前後編商法(ゲーム)

登録日:2017/07/09 (日) 09:17:00
更新日:2025/05/02 Fri 22:28:52NEW!
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前後編商法とはゲームの売り方の一つ。

用法は実に単純で、「第一作(前編)の時点でストーリーを完結させず、第二作(後編)へ決着を持ち越す」というもの。
前編時点では全く決着がつかない打ち切りエンドでしかなく(ただし作品によってはある程度の決着がつく場合もある)、真のエンディングを見るためには必然的に後編も買わなくてはならない、というわけである。

メリットとしては中古への流通が起きにくい(大抵の場合は後編へのクリアデータ特典があるため、前編を複数周回するメリットがある)、
前編→後編間でイベントや関連グッズの販売がしやすく作品人気の熱が冷めないなどがあるが、
デメリットとしては前編がヒットしなかった場合に挽回が難しいことや、制作上の枠を使ってしまうことがある。

この辺りはアニメの分割2クール(分割4クール)に近い部分であるが、ゲームの場合はアニメと違って「低ボリュームであること」はそのまま評価の低さに直結するため、前編も後編も十分なボリュームがなくてはいけない。
そのため、必然的にボリュームの肥大化・シナリオの冗長化などを招くため、作る側にも相当の力量が求められる。
(また、ゲームエンジンやグラフィックなどの素材も、多くが使い回しになるため新鮮味を出すのが難しいというデメリット)


上記のような制作側の世知辛い事情もあるので致し方ない部分もある。
ただユーザーとしては無闇に引き伸ばされて(ボリュームがあるという意味ではなく)嬉しいという人は少ないだろう。

ただ勘違いしないでほしいのは、この手の商法がユーザーから批判を受ける理由は一作で完結しないからではなく、それを隠すようなやり方をしている事があるため。

そもそも前後編や三部作など、分割することそのものは小説や漫画、映画などでも記録媒体(本、フィルム、ディスク)の容量の限界から別段珍しいことではない。しかしその多くは前編と後編が同時に発売されるか最初から分割されていることがわかる形態で販売される。

無論、他社にもこれをやっている作品はあったりするが、前情報で予め前後編である事がアナウンスされていたりするので特に批判はされるほどのものは多くはない。
あと『最初から続きを作るつもりだった』のと『想像以上に人気が出たので続きが出来た』は全く別なので注意しよう。

おもな例

おそらくこの手のゲーム作品で完結編という名を最初にメジャーにした存在。1987年8月発売。
FCの作品故に仕方ない部分はあるのだが、ゲームバランスが劣悪でシステムがかなり癖がある。シナリオもあっさり気味で挙句の果てには原作途中で打ち切り。タイトル黄金伝説なのに黄金聖闘士全員でないんかい!
1988年5月に黄金伝説完結編と銘打った続編が登場。シナリオが十二宮編をちゃんと最後まで忠実に再現するようになったが、ゲームバランスに関してはさらに劣悪になったという意見も…。
後に2本をまとめてフルリメイクしたWSC「聖闘士星矢 黄金伝説編 Perfect Edition」が発売され、Jレジェンド列伝には2本揃って収録されている。


初めての分割作品となったスーパーロボット大戦Fの最初に発売されたセガサターン版はパッケージには一切このゲームは前後編であることの記載がなく、
収録されているシナリオを全部クリアした段階で初めて「あとで後編が発売されます」とアナウンスされる。
しかも完結編の予告編でしか登場しない「イデオン」「ガンバスター」はパッケージのメインを張るようにデカデカと描かれている。
(なお、後に発売されたプレイステーション版Fおよび廉価版Fには「前後編の前編です」と書かれている)
一応こうなったことには理由があり、新規のハード参入などが原因で開発が難航し発売日に出せないことが確実となり*1「分割ならなんとかできる」と提案したところそれが通ってしまった結果だった。
提案した当時は「なんとかしないといけない」という焦燥感から気づかなかったが、阿漕なことをしてしまったと寺田Pも語っており、「あの時買ってくれたファンに失礼だから」という理由でFとF完のセット販売は現在でもされていない。
後にこれらの裏事情が語られており、分割に対して笑って許したのはエヴァンゲリオンの参戦を希望していたガイナックスと攻略本が複数出せる各出版社だけで、ユーザーのみならず版元からもかなりお叱りを受けたことを明かしている。

その後、WSで発売されたスーパーロボット大戦COMPACT2は全3部の別売りとして発売されたが、これはタイトルの時点で第一部がつくといった分割であることをわかりやすくしており、
のちの公言はしていないがリメイク作品であるIMPACTではこれら3つを全て詰め込んだ作品となっている。
しかし、3つ合わさったことによりかなりボリュームの作品となっており、難易度もあって気軽に遊べる内容ではなかったため、そこまでの批判はなかった。

スーパーロボット大戦のZシリーズは2作目以降の『破界篇/再世篇』、そして完結作となる『時獄篇/天獄篇』は最初から前後編である事が公表されていたのでこの商法に関する批判はほとんど出ていない。
そもそも第2次Z破界篇の参戦作品でも前後編に分かれているような作品が多かったため、その部分を楽しみにしていたユーザーも多かった。またメインストーリーも再世篇、天獄篇それぞれで持ち越されたが、その時その時に訪れている地球の危機は退ける事に成功し作品毎に一旦物語にケリを付けて部隊は解散しており、ゲームとしてもパイロットや機体の育成状況は完全にリセットされて仕切り直しになる点も大きい。制作側も前編を出すときは毎回「話としては一旦完結する」と明言していた。
ただ、2回も前後編をやったおかげでZシリーズはスペシャルディスクや第3次Z天獄篇初回版付属の連獄篇も含めると7作もある長丁場となり、寺田プロデューサーも「Zシリーズは長すぎた」と後の単発のスパロボの際に反省している。
OGシリーズも作品数だけなら既にこの域に入っているが

一方で2025年に『Y』が発表された際新規参戦作品の殆どが『機動戦士ガンダム 水星の魔女(Season1)』、『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』、『SSSS.DYNAZENON』など「前半」にあたる作品であることや既存作品でも『SEED DESTINY』が参戦しているためファンからは「実は『Y』は前半に当たる作品で続編ないしDLCなりで『水星の魔女Season2』や『絶対LIVE!!!!!!』、『グリッドマン ユニバース』、そして『SEED FREEDOM』を参戦させる予定なのでは?」と疑われている。



ふぁみこんむかし話 新鬼ヶ島」が有名。その他にファミコン探偵倶楽部シリーズなど数作ある。
これらも最初から前後編であることが明示されており、ディスク1枚では容量が足りないため2枚にして大ボリュームを狙ったというまっとうな理由があること、
ディスクカードソフトは2500円から3500円程度と、当時5000円前後したカセットより安価に購入できたこと、
さらには飽きたゲームのディスクをお店や任天堂で書き換えればたった500円で購入できたこともあり、批判はなかった。
ただ、書き換え販売の開始はパッケージ販売より遅れて半月~1か月ほど後。世の中そんなに甘くはないのだ。

なお、後編をプレイするには前編のディスクが必要である。このことは説明書や雑誌広告などにもはっきり書いてあったのだが、
当時は間違えて前編ディスクを後編に書き換えてしまい泣きを見たお子様が少なからずいたようだ。
後年のバーチャルコンソール配信版では各ソフトとも前編・後編を統合し1作として販売されている。

  • 平成 新・鬼ヶ島
前述「新・鬼ヶ島」に登場するお供の動物達が主人公一行に合流するまでの外伝エピソードを描いたスーファミソフト。前後編同日発売。
短編集という体裁のせいもあり、内容的には1本でも十分だったのではないか?ファミコン版にならっただけでは?とも言われている。
(ただし、片方だけでSFメモリカセットの最大容量、F*8(32Mbit)のうちF*6(24Mbit)を消費してしまうので、やむを得ない側面もある)

各々独立しているため引き継ぎ要素はなく、いきなり後編だけのプレイも可。物語全体の締めとなる最終章は当然だが後編に収録されている。

このゲームの場合分割の是非よりも、書き換え販売のためカセット代とソフト代の両方が必要で、さらに前後編にしたせいで単純に出費が2倍かかったのが問題の焦点といえる。
具体的には書き換え専用カセットが3980円+税、ソフト代が3000円+税。両方保存しておきたい場合は13960円+税
またローソン専売なので値引きは一切なし。当時でも世代遅れのSFCソフトなのに、割高感は否めない。
妥協案としてどちらかを先に購入し遊んだあと、同じカセットにもう一方を上書きして遊ぶ、という手もあったが…。

さらにまずいのはおよそ半年後に普通のROMカセット版が発売されたこと。ゲーム内容はもちろん同じで、こちらは各3980円である。
コレクター向けともいえる箱説付きのROM版が廉価販売されたことで、書き換えで真っ先に飛びついた熱心なファンは
特典すらないデータのみを高値で買わされただけでなく、後出しで商品価値の高いパッケージ版を出された状態になってしまった。

  • クロックワークナイト ペパルーチョの大冒険
1994年12月にセガサターンの初期ソフトとして前編を、翌1995年7月には後編を発売。他ソフトは8800円~5800円程度だったが、分割販売のため当作の定価は各4800円と相当安く設定された。
意思を持つおもちゃ達の世界で、ゼンマイ騎士ペパルーチョがさらわれた人形チェルシーを助けるために家じゅうを冒険する、というオーソドックスな横スクアクションゲーム。
前編未プレイでも後編には全く影響しないが、前編は再さらわれの尻切れトンボで終わり、後編はいきなり前編ラスボス戦から始まる。

本来1本で発売する予定だったが開発遅延のため前後編にされた。特に新ハード発売にあたり、イメージキャラクターを青いハリネズミからペパルーチョへ置き換えるという目的のため、発売を急ぐ必要もあったようだ。
が、ゲーム自体は特に話題を呼ばず、イメージキャラ定着は失敗。1995年12月に前後編をまとめた「ペパルーチョの福袋」を6800円で発売し、これを最後にペパルーチョのゲームは発売されていない。

  • ミステリート ~不可逆世界の探偵紳士~
探偵紳士シリーズの2作目として発売されたのだが、本筋は完結しないままラストは2へ続くとして終了する。
事前にそういった告知がなく、菅野氏のゲームは基本単発で完結していた為、発売後に未完成だと話題になった。
その後、ファンディスクや番外編、シリーズ続編を展開するも「ミステリート2」はいつまで経っても発売されないまま菅野氏は逝去。
2の発売は絶望視されたが、MAGESが版権を拾い、すでに出来上がっていた部分と設定物を元に「ミステリートF」という完結編を発売すると発表…するも、2015年の更新を最後に公式サイトは放置されている。
その後は2017年のリメイク版「YU-NO」のDLCで機種を変更した告知が行われたが、やはりそれ以降音沙汰は無し。
最初にミステリートが発売された2004年から15年経っても後編は出ないままである。

逆転裁判シリーズの外伝的作品。2015年7月発売。
本編の主人公のご先祖成歩堂龍ノ介が主人公となり明治の日本とイギリスを舞台に難事件を解決していく…という物語だったが、伏線をばらまいておきながら物語は尻切れトンボで終了。
パッケージにも続編が出るなどの表記はなく当時はかなり荒れた。
その後2017年8月に実質完結編となる「大逆転裁判2」が発売。1での伏線を丁寧に回収し、終盤は歴代屈指のどんでん返しの連続の熱い展開となる。描写不足だったキャラクターの補完もされ『2本合わせたなら』シリーズでも評価はかなり高い作品となった。
2021年にNintendo Switch、PS4、Steam用に移植されたがその際には1,2セットで販売されるようになった。

PS初期に発売されたRPG。
シナリオの空気やシステムはおおむねお評価されているゲームだったが、シナリオが途中で終了になっており、ボリュームもないことから当時は批判が多かった。
1年後に発売された続編は大ボリュームの完結作となり多くのプレイヤーに受け入れられた。
初代は発売に間に合わせるために完成している部分のみで発売してしまったようで、批判をバネにしてできる限りの要素を詰め込んだ結果が2なのだとか。


追記・修正は…(完結編に続く…)

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最終更新:2025年05月02日 22:28

*1 延期を申告したものの上層部も引くに引けない事情があり、予定通りに出すように迫られたという