ルパン三世 セブンデイズ・ラプソディ

登録日:2021/03/23 Tue 19:52:45
更新日:2025/04/11 Fri 15:31:55
所要時間:約 10 分で読めます






それより、コイツを逮捕しろ!
ブルルルル…ヒヒ~ン!『ヒヒ~ン』じゃない! お前がルパンと手を組んでたのはお見通しよ!
ヒヒ~ン!ブルルルル…

いつまで続けるんだ…

なんだよ? おめぇが要点だけって言うから、不二子ちゃんのお色気シーンを飛ばしてやってるのにぃ~!

いらねぇだろ…どこにお色気シーンいれるんだよ!

まぁこういきゃ作戦は完璧だぁね!

ま、おめぇにしちゃあ、ちょっとは考え込まれてるかな…

だろ? 競馬場の金じゃなくて、マフィアから大金頂いちゃうってところがオシャレでしょ?
マンハッタン・ステークスはちょうど一週間後の日曜日だかんな? お尻に打ち込んじゃう、あの薬頼むぜ!

ハッ! 分かりましたよ! ルパンのお・や・か・た!

なんだぁ~その声…誰なんだぁ?

はぁ~い♡

一生やってろ!!




ルパン三世

セブンデイズ・ラプソディ




●目次


【概要】

『ルパン三世 セブンデイズ・ラプソディ』とは、2006年9月8日に金曜ロードショーにて放送された、ルパン三世テレビスペシャル第18弾のタイトルである。
脚本は最早定番の柏原寛司。
柏原氏が手掛けたルパン三世作品は現時点では本作が最後となっている。

サブタイトルの通り、巨大ダイヤモンド「女神の涙」を巡り一週間に渡って繰り広げられるルパン一味(特にルパンと次元)の奮闘を描いた作品。
ゲストヒロインと共に行動するルパン、ゲストライバルに着いた次元、ニューヨークで独自に行動する不二子と五エ門……と、
終盤以外はルパンファミリーがバラバラに行動しているのが特徴的。
EPISODE:0 ファーストコンタクト』以来となる、ルパンと次元の対決シーンや、終盤でのルパン一味の華麗なるチームワークプレイなどが見所に挙げられる。


【あらすじ】

一週間後に控える「マンハッタン・ステークス」の売上金を強奪する……と見せかけて実際は自分が騎乗する大穴馬券でマフィアから大金をせしめる計画を立てたルパン。
シミュレーションは完璧、後は6日後の決行日を待つだけだ。
前祝……の為の氷の買い出しに街へ繰り出したルパンと次元。
途中用事を思い出した次元と別れたルパンは、 怪しい男たちに追われている少女ミシェル・キューイックを助ける。
ミシェルは、悪事を働いている父親ガス・キューイックから巨大ダイヤを奪い、悪事を阻止してほしいと依頼される。
6日後には競馬場の金、上手くすればダイヤまで手に入るかもしれない。
ルパンはミシェルの依頼を受ける事にする。

一方、次元はかつての戦友ライアットと再会していた。
次元は最愛の女性であったジェニーを死なせたライアットのことを恨んでいたが、彼は仲直りついでの儲け話を持ち掛ける。
次元はひとまずその話に乗り、売上金強奪計画までの6日間を、ライアットと過ごすことになる。
「大佐をギャフンと言わせてやろうじゃないか……」
ライアットの計画とは、かつての二人の隊長キューイック元大佐が興した会社が開発中の新兵器の強奪であった。

また、不二子と五エ門はニューヨークで開かれる世界最大のダイヤ展示即売会に潜入し、
展示されているダイヤモンド、特に米大統領が競り落とした世界最大のダイヤ「女神の涙」を盗み出す作戦に向けて準備を進めていた。

それぞれ別々に動くルパンファミリー達。
その動向は、「女神の涙」の下に収束して行く……。



【登場人物】

◆レギュラーキャラクター

CV:栗田貫一
ご存知天下の大泥棒。
本作ではマンハッタン・ステークスでマフィアから大金を奪う作戦をたてたところから物語が始まる。最近氷に凝っているらしい。
本作でもコミカルな一面は相変わらずで、ミシェルの胸ならまだしも五ェ門の胸に興奮したりして、2人からビンタされていた。
盗みの計画を紙にメモして持ち歩くという迂闊さを見せており、そのお陰で色々と問題を起こす事になる。

しかし、終盤でミシェルに見せた姿勢はまさにおじさまであった。故あってズボンを失っていたため下半身はトランクス姿だったが

「この子に…そんなむごい死に方はさせねぇ! 肩の紐を直しなさい……レディーだろ?


CV:小林清志
ご存知ルパンの相棒のガンマン。
本作では『お宝返却大作戦!!』同様、シルバーメタリックのマグナムを使用している。
最愛の女性であったジェニーを死なせたライアットのことを恨んでいたが、ひとまず彼の金儲けの話に乗ることにした。
しかし、その結果相棒であるルパンと戦うことになってしまう…

「ここでケリをつけるか… ライアット…!」


CV:井上真樹夫
ご存知ルパンのもう一人の相棒の剣客。今回は不二子の仕事に協力している……というよりさせられている身分。
劇中中盤、氷の塊を一瞬で女神の涙の様に切り出すという相変わらずの達人芸を見せる。
この偽ダイヤは現物を見た不二子が「大き過ぎてすり替えは無理」と判断したため、結局作戦には使われず放置される事になる。
彼曰く「光り物に興味は無い」らしく、「喧嘩している父と娘を仲直りさせる教育的な仕事」と称するルパンの仕事に興味を持ち、
彼に鞍替えする……が、本格的に仕事が始まる前に不二子に脅し文句めいた言葉で呼び戻されルパンを置いて一人で帰ってしまう

本作ではルパンと次元にフォーカスが当たっているためか、見せ場は若干少なめ。
一方、ルパンと共にタイに到着した際は一瞬で敵の刺客が僧侶と浮浪者に変装している事を見抜くなど、鋭い面も見せる。
中盤辺りまではルパンと共に行動していたが、不二子から呼び戻されて以降は完全に彼女の尻に敷かれることに…


柏原氏の手掛ける五ェ門は何故毎回こんな感じなのか…

「女の名前でメールするのはよせ…」


CV:増山江威子
ご存知お色気姐さん。
本作ではルパンと次元にフォーカスが 以下同文…
本作では基本的に単独行動をしており、終盤辺りでルパン達と合流した。
それもあってか、本作ではルパン達を裏切る描写はなかった…というよりか今回は裏切られる側だった。

「ダイヤを待ってる美人もいるわよ!」


CV:納谷悟郎
ご存知銭形のとっつぁん。
本作ではルパン 以下同文…
ただ、上記の2人とは違って出番もかなり少なめで、その癖相変わらずひどい目にあうという、相変わらず扱いが悪かった。
だが、序盤でフィアットのエンジン音を聞き当てたり、ヘリの墜落に巻き込まれても無傷と超人じみた能力は相変わらずだった。

「ルパァァァン! 逮捕だぁぁぁぁ!!」



<……ドカーーーーン!!!



「…………大丈夫だろうか……」

「問題ねぇと思うぜ? 銭形のとっつぁんだからな」


「逃げる気かルパァン! 卑怯者めぇ!!」

「な?」

「心配した拙者が、馬鹿だった……!」


◆ゲストキャラクター

  • ミシェル・キューイック
CV:伊瀬茉莉也
本作のゲストヒロイン。
警備会社「MIX」の社長令嬢で、金髪のボブカットに、16歳とは思えないほどのデカパイを持ったお嬢様。
お嬢様ということもあり金遣いは結構荒く、家一軒を一括購入できるブラックカードを所有している。
ルパンと知り合い一時行動を共にしたのは偶然と成り行き上の事だが彼の正体には気付いており、
ジャケットの下からワルサーP.38が見えていた事とマンハッタンステークス作戦のメモを発見した事から、
「こんな古い銃を使ったり盗みの計画を紙に書くような泥棒は一人しかいない」と、彼をルパン三世と知った上で、
父の目論む作戦を止めてもらうべく協力を依頼した。

「何するのよ! 16歳の乙女に向かって!!」


  • ガズ・キューイック
CV:津嘉山正種
世界有数の巨大警備会社『MIX』の社長であり、ミシェルの父親。
元々は傭兵でライアットの上司にあたる。当時の階級は大佐で、劇中の登場人物からも大佐と呼ばれていた。
会社の実態も民間軍事会社で、裏では地雷や人工ダイヤモンドの中にニトログリセリンを圧縮した最新鋭兵器「N.D.W.(ニトロ・ダイヤモンド・ウェポン)」を始めとした兵器の開発・生産を行っていた。
ミシェルに対する愛情は本当ではあるが、妻の葬儀よりも仕事を優先するなどかなりの冷血漢である(分かりやすく言えば、『くたばれ!ノストラダムス』のダクラス総帥のような人物)。
『女神の涙』を『N.D.W』とすり替え大統領を脅迫し、世界を裏から操る『女神の涙作戦』を目論む悪人。

「土曜日までお前たちを雇う、これにサインしろ!」



  • ライアット
CV:立木文彦
スキンヘッドと黒コートの巨漢。傭兵であり、かつて南アフリカで次元と共闘していた時期があり、またキューイックは当時の上官。
南ア某国の王女にして次元と愛し合っていた女性ジェニーの亡命を手伝ったが、あと一歩の所で彼女を死なせてしまった事で彼からは恨まれている。
愛銃はショットガンで、大量のショットシェル(劇中ではスラッグ弾を使っていた)を常に装備している*1
仲直りとして金儲けの話を彼に持ち掛け、次元と手を組む。

ここまで見るとコイツも意外とかわいそうに思えてくるのだが……

「昔のことは、忘れようや次元…」



  • ファイヤー
CV:咲野俊介
キューイックに雇われた殺し屋。
ボール形をした火炎放射器*2を武器とする
ルパン曰く「何でも燃やしたがるゲス野郎と評判」。
戦闘能力は意外と高く、序盤ではルパンと五ェ門を苦戦させるなど中々の実力者である。
キューイックの命令で、ミシェルを誘拐(というよりかは奪還が正しいか?)した。


「泣かせるのは女だけじゃない…」

  • ダノン
CV:秋元羊介
序盤に不二子と共に女神の涙及び即売会会場の宝石を強奪する計画を立てていた。
いつもなら不二子に騙されて泣きを見るポジションだが、彼は『女神の涙作戦』のために不二子を利用し手玉に取るなど意外としたたかなやつである。



  • 副社長
CV:玄田哲章
「MIX」の副社長である元傭兵で、その時からキューイックの部下であったが、裏ではライアットと内通しており、社長の座を狙っていた。
キューイックが重傷を負い、バンコクの病院に収容された後は事実上「MIX」の社長に就任し、「女神の涙作戦」の指揮を執った。
最終的に女神の涙作戦は失敗したが、その後の動向は不明。


  • ファイヤーの仲間
その名の通りファイヤーの仲間で、ロン毛の男と黒人の男の2人組。
劇中のほとんどでファイヤーと共に行動しているが、台詞はそこまで多くない。
2人とも終盤で五ェ門と不二子の連携によりファイヤー共々バカみたいな描かれ方で倒された。


  • ジェニー
南アフリカの某国の王女。故人。
国王の護衛を担っていた当時の次元と愛し合っていたが、あくまで国王の護衛にして逃亡の意思の無い国王の傍を離れる訳には行かない次元に代わり、
ライアットが彼女を護衛しながら輸送機で国外脱出させようとしていた。
しかしジープごと輸送機に飛び移ろうという寸前に運転手が攻撃を受けた事でジープは暴走、
輸送機に突っ込んでしまった事でジープ・輸送機諸共爆死、寸前にジープから振り落とされたライアットだけが生き残る結果となってしまった。

正にタッチの差でジェニーを死なせてしまった事は次元は勿論、ライアットにとっても心の傷となっていた様である。
次元としては彼女を守り切れなかったライアットの事を恨んでいた様だが、復讐してやろうとまでは思ってもいなかった模様。



【用語】

女神の涙
…本作のキーアイテム。アメリカの大統領がオークションで競り落とした巨大なダイヤモンドで、ホワイトハウスに展示予定の代物である。
その名の通り涙滴型に加工されている。

N.D.W
…本作のもう一つのキーアイテムで、『MIX』が開発した通称『ニトロ・ダイヤモンド・ウェポン』。
人工ダイヤの中にニトログリセリンを圧縮しており、遠隔で自在に爆破可能、爆発の威力も自由に操作できるという恐ろしい兵器である。
『MIX』は『女神の涙』を『N.D.W』とすり替えて大統領を脅迫し、世界を裏から操る「女神の涙作戦」を実行しようとしていた。



以下ネタバレ















【エンディング】

ライアットらを倒し、女神の涙もご破算、今回の騒動は解決した。
だが、父がライアットたちに殺されたことでミシェルは悲しむ。だが、ルパンは優しそうな顔で、

ルパン「泣くなんて君らしくないぜ!」

そう言い、ミシェルに一枚の紙きれを見せた。
そこにはバンコクにある国際病院の病室番号が書かれており、その番号は父が入院している病室の番号であった。

そう、キューイックは生きていたのであった。

父が生きていたことを知り、ミシェルはよろこびながらルパンに抱きつく。
これにて今度こそ今回の騒動は一件落着に終わった。


だが直後に不二子もルパンに抱き着き、本物の女神の涙の在り処を尋ねる。

だが、実は本物の女神の涙は『N.D.W』とすり替え離脱しようとしていた際、銭形の乱入に遭い揉み合いになっている間に海に落としてしまっていた
ルパンはその旨を説明するも信じてもらえずボコボコされてしまいましたとさ…

その後、『MIX』を後にした一同だが、ミシェルは父の元へ戻ることを決めたため、ルパンとはここで別れることになった。
ルパンの連絡先を聞き出そうとするミシェルであったが、彼は「携帯もパソコンも持ってないから、電話番号もアドレスも無い」とはぐらかす。
寂しそうな表情を浮かべるミシェルに対し、ルパンは優しい声で言った。

ルパン「また会えるさ… きっと」


ミシェル「後悔するから… 10年後…」


ルパン「俺が後悔するような女になれよ!」




ミシェル「……バカ!」



ミシェルを乗せた不二子のバイク(その辺から盗んで来たものである)は『MIX』を後にした。だが、不二子は何やら嬉しそう。
それもそのはず、不二子がミシェルを空港まで送ったのは、彼女のブラックカードを使ってTAX FREEで買い物をするためであった。
やはり不二子は金やブランド品には抜け目のない女であった。


ミシェルは振り返り、笑顔でルパンに別れを告げた。


ミシェル「ルパ~~~~ン!!


ありがとう!!!

10年後に……



私を…………あ・げ・るぅぅぅ!!!」



ミシェルのとんでもない発言にルパンはズッコケた。


ルパン「そういうこと大声で言っちゃダメ! レディーでしょレディー!!」


次元「楽しみだな、ルパン!」




五ェ門「羨ましい…」



ルパン「え!?」  次元「ん?」


急な五ェ門らしからぬ発言に、2人は硬直した。


ルパン「今のノリ…? ボケ…?」  

次元「おめぇ、今回ギャグに目覚めたな…」


次元の発言に、五ェ門は赤面した。
ところでで今、展示会の方に展示されてる方の偽の女神の涙は何なんだ?と尋ねる次元に対して、ルパンは笑いながら答えた。

ルパン「あれは、五ェ門先生の力作でさぁ?」



翌朝、展示会の方では大統領による女神の涙のお披露目が行われていたのだが…
大統領が持っているダイヤからポタポタと水が垂れてきた。

大統領「なんか…冷たいよ? このダイヤ…」


大統領「ふーん、良いダイヤってのはこんなものなのか」



大統領「……って溶けとるやないかぁぁぁぁ!!!」


MC「流石大統領! ノリツッコミを会得していたぁ!!」


大統領「は…早く! 冷蔵庫、冷蔵庫ぉ!!」


大統領「コラ!フラッシュ焚くな!! 溶けるだろぉ!!!」





MC「流石だ! そんじょそこらのダイヤとはちょっと違うぞ!!」




MC「まるで、氷みたいだ!!!」





そう、不二子の作戦で五ェ門が氷で作ったイミテーションのダイヤであった。
使われず終いとなって放って置かれていたのをこっそりルパンが持ち出し、入れ替えていたのである。
まぁ、そんなわけで展示会は大パニックとなっておりましたとさ…

一方その頃、海に落ちたと思われていた女神の涙は、自由の女神像の聖火の部分に落ちており、未だキラキラと輝いていたのであった…





【余談】

本作でキューイックを演じた津嘉山正種氏は『バイバイ・リバティ・危機一発!』のジミー・カンツや、『ワルサーP38』のドクターや『The Last Job』のモルガーナなどTVSPに登場する様々な悪役を演じており、ファイヤーを演じた咲野俊介氏も『EPISODE:0 ファーストコンタクト』のシェイドや後に放送された第4シリーズではニクスを演じた。

本作でライアットを演じた立木文彦氏はこれまでも『ヘミングウェイ・ペーパーの謎』のマッシュや『アルカトラズコネクション』のハイエナなど次元の因縁の相手を演じてきた。
それもあってか一部の視聴者からTVSPの次元の因縁の相手は立木氏が演じるというジンクスが広がっていたが、後に放送された『The Last Job』に登場したアンドレは本作で副社長を演じた玄田哲章氏が演じたためそのジンクスは打ち破られることになった。

中盤でルパンらが訪れるそして大爆発を起こし壊滅する事になるタイのワット・ヤイチャイモンコン遺跡は実在する。
タイの人気観光地の一つであり、タイを訪れた際は行ってみるのも良いだろう。



五ェ門「またつまらぬ追記・修正を…」


不二子「五ェ門!!」



五ェ門「はいっ! ただ今!!」


次元「なんか…おめぇが不機嫌なのはわかるが、力関係も微妙に変わったか?」


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最終更新:2025年04月11日 15:31

*1 次元はショットシェルの音を聞きあて、彼と対峙した

*2 この火炎放射器は発火するだけでなく手榴弾の様に爆発し、ルパンのワルサーでも傷一つつかないなど中々強力である