機動絶記ガンダムSEQUEL

登録日:2022/09/06 Tue 09:03:17
更新日:2024/10/21 Mon 09:01:25
所要時間:約 5 分で読めます




井上敏樹が紡ぐ
失われた“神”(ガンダム)を巡る、

背信の物語ーーー


掲載誌 コミプレ(Web漫画サイト)
漫画 千明太郎
脚本 井上敏樹


『機動絶記ガンダムSEQUEL(シークエル)』(英語題:Despair Memory GUNDAM SEQUEL)とは、Web漫画サイト「コミプレ」にて配信されている、オリジナルのガンダム漫画作品。
連載開始当初は週間で更新され、後に月間連載へと移行した。
単行本としては小学館のヒーローズコミックスより刊行中。既刊2巻(2023年4月時点)。

作画担当の千明太郎氏は自身でも認めるラブコメがメインの作家で、連載時点でも『魔王の娘、すごくチョロい。』という作品を同時連載中。
脚本の井上敏樹氏は言わずと知れた脚本家であり、連載開始時である2022年にはメイン脚本を担当する『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が放送中である中の執筆となっている。

……察しがつくかもしれないが、第1巻現在機動兵器の出番が少なく、能力バトルものの様に見える異色の『ガンダム』。
単行本1巻ではガンダムの登場ページは10ページ少々、主役機と思われるミナーヴァに至っては次巻予告以外ほぼバストアップしか出てこないという他に類を見ない扱いとなっている。
続く2巻においても最後の最後で本格的なモビルスーツの戦いが描かれ、それまでもガンダムの出番が無いと愚痴っていた読者の度肝を抜いた。急にガンダムになるな!
言うならば『ガンダムとネオスを巡るサスペンス』といったところのストーリーか。

タイトルの「SEQUEL」は英語で「続編」を意味するが、どのようなニュアンスでの命名なのかは現状不明。
通称は「シークエル」「敏樹ガンダム」等。

あらすじ

人類の半数以上が命を落とした、とある「大戦」から700年ーーー。
大戦時に地球を守り抜いたガンダムはもはや人類にとって不要なものとなっていた。
そんな平和な世の中に「血まみれのカオリス」と呼ばれる一人の女がいたーーー

これは「ガンダム」という名の失われた“神”を巡る、背信の物語。


用語

▼コキュートス
作中の主な舞台。
700年前の大戦でガンダムのパイロットであった「ニュータイプ」を押し込め、住民もろとも毒ガスで虐殺した後に宇宙の果てへと廃棄された幽霊コロニー。
しかし、今になって地球圏へと戻ってきた。
内部ではごく普通の文明が栄えており、「帝都ガン・ドラド」「氷都ダ・リーア」「砂楼都ムファサ」等の都市が存在する。
なお、文明はあっても現実のそれとはかけ離れており、食事は見た目こそ普通だが猫やネズミを使うなどメシウマ描写に定評のある敏樹には珍しく相当なゲテモノとなっている。

▼ネオス
かつてのガンダムのパイロット「ニュータイプ」の末裔が更に進化した存在。
超常的な力を持っており、不死ではないが生命力も飛び抜けている。
ぶっちゃけ、宇宙世紀アフターウォーにおけるニュータイプ観よりもアギトオルフェノクの方に近い存在。
人類の革新ってそういう方向性じゃない…と言いたいところだが、現在ではニュータイプもニュータイプで超能力バトルものに片足を突っ込みかねないくらいにインフレしている節があるので、ベクトルが違うだけで総合的にはそんなに変わっていない…と思いたい。


登場人物


帝都ガン・ドラド

コキュートスに存在する都市の一つ。
ごく普通の現代的な建物が多いが、王城だけやたら中世風である。
他の2都市とは停戦協定を結んでいたが、何らかの思惑によりこれを破った。


●シャギ・カオリス
ネオスの一人。「血まみれのカオリス」の異名を持つ。
当初は太った中年女の姿をしていたが、真の姿は赤髪のナイスバディな美女。
見た目が変わるのもネオスの能力の一つで、凄まじい再生能力を持ち、その際に姿を変えることも出来る。
また、体内に武器を隠し持って不意打ちをする事も可能。
しかし、あくまで再生ができるだけであり、痛覚はあるし致命傷を受ければ死ぬ事もある。
だが、本人はそれを意に介していない様子。
何故なら彼女はガンダムのコクピット内で燃える母から生まれたいわば死の中から生まれた存在であるため、死を恐れていないとのこと。その代わりに虫をめちゃくちゃ恐れている
この時の彼女は産まれたばかりの赤ん坊だったが、その光景を鮮明に覚えている様子。
衣服は露出の多いセクシーなスタイルだが、そもそも全裸で過ごす事も多い。


●キリエ・サネアツ
中性的な容姿を持つ闇医者。*1
カオリスのお抱え医師であり、無茶をする彼女を諌める。
また、彼女に任務の依頼を持ちかける、唯一の協力者とも言える存在。


●デュラン・ロータス/πのデュラン
ネオスの一人である暗殺者であり、カオリスの父。
キザでダンディな壮年男性であり、かつ受けた依頼は100%こなす有能な人物。
しかし記憶障害を患っているらしく、親しい間柄の人物でも唐突に忘れてしまう事がある。
あと、立っているのがやっとのほどの酷い腰痛持ち。
血を操る能力があり、刃のような硬質な武器から鞭のようなしなやかな道具にしたりと、変幻自在の力を持っている。
また、匂いで相手のウソを見抜く力もある。
かつては王家直属の上級武官だったが、敵の襲撃に遭い妻を失った事で以降は王家の命令に忠実な暗殺者となった。
台詞の節々がいかにも井上敏樹の描くライバルキャラクターらしい。


●マリーヌ
小さな飲食店を営む少女で、デュランの良き友人。
デュランには「絵を描いている」というウソをついているが、その真意は不明。


●ミランダ
デュランのかつての妻であり、カオリスの母親。故人。
かつての姿はカオリスに非常によく似ている。
詳細な能力は不明だが、ミナーヴァを起動させられる強力なネオスだった。
屋敷を襲撃された際、身重の身でありながらミナーヴァで出撃し、敵機を次々に撃破したが、やがて限界を迎え、コックピット内で肉体を焼かれながらカオリスを出産した。
…が、高過ぎる能力のせいで焼かれた肉体も再生されており、死ぬことさえ許されずに20年間焼かれ続けるという生き地獄の中にいる。


●ギャスカ将軍
ガン・ドラド軍の将軍。髭がトレードマーク。
既に70過ぎの老人だが外見はそれ程高齢には見えず、愛人が5人もいるなど体力も旺盛な模様。


●ナオミ将軍
ガン・ドラド軍の女将軍。
ノースリーブの軍服とミニスカートを纏ったセクシーな装いで、会議中にも脚を組んでネイルを塗るなど不遜な性格。


●カイザス将軍
ガン・ドラド軍の(ry。
若々しいイケメン
トランプを好んでいるらしく、会話にも何かとトランプ用語を混ぜる癖がある模様。


氷都ダ・リーヤ

コキュートスの都市の一つで、寒冷な気候の模様。
ガン・ドラドとは長年の冷戦状態にある。


●ジューン
最近になってダ・リーヤで流行り始めた新興宗教「ディース教」の教祖にして、氷を自在に操る能力を持つネオス。
普段はいかにもな雰囲気の修道女だが、信者達の懺悔に応じて自身の能力を使った救済を与えており、もしそのために殺人が必要な場合はガンダムを模した仮面を被って対象者を氷で串刺しにし暗殺する。
一応本人もそうした自身の行為は罪だと認識しており、暗殺の後はナナにディース神の前で自身を鎖で拘束させ鞭打たせている*2
同時期放送のアニメガンダムシリーズでメスガキ懺悔室のシスターと呼ばれたキャラが出てきたがまず関係は無い


●ナナ
ジューンに心酔するディース教修道女。
教会での詳しい立ち位置は不明だが、ガン・ドラドでの布教活動の際に進行役を務めているのでそれなりの立場ではあると思われる。



砂楼都ム・ファサ

コキュートスの都市の一つで、その名の通り砂漠に覆われている。
「ム・ファサ王国」とも。
衣服や街並みもエジプト風で、他の2都市と比べると個性的。


●マリナン
ム・ファサ王女にして、対象の肉体の一部を消滅させる能力を持つネオス。
ごく普通の王女として何不自由ない暮らしを送ってきたが、7歳の誕生パーティーにおいて些細なきっかけで能力を暴発させた結果、列席者達が皆殺しにされてしまった。
以降は両親の手で王宮イサラ城の地下牢に幽閉されており、たまに会いにくるラトバ以外の人間とまともに接してこなかったため精神年齢も7歳のままで止まっている。
16歳の誕生日にガン・ドラドの襲撃に遭い、ラトバの手で牢獄から解放されたが、彼とはぐれた際にガンダム・アヌビスと出会う。


●ラトバ
ム・ファサ王家の老執事。
長年地下牢に閉じ込められてきたマリナンにとっては唯一心を許せる相手でもある。


●グルジェフ
ム・ファサ国王。
誕生パーティーの惨劇以来、マリナンを「呪われた娘」「封印すべき悪しきネオス」と忌避し、会うことすら拒否し続けてきた。
そしてアヌビスから降りてきたマリナンに対して今更父親面をしたことが彼女の怒りに触れ、後頭部を消されて死亡。


●ナーラー
ム・ファサ王妃。
マリナンの誕生日プレゼントをラトバに届けさせるなど、グルジェフよりは彼女を想っていたが、それでも彼女に会いにいくことはなかった模様。
最後はグルジェフと同じくマリナンに殺害された。



地球

文字通りの母なる青い星。
かつての大戦を乗り越えて平和を取り戻している様子。


●ガンダムを処分した男
物語冒頭でガンダムを鎖で縛り、溶鉱炉へと沈める指示を出した男性。
それから20年経過した現代でも、「コキュートス」の調査の指示を出しているが、20年経っても見た目の変化がない謎の人物。

●マサムネ・ユキトシ、アルフォート・アオバ、ナティ・クラマティ、ドミンゴ・リハシュ
コキュートスの調査に選ばれたメンバーたち。
それぞれ元生物学者、バーテンダー、ギタリスト、ジャーナリストの一般人であり、4人とも宇宙船の操縦経験すらない。
だが、終身刑の身*3である彼らは恩赦のため、その任務を受けてコキュートスに乗り込むこととなる。


登場兵器


◆最後のガンダム
物語冒頭で処分されたガンダムで、登場から5ページで溶鉱炉の中へと沈んだ。燃え上がれガンダム。
デザインは元祖ガンダムと似通っている。
量産されているらしく「この廃棄場で処理されるものとしては132体目」つまりかつては数百のガンダムが存在したことが示唆されている。
ここまで大量の「ガンダム」があったのは未来世紀西暦*4ぐらいだろう。

◆ガンダムミナーヴァ
コキュートスに眠るガンダムの1体であり、カオリスの産まれ故郷。
赤と白のツートンカラーで、不死鳥を思わせる造形。
武装として腕部に強力な火炎放射器を搭載しているが、生半可なMSならステゴロでも破壊出来る。
オプション装備としてフライトパックも存在し、これを背負い飛翔する姿はまさに不死鳥。
元はガン・ドラド王家が管理していた機体で、現在はコキュートス某所の森で封印されている。
ネオス*5でなければ起動出来ないものの、性能は非常に高く、かつて地球圏最後の戦争でも活躍していた。
…が、その強力なエネルギーがパイロットの肉体にも多大な負荷をかけ、乗り続けていればいずれ肉体が耐えられなくなり焼き殺されるというとんでもない欠陥がある。
他のガンダムに同様の欠陥があるかは不明。

◆ガンダムディース
ダ・リーヤに存在するガンダム。
今のところローブを着せられてディース教の御神体になっているのみで、ミナーヴァ以上に素性が知れない。

◆ガンダムアヌビス
ム・ファサに隠され、マリナンの手で長い封印から蘇ったガンダム。
武装は錫杖型のビームナギナタ、ビームサーベル、バインダーに内蔵したミサイルなどで、単独飛行能力も有する。
本作で最初に本格的な戦闘シーンが描かれたガンダムであり、ガン・ドラドのMSを圧倒的な戦闘能力で一蹴した。

◆プチモビ(仮)
マサムネ達が登場する小型MS。
丸っこいボディとT字型のカメラが特徴で、また人間とは腕と脚の配置が逆になっている。

◆ガン・ドラドのMS(仮)
ガン・ドラドの主力と思われる量産型MS。
見た目はそこはかとなくザクっぽい。
武装は腕部の火炎放射器とヒートナイフで、飛行用のジェットパックも装備する。
4機からなる部隊でム・ファサを襲撃するが、アヌビスに蹴散らされ全滅。



追記、修正はガンダムの中で生まれた人がお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ガンダム
  • 漫画
  • Web漫画
  • コミプレ
  • 小学館
  • ヒーローズコミックス
  • ガンダム漫画リンク
  • 機動絶記ガンダムSEQUEL
  • シークエル
  • ネオス
  • 千明太郎
  • 井上敏樹
  • 井上節全開
  • ガンダム内出産
  • 神(ガンダム)
  • 出番の少ないガンダム
  • 敏樹ガンダム
  • 深刻なガンダム不足
最終更新:2024年10月21日 09:01

*1 カオリスから「抱かせてやろうか」と誘われている辺り、恐らく男性と思われる。

*2 普通に苦悶の悲鳴を上げているため、マゾヒスト趣味ではなく本当にただの「罰」としてやらせている模様

*3 ただ、アルフォートやナティは冤罪や無実の罪であると主張しているが、マサムネは暗い表情をしており、真偽は不明。

*4 GNドライブ搭載機、という広い定義の場合

*5 かつての大戦で使われていたのを見るに、厳密には元々ニュータイプ用だったのがネオスの登場でそちらにスライドしたものと思われる