劫に海へ投棄された。
今でも彼は、陽の差さぬ深海の底を、腕組みしながらうろつき、時たま月の光を浴びては栄養をとって、黒い旅人への復讐と地上への進出を企んでいるというけれど、それこそ伝説である。
彼――マインスターが生きているうちに手を下した恐ろしい仕事がもう一つある。
その――人間の閉じこめられた町から、住人が消えてしばらくたつと、湾や入り江の何処かで、必ずおかしな生物が見つかる。
人間とも獣ともつかない形をしていたり、半ばミイラと化していながら生きていたり、首がないのに胴体だけ生きていたり、あるいは逆に、手だけが生きていて通りかかった人の足を摑んだかと思うと、少し離れたところで生首が口をパクパク 開いて、助けて、助けて、と言って泣き叫んでいたとか。
どれも、行方不明になった人々の面影を残していて、切り裂いても刻んでも死ななかったけど、陽の光にあてたら溶けてしまったらしい。
これが奴の仕業とわかったのは、そのうちの何人かがマインスターの城へ連れこまれるのを目撃したものがいたからだった。
あまりおぞましい想像を呼び起こすので、誰も口にしないけれど、そこで何が行われていたか、察しぐらいはつく。
それもこれも、伝説の旅の男の人のおかげで二度と発生しなかったわけだが。
彼はその後、人間が海辺で生きられるように、ほとんどの海生物を始末し、貴族のコントロールも解いて立ち去ったとされる。
何処の誰かはついにわからず終(じま)いだった。
これはDが追い求めている「奴」が人間を助けた伝説だった。
妖婚の結果生まれた忌まわしき子供たちの里の名。
あるものは蛇そっくりの鱗に覆われた顔の下の唇らしいところから赤い舌をちょろちょろと覗かせ、またあるものは、狼のごとく全身が剛毛で覆われている。
さらにあるものは、首から下は鰐の胴、鰐の四肢を持つ。
過去暦一万年の一月一日、地中より噴出した恐るべき毒素のためにバルバロイの里はその半数が死に絶え、残りも全身を腐り爛らせ死を待つばかりとなったが、ある遠大な目的をもって旅を続けていた「さる人物」によって廃滅を免れた。
これが三百二十年前のこと。
その人物が「この里より五名、最も強くたくましき男を我が旅に同行させよ」と言い渡し、選りすぐりの五名を伴って立ち去るや否や、里の大地はみるみるうちに天空へと盛り上がり、息を三つするうちに木には若芽が吹き、花は実を結んだという。
Dが分析に使用した機器。
貴族の科学文明の遺品で、残っている数は少ない。
使いこなせる人間はもっと少ない。
データ分析の他に「推理能力」までついている万能型。
リナが数年前に一度、巡回商人が持っていたのを目撃したのみ。
磁気ボールで操作する。ディスプレイは暗緑色。
犠牲所の血液に残った唾液から加害者の顔を「推理」するほどの性能を有する。
辺境の村にとって貴重な代用食になる苔。
ステーキから
スープ、
ジャムと万能の調理が可能。
ひなたに放置しても半年から一年は持つ。
また、この苔から生じるエキスを塗れば傷口もたちまちふさがる。
毒蛾人間(モスマン)の毒も抜けるという便利な代物である。
辺境を旅する者には欠かせない必需品=カプセル。
ビタミン、ミネラル、疲労除去剤など九百種を配合し、わずか五秒で衰弱した者の生気を回復させる。
高価な品だが、辺境を旅する時にこれを所持していないことは「裸で旅をすることに等しい」とさえ言われる。
正しくは『瞬間転移除去装置』と呼ぶべきもの。
貴族たちが持ち前の清潔さから、戦闘後の死人兵の死体や兵器の残骸を宇宙空間へと放出するために使用した。
金属の棒の先端から細い管が伸びて、骨組みだけのパラボラ・アンテナのように広がる。
そのアンテナの中ほどが宇宙空間につながっており、見苦しいものはすべて宇宙の彼方へと瞬時に消える仕組みである。
貴族を貴族たらしめていると想定される遺伝子。
逆に人間には光の遺伝子があると想定されている。
貴族文明はすでに五千年以上前に完了している。
解読成功は西暦六〇〇〇年代か?
底辺の直径二キロ、高さ二十メートルのなだらかな丘にある。
この丘は一メートル登るのに男の足でも三十分かかる(高さ二十メートルなので、六百分。つまり十時間かかるはず)。
駆け降りると、二分もかからないのだが。
三千五百年もの間、「神祖」によって実験が繰り返されていたが、それでも吸血の習慣がなくならなかったため、数十万もの生命が抹殺された。
ツェペシュ村の創立者たちがやってきた二百年近く前でもすでに蔓草のはびこる廃墟だった。
幾度か村の決死隊が調査し、古の素性と見取図を作成したが、奇怪な現象が多発。
五十年前の『都』からの調査団以降は、丘に登る者はいなかった。
唯一残った石造りの建物に、中庭に面した洞窟ような入口がある。
内部には奇妙な機械や家具が置かれている。
彫刻や絵のかかった廊下を幾つも曲がると、ホールらしきところに出る。
地下には巨大な実験室がある。
四囲は廊下同様、巨大な石塊を十メートル近い高さまで積み上げた大城壁、床に並ぶデスクもごつい木製、それを飾り立てるのはフラスコやビーカー、奇態な色の液体が詰まった薬瓶――まるで中世錬金術師のラボそのもの。
それら古風な器具の間には陽電子頭脳、エレクトロ・アナライザー、物質変換装置といった超科学技術機器が並ぶ。
三〇四六年のα型ブラック・ホール消失に関連して、上層部の更迭が行われた。
リナの台詞によれば、「舞台はすべて闇と暗黒、夜の月光と霧――なのに、どうしてこんなに美しく感じるのかしら」と感想される絵画。
他にも「棺から起き上がった貴族たちが、太陽に手をのばしている絵」が何枚も見られたが、あるものは完膚なきまでに破壊され、あるものは焼かれ、あるものは黒く塗りつぶされていた。
貴族の見果てぬ夢だったのだろうか。
核戦争以前の文明を指す。読者の時代の文明のこと。
ツェペシュ村の廃墟に残る縦三メートル横二メートルの絵は真っ黒に塗りつぶされていた。
Dの語ったところによると、似たようなものを何回か見たというが、あるものは破壊され、あるものは焼却されていた。
復元されたただ一枚には、棺から起き上がった貴族が太陽に手をのばしている図が描かれていた。
ツェペシュ村を恐怖せしめた「昼歩く貴族」との関連大だが、はたして神祖の「見果てぬ夢」として感慨に耽るか、いいかげんに「はた迷惑な実験はやめてくれ」と突き放して見るか。
実験の失敗作として、廃墟に閉じ込められていた。
七、八歳児程度の大きさで、異様にせり出た額と陥没した両目を持つ。
その血走った瞳には人間性の断片すら窺えず、並み外れた大きな唇に赤黒い舌、しかし上下の歯並びは人間のそれ。四足歩行をする。
農家の主婦と子供を二体で襲った。
長い頭髪がある。青白い水死体のような肌。
単に生物というのではなく人間には違いないが、骨格の形状、筋肉の発達、内臓部位など二百近い点で明確な相違点が認められる。
頭骸の形から脳容量、知能程度ともに極端に低いだろうと推定される。
三五〇〇年の間、おびただしい実験が行われ、すべて失敗に終わった。
その結果もすべて抹消された。
異形のもの。
明らかに人間と思しい、しかし、奇怪な怪物たち。
肥大した頭部、変形四肢、猫のように輝く双眸。
全身を覆う剛毛。弱々しく泣き叫ぶ幼児たち。
そのすべてが、姿形からは想像もできない能力の持ち主。
彼らはひとり残らず、夜も昼も眠らずに行動することができた。
真空中で呼吸することができた。
水の中を自由に泳ぎ回り、致命傷さえ細胞が修復した。
生物進化の一頂点であった。
しかし、それを支える唯一の欠点が、彼らの運命に死をもたらした。
吸血の習慣。呪われた業。それが抹消の理由だった。
数十万の生命が抗議も許されぬまま、赤児の段階で闇へと葬り去られたのである。
光と闇の遺伝子の実験結果を、気配がDに告げた時の言葉。
神祖のつぶやき。もちろんDのこと。
『風立ちて“D”』に登場した神祖の姿(?)。
天が暗く翳った。ぴたりと風の音も絶えた。
中庭は中庭ではなくなった。
Dは全身で、「それ」が立ち上がりつつあるのを感じた。
周囲は暗黒であった。光すら透過を許さぬ密度は、ブラック・ホールに比すべきものがあった。
「それ」は、その究極の密度を遥かに凌駕する緊密性をもってDの前に立ち塞がった。
Dはその密度を「気配」に還元した。
他のものなら、精神を物理的に押しつぶされ、廃人となっているところだ。
無限大に近しい闇の密度を有する存在を、Dと同等の形に変形していたのである。
Dのどこかで、一つの、たくましい巨人の影が完成しつつあった。
黒いケープをまとい、青白い肌に刻み込まれた朱唇から二本の牙を剥き出した「神祖」の像。
黒ずくめの大男で、顔つきはこの世のものとも思えぬいい男。
あんた(D)と似てるね――とはシェルドン婆さんの言葉。
誰のことかって?神祖に決まっとろうが。
古い城館で夜ごと操り広げられる夜会。
白いイヴニング・ドレスに黒の夜会服、そして舞踏会――シヴィルの願っていた夢である。
シヴィルが貴族と踊る夜会が行なわれていた空き地。
シェルドン婆さんの住まいから三キロ離れている。
南西の森を抜け小道を一キロ行くとあるらしい。
まるで「耳なし芳一」の赤間が関の寺みたいである。
人間と貴族が理解し合って暮らせる世界。
ある男がシヴィルに託した夢。
読んで字のごとし、動く街のこと。
直径約三キロの楕円形で、面積三平方キロ以上。
三基の核融合炉が生産したエネルギーは素粒子変換器によって反重力タイプに変えられ、基台を地上から一メートルの高さに浮遊させる原動力となっている。
またの名を浮遊街区。
高さ十メートルに達する楕円形基台には公園から墓場まで、監獄から病院まで、通常の町や村に備わる施設はすべて整っている。
住人は五百人。
航行装置は複合コンピューターによって管理され、時速二十キロの巡航速度を保つ。
エンジンへの反重力エネルギーの全面注入が可能な場合、六〇度までの傾斜なら、いかなる崖も山脈もよじ登ることが可能。
二百年前、北方大山脈(ノース・グレート・マウンテン)の麓近くで神祖を乗せている。
装備する火門はプロメテウス砲の他、二インチ広角砲を二十門、迎撃ミサイルが三十基と意外に古風。
およそ二百年前、その麓に立っていた神祖を移動街区が拾い上げた。
二百年後、町長ミンをして「一生の不覚だった」と言わしめた。
なぜ二百年後なのかは読者のみが知っている。
人間の精神(こころ)とやさしさに、貴族の不死身を持ち、俗世の汚れを知らず永遠の生を謳歌する存在。
わしはしくじったが、ナイト夫婦は成功した。
――「わし」とは誰のことか、言うまでもないだろう。
移動街区の町長ミンのこと。
発想はよかったが、「完璧さ」を求めたのが徒(あだ)となった。
誰かが言っていたが、完璧なものも欠点である。
タエが連れ去られ、下女として働いていた貴族の城。
ヴェネッシガー侯爵の居城(推定)。
特殊な用途を持っていたというが、バイパー婆さんによってほとんどの防衛機構は潰され、城主も滅ぼされている。
タエを「隠されっ子」にした張本人。
城に乗り込んできたバイパー婆さんに棺を出る途中で心臓に杭を刺され、三時間後に息絶えるまで無茶苦茶に暴れまわった。
貴族の領地を守る謎のシステム。
ブロックデン一族の領地を例に取れば、鉄をも溶かす稲妻、大地を腐食させる溶解雨、機械兵をも食いちぎる妖物などが忽然と天空より発し、領地を侵す者を撃退したという。
真相については憶測の域を出ないが、領地上空数百キロに滞空している“武器庫”が、その正体である可能性がもっとも高い。
神祖が男爵バイロン・バラージュの母コーデリアに施した実験処置。
このため、バイロンの右手は失われている。
フィッシャー・ラグーンが神祖から受け取った「お墨付き」の内容は以下のとおり。
ひとつ、クラウハウゼンの村人の血を吸ってはならない。
ふたつ、夜間の公共娯楽場はフィッシャー・ラグーンがとりしきる限り、自由勝手とする。
その他にもいろいろある。
このため、ヴラド・バラージュ卿もラグーンの館にだけは手が出せない。
かつて東に存在したといわれる伝説の大陸。
奇金属オリハルコンを製造した。
辺境に巣喰う妖獣妖魔のうちでも狂暴さ、恐怖度では屈指の一団。
その姿は人間の形や、ぼろぼろの衣裳をまとった白骨、首が二つあるもの、全身に眼球をまぶしたようなもの、数十本の手足を蠢かすものと様々で、そのどれもが乗っている馬もろともに半ば透き通り、全身に青白い燐光を噴いている。
その一撃は敵の攻撃さえ通り抜け、目標物を攻撃する。
この攻撃は極めて精神的なもので、常識と反すること(跳ね返した攻撃が通用し、有効なはずの攻撃が無効)になる。
つまり、攻撃を跳ね返したと思うと跳ね返せず、斬ったと思うと斬れないという、信念の逆をついた攻撃法を有する魔物。
彼らを倒すには、無意識レベルでの変換が必要である。
幽霊(ファントム)騎士団の青い光は見たものの精神を呪縛する催眠光。これを防ぐため、この地方の人々は色濃い
ゴーグルを使用する。
クラウハウゼン村ソーントン通りの倉庫に収納されている巨大メカのひとつ。
神祖から理論を教わったフィッシャー・ラグーンが独力で製作した。
黒い小山のような基部(ベース)の周囲をおびただしいレールが取り巻き、原子の見取り図を連想させる外観を持っている。
未知のある物理法則によって導かれるレールの湾曲率と角度から射出される「物質」は、疾走中に光速を越え、標的に命中した時、時間軸にも干渉する。
その時間干渉作用を取り除き、純粋な破壊のみの稼働を旨とする究極兵器。
「破壊者」に対して使用されるが通用せず、反対に消滅させられた。
「タロスの武器庫」の破壊された工場のさらに奥の封印堂に、数千年ものあいだ閉じ込められていた存在。史上最悪の武器。
その工場は角のような突起が空間的秩序を無視して生え狂っているとしか思えぬ建物で、玄関は流体金属。Dも無視し得ないほどの鬼気を吹き出す。
男爵バイロン・バラージュが語るところによると、開発のために数百年の歳月を要し、第一期、第二期の貴族の開発陣はことごとく死に絶え、第三期に至ってようやく完成するも、責任者はその瞬間にすべてを破壊する旨を通達し、実行したという。
三メートルの巨軀に合成皮革の戦士用の兜や胸当て、手甲、脚絆を着けている。
右手に五メートルに近い長槍、右手に長剣。
大雑把に鼻や唇を取りつけたような顔。目から赤い眼光(死光)を発する。
蒼い光を発し、対象となった場所は円形に消滅する。
世には出してはならぬ宝物や発明を封じ込めておく空間。
建造には貴族院の許可が必要。
そのひとつは「タロスの武器庫」の山腹から二キロ奥にあり、三次元方向にそれぞれ数キロの広さを持つ空間だった。
中央には長さ五メートル、幅二メートルほどの寝台が置かれ、その周囲には奇妙な品々――メビウスの書籍(壁を埋めつくすほどの予備がある)、多重層戦場(バトルフィールド)、血の泉など、封じ込めた「破壊者」の意識が封印堂脱出に向かないためのさまざまな娯楽(?)が置いてある。
しかしその書籍はことごとく読み捨てられ、潤沢のはずの血の泉は渇き果て、多重層戦場もすべて破壊されていた。「破壊者」の退屈、いかばかりや。
「タロスの武器庫」の奥の封印堂に置かれていた品物。
封印したものが眼醒めた場合、永劫の時間を読書にいそしめるようにしている。
終わりのないこの書籍は、ひもとくものが知らぬうちに最初のページへと戻り、しかも書かれている内容はすべて異なるため、読むものは飽くなき知的好奇心に駆り立てられ、未来永劫にわたって読み進めることになる。
印刷自体は無制限に一度というわずかな割合で狂いが生じるのみだったが、封じ込められていた「破壊者」は我慢できずに封印堂を脱出した。
「タロスの武器庫」の奥の封印堂に置かれていた品物。
封印したものが眼醒めた時に果てしなき戦いに闘争本能を燃やせるようにしてある。
ヒマつぶしのゲームである。
ある空間に兵士と武器を用意し、それを数千、数万層にわたって重ね合わせてある。
呪われた「タロスの武器庫」の奥の封印堂に置かれていた品物。
封印したものが眼醒めた時に血の渇きを癒す。
膨大なメカニズムの一部が有限の材料から無限の血液を供給する。
貴族たちにとってすら「呪われた地」と呼ばれた地。
大湿地帯の対岸の渡しから馬車で一時間ほどの場所にある、闇が固まったような巨大な城塞。
大の大人ほどもある鉄鋲を打ちつけた大門がある。
城塞部分は道に面した大門とそれを支える部分だけで、本体は岩山の内部にある。
パラボラ・アンテナが設置された壁面は雨風に打たれてざらつき、銃眼が開いている。
大門は五万トンもある液体金属で構成されているため、加えられた力の逆方向に流動し、あらゆるエネルギーを送り返して、門には傷ひとつつかない。
岩山をくり抜いてつくられたため、内部は三万が岩に取り囲まれ、天井も岩でできている。
発電所、変電所、エネルギー変換工場や得体の知れない施設が数多くある。
貴族ですら恐怖する「呪われたもの」のひとつ。
東部都市区に存在すると言われる。
人間にとっては単なる蜂の巣都市でしかないが、貴族の血を引くものが踏み込めば再び相まみえることの叶わぬ迷宮(メイズ)と化し、二度と戻れなくなる。
なぜそうなるのか、どういう目的があるのか、原因はいっさい不明。
「タロスの武器庫」に並ぶ存在として登場。
外宇宙生命体(アウター・スペース・ビーイング)(OSB)の「人口の自然光」に対抗するため、古の貴族が「人口の自然の闇」を作り出した。
しかし、実戦に使用された記録はない。
Dは神祖がそれを封印したと推測している。
放置されれば一年もしないうちに地球そのものが、さらには全宇宙がこの人口の闇に包まれてしまうからである。一種の
反物質か。
ディームリ村北の外れの飛行体発着場で現れた「奴」の体格は“D”よりもひとまわり大きく、頭一つ高い。
密林のように無造作に伸びた髪の毛で袖口のすり切れた黒いコート(裏地は赤)にマントを着用。
その起こす風はすべてを腐食させる魔風と化す。
合成蛋白と人造筋肉でコンピュータに造られたそれは、メイン・コンピュータが五千年前に訪れた「神祖」の姿を、出来る限りのデータで再構築したもの、すなわち神祖の劣化コピーだった。
Dの気配に反応して眼醒める。
Dシリーズに名のみ高い「神祖」は、小説では文字通りその「名前」の一部と、はた迷惑なその「実験精神」ばかりが描かれてきたが、第九長篇『蒼白き堕天使』ではついに、本体に限りなく近い合成蛋白と人工筋肉から成る「コピー」が登場した。
神祖のコピーを出現させたのは、ディームリ村の北に位置する飛行体発着場を管理する特A級コンピュータで、女性人格を持つそのコンピュータは、神祖に対する敬愛思慕の情もだしがたく、愛する男性のデータからコピー体を合成した。
機械にまでそんな思いを抱かせるあたり、さながら『スター・トレック』シリーズのカーク船長(ウィリアム・シャトナー)みたいな女ぐせの悪さだが、神祖の顔にシャトナーの顔がちらつくと思うと、ちょっと気色が悪い。
ディームリ村北の外れに位置する飛行体発着場を管理するメイン・コンピュータの種別。
人間並みのプライドを持つ扱いにくいコンピュータだが、Dに対しての服従的な物言いはバイロンが驚くほどで、尋常な貴族相手には決してしない。
その発する声は、合成音で澄んだ女性の声になっている。
タキの印象では冷たく知的な美女といったところ。
他の女性の音声も当然ながら合成可。この時の声はおそらくDの母か?
五千年前に一度だけ訪れた「神祖」に思いを募らせ、そのデータから神祖のコピーを合成した。
「連絡船」ということからもわかるように、貴族の宇宙開発――とりわけ外宇宙進出は著しく進んでいた。
太陽の沈まない宇宙に貴族が進出することができたのは、太陽光を弱点とする貴族の、地球との関係に秘密がある。
クラウハウゼン村の西のはずれに一箇所ある。
かつて太古の宗教的遺跡があった場所で、聖なるものが祀られていた。
そのほとんどは貴族たちの手で破壊され、埋め立てられ、遺跡らしい遺跡は世界にも指を折るほどにしか残っていない。
人間は貴族たちとの戦いに利用するため聖域を発掘した。
その結果、発見した護符や聖体のいくつかが貴族たちとの講和条約に威力を発揮した。
人間の信仰の対象として、貴族の弾圧の対象になったらしい。
しかし『都』にも神を祀る場所が残っていたことから見て、完全な弾圧は不可能であったらしい。
かつて太古で「中世」と呼ばれた時代、その貴族たちは戦乱に明け暮れたという。
別種と言うのは人間の貴族のこと。おそらく薔薇戦争のことであろう。
古代の秘儀により忽然と現われ、十二歳以下の子供二名の生命を代償に契約を結び、呼び出した者を「彼方」の理想の地へと案内する存在。
頭からすっぽり灰色の頭巾を被り、首から下も同じ色の長衣をまとっている。
腰のあたりで結んだ紐が唯一のアクセント。
長衣の胸から突き出した巻いた皮とも紙ともつかないその表面に、地図らしき模様が描かれている。
隠し持っている山刀で子供の耳を切り、付着した血を舐めて十二歳以下かどうかを判定する。
「案内人」との契約を破棄した場合、生贄も契約者も永劫に呪われるという。
頭巾の中は黒々とした闇しか見えないが、「案内人」の眼は二つのかがやき――というにはあまりにも冒涜的な光である。
「案内人」が与えた痛みは消えない。
「案内人」と貴族が合体すれば、その力は倍どころか五倍ほどにもなる。
合体例は過去にも数例があり、そのときは貴族の精神が「案内人」に敗れたため三つの村が完全に破壊され、死者は二千人を越えたという。
「破壊者」との一体化を求めたバイロン男爵に対抗して、ヴラド・バラージュ卿は「案内人」との合体を企てた。
貴族同士の戦いによって敗れた者たちが逃げ込む逃亡者の理想郷。
古代の魔導書に最先端の量子力学や神秘工学の成果が組み合わされ、数千年の時間と数千万人の滅びの結果として、異界へのほころびを開けることに成功し、この地を見出した。
現在では、辿り着く術(すべ)を知る者が死に絶えて、単なる伝説の地とされているが、実はいたいけな子供二人の生命を代償に契約をかわした「案内人」の案内によってのみ、大海原に出現した白い道を辿って渡ることができる。
貴族の休息所のひとつ。
万にひとつ、身ひとつで陽光にさらされてしまう場合を考えて、貴族の道に数十キロ置きに設けられた緊急避難用の休息所がある。
サイズは最低二名から、大は百人収容可能な大型までさまざま。
闇住いと呼ばれるタイプは十人から二十人が収容できる中規模のもの。
その多くは風化し、破棄され、あるいは人間の手で破壊されているが、生き残りの貴族や旅人に束の間の憩を提供することがある。
その外観は灰色のドームだが、その内部は外観を裏切るほどの広さを誇る。
中には大理石の階段や、自然の温泉を利用した貴族用の風呂などを有するものもある。
出入口は長方形の穴で、拡大縮小は自由。
出入口には内部の三次元見取り図がある。
地下三階=最下層の一室には瞑想室がある。
縦横高さがいずれも五メートルの立方体の部屋。
ドーム内部には自走路とエレベーターも設置されている。
貴族以外の生命体が近づくと防衛機構が働き、幻覚を発生させる。
北湖山脈が忽然と消失したために出現した北の果てにある道。
ひとつの山脈でもって数千年の間封鎖され、開放されると同時に周辺から半死人の大群を呼び寄せる巨大な集積場。
ムマへと向かってこの道を辿った者たちは五千年以上にもわたり、総数は二千万人以上。
そのすべては“あのお方”の実験に使用されるためにムマへと呼び寄せられたもので、この街道は実験に使用できる人間を選別するための
テスト・コース。
やる気のない人間――精神的な強さの足らぬ人間は、この街道ですべてを投げ出し、進むことも退くこともできずに、路傍の屍と化して果てる。
太古の貴族によって作られた遺伝子研究所。
一万年をかけて貴族と人間の血の融合実験をしていた。
その実験によって次々に生まれる妖し子は、失敗作とみなされると底知れぬ深い穴に放棄された。
施設の設計は神祖が行い、彼専用の観測室もあった。
広大な広間にはいまも眼に鮮やかな数千、数万の衣裳や、壁を埋め尽くす武器、なかにはDの愛用の剣と瓜二つのものまで残されている。
施設は地下三十キロ、東西南北方向三十キロに広がり、現在、機器が死に絶えた工場地帯が存在する。
工場地帯の地下には、黒土の広がる墓場がある。
大地震の直撃で裂けた地面から飛び出した柩はすべて三千年以上前のものばかり。
神祖が作った自己修復装置も完全には働かず、飼育していた護衛獣が
大破壊の影響で逃げ出し、大洞窟で繁殖している。
村の地下に埋設されたエネルギー・ラインは、瞬時に解放すれば惑星の二つくらいは吹き飛ばす量のエネルギーを常時この施設に送り込んできた。
大洞窟の大施設――神祖の地下王国で日ごと繰り返される呪われた実験から逃れるために、魔道女シューシャは仲間と語らって動力源たる亜原子炉を暴走させたという。
いまから四百年ほど前の出来事である。
ムマは遥かな未来でDを迎えるはずだった、死人街道に忽然と現れた城砦。
その周囲には高さ百メートルもある塀と差し渡し二十メートルもある堀を三重に巡らし、内部に屹立する建物は、角のようなレーダーやパラボラ・アンテナ、重力波砲や、デストロイヤー、G時空歪曲砲等が針のごとくせりだしている。
堀には水がなく、何千メートルとも知れぬ深淵になっている。
また建築物は広大で、城壁の奥の建物など、高さが二百、三百メートル級のものが林立し、塔ともなれば優に千メートルはあるのではないかと思われる流線形のものが建っている。
その内部は深い闇で、Dをもってしても見通すことができない。
貴族に成り損ないの干からびた死体が十万七、八千体、柩に納められている。
死人街道の苛酷な試練を乗り越えて呼び寄せられたものは、ここでさらに試練を与えられ生き残りが十数人にまで絞られるが、そのほとんどが狂っている場合が多い。
最後まで耐えた者に“神祖”のDNAが注射される。
地下深い一角には移動してきたエネルギー源の“揺曳炉”がある。
Dが再調整したことによって、ムマは再び北湖山脈に閉ざされた。
濃藍色の長衣をまとい、ぞっとするような神秘的な藍色の糸のような長髪が頭部から腰のあたりまで覆って、顔さえ見えない。
その髪は大地を貫き、岩を刺し、鉄甲車にさえ突き立つ。
地下の墓場でミア・シモンを襲ったゾアや死体を、その髪の針を使って貫き、倒す。
また、その髪は、飛来したDの白木の針に巻きつき、止める。
髪自体に自律神経を備えているのだ。
黒馬に乗ってミアの前に現れて以来、ムマの秘密、すなわち貴族と人間の血を融合する実験について知識を得たものをすべて抹殺せよとの指令を受けて行動している。
腰から上が機械仕掛けのように一八〇度回転する。
影の戦場でDの白木の針を受け、左眼を失う。
Dたちがユマのでき損ないたちと戦っている間に、ユマの製造工場にある神祖の作った装置で強化処置を受けた。
なぜかその髪の毛は、でき損ないと同じ黒になっている。
ユマの製造工場で「にせD」を襲った。
髪の毛はユマ本体と異なり黒。
二号はユマ本体よりも背が低く、太りすぎの気味がある。動作も緩慢。
最終的に二十五人も出現した。
通常の形態から得られるエネルギーのうち、増幅器を利用した太陽エネルギーこそ理想に近いものだったが、貴族文明は自分の弱点から恩恵を受けるのを良しとせず、異次元空間や無限運動にさまざまな可能性を見出した。
神祖直属のエネルギー開発センターが五十年をかけて開発したエネルギー炉。
完成までに貴族十万人近くが衰弱死したという。
外見は上端まで百メートル以上もある円筒だが、全体が三次元の幾何学を無視して微妙に歪んでおり、ある種の歪みと振動から無限運動エネルギーを取り出すことが可能。
その凄惨さに神祖自らが開発記録の破棄を命じたという。
三基の建造を数えるのみで、設置場所は極秘。
そのひとつがセドク村地下の大洞窟の大施設だった。
防御装置は厳重を極め、いかなる物質をも瞬間的に消滅させてしまう十億度の熱線が黄金の
シャワーとなって降り注ぎ、触れるものをことごとく消滅させる不可視のシールド=反力場(アンチ・フォース・フィールド)を備える。
防御の最後の砦は血の封印。神祖の血を引くもののみが通過を許される障壁が突破されると、揺曳炉の全エネルギーが千分の一で炉の底部にはめ込まれていた黒い函(ブラック・ボックス)に集中し、炉自体が暴走して爆発すると半径一千キロの大穴が空いて、その影響で辺境の半分は人も妖物も棲めなくなってしまう。
ムマの巨大な菱形の建造物。
高さは優に五百メートルを超える。
巨大な扉とそれを支える門枠だけでできている。
扉は木製のようだが、石造りの門枠と同様に表面はひどく艶光っている。
幅はわからないほどで、左右は渦巻く雲の壁に溶け込んでいる。
厚さは無限大。神祖の心理障壁らしい。
混沌の中にいたミアは、それが、一度だけ彼女自身が入り込んだ、Dの混沌と同じものだとは、気づいていなかった。
ミアが妖々と立ちこめる雲の中を歩いていくと、前方に途方もなく巨大な存在を感知した。
ある感情がミアを貫いた。恐怖は無論あった。一歩間違えば、二度と立ち直れないほどの濃密で凄惨な恐怖が。
だが、不思議なことに、ミアは「それ」を恐れなかった。その感情が、ミアを救ったのである。
想像もつかないくらい奥深く、冷たく、そして、何よりも奇妙なことに、温かい。
ミアは“似ている”と思った。そのスケールは違うが、根本的な部分は瓜二つだ。Dと。
ミアが神祖に“あなたは、Dの近親者ですね”と問うと、“――想像力というのは恐ろしいものだな”、“――だが、それは人間の美点のひとつだ。だからこそ、人間は滅びもしなかったし、お前もここへやって来れた”と答えた。
続けてミアが“ここは、どこなのです?”と問うと、神祖は“好きに考えるがいい。「そこ」が実際に「ここ」だ”としか答えなかった。
それを聞いたミアは“まるでZEN問答だわ”という感想を抱いた。
第十長篇『双影の騎士』の「混沌が形を取りはじめた。天地創造のときのように。」という描写、吸血鬼ハンター第40作品目『D-血風航路』の「天が大地が、ひっそりと生み出された混沌の渦の一部と化していく。」という描写と、「――すべては混沌から生まれ、混沌へと還っていく」という(おそらく)〈神祖〉のセリフから、混沌は天地創造のときよりも前に存在し、混沌から宇宙が誕生したと推測されるが、作中では明確な説明がなく詳細不明。
正式名称『Dーダーク・ロード』。
シリーズ第十一長篇。
第一巻は一九九九(平成十一)年三月三十一日発行。
以下、第二巻は同年六月十日、第三巻は同年九月三十日発行。
神祖に次ぐ貴族ギャスケル大将軍とその七人の「招きびと」たちがDと対決するが、親分たる大将軍からして「なぜ復活したか」その理由を知らず、すべてが神祖の設定したゲーム盤上の駒にすぎなかったという、壮大な遊戯性の強い作品。
貴族の中でも選ばれた一部のみが、ご神祖の館で聞かされた歌。
口ずさんだのはD本人、夜空を歩きながらそれを耳にしたローランサン夫人は愕然とする。
歌を作ったのは、夫人ほどの身分でも目もじしたことのない神祖の奥方だったからだ。
生を知らず、死を知らず
それゆえに、汝、その名を呼べ
遙かなる者と
六頭立ての馬車。何から何まで巨大。
黒馬は通常の馬よりふたまわりは大きく、体長は三メートル。全高も三メートルほど。
車体は鋼。すべて怪異な彫刻で埋まっている。馬は自慢の合成馬。
城の中庭には薬草園を配した草木の大地が広がり、裏庭には大理石の散策路が整備されている。
城に同調していない者には内部が迷路と化し、ロザリアを監禁していた塔の最上部には幅二メートル、深さ十メートルもの流水を巡らしているなどの、各種防御装置が施されている。
ギャスケル以外はその所在も知らぬ一室に、神祖の巨大な像が安置され、その手に刺客として七人の貴族の名が刻まれた石板を携えている。
ただしその中の一人ロザリアの名は、彼女が刺客として覚醒する瞬間まで、判読不可視なほど摩耗していた。
城の最上階の屋上は飛行体の発着場となっており、飛行体はその階下に格納されている。
ギャスケルが脱出の際、完全消滅を指示し、城は砂で造られていたかのように崩壊した。
ギャスケル大将軍が“Gの乱”で『都』の軍勢に勝利した記念に建てた記録保管庫。
自らの生涯記録を封印した。
戦勝記録と大将軍の歴史は縦横五ミリほどの四角い金属片に、復活プログラムとともに記録されている。
金属片はさらに縦二メートル、横一メートル、重さ一トンを越す石板に封入されていた。
ジェルキン村外れの遺跡にある。
その深部まで踏み込めるのは創造したギャスケル大将軍と神祖のみといわれるが、Dの呼び出しに応えて出現した。
その外観は銀色の雲。
内部は広大な空間が広がり、侵入を試みた者たちの使用した乗り物の残骸が転がる。
内部の移動には、渦まく雲で構成された径七、八メートルの空間を形成する球体を使う。
エイリアンが自分の世界に合わせて変化させたため、人間用の空気ではない。
内部には異星人の兵器や指揮統制所、戦闘機製造工場、格納庫、発着所が活動可能な状態で放棄されている。
保管庫の防御機構もいまだに生き残っていて、反陽子砲とミサイル搭載の異星人の戦闘機一千機の攻撃をも、軽々と撃退する。
毒学者グレートヘン博士の秘技。
その毒を吸った貴族は体が太陽と化し、全身から発する陽光で骨まで灼けてしまう。
この技にかかればどんな大貴族でも悲鳴を上げて自ら死を望むが、過去に一度だけ神祖が耐え抜いたという。
現在まで残っている数少ない宗教宗派のひとつ。
貴族の全盛時には、貴族からの防御と開放を求めてさまざまな形態の新興宗教が数万から創設されたが、ほんの数種類を除いて形ばかりのものに過ぎなかった。
吸血貴族が支配する世界で生き残るために、宗教は殺傷を禁じていないのが特徴である。
絶対の孤独と絶望に精神を膝下させるもの。
ローレンス・ヴァルキュア大公がこれを駆使したため、彼は「絶対貴族」との異名を得るにも至った。
神祖の生誕一万年を記念して造られた金貨。
限定五十枚しか鋳造されず、これを手に入れたものは人間でも貴族の称号が得られたという珍品。
五千年の眠りから醒めた反陽子コンピュータ。
神祖の息がかかった端末。
高さ百メートル、基礎部分の直径は三百メートルにも及ぶ。
幻実空間(ファントム・リアリティ・スペース)や人体分解酵素などの超兵器を有している。
このコンピュータの目的はヴァルキュア大公に協力する以外の目的がある。
ヴァルキュアより前に指令を出して者がいたらしい。
神老とも。貴族なら最高位の元老クラスだと、一瞬にして、Dを移送できる技術を有する。
『D-邪王星団』に登場したブロージュ伯爵が持つ、全長六メートル、穂の部分実に二メートル五十の大長槍。
槍の強度は両端から数百億トンの圧力を加えられても折れず(曲がって元に戻らなくなったが)、電子も中性子も一つに融合した
ブラックホールと化した板に触れても何とも無いほど。
神祖の力が込められた武器らしい。
ブロージュ伯爵曰く、「わしの槍にこめられたエネルギーには逆らえん。この槍には、ヴァルキュアを斃すべく、御神祖の力がこめられておるのだ」という。
『D-邪王星団』に登場したヴァルキュアの七人の刺客のひとり、スピイネの武器。
どうやら神祖から授かったものらしい。
スピイネ曰く、「こいつはあるお方から授かった大層な糸なんだ。切断できるのは、これもその方から頂戴したこの爪だけよ」「おめえを吊った糸は、おれから出てる。だが、おれを吊るしている糸の出所はわかるめえ。こいつはな、月からのびてるんだよ。俺は貴族がこしらえた“月宮殿(げっきゅうでん)”の実験室で生まれたのさ。もっとも、それがわかったのは、そのお方の使いが“月宮殿”の親衛隊のひとりにおれを召し抱えようと迎えにきたときで、おれはそれまで、お袋と貧民窟に暮らしていたんだよ。夢を見ているようだったぜ。おれは死ぬまでその豚小屋にも入れそうになかった宮殿の黄金造りの一室で、そのお方からおれの出自を告げられ、ヴァルキュア様の親衛隊に加わるよう命ぜられたんだ。出自ってわかるかい?このおれ、スピイネ様はなあ、精子の段階から超人となるよう手を加えられたエリート中のエリートだったのよ。餓鬼の頃から、生まれる子供で生き残れるのは百人にひとりといわれる月の貧民窟で、一対百の殺し合いにも負けたこたあなかったが、 まさか、あのお方から貰った能力(ちから)のおかげとは考えもしなかったぜ」という。
かつて歴史が語られる以前、ミノタウロスという人獣を封じ込めたという“迷路”。
刻一刻と迷路はその形状を変化させるため、生きて脱出した者はいないという。
先史時代の伝説の名工ダイダロスの手になる「それ」を、忠実に再現できたのは“神祖”のみであった。
“ミノス王の迷路”とは、彼の妃が生んだ人間と牛の混血児ミノタウロスを封じるための、果てしない牢獄であった。
ミノタウロスは月にひとり、妙齢美女を食料として要求し、最後は、勇気ある美女の隠し持った糸巻きの糸を辿った勇者テシアスの剣の前に斃れたという。
“ミノス王の迷路”を製作したという伝説の工匠ダイダロスは、鳥の羽を使って飛行装置をつくったが、息子のイカロスがそれを用い、太陽に近づきすぎたため、装置をつなぐ蠟が溶けて墜落死したという。
“神祖”の技術の粋を集めた堅牢な砦。
この『砦』には対空ミサイルやレーザー・粒子ビーム・バリヤーなどが配備されている。
貴族による科学技術の発達は五千年前にピークを迎えたが、その彼らですら理解不能な物理法則を応用した、御神祖の技術と呼ばれる一連の超技術があった。
技術そのものは存在しても、その根本原理を解明し得るものは神祖のみであり、貴族たちに許されたのは、神祖から下しおかれたそれらを使用することだけであったという。
扱い方のみは、一般の理解値に落としてあったのである。
だが、御神祖の技術はある時期を境に封鎖され、それを応用した事物はすべて破壊された。
それは貴族の種族的衰退がはじまったとされる頃と、軌を一にしていた。
貴族たちの間でも、御神祖の技術をもってすれば、衰退の時期を一万年は遅くできたのにとか、御神祖は貴族の滅亡を早めたがっているのではないかと、疑惑と怨嗟の声が地に満ちていた。
少なくとも両手の指くらいは、神祖に異議を唱え得る貴族もいたという。
ローレンス・ヴァルキュアもその一人だった。
御神祖の技術が封鎖された時期、ヴァルキュアはまだ地上に健在だった。
ヴァルキュアは『都』へと向かい、神祖にも面会したという。
会って一時間としないうちに、ヴァルキュアは神祖の館から退出し、その日のうちに辺境へと戻った。
何を話し合っていたのかは分からない。
ただ、もとから凶暴残忍なヴァルキュアが、本格的に狂い始めたのは、その日以来らしい。
別名「貴族の治療院」とも呼ばれる。神祖の“気”が蓄えられていた聖地。
疾患を患った貴族たちは、ここで神祖の気を浴びて癒されていたという。
宇宙の森羅万象を記した偉大なるエーテルの総称。
エーテルには生きるもの、死したもののすべてが刻印されている。
過去現在未来に至るまでの思考の内容さえも。
乳白色の霧が渦巻いて視界を閉ざす。その奥に記憶管理室の中枢がある。
霧は霧ではなく、宇宙にみなぎる物質――エーテルである。
そこは全宇宙の記憶が、過去と現在、未来にわたって刻まれているという。
貴族の科学力をもってしても、その一部さえ解読することはままならず、歴史上にその名を留めるわずかな人々しか読み取ることは不可能とされていた。
いわく、ノストラダムス、アブラメリン、パラケルスス、スウェーデンボルグetc. etc. そして“神祖”の名も。
一説によれば、“神祖”はある夜、これを読んで以来、不可思議な実験に手を染め出したといわれる。
神祖曰く、「アカシア記録の宣言は運命(さだめ)そのものだ」「運命を覆すことは、誰にもできん。唯ひとつの手段を除いては、な」とのこと。
その唯ひとつの手段……それは、アカシア記録を書き換えること。
しかし、そんなことができるのは――神祖だけ。
アカシア記録の保管庫の極一部――目測では10メートル。しかし、距離は無限にある。
ヴァルキュア公、D、そして○○の3人に、顔と能力を変化させることが出来る。
何か目的を持っているようだが――。
Dの顔を持つ男(Dにもひけを取らぬ美貌)がローレンス・ヴァルキュアの姿に変わった存在らしい……。
その正体は――神祖の分身――御神祖の残滓のようなもの。
その姿は鉄の棒を武器として持ち、銀色のタイツを纏っている。
Dの顔にヴァルキュアの気を持つ男の姿から、ヴァルキュアの顔に変わる。
その顔は月光の下で、月明かりの魔術にでもかかったかのようにヴァルキュアからDへ、Dから別の――もうひとりの男のそれに変幻する。
この神祖の分身と合体したヴァルキュアは「アカシア記録(レコード)」を書き換える力を手に入れることに成功し、「Dに敗北する」という自らの運命を書き換えようと画策する。
男としかわからない。
夢の中で彼を見た者はその顔も姿も見たような気がするが、何ひとつ覚えていない。
いや、そもそもが、夢の夢だったのかもしれない。
その男の背後には荒野が広がっていた。
“絶対貴族”――ローレンス・ヴァルキュア大公が、あそこだけは踏み込みたくないと、夢の中で心底思ったほどの荒涼たる平原が……。
彼はそこからやって来た。
その正体はおそらくハルマゲドンにいる神祖だろう。
吸血鬼ハンター第13作品目『D-邪神砦』に登場した剣。
太さも長さもともに、“D”が愛用する剣の倍にも達する長剣。
鍔と柄とに描かれている動物は――竜。
かつて神祖に反旗を翻した貴族たちが、自分達が滅びる為に食糧たる人間の根絶を狙い、崇めた邪神を神祖自らが用い封じた剣である。
貴族の頂点に君臨する大魔王“神祖”が丸一年戦い続け、その後百年の眠りについた――“神祖”と“神”の戦い――に使われた。
昔“神祖”の軍と戦った貴族の砦に封印された邪神とともにこの剣も残されている。
邪神を砦に封じ込めた神祖の剣は、映画『バンパイアハンターD』でカーミラを封じていたのと同じ描写だった。
2000年公開のアニメ映画『バンパイアハンターD』(原題:Vampire Hunter D: Bloodlust)では、かつてバンパイア王と共に貴族の栄華の時代を築いた伯爵夫人・カーミラの住むシャイテ城――その城の中にある柩にカーミラを封印するために、バンパイアの王(神祖)がこの剣を使用した。
五千年前以上も昔、カーミラは若さと美貌を保つために、「流血の伯爵夫人」と呼ばれるほどに大勢の人間の血を欲した――そのあまりな残虐な行為が〈神祖〉バンパイア王の怒りに触れ、王は自らの剣で柩に眠る彼女を貫き滅ぼしたという。
吸血鬼ハンター第15作品目『D-魔戦抄』に登場した“神祖”の姿。
確かに声だった。確かに天から降りてきた。
Dはふり向いた。
眼の前に巨大なものがそびえ立っていた。
闇の中で闇よりも濃いそれは、明らかに巨人だった。
Dは一軒家よりも広大な長靴と、引き締まった足首、隆々たるふくらはぎを見ることができた。
そこから続いているはずの膝の皿や太腿は、遙かな虚空で闇に同化していた。
巨大な人影は嘲笑した。
山が震えるような笑いだった。
Dは摑み出した白木の針を頭上へと放り上げた。
それは逆しまの流れ星のように上昇し、視界から消えた。
ほどなく、巨人は震えた。苦鳴は冬の山に吹きつける古(いにしえ)の風のようであった。
Dが一刀を抜く前に、「それ」は後じさった。
Dは跳躍した。
巨象のようなものは、闇色の上衣をまとっていた。
せり出た巨岩のような胸のあたりで、Dの跳躍は尽きた。
コートの裾が開いた。
黒い蝙蝠の翼のようにそれは翻り、一度だけ羽搏いた。
Dの上昇はさらに続いた。
いかつい顎が見えた。唇は荒々しいタッチで彫られた墓石のようであった。
忌まわしい鉤鼻の上に、細い裂け目のような双眸が横に走っていた。
瞳はあった。これだけは水晶の艶を帯びた黒瞳は、自らに挑んできた美しい若者を映していた。
高度三〇〇〇メートル。そこにも夜は広がっていた。
波のように揺れる豊かな毛髪の中心へ、Dは一刀をふり下した。
神祖は“――腕を上げたな”、“――だが、まだ私は斃せぬ。それができぬ限り、おまえの旅は続くだろう”とDに告げて去った。
吸血鬼ハンター第17作品目『D-白魔山』に登場した異形の言葉。
古代の貴族社会では、実質的な頂点に立つ統帥者“神祖”と、次位の“神老”たちが、世界の北の果てにあるとされる闇と氷と静寂の都『水晶宮』に遊んで、世界を統べる方策を練ったとされる。
そこでは、人間はもとより、「水晶宮」の住人にのみ通じる特殊な言葉で会話がなされた。
これが「水晶宮」語であり、あるときは繁栄と賞賛を与える神の言葉として尊ばれ、あるときは、衰退と死とを命じる魔王の言語として忌まれた。
また、「水晶宮」に集った選ばれし者たちの身辺を固める配下たちも、簡略な「それ」を口にしたという。
吸血鬼ハンター第18作品目『D-狂戦士イリヤ』で登場したクラーケン子爵の能力。
クラーケン子爵曰く、「この水の技は、ご神祖の教えを生かしたものよ。神祖の血を分けた者でない限り、破れはせん」とのこと。
ならば神祖もこの力を使えるということなのだろうか。
クラーケン子爵のセリフによれば、クラーケン子爵は水を支配できるようになるまでに三千と七百年ばかりかかったらしい。
『D-狂戦士イリヤ』で登場した文字。
神祖とその家族のみが使用していたという、貴族にとっても伝説と化した文字。
『D-狂戦士イリヤ』で登場した名前。
貴族=吸血鬼に両親を殺害され、兄弟が血を吸われて、貴族の下僕になった。
自分も貴族の吸血を受けたのにも関わらず操られることなく、人間としての精神を保ち、吸血鬼と化した弟を自らの手で屠った美貌の女戦士イリア。
貴族に吸血されても貴族にならない村娘――何故?
アルカドという名の存在はイリアが貴族と戦っている間は、記憶だけでなく、あらゆる感情を失うように術をかけた。
記憶消去の術は、血を吸われたことを忘れないようにするため。
何故イリヤは、○○に吸血されても無事なのか?
イリヤに術を仕掛けたのは誰なのか?
何故、精神にコードが掛けられていたのか?
アルカドとは何なのか?
スペルは「Alucard」。逆から読むと……Dracula……。
「アルカド」とは、言うまでもないが……あのお方のこと。
このアナグラムはドラキュラファンには公然の秘密になっている。
吸血鬼ハンター第19作品目『D‐魔道衆』に登場した、移動する巨大列車“鉄の城”の主ドラゴ大公が持つ武器。
神祖から譲り受けたという恐ろしい魔剣であり、神祖の実験の犠牲者の魂が封じられた剣でもある。
神祖の実験の犠牲になった人間の数は、少なくとも億の単位を以て数えなければならず、屍は大陸を埋め尽くすほど。
直接あるいは物体を介して触れた者に、犠牲者の怨念が流れ込み、全身の毛穴から鮮血と生命が流出する力を有する。
左手曰く、「出血は誰にも止められず、モロに食らえばDでも滅ぶ」という。
吸血鬼ハンター第20作品目『D-不死者島』に登場したダンドリアン公爵は不治の病をそのままにしておけば別の力を――Dに勝てる力を与えてやると神祖に言われ、選んだ。
左手の掌(たなごころ)には黒い線で眼がひとつ描かれている。
眼に映った相手の居場所、相手が何を行っているかも分かるらしい。
さらに見えない力で眼に映った相手を引き寄せることもできる。
公爵曰く、「今奪ったのは、おまえのすべてだ。わたしはこれで、何処にいようとおまえの位置がわかる。何をしているかも見える。さらに、こうして『それ』を妨げることも」とのこと。
この力はいつの間にか漁師の娘メグの手に黒い瞳がくっついていた。
もとは公爵のものだったが、彼も知らないうちに剥ぎ取られていた。
メグの手に移したのは、その剥ぎ取り人――奴である。
『D-不死者島』でのDのセリフによれば、夢、或いは現実だったのかもしれないが、奴が夢の中で〈不死者島〉を再び蘇らせたことを告げたようである。
〈不死者島〉を蘇らせてくれと、滅びる寸前、あの御方に望んだのは公爵夫人だった。
もう一度、Dに会うために。島を復活させたのは、まぎれもなく公爵夫人のDへの愛であった。
ミズキ・ダンドリアン公爵夫人曰く、「意識が暗黒に閉ざされる寸前、あの御方が現れたとき、サタンの助けだと思いました。そして懇願したのです。もう一度、蘇らせて下さい。あなたに会うためにと」とのこと。
吸血鬼ハンター第22作品目『D-悪夢村』に登場した、貴族最強の戦士グレイランサー卿が語る伝説。
神祖は一度、自らの手で星間船を組み立てて一年ほど宇宙を旅し、なぜか地球ではなく、火星と木星の間にある小惑星帯のひとつ(研究所)に帰還してから、OSBと貴族と人間の遺伝子を操作し、何者かを作り出してしまった。
十日もしないうちに、小惑星がひとつ消滅したのは、「そいつ」のせいだという。
以来、神祖はこの三種の遺伝子合成の研究を永遠に封じた。
貴族たちの王――〈絶対者〉の刻印を持つ者は“御神祖”と等しく扱い敬うべし――これは貴族法の第一項に記された鉄の掟である。
吸血鬼ハンター第23作品目『D-冬の虎王』の「第七章 大いなる巨影」で、Dが「ここは、おまえの住まいか?」と問うた質問に対する神祖の答え。
続けてDが「なぜ、ここに来た?」と問うても〈神祖〉は「――いまも伝えた。わしはここにおらぬ。同時に何処にもおる」としか答えなかった。
このため〈神祖〉は時間と空間の法則などあらゆるものを超越しており、あらゆる時間と空間だけでなく、全ての次元に接し、同時に存在すると推測されるが、作中では明確な説明がなく詳細不明。
吸血鬼ハンター第26作品目『D-シルビアの還る道』で明らかになった設定によると、遥か昔、一千万年から一億年ほど前、地球は人類でも、貴族でもない種族によって支配されていた。
しかもその種族は自らの肉体を改造し、宇宙の果てまで進出することが出来る程の超文明を持っていたという。
外見は人類や貴族と同じ人型で、妻や子など人類と同じ形態で生活していた模様。
彼らがどうなったのかは不明である。
『D-シルビアの還る道』に登場した超古代種の男性は、地球を出発してから、九九九万から九九九九万年掛けて、ようやく地球に帰還したらしい。
……もっとも、宇宙船が墜落して、死ぬこととなったのだが。
吸血鬼ハンター第27作品目『D‐貴族祭』で初めて明らかになった設定によると、“神”とは、今から一万年ほど前、貴族と戦っていた存在。
貴族とOSBが約五千年から七千年ほど前に戦っていたことから、貴族たちがOSBよりも先に戦っていた勢力(?)が存在したことになるが……。
一万年前とは、“貴族”と呼ばれる吸血鬼たちが高度な科学文明を駆使し、全生命体の頂点に君臨し始めた時代。
だとしたら、貴族は人類に取って代わって地球の支配者になった後、すぐに“神”と戦っていたことにもなるが……。
数千年前、ローランジュ公爵が貴族の代表としてこの“神”と戦っていた。
ちなみに“神”は、“神々の工場”という場所で貴族と戦うために“神の兵士”を製造していた。
吸血鬼ハンター第28作品目『D-夜会煉獄』に登場した、公爵夫人ベアトリス・ローランジュのセリフ、「まさか……でも……確かに……ああ。そう言えば、その眉の美しい線、限りなく優しく限りなく冷たいその眼、そして、宇宙を統べる存在に命じられても意志を曲げぬぞと主張するその唇。ああ、同じじゃ。覚えておるぞ。あれは古代エジプトの月が冷やかにスパタの遺跡を照らしていたテーベの冬の夜であった。私はそこで――」……どうやら公爵夫人は、古代エジプトで〈神祖〉に会ったことがあるらしい。
ナイアルラトホテップは、エジプト風の名前が示す通り古代のエジプトで暗黒神として崇拝されていた。
吸血鬼の起源は古代ローマ、ギリシャ、エジプトにまでさかのぼる。
実際、吸血鬼の系統は、暗い鳥のイメージが崇拝されていた古代エジプトにまで遡ることができる。
現在までに判明した情報・設定から、〈神祖〉の正体は魔王サタン、あるいはナイアルラトホテップそのものという可能性が示唆されるが、その真の姿や能力などは一切が謎に包まれている。
吸血鬼ハンター第29作品目『D-ひねくれた貴公子』に登場した、ジョーゲンセン大老のセリフによれば――
たった一つの成功例――だが、それは同時に、大いなる反逆者であったとも伝えられる。
彼はなぜか、自らの創造者を憎み、その庇護を拒絶して旅に出た。
やがて、伝説の霧の彼方に姿を消した創造主を斃すべく戻ってきた。
恐るべき力と技倆とを身につけて。
そして、時果つるまで、創造主の血で刃を飾るべく追いつづけているという。
貴族の歴史が始まるより遙か昔、東の涯てに浮かぶ島で、神祖はある若者に会った。
何を見たのか。神祖は彼を船に乗せ、大海原を越えて神の地へと戻った。一年以上をかけた船旅だったという。
神の地で何があったのかは、誰も知らない。
だが、すべてはそこから始まったのは間違いない。
貴族の衰亡の日々も、神祖を追う美しい狩人の伝説も……。
二重存在(
ドッペルゲンガー)――もうひとりの自分。それを見たら、ひと月以内に死ぬと言われている。
二重存在を見て仮死状態に陥った者を救うには、この〈神祖の血〉を飲ませるしかない。
『D-魔性馬車』に登場したドルレアック曰く、「何処にでもあります。でも、何処にもありません」とのこと。
さらに、『D-ひねくれた貴公子』では神祖の聖なる血はいかなる鋼も妖体も、触れれば四散する(神祖の血を受け継いだ者以外、万物を焼き崩す)ことが判明。
『D-ひねくれた貴公子』で判明した設定によると、Dの正体についての言及をしようとした者は声が出せなくなる。
更にそのことを書こうとしたら文字を忘れてしまう。
更にどうにかしようとすると、眼が潰れたり、指が腐ったりするらしい。
Dの正体について人間に強力なセーフティーロックが掛かっている。
『D-邪王星団』に存在する、十字架のシンボルが吸血鬼の弱点であるというのがすぐに記憶から削除されるという場面で、目の前で十字架の形をだされても次の瞬間にはもう記憶にないという程のスピードで人間の記憶から削除されるのだという。
どちらも間違いなく人間の脳、あるいは遺伝子レベルで〈神祖〉が何らかの処置を施したとしか思えない。
『D-ひねくれた貴公子』のラストにて、遂にDと〈神祖〉の関係が明らかになったが……。
吸血鬼ハンター第37作品目『D-闇の魔女歌』に登場した生物兵器。
OSB――外宇宙生命体が貴族戦に使った戦闘生物。
熱、冷気、放射線、あらゆる攻撃を撥ね返し、その巨体ですべてを押しつぶし、同化し、吸収してしまう。
貴族が最も手を焼いた生物兵器である。
イスキリとは、ウィチャリー夫婦が個人的に信仰する、いわゆる“独り神”のこと。
貴族にあるまじき男――ローランヌ男爵の下へ、〈神祖〉がやって来て、手ずからワインを与えた。
吸血鬼ハンター第40作品目『D-血風航路』に登場した、一万年もの間、海を彷徨う船。
この船は、誰か――途方もない力を持つ存在が作り出した研究船だった。
研究とは、その存在さえ凌ぐ何者かを生み出すためのもの。
そして、それは成功しかかっていた。
この船は、新しい貴族を生み出すための研究船だった。
実験船といってもいい。
誰がそれをやってのけたのか――〈神祖〉である。
貴族の中の「王たちの王(キング・オブ・キングス)」――いいや、伝説だ。
果たして実在していたのかどうか、貴族たちにももう証明できないという。
〈神祖〉は新しい生命体の製作に命を懸けていた。
人間と貴族の血の融合――可能になれば、人は不老不死となって、宇宙の果てまで辿り着けるだろう。
貴族は陽光の下を歩き、人間(ひと)と変わらぬ食事を摂って、恐れず海で泳ぐ。
夜の刻(とき)のために開発されたAIは、昼も稼働するメカを作り、やがて、宇宙の神秘も掌中にするだろう。
ただし――新しい生命には新しい精神(こころ)が必要とされる。
貴族はこれ故に新しい生命の源とはなれなかった。いまでも。
デッケン号で生み出されたのが、ゼビアである。
奴は可能性のために種を播いた。ゼビアはそのひとつだ。
吸血鬼ハンター第41作品目『D-暁影魔団』に登場した研究施設。
沼の中央には廃墟といってもいい石造りの建物が浮き上がっていた。
石壁には藻が絡み、苔が這い、水中での年月の長さを示していた。
Dがギザライン卿に「ここをこしらえたのは何者か?」と問うと、ギザライン卿は「〈ご神祖〉だ」と答えた。
ギザライン卿曰く、「私は宇宙紀元二〇三五年に、この館の管理人兼運営者に任ぜられた。目的はここで行われる実験の完成であった。陽光も水も弱点とする貴族を改造し、海に生きられる者にせよ、と」。
『D-暁影魔団』に登場した貴族の廃墟。
貴族研究家たちの間でいまも論争が絶えぬ第一は、彼らの建造物の老朽化と崩壊であった。
OSB(外宇宙生命体)との戦闘において、その施設の周囲にエネルギー圏を巡らせ、隕石の直撃や、次元攻撃さえも難なく撥ね返した科学力を、何故、建造物には応用せず、空しく時とともに朽ちるに任せたのか。
人間たちの碩学の出した結論は、いまに到るも揺れ続ける定番であった。
貴族の懐古趣味である。
限りある生命の人間が、永遠の生に憧れ続けたように、不老不死の貴族は、はかなく散りゆくものを求めたのだ――。他に考えようがなかった。
どの貴族が建造し、滅びに任せたものとも知れぬ廃墟は、ひっそりと闇の底に沈んでいた。
貴族の廃墟とは広大なものである。
本城、本館は勿論、別荘といえど敷地は一〇万坪を超し、本城は一万坪、点在する阿亭(あずまや)さえ千坪二千坪はざらだ。
貴族の廃墟にあった水の広がり(沼)は、もと『さまよいの場』であった。
夜ともなれば、柩から脱け出した住人たちが月光と星と光の下をあてもどもなくさまよい歩いた場所。
自分たちはなぜここにいるのか、終わらぬ生はいつまで続くのか――彼らは科学の力で世界を見ることが出来た。
宇宙(そら)の彼方も深い水の中も体験することが出来た。
だが、その果てに何が残る?
ある日、誰ががそう考えた。
そして、彼は自分の城で光子ロケットを造り上げ、ひとり星々の彼方へと飛び立ち――五十年後に戻ってきた。
〈神祖〉が彼を迎えたという。
だが、彼は偉大なる存在に眼もくれず、自らの城に戻って柩に横たわると、二度と現われなかった。
片道二千五百年の旅で、彼は何を見てきたのだ?
何も見なかったという者もいた。
それが彼に永劫の眠りを求めさせたのだという。
公爵の旅立ちと帰還は誰も知らなかった。その名前も。〈神祖〉以外は。
Dは何故かアンガーギャスリン公爵の名を知っていた。
いくら貴族でも、見ただけで滅びたくなる宇宙(そら)の涯(はて)。
宇宙の涯にあるもの。あらゆる生物が――たとえ貴族であろうと、眼にしただけで滅びの姿を描くことになるもの。
アンガーギャスリン公爵はそれを知らない。
ギャラクシア曰く、「飛ぶ鳥も泳ぐ魚も魔女も妖物も――誰ひとり生きてはいられないわ」「何もかも静けさに包まれる。そして、時間だけが過ぎていく。いえ、事によったら、時間すらも死滅し、腐り果てていくかもしれないわ」という。
自ら貴族化を望む狂信的な団体・暁影団に属するギグルは、ギャラクシアの見てきたものを見たことがある。
その結果、どう見ても三十代に達していないはずのギグルの髪は白髪になった。
ギグル曰く、「おれは執拗にあの女にせがんだ。あの女にとっては正直、おれの熱意などどうでもよかったのだろう。おれが口説いている最中に、一瞬、世界が変わった――挙句がこの頭だ」とのこと。
宇宙(そら)の涯(はて)に存在する何か。それはいったい何なのか。
〈神祖〉――絶対存在をけなすものを滅ぼす者たち。
蛮行の数々でその名を知られる貴族、ガーシェン男爵曰く、〈神祖〉の肝煎り。
魔王谷に向かった調査団で唯一生還した少年カナン曰く、「一説によれば、あの方はそこで決定的な何かを手に入れて戻った――宇宙(そら)を統べる技の奥義をな」とのこと。
「貴族グレイランサー」に登場したコンピューター・システム。
かつて、グレイランサーも知らぬ貴族文明の黎明の頃、“神祖”は、貴族のリーダーたるべき者たちに、彼自身の身替わりとして、一つの巨大なコンピューター・システムを遺して去った。
いま、〈枢密院〉の奥に設置されたそれは、〈絶対脳〉として“神祖”の言葉を全貴族たちに下賜し続けている。
巨大な赤い三角形を幾つも倒立させたような擬似“神祖”。
それは機械の身でありながら、生身の存在のような不思議な生命力に満ちた雰囲気をまとっている。
霧の村で、御神祖がこしらえた、新たな生命を創造する機械を管理する者。
死んだ村人を蘇生させ、新たな記憶を植え付けることができる。
管理者はリザという少女である。
三千年前に御神祖が新たな生命の創造を試みた村。
しかし、それが破綻した場合のことを考えて、空間が閉鎖されている。
出て行こうとした者は、今でも村を包む霧の中で永劫にさまよっている。
『吸血鬼ハンター"D"読本』に収録された外伝「城の住人」に登場した剣。
少年が持っている黄金の剣。
スペルは「ALUCARD」。逆から読むと……
三日で築き上げられた城に住む貴族(?)。
外見は10歳に見えるほど幼く、まったく成長しないという体質を有する。
「アルカードの剣」という黄金の剣を持つ。
両親は10年前の人間の襲撃によって滅ぼされており、そのときの唯一の生存者。
マリアという献身的な召使がいる。
人間であるマリアと心が通じ合っていた。
7歳のときに貴族にさらわれ、その息子である少年の世話をすることになった娘。
赤茶色の髪を持ち、10年以上も少年の世話をしていた。
彼女の母親は、彼女を連れかえってほしいとDに依頼したが、結局、少年のもとへ戻り、老婆となって朽ち果てる――彼女は吸血されていないのだ――まで彼のそばにいるのであった。
Dが少年のもとを訪れた500年後、少年の城を調査に来た。
そこで、月光の下を歩き回る足音や廊下を曲がる後姿などを見かけたが、ついにその正体はわからなかった。
唯一、見つけたものは、小さな寝台のかたわらで横たわった、赤茶色の髪の老婆のミイラであった。
アニスの村では、夜になると貴族の歌声が聞こえたという。
Dはこの歌と歌い手をつくったものについて「夜の意志」と説明している。
吸血鬼(バンパイア)ハンター“D”の短編小説『ハルマゲドン』でDが神祖と父子対決した平原。
「聖なる書」に記された善と悪、最後の決戦場。死者の苦痛と怨念が響き渡る平原。
焼け爛れたり腐り果てた無数の腕と顔に埋め尽くされている。
地の文ではハルマゲドンは遠い彼方に存在するらしいが、詳細は不明。
正常空間の組織を唯一のエネルギー源とする妖物。
エレクトロン原子弾を放出する。
神祖が侵入者を拒む最後の手段としてハルマゲドンの空に放った。
AP機構とも。神祖の右の手のひらに「印刷(PRINT)」されている防御ユニット。
灼熱のマグマを大地から噴き出させ、瞬時にマイナス二七二・八度の極超低温の空間を現出させる。
探査装置と攻撃装置を「自由裁量」回路に繋ぐことで、使用者の意思から離れ、敵の心的レベルに応じたアタックをしかける。
[映像化作品]
人気のある作品のために過去に2度OVAと映画化がされておりDの声優にはそれぞれ
塩沢兼人、田中秀幸が配役され好評を博した。
特に2作目の「
VAMPIRE HUNTER D」は川尻善昭が脚本・絵コンテ・監督を務め
Dの世界観を忠実に再現しており原作者からも好評を得ている。
手っ取り早くDの世界を堪能するにもってこいの一作である。
また、海外の映画プロデューサーに原作を売却した事を最近の後書きにて述べている。
だが、売却は10年前の話であり、脚本は未だに未完成らしく(いつも「あと3ヶ月で完成します」と言われる)、印税も催促しなければ来ないと不満を漏らしているので、次回の映像作品は白紙に近い状態と推測される。
[まさかの令和で見られるD]
菊地秀行代表作『吸血鬼ハンターD』40周年特別企画!
1983年のデビュー以来、菊地秀行氏の大ヒットシリーズ『吸血鬼ハンターD』は、SF、西部劇、オカルトアクションを見事に融合し、その独特の世界観で多くのファンを魅了してきた。
2023年、シリーズは40周年を迎えたことを記念し、特別企画として初期の傑作『吸血鬼ハンターD 薔薇姫』のコミカライズがスタートすることが発表された。
この作品は、2024年7月31日(水)より朝日新聞出版のコミックサイト「ソノラマ+」にて連載が開始される予定だ。
『吸血鬼ハンターD 薔薇姫』の作画を担当するのは、以前にも『バンパイアハンターD』(メディアファクトリー刊)のコミカライズを手掛けた鷹木骰子氏。
もともと菊地秀行氏のファンとして交流があったという鷹木氏は、その画力の高さから菊地氏の直接指名でコミカライズを担当することになったという逸話の持ち主。
その高い画力と表現力で多くのファンを魅了してきた。
鷹木氏の描く美しい“D”の人気は高く、海外のマンガイベントでもコミッションで指名されることも多いという。
前シリーズの人気が高かっただけに、新たな鷹木氏による“D”が見られることを喜ぶファンも多いのではないだろうか。
令和に蘇る黒衣の剣士“D”の活躍に期待しよう。
連載は毎月15日と30日の月2回、11時ごろに更新される。
恐ろしい美しさのダンピールのハンターを見かけた方は追記・修正をよろしくお願いします
- 1986年に出たOVA版は黒歴史扱いなのか? -- 名無しさん (2014-06-10 13:36:06)
- 一作だけ読んだけど、あまりに良い余韻が強すぎて続きとか知りたくなくなった。やっぱり良い小説は短編、単作に限ると思う。 -- 名無しさん (2014-06-10 13:44:39)
- 催促しないと印税来ないとか朝日出版ふざけんなよ!まさに悪徳貴族みたいな出版社だな! -- NDB (2014-09-04 13:07:23)
- 悪魔城ドラキュラシリーズのアルカードも月下以降は明らかにDを意識してるよねw -- 名無しさん (2014-09-04 16:45:39)
- ↑2 海外プロデューサーと書いていたから、朝日出版が関与しているのかは不明。ソースは、自身の作品のあとがきにて。 -- 名無しさん (2014-09-04 17:54:00)
- OVAは当時のアニメの作画のレベルの低さとスタジオの能力もあって黒歴史、原作者も不満を述べてるし。声優の演技は別評価。だが -- 名無しさん (2015-03-25 17:58:10)
- 最近、スピンオフ作品が出た -- 名無しさん (2015-04-15 18:27:07)
- でも、OVA版のドリス・ランの、あの衣装は最高! -- 名無しさん (2015-06-28 10:38:12)
- ドリスの、あのパンツは、やはり見せパンなのか? -- 名無しさん (2015-06-28 10:39:16)
- そろそろ神祖と戦って欲しい。このまま作者が死んで未完なんてことにならないように -- 名無しさん (2020-04-11 14:37:54)
- 昔のOVAて歳上の友人が教えてくれたDと神祖の顔が似てるという重要な部分で全く似てなくて非難轟々だったってやつか(笑) -- 名無しさん (2024-07-15 08:38:04)
- 薔薇姫が漫画化 -- 名無しさん (2024-08-01 10:08:00)
- 2001:ce8:181:da4aによる編集過多を荒らし報告ページに通報しました -- 名無しさん (2024-08-04 21:19:41)
最終更新:2025年01月10日 09:27