ジオン公国軍

登録日:2012/10/10 Wed 12:37:05
更新日:2020/05/07 Thu 12:30:36
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ジオン公国軍は「機動戦士ガンダム」及び、グリプス戦役以前までを扱ったOVA作品に登場する組織である。
一般に「ジオン軍」と呼ばれることが多いが、戦後のジオン共和国が保有する「ジオン共和国軍」やジオン残党軍の一つ「ネオ・ジオン」との区別のため、「旧ジオン軍」「公国軍」と呼ばれることもある。

ジオン公国の軍事部門であり一年戦争においては地球連邦軍との間で熾烈な戦いを繰り広げた。

当時のロボットアニメでは珍しい「人間」で構成された敵勢力である*1。それを強調するためか、上層部の権力争いだけでなく、一般兵一人一人の感情やそれに伴う行動といった、兵士の人間らしさの描写が充実している。
功を焦ってスタンドプレーに走り自滅したジーンに始まり、戦争未亡人とその子供を心配して独断で救援物資を送るバムロ&コム、非人道的な作戦に反抗して脱走したククルス・ドアン、慣れない地球の環境でのストレスから帰郷したい一心でガンダムに挑んだクワラン一味等、枚挙にいとまがない。

ここではアクシズを除く、ジオン残党軍についても記述する。

【概要】


歴史上最初にジオンを名乗った武装勢力で、正規の国軍であるためか3軍(袖付き・オールズモビルも含めると5軍)の中では最も強大な戦力を有する。

宇宙世紀0058年、サイド3・ムンゾが「ジオン共和国*2」を名乗り独立運動を開始した際、同時に後の国軍の前身となる「ジオン国防隊」が建軍される*3
そしてザビ家が実権を握り国号を「ジオン公国」に変更したときに、地球連邦との全面戦争を想定した「ジオン公国軍」へと生まれ変わり、独立戦争に向けて着々と準備を進めていた。

また、世界最初のモビルスーツ(MS)の戦力化、ミノフスキー粒子下での戦術の確立に成功しており、それによって一年戦争序盤から中盤にかけては数で勝る連邦軍に対し有利に戦局を進める。

最高司令官はジオン公国公王デギン・ソド・ザビであるが、実質的指揮権を持つのはジオン公国総帥ギレン・ザビである。

ジオン公国軍の特徴として、その規模に不釣り合いなほど軍組織を細分化したことが挙げられる。
特にザビ家はそれぞれが固有の戦力を保有しており、全体を統括するギレンの下にドズル・ザビを司令官とする宇宙攻撃軍、キシリア・ザビを司令官とする突撃機動軍の二つの軍がある。
さらに地球降下作戦のためにガルマ・ザビを司令官とする地球方面軍を新編しており、それぞれの下に目的に応じた各方面軍がある。
ただしガルマについては本人の強い希望から軍に参入しているだけであり、原作どころかどのメディアでもザビ家の面々は彼を積極的に前線に置こうとする様な意志は伺えない。
(このことが逆に彼の焦りを強くすることとなっているが)

ちなみに親衛隊的組織はキシリアの管轄として「ジオン公国の」親衛隊が、「ギレンの」親衛隊として本国防空隊が存在する二重状態であり、デギン公王ですら独自の戦力を保有していた。
このため 某島国の陸海軍 某中欧の国の国防軍と武装親衛隊 よろしく各軍組織の間で深刻な摩擦が生じ、的確な戦争遂行を阻害していたことは否めない。


そして、最終決戦となったア・バオア・クーでは突撃機動軍司令が戦闘中に総司令を射殺し、
それとほぼ同時~直後に戦線突破され始め、その後混乱に乗じて撤退しようとしていた突撃機動軍司令も暗殺されたため、事実上司令官および一族が全滅したため*4そのまま公国軍は崩壊した。

こうしてジオン公国は滅び、代わりにジオン共和国となったのだが、ジオン公国軍の約半数(?)は共和国を「連邦の傀儡」「売国奴」としてその存在を認めずに逃亡した*5
大半はドズル・ザビの娘であるミネバ・ラオ・ザビを擁してアステロイドベルトの小惑星「アクシズ」に逃げるのだが、
中には地球圏に残り果ては火星にまで逃げて連邦政府にたいする抵抗を続けた者達もいる(本作では開発はされていないと思われるので食料や環境などをどう解決したのか完全に不明)。
とくにエギーユ・デラーズ率いる「デラーズ・フリート」は0082年に連邦艦隊に対する核攻撃と地球へのコロニー落しを行い、連邦政府に「ジオンの脅威は未だに健在である」という事を思い知らしめた。
この事件を契機にジオン残党狩りが本格化。その代表的な組織であるティターンズが結成され、後にグリプス戦役と呼ばれる連邦政府内の大規模な内乱へと発達してゆく。
これによって軍を退役し、普通の生活をしていたケン・ビーダーシュタット等と言った人物はジオン共和国軍人として復帰する羽目になっている

これに加え、開戦当初の破竹の勢いから敗戦後も各地に残党が潜伏している。
そしてその各地において細々とは言えぬほどの戦火をまき散らすこととなってしまった。

この残党軍の活動は分かっているだけでも実に0120年代にまで続き、宇宙世紀の歴史に大きな禍根を残すこととなった。

戦後のジオン共和国軍は、現代のドイツ連邦軍自衛隊よろしく旧公国軍やその残党との繋がりは表向きは無く、ジオン公国軍残党によるジオン共和国へのテロ攻撃「シルバー・ランス作戦」を防いだり、グリプス戦役においては一時期ティターンズの傘下に置かれる等、
判明している限りでは反地球連邦活動に対する防波堤の役割を担っていた事もあった。
だが機動戦士ガンダムNTでは、モナハン・バハロ共和国外務大臣の命令で、ゾルタン・アッカネンやエリク・ユーゴ達共和国軍人がネオ・ジオン残党組織の袖付きと機体と身分を偽って、学園都市メーティスで戦闘行為を行っている。


【特色】


作品世界内におけるジオン公国軍の特色は、地球連邦軍の10年先を行くとも言われる高い技術力と兵士の練度の高さである。

総司令も演説中で述べたように、ジオン公国の国力は敵国・地球連邦の1/30以下である。そのため、30倍以上の国力差を覆して勝利するために、一戦闘単位あたりの戦闘力を大幅に高くする必要があった。
敵の電子戦能力を大幅に削るミノフスキー粒子の実用化と、それに伴い接近戦主体となる戦闘を主眼に置いたMSの活躍は、「たかが一つのサイドの反乱など楽勝」と楽観的に構えていた地球連邦軍に大きな衝撃を与えた。
これを支えるべく、兵士の育成には莫大なコストが割かれ、その教育内容も厳しいものであったようだ。『機動戦士ガンダム MS戦記』の主人公であるフレデリック・ブラウンは、パイロット養成学校の実機演習にて、「銃を握ることなく散っていった」学生も多数いたと語っている。

また、兵士の士気鼓舞のために、中世の騎士や武将のように制服やMSのカスタマイズをすることがある程度認められていた。
メジャーなカスタマイズ手段の一つとして、機体を自らのパーソナルカラーに塗り分けるというものがよく知られている。
「赤い彗星」シャア・アズナブルや「青い巨星」ランバ・ラル、「黒い三連星」ガイア・オルテガ・マッシュのようにカラーリングにちなんだ異名を持つエースパイロットも少なくない。
中には「真紅の稲妻」ジョニー・ライデンのようにパーソナルカラーがほかのエースと被ってしまい、逆に目立たなくなってしまった例もある。

だが、捕虜のレビル将軍が脱走したこともあって緒戦の勢いでジオン有利の講和条約を結ぶことに失敗し、そして地球連邦軍が遅ればせながらMSの実用化及び量産・実戦配備に成功すると国力による不利が露呈し始め、
兵士の練度も戦争の長期化による人的資源の枯渇(傷痍軍人の戦線復帰を行いやすくする研究もおこなわれていたが、焼け石に水であった)によって見る影もなくなり、
さらに地球連邦軍は戦略からMSの設計まで、MSの技術不足や兵士の練度の低さをあらゆる手段でカバーする体制を整えたこともあり、戦争末期には取り返しのつかない戦況に陥った。

加えて個々の兵士の練度は高いものの、それが仇となってプライドが高く、スタンドプレーや独断専行に陥りやすい、早い話がチームワークが悪いという側面も強い。
それこそ「ガンダム」の引き金を引いたシャア配下のジーンが典型例だが、命令を無視しても手柄さえ立てれば結果オーライで称賛される。
「コロニーの落ちた地で…」では「ジオンには武人はいるが軍人はいない」と連邦側から酷評されており、しかも大半のジオン人はこの意味を取り違えていた*6
さらにそれと関わりがあるのか、組織全体で見てもやたらと派閥同士の仲が悪く*7、連邦よりもはるかに小さい組織でありながら足並みの悪さは連邦以上であった。


技術力と関連する話ではあるが、運用する兵器の奇想天外さもジオン公国軍の特色である。
ジオン人はスペースコロニーで生まれ育った「宇宙の民」スペースノイドであり、視聴者を含む「地球の民」アースノイドとは異なる常識を持つ。
各技術の枯れ具合一つとっても、地球人の技術が「船舶>航空機>>宇宙船」の順に枯れているのに対し、ジオン人は「宇宙船>>>航空機≒船舶」と、明らかに異なっている。
また、地球には「空」「海」「河川」「ジャングル」「砂漠」「地震」「台風」「日照り」「豪雨」等、コロニーや宇宙空間には存在しない、スペースノイドにとっては未知の部分が多い環境や自然現象が存在するため、ジオン公国軍はそういった未知のエリアへの試行錯誤を戦いながら強いられた。
これらのことより、「ジオン人の常識」を基に作られたジオン公国軍の兵器の中には、地球連邦軍側から見ると奇妙に見えるものが多数存在する。
砲塔が分離して空を飛ぶ戦車「マゼラアタック」や、翼の揚力に頼らず強力なエンジン推力と姿勢制御バーニアで飛ぶ(この飛び方は航空機というより宇宙船である)戦闘機「ドップ」やMSを運ぶことができる戦闘機・空爆機「ルッグン」「ド・ダイ」は、「地球人の常識」ではまず思いつかない兵器であろう。
「軍艦」のイメージからかけ離れたフォルムをしている「ムサイ級軽巡洋艦」等、地球連邦軍に同一ニッチを占めるものが存在する兵器であっても、スペースノイドならではの固定観念に縛られない発想で設計されたものがいくつか見受けられる。*8
これら奇想天外兵器の頂点が、宇宙戦闘機にも戦闘車両にもなる汎用人型兵器MSだったのである。*9

その後の時代においても、たとえ永い年月の中でジオンの姿が失われようとも、ジオン公国軍が生み出した「ジオン驚異のメカニズム」の子孫たちは発展を続けていくこととなる。
そして、単眼状の可動式主照準装置「モノアイ」や曲面を多用したフォルム、機体表面を這う動力パイプといった特徴を持つジオン公国軍のMSのデザインは「公国系」と呼ばれ、後の世においてもMSのデザインのメインストリームの一つとして存続しつづけている。

反面、常識外れということは必要とされる機能を備えていないこともあるという側面もある。
例えばマゼラアタックは戦車としては能力が劣悪で、ドップは飛行時間が短く、ルッグンはデカくて当たりやすい、ド・ダイは戦闘機の機銃でやられるほど脆い、「空飛ぶ空母」ガウはなぜかハッチが正面側にあるから減速しないとMSを降ろせない、ムサイは後ろにハッチがあるから出したMSは自力で前に行く必要がある……など。
さらにコロニー暮らしと関係があるのか、列車などのインフラ設備の重要性がわかっていないフシもある。
なにより補給部門に関する知識が欠如していて、地球侵攻作戦で戦力を分散しすぎたあげくに動けなくなるという盛大な自殺行為もしている。
そもそも開戦前に補給部門のスペシャリストが「補給能力が足りないから長期戦は無理です」と進言したところ、激怒して左遷するという組織としてあるまじき態度を示している。

ただ補給や戦力分析に関しては長期的な正攻法では負けることが分かっていたため、侵攻部隊の大半を無理やりにでも電撃戦・ゲリラ戦に持ち込んで短期決着に持ち込む必要があった側面が強い(そして連邦もそのことをレビル将軍の発言から確信した)。
また、少なくともマ・クベは補給の重要性を正しく把握していたため、ダーティーなものも絡めた様々な策謀でオデッサを維持しようとしたり、ホワイトベースに対してもミデア隊を潰すことで補給を阻止しようとしている。


一方、視聴者の視点では、冒頭で挙げた「人間で構成されている」という点に加え、「国家が保有する軍隊」であることも特色といえる。

彼らはただの「悪の組織」でもなければ「ならず者集団」でもない。故に、交戦規程や戦時国際法(作中では「南極条約」なる戦時国際法の存在に言及されている)といった「戦争のルール」に従って軍事行動を行う。不利となったら平気で破るが。
難民の降艦を理由としたホワイトベース側からの休戦要請を受け入れ、ルッグンという監視はいたが、難民を積んだガンペリーに一切手を出さなかったガルマ・ザビ率いる軍団や、サイド6近傍でブライトと条約違反ギリギリのところでの駆け引きを演じたコンスコンの行動からもこのことは明らかである。

また、将兵一人一人も悪人とは限らず、そればかりか戦争未亡人を助けたバムロ&コム)や親を誤って殺してしてしまい、子供と共に暮らしているククルス・ドアンや知り合った子供やその住んでるコロニーを守るため戦ったバナード・ワイズマンのように善人として描かれた人物も多い。
ア・バオア・クー戦に駆り出され、右も左もわからないうちに瞬殺された学徒動員兵のように、「ジオンに駆り出された」不憫さを感じる者までいた。
その一方で、和平交渉を嫌って父や味方諸共ソーラ・レイによる不意打ちを仕掛けたギレン、核攻撃を企てたTV版のマ・クベや『0080』のキリング、ドアンに子供たちの殺害を命じた彼の上官といった「戦争のルールを破る者」達など、明確な悪人も描かれている。

軍人が国に仕える公務員であり、公国軍が巨大な公的機関である以上、高潔であればあるほど公国軍人として公的機関特有の「大人の事情」に振り回される宿命も背負っている。
しかも厄介なことに、ジオン公国はザビ家の独裁体制である上に、ザビ家は親子・兄弟が不仲のため、「大人の事情」にザビ家の家庭内対立が大きく食い込んでいる。
例えば「木星帰りの男」シャリア・ブルはギレン配下でありながら、政敵キシリアの配下が開発したニュータイプ専用機「ブラウ・ブロ」に乗り込むことになり、『活躍することはギレンの顔を立てる以上にキシリアの顔を立てることに繋がり、活躍しなければ当然ギレンの顔に泥を塗ってしまう』という自縄自縛に陥っている。
忠誠心が厚くて律儀過ぎる性格であったことと、そのジレンマを察したシャアの命令により、死に場所を求めるかのようにホワイトベース隊に単騎で攻め込み、死闘を繰り広げてお互いに追い込まれつつもアムロのニュータイプ能力と機転によって撃墜・戦死した。そしてガンダムはオーバーヒートしてまともに動けなくなるもシャアはこれを放置までした。*10
このようなところも一筋縄ではいかない、複雑な『大人の世界』を演出している。

その他にも、ただの善悪二元論では語れない、「ひたすら仕事に一所懸命な人物」として描かれた人物もよく目立っている。
シャアが何の心配もなく戦えるよう補給に命を懸けたガデム大尉、政治的に不利な立場にいながら内縁の妻や部下達の生活向上のために昇進を目指したランバ・ラル、敗戦を予感しながらも全力でアレックス破壊に挑んだサイクロプス隊の面々といった一所懸命に勝利を目指す将兵達は、視聴者に「彼らも人間なんだ。アッサリ落とされたあの敵機に乗っていた名も知らない兵士にも、人生や夢があったのだ」と感じさせた。

こうして、敵のジオン公国軍の将兵たちは、「義理人情」「戦いの中で抱く夢」「プロフェッショナルの誇り」「勤め人の悲哀」「悪人も存在する」といった人間ならではの考えや一枚岩ではない様子を見せる。
こういったところからヴィラン(ただし思惑は色々と異なる)・単なるヴィランではない者たちが入り交じった姿を視聴者に見せている。
MSVや外伝作品でもジオン軍人ではあるが、ザビ家のやり方に批判的な将兵も数多く存在する。
もちろんこれらの様子は主人公陣営の連邦も同様であり、両陣営共に複雑な人間関係を描いている。
そして、このことが『MS戦記』『0080』といったジオン側を主役に据えた作品、所謂「機動戦士ザク」を生み出す土壌となってゆく。



ただし、ジオン公国はすさまじい虐殺を国策として行っていたこともまた、忘れてはならない。
代表的なのは地球を死の惑星にする勢いだったコロニー落としであり、しかもこの前段階からして既にコロニー内の住民を虐殺している(詳細は後の作品になって描かれたが裏設定として最初の辺りから明らかになっている)。
サイド3とその味方以外のスペースノイド皆殺しにする勢いであり、サイド6を残したのは虐殺前にジオン側にすり寄ったからでしかない。7を残したのは単に距離が遠すぎたから。殺された人数は「人口の半分」五十億人を超えるという
後々流石にジオンがアレすぎるということになるからか落としたコロニーは一つという公式設定になったが、当初はガンダムXばりにバンバン落とした設定だった。
つか、落としたコロニーが複数だろうがひとつだろうが「五十歩百歩」でフォローになってない。

小説版では連邦宇宙軍の将兵とはほとんどがこの時虐殺された人々の生き残りもしくは遺族で構成されており(フラウ・ボゥやシロー・アマダもそれに該当する)、その敵愾心や憎悪は激しかったという。

戦術で優位を取ったものの戦略で覆った例」の創作における代表にも挙げられ、
原作でもコロニー落とししたことには変わりないので、軍人以外の宇宙世紀の人間のほとんどからジオン公国を憎んでいたことは想像に難くない。
シャアが後にエゥーゴに参加するにあたり偽名を使ったのも『機動戦士Ζガンダム Define』においてはこの事が関係しており、
「シャアの名前を使ってしまえば、アースノイドからはエゥーゴがジオン残党と同一視され、その理念が理解されない」事を危惧したためと説明している。
よって、アースノイドは当然としてスペースノイドからも嫌われ者であるはず……なのだが。

結んだ条約や協定はほぼ必ず破っていくのも特色。
南極条約などは都合のいいように解釈するだけならまだしも、自分たちの解釈でも「違反」となる行為を、自分たちは平気でやる
咎められても「負けたくないからやる、文句あるか」「我らには優先すべき大義があるのだ」「騙される方が悪いのだ」などと開き直り、反省の弁もない
自分たちから申し出た協定でも自分から破る。それで反撃されると逆ギレする
この辺シャアも例外でなく、腹の中でなにを思っていようと「降伏する」と終戦協定を結びテレビ放送までしたのに、平気で破って知らん顔していた。

「スペースノイド開放」という理念も薄っぺらいお題目であり、要は「我らジオンに与する者は活かす、それ以外は殺す」というだけの単純なものしかもっていない。
現に一年戦争序盤の、コロニーに対するメガ粒子砲や核ミサイルや毒ガスの無差別使用によって、多くのスペースノイドが虐殺されている。
残党はその傾向がさらに強くなり、「スペースノイドの故郷を作るコロニー公社を、相手が非武装なのに襲撃」「コロニーを奪って質量兵器に」「本来の故郷であるサイド3をも『ジオンの魂を忘れた売国奴』と見做してテロ攻撃を行う」と、その暴虐はスペースノイドにも呵責なく向ける。


公国軍の人物がこういった「自軍の悪しき面」とどう向き合うかは、しばしば個性描写に活用される。
ブラウンは何も知らされず*11、『0083』のシーマ・ガラハウは上官に催眠ガスと騙され、虐殺に従事したことが原因で悪夢にうなされるようになり、
ドズルもまた、原作からの設定改変が激しい『THE ORIGIN』ではかなり美化され(?)、娘の寝顔にコロニー落としの犠牲者の苦しむ姿を重ね合わせ、「何億人ものミネバを殺した」と泣き崩れている。(その後は開き直ったことで多少バランス修正してはいる)
他、IGLOOのジオン将兵は落ちてゆくコロニーを見て激しく狼狽しており、「あのコロニーに住んでいた2000万人の人はどうなった!」とまで言い切っている。*12
逆にシャアは公国軍の人物である一方で「ザビ家に抹殺されたジオン・ズム・ダイクンの遺子」…すなわちザビ家の被害者筆頭であったため、後に新生ネオ・ジオンを立ち上げた際には当時のジオン兵を含むスペースノイドの大きな支持を受けており、自身の行いを道化と自嘲しつつもジオンの悪しき面を最大限利用する形になった。
(余談だが、シャアの全ての所業や本心を知る者が、敵味方双方でほぼ居ないことも多くの支持を受けた影響だと考えられる。これはUCにおけるミネバにも言える。)
一方で悪しき側面から目を背け続ける者、棚に上げた上で被害者面をする者、何とも思っていない者など、作中でも受け止め方については様々である。
基本的に外伝に出てくる「良識あるジオン将兵」は、大抵の場合望まぬまま兵士に仕立て上げられた、
あるいは夢と希望を持ちつつも、虐殺をよしとするザビ家には敵視されており、独自の価値観で動いている者が多い。
そして彼らはザビ家の息のかかったもの達の撃退の為、連邦軍とも友情を結んだり、手を組む事すらあった。


公国軍人の中には主人公の座を射止める者もいるのだが、彼らは主人公になると大概ハッピーエンドにたどり着けない
商業作品初のジオン兵主人公であったブラウンが各地で負け戦を繰り返し、ア・バオア・クーで行方不明になったのを皮切りに、バーニィことバーナード・ワイズマンも互いに知らないまま想い人と戦い重傷を負わせてしまい、自身も彼女の手にかかって死亡している。
ガトーは自身達が成功させたMS強奪・核攻撃・コロニー落としはむしろティターンズ発足の口実となり、『MS IGLOO』のオリヴァー・マイも、記録を担当した試作兵器が軒並み失敗作扱いされるという末路を迎えている(※とは言えこの作品の試作兵器は元々の扱いからして大体が失敗兵器扱いである)。*13
このように、公国軍人が主人公を務める作品は、ことごとく何らかの形でバッドエンドを迎えている…原作の影響からしてそのような流れになりやすいのは自然の流れとなっている(例外)。

ちなみに、『ガンダム・ザ・ライド』が『ザク・ザ・ライド』にならずに『ジム・ザ・ライド』になったのも、観客をジオン側にしてしまうと、ジオンの敗北という暗さをどう伝えればよいのかという問題に直面するためだという。

ガンダムシリーズの世界観がマルチバース構造になっていない以上、公国軍人主人公に幸せな結末を迎えさせようとすると、脱走兵や反逆者にしてしまうか、複数のエンディングが用意されたゲーム作品にて、プレイヤー自身の手でハッピーエンドを勝ち取るほかないのが現状である(大事なことなのでもう一度言うが、例外)。
一応バッドエンドに終わっても別作品などで生存が確認されているようなケースは結構ある。

隠しモチーフは枢軸国(第二次世界大戦)のイメージを総合したものと言われている。最大の敵がトリコロールってそういう……



【設定の変遷等】


「人間で構成された軍隊」であることを最大の特徴としているジオン公国軍であるが、実は『機動戦士ガンダム』の企画が始まった当初、彼らは人間ではなかった。
最初期段階の『フリーダム・ファイター』の時点では、主人公の敵となる勢力は宇宙人の全体主義国家「ジオン帝国」とされていたのだ。
その後、『ガンボーイ』→『ガンボイ』と企画の改訂が進む中、ジオン帝国は「宇宙に浮かぶ人工都市国家・ジオン公国」に改められ、彼らは人間となったのである。
その結果、放映当時こそ「子供に殺し合いを見せるのか」という批判を受けたものの(第30話「小さな防衛線」ではこれに対する回答らしき描写が見られる)、敵も味方も人間だからこそ描けるドラマは見る者を魅了し、批判も徐々に減少を見せた。
その後も、『劇場版 機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-』に地球外生命体「ELS」が登場するまで、ガンダムシリーズは世界観を問わず、一貫して「人間対人間の戦い」を描いていった。
もしも、ジオン公国軍が初期段階のままの「宇宙人で構成された軍隊・ジオン帝国軍」だったら、ガンダムはシリーズ化しなかったか、したとしても今日とは全く異なる展開になっていたかも知れないのだ。

また、本来のプロットではホワイトベースがジオン本国へ攻め込み、「ニュータイプによる幕引き」を望んだシャアの犠牲でアムロがギレンを射殺するというものだったが、放送短縮によってWB隊は戦争の大勢に殆ど関わらないまま終戦を迎えた。
放送終了後のガンプラブームを経て製作された劇場版でも、そこは変わらず他の作品ではあまり見られないガンダムシリーズ独特の幕引きとなっている。

【元公国軍兵士や信奉者が参加した組織】



【残党組織】



なお、公国軍およびこれらの残党勢力に関連する問題として、彼らの高い人気のため、ジオン系勢力を出さずにガンダムの映像作品を作ることを困難にしたという点があった。
ジオンからの脱却を図った作品である『F91』『V』の2作品は商業的に芳しくない結果を残し、それとは反対に前者とほぼ同時期に展開がスタートした『0083』が大ヒットを飛ばしたことからも、「ジオン抜きのガンダム」で人気を得ることがいかに難しいかがうかがい知れる。
その後、『G』『W』『X』の所謂「平成三部作」の成功によって、ジオンからの脱却は「宇宙世紀からの脱却」という形で果たされることとなる。


追記・修正はジオンのために!

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*1 本組織以前にも『鉄人28号』の敵組織は例外もいるが人間だし、レギュラーの敵勢力としても『マジンガーZ(アニメ)』のドクターヘル軍団だってヘル以外は改造されてるとは言え人間だし、純粋な人間による組織も『惑星ロボ ダンガードA』のドップラー軍団が存在するのだが、しばしば誤って「ロボットアニメ初の人間で構成された敵勢力」と紹介されることもままある。まるでH&K VP70とグロック17である。

*2 国号こそ同一だが一年戦争後のジオン共和国とは異なる。第一共和政と第二共和政とでも言うべきか。

*3 世界観の再構成作品であるTHE ORIGINにおいてはジオン共和国は「ムンゾ自治共和国」、ジオン国防隊は「ムンゾ防衛隊」であり、ジオン・ズム・ダイクンによる独立運動以前から存在していたムンゾの州軍が軍の原形となっている。

*4 しかしたった一人だけ生き延びていた子供がいて、ある作品ではヒロインおよび重要な役割をしたことも

*5 そのため、彼らにとって「ジオン共和国の住民」は守るべき対象ではない。「ジオン残党によるサイド3へのテロ攻撃」さえ行われた。

*6 ジオンの認識:強くてカッコイイ! 連邦兵の認識:個々は強くても組織として動くのが下手。

*7 ギレンとキシリアとドズルはそれぞれ対立し、デギンはギレンもドズルもキシリアも嫌い、ギレンはデギンを軽蔑している。それが部下たちにも影響し、派閥抗争を現場にも持ち込んだ。唯一全員と親しかったガルマ死後はさらに悪化。一応、ギレンはドズルを、キシリアはデギンを好いていたが、分裂の緩衝にはならなかった。

*8 カイ・シデンやシロー・アマダに代表されるよう、地球連邦にもスペースノイドは多数存在する。だが、地球連邦内において彼らの多くは下士官や兵卒ということもあってか、地球連邦軍の兵器やその運用法は「地球人の常識」の影響が強く出やすい。

*9 雑誌「週刊ロビ」の第48・49号での富野監督のインタビューによれば、巨大な人型の兵器とは地球の発想ではなく、宇宙で安心感を得るために人がシンパシーを感じる人型となったとのことである。

*10 ご丁寧にも、ジレンマを理解できないララァが加勢しないシャアを責めるシーンまで入っている。また、当時の一部アニメ誌では、「ジオンの国是上、ジオン人ニュータイプであるシャリアが生きている限り、地球人であるララァは引き立て役の域を出られないため、シャアは彼を邪魔者と考えていた」という別の大人の事情説も語られているが、追い打ちをかけなかったことは恐らくこれが要因。

*11 上官や先輩たちの言動を見ると、当時現場実習生だったブラウンに精神的ショックを与えないよう、彼にのみコロニー落としの準備であること以外教えなかったようだが、これが裏目に出てしまった。

*12 余談だがそんな彼らが後付けでコロニー落としに協力することになったのは皮肉でしか無い

*13 なお、バーニィとガトーは名目上は主人公ではなく、所謂「第二の主人公」という位置づけである。