ホー(ウルトラ怪獣)

登録日:2020/08/16 Sun 14:43:35
更新日:2025/05/29 Thu 22:21:42
所要時間:約 8 分で読めます





ホーとは、ウルトラシリーズに登場する怪獣。
本項目は、この怪獣が初登場したエピソードについても記載する。


【概要】

全長:50m
重量:20,000t
別名:硫酸怪獣
出身:異次元
能力:硫酸
スーツアクター:瀬崎正人

初登場は『ウルトラマン80』第3話「泣くな初恋怪獣」。

胸には縄文土器のような渦巻き模様をしており、腹部から尾は芋虫のような
頭にはコウモリにも似た大きな耳、両手足には鋭い爪を生やしている。
耳はアンテナのようにピコピコ動き、生みの親のマイナスエネルギーを探知して行動する。

「オォォォォ……」と悲しげな唸り声を上げながら(後に妄想ウルトラセブンの鳴き声に流用)両目から涙を流すが、なんとそれは高濃度の硫酸でできている。
ホーはこの涙と口から吐くマイナスエネルギーの炎を武器に、ウルトラマン80を苦しめた。


【「泣くな初恋怪獣」あらすじ】

事のはじまりは、ウルトラマン80こと矢的猛が1年E組の担任兼生物の教師として通う桜ヶ丘中学校にて。
その生徒である中野真一が、サッカー部のスポーツマン・柴田少年からガールフレンドのみどりを取られてしまったことにある。

その晩、失恋のショックでサッカーがなんだと所かまわずサッカーボールを自室に投げつけ八つ当たりする真一は、割れたガラス越しからみどりを想う。
ベランダに向かい夜空を仰いだ途端、みどりのイメージはおぞましい霧へと変わる。
霧からの稲妻を受け、倒れる真一。やがて、そこからなんとも言えない、おぞましい声が響いてくるのに気付いていなかった……。

マイナスエネルギーの発生はUGM本部にも知れ渡るが、指令室では近隣からの苦情に対応するのがやっとだった。
なんとか対処できたUGMは、マイナスエネルギーの発生地がポイント13(ワンスリー)、つまり桜ヶ丘にあると知る。
異常な霧が気になった猛は、翌朝の登校前の時間を利用してその周辺を調べてみた。
だが、夕べの騒ぎがまるで嘘のように、町も澄み切った空ものどかであった。
そこで京子先生に偶然出会うものの、猛のアタックは失敗に終わったのは内緒だ。

しかしその晩、ジョギングに励む柴田を含めたサッカー部の背中に嫉妬する真一を媒介に、ホーが出現した!
スカイハイヤーとシルバーガルを駆り出撃するUGM。
猛は彼らと行動を共にせず、地上攻撃に向かうとオオヤマキャップに言い真一の下へと向かった。


猛は、どうしても確かめずにはいられなかった。

――あの怪獣ホーは、真一の心が作り出したものではないか?――

猛は、夢中で走った!


中野家に到着した猛は、二階のベランダで真一の意識が表層化しているのを見た。
そこで、オオヤマキャップに攻撃中止するよう頼み込み、中野家に上がり込む。

ベッドでうなされる真一を目覚めさせた猛は、着替えて自分と一緒に来いと促す。
ホーの姿を見せた猛はその心の声を伝えて、夢の中で憎しみや悲しみといったマイナスの感情を吸収して泣いているんだと教えた。


『愛しているから愛されたい』、『愛されなければ腹が立つ』。
でも、ホントの愛ってそんなちっぽけもんなのか?

人のお返しを期待する愛なんて、偽物じゃないかな?

『思う人には思われず』、よくあることだぞ。


真一と向き合う中、自分もそんなことがあったと猛は故郷での思い出を語る。




故郷にいた頃、本当に好きな女の子がいてな……。
その子のためなら、何でもしようと思った。

その子、楽器を欲しがってたんだ。
先生、どうしても買ってあげたくってさ……必死になってバイトをした。

だけどな……二ヶ月目にやっと手に入れた時は、もう遅かったよ。
その子には、新しい恋人ができてたんだ。

悲しかった。悔しかった。憎かったよ。

だけどな……先生、そのままプレゼントしたよ。
その楽器が、先生のホントの心を鳴らしてくれると思ったんだ。

……それで終わりだよ。
今はもう、懐かしい思い出だ。


生徒と教師ではなく、失恋した者同士として真一と向き合う猛は、失恋で生じたあの醜い感情が本当の感情じゃないと諭す。
しかし、真一の心は既に悲しさや悔しさ、そして憎しみで満ち溢れており、猛の言葉は届かなかった。
それを探知するかの如く、ついにホーが暴れ出した!

やがて始まるUGMの攻撃。ホーは硫酸の涙をまき散らしながらみどりの家へと向かっていく。
涙から真一を庇ったために背中に傷を負った猛は、その潜在意識が怪獣を破壊に向かわせると言い、なおも説得する。


お前は本当にみどりが憎いのか!?

いいのか、それで!?

本当にそれでいいのか!? 真一!!


事の重大さにようやく気付いた真一は自身の心が生み出した怪物に消えろ、と声高に叫ぶ。
だが時すでに遅く、ホーは憎しみの悪魔へと変貌していた。
怪獣に逃げ惑う人々の中、真一はホーの涙に怯えて動けないみどりを見つけ出す。
だがホーの暴走は止まらない。みどりを庇い傷を負い、瓦礫に埋もれながらも真一は懸命に叫ぶ。


お前なんか消えろ!!

お前なんか俺の心じゃない!!

消えろーっ!!


呻き苦しむホーが真一を葬らんと暴れ狂う中、猛はブライトスティックを掲げ叫んだ!


エイティ!!


失恋の悲しみから振り切った少年を守るために、ウルトラマン80が立ち向かう!



フランケンシュタイナーでホーを投げ飛ばすが、憎しみで満ち溢れたホーのパワーには歯が立たず、馬乗り状態で涙を受けてしまう。
体制を立て直そうとしても火炎攻撃と蹴り攻撃でさらに追い打ちをかけられ、やがてカラータイマーが鳴り響く。


ウルトラマン80が、地球上で活躍できるのは約3分しかない。

憎しみに膨れ上がった怪獣ホーは、涙をまき散らしながら立ち向かってきた!


間合いを取り、一瞬のスキを突きジャンプからの二段キックで怯ませた後、サクシウム光線を放つがそれでも意味をなさず。
そこで、80はバックルビームを発射。ついにホーを消滅させたのだった。

かくして事件は解決したものの、猛の京子先生へのアタックはまたもや大失敗。
その有様を真一に見られて、僕と同じだねと言われた猛は笑って言う。


男は失恋して失恋して、いい男になるんだ。
先生、いい顔してるだろ?
「俺、そういう顔してるだろ?」に空目した人、廊下に立ってなさい

真一も失恋から吹っ切れて、みどりに笑って「おはよう」と言えるようになったことも付け加えておこう。


【その後の客演】

ウルトラマンメビウス

そして時は流れ27年後、『ウルトラマンメビウス』第41話「思い出の先生」でまさかの再登場。

他校との統廃合と、それに伴う校舎の取り壊しを間近に控えた桜ヶ丘中学からマイナスエネルギーが発生。
再びホーが実体化したが、今回のホーはかつて真一が生み出したものと異なり、破壊活動もせずウルトラマンメビウスが現れても駄々をこねるような仕草をしていた。

やがて、かつての80が受けたように、馬乗り状態でメビウスも硫酸の涙を受けてしまうが、そこにかつてのホーの憎しみは感じられなかった。

80が颯爽と現れた際にはまるで恩人との再会を喜ぶかのように両耳をピコピコ動かしており、バックルビームを受ける際にも喜んで受け止めるような仕草を見せている。


大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE

ベリアル怪獣墓場から蘇らせた怪獣軍団の一体として登場。
他の怪獣達と共に、セブンを倒され窮地に陥った初代マンダイナを襲ったが、駆け付けてきたゼロのエメリウムスラッシュで掃討された。


ウルトラゾーン

「いつも隣にホーがいる」のエピソードに登場。
作中で(0H0)ノボル少年が失恋のショックで産み出した個体と、恋人をルナチクスに殺された女性タマエの産み出した個体の2体が出現する。
自らを産み出した人間に付随するが、基本的には害を与えるような事は無い。視認できるのは悲しみからホーを産み出した人間のみである。

交流を深めるノボルとタマエだったが、突如として出現したルナチクスの襲撃でタマエはノボルの目の前で爆炎に呑まれ、その悲しみからノボルのホーは巨大化
激戦の末にルナチクスを撃退することには成功するが、あまりにも強すぎる悲しみによって実体化したホーは暴走してしまい……


ウルトラマンオーブ

第7話「霧の中の明日」にて登場。
予知夢を見る女性・ハルカのマイナスエネルギーに反応するかのごとく出現。
クレナイ ガイオーブバーンマイトとなり、予知夢に怯える彼女のために熱いファイトを見せる。
最終的に活動を停止したホーは、スペシウムゼペリオンとなったオーブのスペリオン光線を受けて消滅するのだった。


ウルトラ怪獣擬人化計画

KADOKAWA版にて擬人化された。デザイナーは富岡二郎。
大きな耳と巨大で鋭い手足はそのままに、パンクロック少女的アレンジが施されている。
紫のメッシュに下唇のピアス、そして左頬についたのフェイスペイントがチャームポイント。
胸の渦巻き模様はヘッドフォンと鋭角状の肩パーツに分かれ、芋虫状の腹部はハイレグ風に変化。
両脚部と下腹部はガーターベルトで繋がっており、左太腿部の外側には割れたハートから零れ落ちる涙のタトゥーが失恋を思わせる。
嫉妬や憎しみを力に変えて、片想いの相手とリア充カップルを攻撃するはた迷惑なキャラらしい。

アニメ版の設定を下地にしたドラマCD『愛を叫べ!怪獣娘!?』では「葦原ルイ」*1の名前で登場。CVは葵ひびき。
ドラマCDを収録した書籍表紙用にホーのデフォルメイラストも書き下ろされている。
覚醒したばかりのぼっちキャラで、人との距離を掴み切れないのが欠点。
そのコミュ障っぷりは憧れのノイズラー/鳴無ミサオに対して初対面で「結婚してください!」と爆弾発言してしまうほど。
2019年開催の朗読劇にも登場し、ザンドリアスとノイズラーのバンドメンバーでドラム担当を務めている事が言及された。


ウルトラ怪獣モンスターファーム

直接は登場しないが、特徴を付与するクッキーが登場する。
ホーの特徴はストレスの一種であるゲキリンの回復量を増やす「硫酸の涙」。何でもいいのでゲキリンが下がればそれに合わせて発動する。
ゲキリンは高くなると暴走が発生し1~4週間育成できなくなるので、その頻度を抑えられる効果はかなり便利。
怪獣の好物を与えるとゲキリンが回復するため、毎週使用するようなアイテムが好物の場合はぜひ使いたい。



余談

デザインを担当した山口修による決定稿は、実際に造形されたホーの着ぐるみと比べて首と耳がやや短めに描かれており、印象が大分異なる。

『ウルトラマン80』第1話で重要なキーワードとして挙げられた「マイナスエネルギー」であるが、
残念ながら劇中で明確にマイナスエネルギーの影響下で活動したとされる怪獣は、第1話のクレッセントに第2話のギコギラー、このホー、そして10話のズルズラー(マイナスエネルギーを吸収したジャッキーの影響で怪獣化)で一旦打ち止めとなってしまった。
以降は中盤に登場するグワガンダが唯一の他、同じく中盤のガゼラや、終盤における妄想ウルトラセブンが広義の意味でそういう存在とも受け取れる程度に留まっている。


マイナスエネルギーによって出現した項目ならば……私が追記・修正する!

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年05月29日 22:21

*1 漢字表記はドラマCDのシナリオを担当した渡井亘氏のSNSより。