ズムシティ公王庁

登録日:2020/06/08 Mon 07:18:53
更新日:2025/04/20 Sun 11:01:50
所要時間:約 4 分で読めます





「ズムシティ 公王庁」とは、名作『機動戦士ガンダム』に登場する、悪の軍団ジオン星人の王ギレン・ザビが住まう居城である!

白銀の建物ながら、両方に伸びた巨大な耳のようなパーツに、邪悪な黄色い目の形をした窓が特徴的な建物。一言で言えば「邪悪な顔」
中ではジオン星人がさらってきた地球人や他の平和な星の人たちが囚われている。
男は労働力。女は彫刻にされ取引されており、それは子供とて例外ではない。
労働力の中には死んだと思われていたリュウ、彫刻にされたコレクションには行方不明だったキッカも混じっていた。

「公王庁」とは名ばかりで実際はMS制作工場であり、多数の労働力に物を言わせた生産力を誇る。
母星がなく人口の少ないはずのジオン星人が、兵士の数が50億人もいる地球軍に対抗できたのはこの施設のお陰と言っても過言ではない。
ただし敵の四天王の1人「キシリア女将軍」は地球人や他の星を信じない性質の為、労働力として使ってもMSパイロットとしてジオン星人以外は使っていなかった。

39話にて、隕石だと思われた巨大ロボ「ソロモン」を倒した主人公アムロ達はジオン星人の作り上げた人工惑星「ズム」の首都「ズムシティ」の基地を襲撃。
やがてギレンが住まうこの城に迫るが、既にギレンは逃亡。
だが残されたキシリアが、今までの雪辱を果たさんと勝負を挑んできた。
37話の敵であったザクレロを繰り出すも瞬殺するガンダム。
「ざまぁみろ!」と得意になるアムロだったが、キシリアの切り札は別にあった!

「今まで散々やられたがそれもここまでだ!ガンダム!!」

なんとこの公王庁の正体もまた巨大ロボットで、顔っぽい建物は本当に顔であった。
圧倒的な巨体で暴れまわるも弱点である股間の壺を叩き壊され機能停止。
今までアムロ達を苦しめてきたキシリアも果てることとなった。

「くっ…弟、ガルマの仇も討てないで……
すまない、マ…」

その言葉で敵にも愛情があることを知るアムロ。
だが立ち止まるわけにはいかず、彼らは諸悪の根源ギレンを追い続けるのだった。


なお、囚われていた人たちは事前に近くのシェルターに避難させられていた。彫刻にされた女性たちも無事であった。
敵であろうと民間人の命を守ろうとするキシリアの行動に胸を打たれたファンは多く、後々「実は生きていた」という外伝が作られることとなった。





追記修正は彫刻にされたヒロインを取引してからお願いします


















   *   *
 *   + (デザイン以外)嘘です
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *





「ズムシティ 公王庁」とは、名作『機動戦士ガンダム』に登場するジオン公国の首都にある怪しげな建物である

●目次

【概要】

『機動戦士ガンダム』といえば、ロボット物の革命とも言えるアニメである。
今までロボットアニメといえば悪の組織の週替わりの敵とタイマン勝負が主…要するに富野監督の言葉を借りると「ロボットプロレス」であったが、この作品によって「ロボは兵器で、戦争をする」という当時としては斬新な描写がされることとなった。
しかし当時の考えとしては「テレビ漫画…アニメと言うものは子供が見て、作中に出てきた物を模したおもちゃを買う」というもの。
その為視聴者の子供にわかりやすくするためか、その一環として「敵」であるジオン公国のデザインはとにかく邪悪なものが多かった。
例をあげるとシャア・アズナブルが乗るムサイのブリッジの中とか、本気で遊園地を壊そうとする(絵本の)デギンとか
そしてその際登場したのが、ビジュアル的な邪悪さを極めた「ズムシティ公王庁」だったのである。
ジオン軍の中枢であることは間違いなく、主に敵側の大将であるギレン・ザビやザビ家が話すシーンで登場する。
全体的なデザインはジオンのエムブレムそっくりである。
邪悪な塔の下は二股に開かれたビルとなっておりそちらの方は割と普通であった。
ちなみに富野監督は「かなりいい加減に描かれている」と述べているが、劇場版に至る辺りでデザイン変更のチャンスはあったのの指示を出さなかった為にそのままデカデカと書かれていた為に「初期のガンダム作品でもっとも恥ずかしい例」とまで述べている。
逆に言うとやはり当時のスーパーロボット的なノリの産物と言えるだろうか。

その後「ロボットは兵器でそれを使った戦争が行われる」という世界観は普遍的なものとなっていく。
となれば次に求められるのはリアリティ。 たとえ主人公の敵でも信念はあり、敵ロボットでも(邪悪さは多少残しつつも)かっこいいデザインが求められた。
やがて初期ガンダムにあった「子供向け要素」は淘汰され、ズムシティ公王庁も冒険王ガンダム等と共に「黎明期当時の珍現象」として片付けられる…はずだった。


だがこのズムシティ公王庁だけはどういうわけかデザインが変更されることなく生き続ける事となった。
例えば『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』ではアイナの幼少期回想シーンの後ろにドンと構えられていたり、漫画『ギレン暗殺計画』では舞台ということもあり、非常に重厚なストーリーで何度も登場するから腹筋に悪い。
一年戦争を離れても漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』では主人公がズム・シティに住んでいるという事で、背景にでかでかと写っている。
この時代(宇宙世紀153年)には誰かが居住しているのではなくズム戦争特別博物館として利用されている。
なお、同作では多数のサンドージュによじ登られた挙句、木星人たちによって中央のツノをへし折られてしまった。*1
さらに16年後の『DUST』では、それらの修繕もままならず、放置されズム・シティを支配したガルマ・ザビⅢ世*2の住居となっているが、
どこぞのオタクがモビルスーツ2機をぶつけたことでさらに破壊された
とそんなこんなで現実世界で数えて40年、宇宙世紀で数えて90年間何らかの形で登場し続けている。ある意味愛されていると言えるだろう。

とはいえ建物に(そのままの意味で)目をつけている事から悪役っぽく見えてはいるが、もともとジオンはアッザムザクレロといったモビルアーマーにも目や顔をつけたがる一面を持っていたため、実はこのデザインは言うほど不自然ではない。
なんなら(後年の後付け設定ではあるが)製造元は連邦軍なのに顔付きデザインの潜水艦マッドアングラーといった例もある*3ため、ジオンに限らず宇宙世紀では比較的ありふれたデザイン思想だった可能性もある。

またガンダムという色眼鏡を抜きにしてみればシャープな建築物でなかなかかっこいい。
それに「大きな人間」の「大きな顔」というものは威厳や威圧感すら感させる。
それらは市民を統率するという意味では理にかなったデザインであり、「MSという巨人を作り上げたジオン軍」にとってはでかい顔というものは誇りに思うのかもしれない。
しかし実用性は高いように見えず「耳の端っこの部分に勤務する人は移動が大変そう」「折れやすそう」「修復も大変そう」と見慣れたら見慣れたで別の問題を気にする人が多い。

という風にツッコミどころが多いながら割と愛されていた施設だった。
そして……


機動戦士ガンダム THE ORIGINにて】

安彦良和が初代を再構築し、より一層「戦争、ミリタリー物」「おもちゃ的な都合が緩和されたリアルなガンダム」としての側面が強くなったこの作品。
しかしこのズムシティ公王庁は引き続き邪悪なデザインで登場
と言っても、一応原作漫画の段階では下部の構造物がまるで高級ホテルか何かのようなリアリティのある物になっていた。肝心のタワー部分は相変わらずだったが。*4

…しかしアニメ版では何故か更に邪悪なデザインに変更されており、まさしく悪の居城といっても過言ではないデザインとなった。
言うなれば芋虫ドーム。崖の上に立っている事もあり、画像を見せて「ファンタジーゲームのラストダンジョン」と説明すれば多分騙せるだろう。
よく見るといつものタワー部と後ろの建物は独立していて、2本のブリッジで行き来するようになっている。

しかし見た目のバランスが悪くすぐ倒壊しそうな旧デザインと比べずっしりした佇まいとなっており、建物としての完成度は高くなっている。
なお正面から見た図は旧アニメと変わらない。
余談だがジオン高官の建物は、ダイクン家は合掌造りの要素が入った屋敷、ザビ家の屋敷はリーオーの顔のようなもの…と公王庁以外も前衛的デザインとなっている。


【余談】


  • 比較的知名度が高いこの建物だが、実は「機動戦士ガンダム」本編ではサイド3そのものが戦場になっていない。(反乱はあったが)その為邪悪なデザインなのに平和の象徴として扱われることも多い。

  • だが『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』で描かれた宇宙世紀80年頃ではサイド3は地球連邦軍に占領されており、ジオン軍が猛反撃をして取り返す戦闘が描かれている。その際にジオン側の前線基地となったのがこの公王庁である。

  • 意外にもSDガンダムシリーズには余り登場していない。『SD戦国伝 頭虫邸の忍者合戦』にて和風の屋敷にアレンジされて頭虫邸(ずむしてい)として登場したくらいである。

    …のだが、『新約SDガンダム外伝 騎士王物語』にて、まさかの公王庁をモチーフとした「総統竜ジ(フューラードラゴン)ャークヴァイス」がラスボスで登場。
    その正体は、太古の時代に覇界神の軍勢と戦い大破したドラグーンパレスの一機が、フューラーザタリオンの影響を受けて変異した存在である。
    そのため、全体的にドラグーンパレスの面影があるのだが、その外見は乱暴に言ってしまうと公王庁のツラをしたドラゴンゾンビ。
    更に前座である「屍竜王ソーラレイ」の人間態である「総帥ギレン」の装備に至っては露骨なまでに公王庁のデザインそのままである。
    数多のモチーフのキャラが犇めくSDガンダム外伝においてですら、建物がメインモチーフというのはラスボス云々以前にキャラデザインとして前代未聞である。
    …もっとも初代のラスボスの姿はジオンのエンブレムそのままだったりするが。

  • 「公王庁」というのは食玩での名前であり、他には「公館」とか「議事堂」とか呼ばれている。…要するに用途がイマイチわかっていない建物である。
    • なお富野御大も「中央官庁だか議事堂だかの建物」呼ばわり。つまり公式で決まってないのである。

  • そのカルト的人気からか、2016年には『2分で作る!ガンダム名鑑ガム』で食玩デビューを果たした。モナカ割り2パーツという同シリーズどころかプラモデルの中でも最小限のパーツ構成。可動域?あるわけないです

  • 2018年にはズシリと重い亜鉛合金に金メッキが施された無駄に存在感のあるペンスタンドがプレミアムバンダイより販売されている。
    あの建物のどこらへんにペン立て要素が…?と思われるかもしれないが、土台部分にペン立て用の穴がぽっかり開いているだけである。つまりはタダのオブジェ。ちなみにお値段は税込み3850円。

  • 小説版『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』(著:皆川ゆか)の文庫版には、ズムシティ公王庁を始めとする一年戦争当時のジオンの「奇抜なデザイン」についての評伝記事が掲載されている。
    あくまで皆川氏独自の解釈ではあるが、一読の価値はあるだろう。

  • ……以上の様に、あくまでもネタとして愛されている公王庁だが、検索してみると現代の地球上にも負けず劣らずというか勝ってるレベルのヘンテコなモニュメント*5や建造物は古くから存在しており、ジオン公国の元ネタを鑑みてもこれはこれでリアリティーがあるなんて意見も。
    宇宙に出ても人類の本質は変わらないというのは『ガンダム』シリーズの裏テーマ的な所もあるしね。

  • 前述の通りこの建物のデザインを富野由悠季監督は許可したのだが、前述の通り「初期のガンダムでもっとも恥ずかしい例」「美術担当のスタッフの気分のまま修正できなかった」とかなり恥じている。そんな感じで生まれたこれをまさか40年以上にも渡って描かれ続けるとは本人も思っていなかったであろう。もはや新手の羞恥プレイである。なお「かなりいい加減な描き方をしている」という文体で富野本人がデザインしたようにも思えるが、前後の文を読む限りではどうにも原因は美術スタッフらしい





追記修正はこのデザインを認められる人がお願いいたします。

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最終更新:2025年04月20日 11:01

*1 曰く「DUSTの前作と前々作の主人公に壊された」

*2 言うまでもないが、名前を借りてるだけの偽者でザビ家とは一切関係ない

*3 ただし漫画『フラナガン・ブーン戦記』では鹵獲後にジオンが改修した結果としてアンコウを思わせる現在の外観になったとされている。

*4 一応タワー部分も現代建築的なアレンジは施されており、現実にも存在する奇抜な高層建築程度に落ち着いているという声もある。

*5 「旧共産遺産」とか「ブルータリズム」とかで検索してみよう