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井上敏樹

登録日:2009/06/10 Wed 21:18:23
更新日:2026/08/05 Wed 21:56:49
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最初から決めちゃうとつまんないんだ。恋愛と同じだな。

結末がどうなるか分からないから恋は楽しいんだろう?



井上(いのうえ)敏樹(としき)とは、日本の脚本家・小説家。


【概要】

埼玉県出身。成蹊大学中退。
特撮からアニメ、ゲーム原作のコミカライズ、漫画ライトノベルの原作、果ては純文学まで幅広く手掛けている。

強面で大柄な見た目から勘違いされやすいが、ヤクザではない。たとえ『ギャラクシーエンジェル』の時に新谷良子氏から本気で「その筋の人」と思われていたとしても。
なお、「井上敏樹」は旧名兼ペンネームであり、29歳の時にインドに渡って出家している為、本名は「スワミディアン・ムネシュ*1
自称「大先生」。敬称は主に「御大」そして熱心なファンほど何故か「敏樹」と呼び捨てにしがち

本Wiki的には主に平成ライダーシリーズ(特にメインライターの『仮面ライダーアギト』以降)での所業が良くも悪くも有名。
かなり筆が早い為、忙しい時期のピンチヒッターとしてもよく起用されるが、その良い意味でも悪い意味でも視聴者の度肝を抜く作風は好き嫌いが激しく分かれる。

第一期平成シリーズではメインライター・サブライター・劇場版の執筆など『仮面ライダー電王』を除く9作品全てに携わったが、その作風やプロデューサー陣の世代交代故か、第二期平成ライダーシリーズへの参加は『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』の『仮面ライダーオーズ ノブナガの欲望』と『仮面ライダー1号』、『仮面ライダージオウ』の「キバ編」と『RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』『RIDER TIME 仮面ライダーディケイドVSジオウ ディケイド館のデス・ゲーム』『RIDER TIME 仮面ライダージオウVSディケイド 7人のジオウ!』のみに留まっている*2
令和ライダーへの参加は現時点ではないが、平成1期シリーズの続編である『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』や『アギトー超能力戦争ー』、『パラダイス・リゲインド』のスピンオフ『仮面ライダー555殺人事件』で脚本を担当した。

スーパー戦隊シリーズには『超新星フラッシュマン』から参加。『鳥人戦隊ジェットマン』では初のメインライターを務めた他、80年代後半から90年代にかけて複数の作品にサブライターとして関わっている。
2000年代以降は上記のように仮面ライダーシリーズに携わる事が多くなり、2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』第28話でジェットマンのレジェンド回を担当したのみに留まっていたが、2022年の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にて31年ぶりにメインライターを担当。総集編を除く全話執筆を成し遂げただけでなく、ファイナルライブツアーの脚本も担当した。

最近では『月刊ヒーローズ』の『装刀凱 -ソードガイ-』、『仮面ライダークウガ』や、ハローキティ×ヒーローという異色の漫画『イチゴマン』(担当編集:村上幸平)の漫画原作を担当。
また初の純文学作品『海の底のピアノ』『月神』や、エッセイ集『男と遊び』を発表している。
2025年には原作を務める漫画『ジャドウ・シーズン』の宣伝を兼ねて公式Xを開設*3。ファンからは驚きの声が挙がったが、当の本人は「xぐらいで何故そんなに驚くのかしら」とある意味でいつも通りのマイペースさを見せている。


【人物】

豪快の一言に尽きるが、本人は「周りが勝手に話を大きくしているだけだ」と否定している。
関係者からは「態度がデカい」「生意気だ」と言われる一方で、「飲んで話せば悪い奴じゃない」「生意気さがなければつまらない男」と評されている。
また面倒見が良く、後輩の事もよく気にかけており、『ゴジュウジャー』第10話で昭和ネタを使う際にはネタ出しの手伝いをしたとのこと。

2024年には脚本家として恐らく初であろうアクリルスタンドが発売される。
本人が書いたエッセイによれば、特撮俳優のアクリルスタンドを手がける社長と酒席で意気投合した流れから半ば勢いで企画が決まりノリノリであったが、撮影時に化粧や衣装、ポーズの数々に強い羞恥心を覚え「一生の恥」と後悔したという。
しかし後日再び酒の席にて同様の流れとなり、第2弾の撮影まで行うことになった際には本人の頭には「切腹」の文字が浮かんだらしい。
案の定というか村上幸平は赤いリボンで井上のアクスタをグルグル巻きにした

出演者の人物像やアイデアに影響を受ける事もあり、『ジェットマン』ではキャストの意見を聞いてどのような展開にするかを決めた事が複数回あった模様。
仮面ライダー555』の草加雅人の最期について村上氏に「誰に殺されるのが一番嫌?」と聞いて「木場」と返答されたので「草加を殺すのは木場にしよう」と決めたという逸話は有名*4


敏樹
(草加雅人役の村上幸平に)
ファイズのキャラで誰に殺されたくない?

村上
木場。

敏樹
おk。分かった

村上
(渡された脚本を読んで)

いのうえぇぇぇぇ!!!!


同じく村上幸平関連では、『ギャラクシーエンジェル』にてカイザ・ムラカミ役で村上氏をゲスト出演させた事がある。
内容は普通に面白く、村上氏の演技も声優としてやって行けそうなレベルで自然。
草加の「なんじゃそりゃぁ~?!」が聴けるので草加、村上ファンは一度は見てみると良いかも。ただし、当該回の脚本は大和屋暁氏だが。
その村上氏とは非常に仲が良く、彼のブログにツーショットで写っている他、ブログのカテゴリーに「井上敏樹」があるほど。
『牙狼』でも村上氏を登場させた他、様々な珍味を食べさせている。
『ドンブラザーズ』放送時には村上氏が自分のXで「敏樹マウント」と称して井上氏とのツーショット写真をアップするという奇行に走っていた事も。
この他、若松俊秀氏(『ジェットマン』)、広瀬裕氏(『ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』)、萩野崇氏(『シャンゼリオン』『龍騎』)、小川敦史氏(『シャンゼリオン』『アギト』『555』)、山崎潤氏(『アギト』『555』)、山本匠馬氏(『キバ』『衝撃ゴウライガン!!』』)など、「井上組」と言える俳優がいる。
2020年には『アギト』絡みで要潤氏のYouTubeチャンネルにゲスト出演した事もある。

マッドハウスには「井上以外本社内全面禁煙(=彼だけは喫煙OK)」という伝説がある。
そういう伝説ができるほど関係が深い、という事なのは確かだが……

一晩に2シナリオを書き上げる程筆が早く、「『555』の最終回を1時間半で書いた」「『仮面ライダーファイズ正伝 異形の花々』は1日で書き上げた」「『RIDER TIME 龍騎』3話分の初稿を4日(本編の復習時間含む)で書いた」などの逸話がある。
同じく速筆の黒田洋介氏によると「半分の時間で2本の脚本」、つまり単純計算で4倍の量を書けるらしい。
脚本は上がりが早ければ早いほどその後の演出・作画などに余裕ができる為、制作側からするとありがたいタイプらしく、平成ライダーへの初参加も『仮面ライダークウガ』の制作進行が遅れていた為である*5
『アギト』に至っては桜が咲く頃に映画『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』の執筆を始め、TVSP『仮面ライダーアギト スペシャル 新たなる変身』を書き終えた頃に桜が散っていたらしい。
この間、ホテルのスイートルームで缶詰め生活を送り、白倉Pと同棲カップルじみたやり取りを繰り返していたという。当時年頃だった亜樹子嬢の心境や如何に。
これ程の速筆な為、ファンから「脚本に行き詰まった時の気分転換方法について教えてください」という質問に対して「行き詰まった事がないから特にない。強いて言うならタバコと食事」と答えた事も。

料理がプロ級に上手いらしく、脚本に料理ネタをよく仕込むのは本人の料理好きの影響だろうか。
これに関しては「弁当の仕込から監督、演出、アクションまで全てを一人でこなす超脚本家(笑)」と呼ばれたりも(元々はアンチが言い出した事実誤認を井上ファンが面白がったのが由来)。
食べた人たちからも好評なのだが、面と向かって褒められるのは嫌なようでたまに「お手伝いさんが作ってくれた」と嘘をつくこともあるそうな。
小林靖子氏の引っ越し祝いで手料理を振る舞ったが、その後突然小林氏の態度が冷たくなりしばらく連絡が取れなくなったというエピソードがある。
材料費に数十万近く使って氏に払わせた挙句に片付けすら一切しなかった…のは実は向こうも事前に了承済みだったそうだが、高級なアワビを「ちゃんと届かなかった時のために」と別の業者にも注文した=必要量の倍額を払わせたのがまずかったらしい*6
作るだけでなく大変な食道楽として有名であり、仕事と食なら食を優先すると公言している。
一度の食事会で数十万単位を平気で使い込む為、同伴者は常に支払いに戦々恐々としているらしい。
『シャンゼリオン』最終話の完成試写会の後、ふぐ料理屋に行きたがる井上氏をスタッフみんなで阻止したという逸話があるくらいには食が関わった時の金遣いが荒い。

曰く料理シーン・食事シーンが多いのは「ニチアサで人間関係を示すのに性交以外だったら料理しかない」とのこと。つまりちびっ子への配慮である。
ニチアサの制約を外れた『小説 仮面ライダー龍騎』や『異形の花々』、『RIDER TIME 龍騎』では容赦なく人間関係を表す為に性交シーンを見せてくれる*7
もちろん、全部の食事シーンが暗示や代替というわけではないので注意。
『PROJECT G4』での津上翔一の発言を鑑みるに、「食事も性交も生きるための営み、生きることであり、その生きることそのものを大切に考えている」というのが実際のところだろう。

基本的に対談やインタビューなどはタメ口で、良くも悪くも砕けた対応をしている。
『語ろう!クウガ アギト 龍騎』のインタビューではいきなりお茶を入れるところから始まった。

何故か重要な台詞や描写をカットされることが多い。
例を挙げると映画『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』のゾルダ脱落、映画『劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼』のカブキの最期、『キバ』の裏設定など。
映画『劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王』では「絶対にここはカットするなよ!」と言っていた所が全てカットされていた紅音也紅渡の浴槽でのシーン、麻生ゆりと麻生恵の絡みなど)。
一応ディレクターズカット版で拾われた部分もあるにせよ、「当人にとっては重要でも客観的にはそう思えないから」という可能性もあるが、真相は不明。

実はあの熱血スポ根ロボットアニメ『疾風!アイアンリーガー』にも参加するはずだったが、飲み会の席で誤って腕を折られてしまい(酔った勢いでの腕相撲が原因*8
スケジュールの問題からその場に同席していた會川昇氏が代理で参加することとなった。酒の席のトラブルには気を付けましょう。

アニメでは『DEATH NOTE』のシリーズ構成や東映版『遊戯王』にも関わっている他、同じく東映の『北斗の拳』や『仮面の忍者赤影』、さらには『ドラゴンボール』の最初の映画も手掛けている。
また、『ドラゴンボールZ』ではベジータナッパが地球を訪れる前のエピソードを執筆しており、これも賛否が分かれる内容となっている。

さらにアニメ版『名探偵コナン』初のオリジナルエピソードの脚本を担当したのは彼なのだが、「色々とツッコミどころの多いシナリオだった為、ストーリーやトリックの整合性を重視するお偉いさんを怒らせてしまい、以後呼ばれなくなってしまった」という噂が出た*9
もっとも、アニメコナンの制作体制的に責任を脚本家一人に押し付けられるものとは考えづらく、井上氏以外にも数回程度しか参加していない脚本家も存在しており、眉唾な話であるが。
なお、井上氏はアニメ版『金田一少年の事件簿』の脚本も担当した経験がある為、2大推理漫画のアニメ版の脚本経験のある珍しい人物でもある。

勇者特急マイトガイン』で井上氏が執筆した2本は、片方は納豆嫌いの敵が世界中の納豆を買い占めたことで始まる完全なギャグ回
もう1本は正義の心に目覚めてしまった主役ロボの偽物の感動回と非常に両極端である。
どちらも強烈なインパクトを持っており、未だに語り草である。
その影響からか『スパロボV』では上記2本ともシナリオ再現が行われた。
また、この回に登場したブラックマイトガインは人気が高くスパロボ、ブレイブサーガに参戦したばかりかスーパーロボット超合金で立体化も果たした。

機動戦士Ζガンダム』の脚本のオファーも受けた事があるそうだが、サンライズに向かったところ、内田健二プロデューサーから「君と富野は合いません!」と言われて結局参加しなかったという逸話がある*10
とはいえ井上氏自身は作品に何かしら感じ入るものがあったようで、後年に初代の劇場版三部作を観た際には「ガンダム面白いな。としきも書きたい*11」と考えるようになり、『機動絶記ガンダムSEQUEL』の脚本(原作)執筆にまで至っている。
『SEQUEL』執筆に際しては『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』や『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』などの他作品も観たという。なお、ハモンさんがお気に入りの模様。
ちなみにその富野監督とは知人の結婚式で会ったことがあるらしい。


【家族】

父親は日本特撮の黎明期から『遊星王子』や『快傑ハリマオ』などに携わり、東映特撮でも『ジャイアントロボ』や昭和ライダーシリーズなど数多くの名作を手がけた超大御所脚本家の伊上勝氏(1931~1991)。

ただし、彼に師事したわけでもなく、父の脚本はロクに読まなかったらしい。親子両名と一緒に仕事をした事があるという関係者によると、「字がお父さんそっくりで、癖の強い字だった」らしい。
「著名な脚本家の息子」という認識はなかったと語っており、仮面ライダー関連の商品を東映スタッフからの土産物として貰ってきてくれた時に『仮面ライダー』の関係者が父親だという事を実感したらしく、子供時代には伊上への脚本の催促に対して居留守を頼まれる事が度々あったようだ。
父を「実は人づきあいが苦手だと思う。子煩悩と無関心の中間ぐらいで、子供に嫌われるのが嫌いだった」「よく遊んでくれることはあったが、勉強しろなどと説教をすることはほとんどなかった」「仕事の関連でライダーグッズをお土産に持って帰ることはあったが、それ以外はろくなもんくれなかった」などと評している。
これらの言葉から、親子仲はそれなりに良好だった事がうかがえる。

脚本のノウハウは自身を見出した東映の七條敬三プロデューサーや『Dr.スランプ アラレちゃん』で大先輩だった雪室俊一氏、脚本を手掛ける事もあった長石多可男監督から教わったと語っており、特に長石監督に『超新星フラッシュマン』の第一稿を容赦なくボツにされた際には恐怖したとか。
父に初めて読んでもらった脚本は『超時空要塞マクロス』の小説版で、「だんだん上手くなったな」と褒められたとのこと。

娘の井上亜樹子氏(別名義:鐘弘亜樹)も同業で、三代に渡る脚本家一家*12
ただ、亜樹子氏は父ではなく加藤陽一氏に師事したようであり、そういうところも含めて親子らしいといえる。
娘本人の意向により彼女のペンネームは伏せられていたが、関係者のTwitter(現・X)での仄めかしもあり、井上敏樹氏が担当した特撮作品のノベライズなどを担当した作家*13ではないかと推察されていた。
2人の関係は長らく公然の秘密とされていたが、『ゲゲゲの鬼太郎(第6シリーズ)』で脚光を浴びた亜樹子氏自ら誌上インタビューで親子関係を明かす。『プリキュア』シリーズのTV版脚本も担当しているライターなので、親子二代のニチアサ脚本家となった。
本人のアカウントを作るまでは、娘のXを利用して自書の宣伝をする事があった。
ちなみに『鬼太郎』の裏番組は『ジオウ』だったが、丁度「キバ編」は敏樹氏が担当しており、Xでもその事について言及している。
2024年には令和ライダーシリーズの『仮面ライダーガッチャード』にサブライターとして参加した事で、昭和・平成・令和と親子三代で仮面ライダーシリーズの脚本を手掛けるという偉業を達成。
そして2025年にはスーパー戦隊シリーズ50周年記念作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』のメインライターを務め、親子揃ってスーパー戦隊シリーズのメイン脚本、及び親子三代で東映特撮のメイン脚本を手掛けるという偉業を成し遂げた。
なお、2025年にはXのスペース企画にて『シャンゼリオン』の頃は敏樹氏と白倉Pが打ち合わせをしている横で、武部直美Pに当時小学生だった亜樹子氏と遊んでもらっていたという逸話が明かされている。


【作風】

父が勧善懲悪のストーリーや完全無欠のヒーロー像を描いてきたのに対し、一応シナリオの骨子自体は王道ではあるのだが、それを彩る枝葉末節が非常に濃く、王道に疑問を投げ続けるのが特徴。
ヒーローものとしては異色のシナリオを書く事が多く、人格に問題を抱えたキャラを生み出す事もある。

友情や信頼について冷笑的、あるいは懐疑的な話を作る事が多いが、「声高に《友情》《友達》などといった単語を使う事に疑問を投げかけている」という事であり、『ジェットマン』の天堂竜結城凱を筆頭に、男同士の友情やといったものを色濃く描く傾向が強い。
ヒーロー作品としての「見せ場」も案外重視しており、「細かい整合性より勢い重視」という部分はなんだかんだで父親に通じる部分がある。
また、劇中では馬鹿にされがちな『アギト』の氷川誠や『555』の菊池啓太郎といった生真面目なキャラクターが最後には報われる事も多く、本人の言動も相俟って偽悪的な印象も強く与えるが、やはり着地は王道というよりオーソドックスな結論になる場合が多い。

一方で、キャリア初期からコメディ作品に多く携わってきただけあってかスラップスティックコメディも好み、アニメでは『ギャラクシーエンジェル』、特撮では先述の『ドンブラザーズ』や『シャンゼリオン』『ゴウライガン!!』といったハチャメチャな作品も書いている。
全体的にはシリアス寄りな作品でも、時折強烈なギャグシーンが投入されることもしばしば。
ギャグシーンでは「何故それを小道具にしようと思った!?」と言いたくなる物(箸袋、鯖、豆腐、ボタンなど)を使って描くシュールさも特徴。
前述したように料理好きな為か、ほぼ毎回何かしらの形で料理・食事シーンを挿入し、ギャグ回では丸々2話分料理番組にしたことも。

また、視聴者からすれば非常にもどかしく感じるほど登場人物がすれ違い・入れ違いを行う描写も印象的。
特にメインライターを務めた『555』『キバ』『ドンブラザーズ』では、惜しいところまで行って言及しないという展開が目立つ。

一度観たら忘れられない強烈な言動や印象的な台詞回しに定評があり、その台詞力については長年特撮で組んでいた田﨑竜太監督や長石監督から高く評価されている。
長石監督は『クウガ』における椿医師の「君はいい鎖骨をしてる。鎖骨だけじゃない、脛骨のカーブも素晴らしい」という台詞を大層気に入っていたらしい。
村上氏が『イチゴマン』でアオリに使えるようなインパクトのある台詞が欲しいとメールをするとわずか数分で返事が返ってきたという。

それ以外ではギリシャ神話のイーカロスといった「『滅びの美学』が英雄(ヒーロー)には必要*14」という考えの下、『ジェットマン』のトランザや『シャンゼリオン』の黒岩省吾、『アギト』の榊亜紀、『仮面ライダー龍騎スペシャル 13 RIDERS』の芝浦淳、『555』の草加及び北崎などのように生死問わず因果応報の末路を迎えるキャラクターも多く描いており、特に悪役のトランザ、黒岩、北崎は「ヒーローに倒される」という一般的な図式から外れている。

劇中において何らかの悪事、特に「殺人*15」を行ったキャラはかなりの高確率で報いを受けて死ぬ。
これはたとえ味方側のキャラであろうとも例外はなく、『555』の木場勇治や長田結花が代表的。『キバ』の名護啓介登太牙も当初は最後に死亡する予定だったという。
一方で逆に悪事を働かなかったキャラは敵方であっても生き残ることがあり、『555』の青木茂久(ドルフィンオルフェノク)琢磨逸郎*16辺りが有名か。
この辺りの「信賞必罰」的姿勢も、勧善懲悪には懐疑的でありながら王道な作風も併せ持つ氏の特徴と言える。

ハードなシナリオやアンチ王道を好む視聴者の支持を集める一方、彼を毛嫌いする人もおり、特に一部には親の仇のように彼を憎んでいる人間もいる。
ただ、平成ライダーや『ドンブラザーズ』に関しての伏線及びそれと思しき要素の放置は担当Pだった白倉伸一郎P武部直美Pらの意向が強いと言った方が正しく、平成ライダー以外の『ジェットマン』や『牙-KIBA-』、アニメ版『DEATH NOTE』などは非常に綺麗にまとめている。
たまにまともなキャラを作るとその常識的な面が逆に強烈な存在感を放ったりする。

父譲りの「シナリオは映像の設計図である」という持論から、あくまで脚本家は脚本が領分であり、そこから先は専門家に委ねるという姿勢を貫いている。
戦闘シーンの描写に関しても大ざっぱにしか書かず、現場に任せて自身は口を出さない主義らしい。
そのため、彼の担当回の戦闘シーンは監督やアクション監督など演出スタッフの力量に大きく左右される。
それと合わせて、理屈や前振りのない唐突な追加アイテムの登場、過程を描いたとしてもそこまで深く描かないヒーローの強化イベントも視聴者の間で半ばネタ的に語られる事もある。
例:『555』でカイザ(草加)から投げ渡されるファイズアクセルや、天井を破って落ちてくるカイザポインター、チベットから宅配便で届く『仮面ライダー剣』のラウズアブゾーバー(ギャレン用)etc.…
とはいえ、年始が締め切りの脚本を忘年会で打診された際には、さすがに腹に据えかねたのか滅茶苦茶現場に注文を出しまくったそうだが。
打診する方も打診する方だが間に合わせる方も間に合わせる方である。

総じて、特撮においては子供番組だからと軽んじたりは決してせず、大人が見れば一本のドラマとして、子供が見れば怪人の暴れぶりやヒーローの強さが深く印象に残る作品を描く、ある意味では特撮ドラマの申し子といえる。
……ただ、子供には少々難解な作風を描く事にもまた定評があり、「大人になってから見たら面白かった」という意見もいくらか見受けられる。


【脚本】

太字はメインライター・シリーズ構成。

アニメ


特撮・実写及び関連作



【その他】

小説・漫画


ゲーム


作詞

  • ウルフハリケーン(『ドラゴンボール』のヤムチャのテーマソング)
  • 炎のコンドル(そのべかずのりとの共作詞。『ジェットマン』の凱のテーマソング)
  • 歌う女相撲取り(『シャンゼリオン』の劇中歌)

実写出演

  • 現場監督(仮面ライダー555)※最終回で琢磨君をコキ使っていたあの人
  • 冗談社社長(暴太郎戦隊ドンブラザーズ)※ドン最終話で鬼頭はるかの漫画賞授賞式に出席していたあの人

アニメ出演



【余談】

『カブト』『電王』『ディケイド』と『W』以降を除く大体の平成ライダー劇場版(『THE FIRST』『THE NEXT』含む)の脚本は全て彼である。
それらの評価は総じて高く、本放送時はあまり好評ではなかった『キバ』ですら*17劇場版では多くの観客を魅了した。
特に『555』の劇場版『パラダイス・ロスト』 はアクションの素晴らしさなども相まって、『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』と共に「劇場版仮面ライダー最高傑作」との呼び声も高い。

彼が担当した中でも有名な『ジェットマン』は戦隊シリーズ前作『地球戦隊ファイブマン』の著しい視聴率不振により、当初はスーパー戦隊シリーズの最終作として準備されていたが、この作品と後番組の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が大きな反響を呼び、シリーズが持ち直したと言われている*18
雨宮慶太監督、白倉P(当時はプロデューサー補)とそれぞれ組んだ初の作品でもある『ジェットマン』は「戦うトレンディドラマ」とも呼ばれ、平成以降の仮面ライダーシリーズのような主婦や大人の高年齢の客層を得る事にも成功した。
そして同作の最終回は戦隊シリーズでも逸話として残るほど有名なエピソードとなり、子供ながらにあの最終回に衝撃を受けた者は多い。

親交が広く色んなジャンルの人間と交流を持っているらしく、『メビウスギア』(井上氏の原作作品)の作画を担当した六道神士氏によると、仕事場へ行くと飲み屋のお姉さんからAV監督、真性レベルの変態まで様々な人達がいたらしい。

『ジェットマン』の鈴木武幸Pからも面倒見のいい性格と評され、他人の作品作りにおける熱意への理解がある事から、業界関係者には彼を慕っていたり尊敬していたりする人物が結構な数存在する。主にこの人とかこの人とか。
特に高寺Pは『語ろう!』シリーズのインタビュー中、井上氏について語っている際に感極まって泣き崩れてしまい、それを聞かされた当の井上氏は「どうしたんだろうね、あいつ……」と零していた。
近年確認されている主な舎弟に評論家の宇野常寛氏、ライター仲間の森橋ビンゴ氏、岸本みゆき氏らがおり、上記の井上組俳優と共にニコ生に出演することもあった。
また、宇野氏との交流が切っ掛けで知り合った小説家・川上弘美氏の勧めで『海の底のピアノ』の出版に至ったという。

2024年には村上氏主催のトークショーに登壇したが、その際の物販に村上と井上のアクリルスタンドという商品が2種類(洋服姿と和服姿の2種類。どちらにせよ893にしか見えないと評判)もあり、話題となった。……どこに向かおうとしているのだろうか。


【井上語録】

  • だいたいわかった*19
  • 皆まで言うな
  • 「(乾杯時)世界平和に」
  • 「……クソが」
  • 「(○○の悪口は)止めろよ、お前ら!! ○○は良い奴だぞ! or 俺は○○大好きだ!」(※悪口の言い出しっぺは主に自分)
  • 「(真魚の科白は生き生きしてますよねと言われ)だろ。金がかかってるんだよ(笑)。いろんな意味で」
  • 「俺さぁ、神様になりたいんだよ」
  • 「一億使うのは簡単だよ?」
  • 「(プリキュアの脚本を書いてと言われ)何、プリキュアって?」
  • 「(草加の台詞はシャアを意識したんですか?と聞かれ)……シャアって誰だ?」
  • 「(草加とシャアの台詞は似てますよねという話題で)ちょっと俺の方が良いな!」
  • 「俺がお前だったら自殺してる」
  • 「恋愛とは死に近づくこと」
  • 「マツタケと女は自分で見つけるもの」
  • 「ワインセラーの中が貧しくなると、心が貧しくなる」
  • 「酒は無理して飲まなければ意味がない」
  • 「530円(の漫画)か、ゴミ(53)みたいな内容じゃないだろうな?」
  • 「あの実相寺昭雄ってのはなかなか上手いな」
  • 「『海の底のピアノ』は傑作でね、読むと心が綺麗になるね。あれ読むと神に近付くね!」
  • 「(自著「月神」について)読めば必ず元気になる。神の力が宿るだろう。君のそばには俺がいる。一冊買えば救われる。二冊買えば、君が人を救えるだろう」
  • 「(岸本みゆきについて)半分くらい出会わなければ良かった系」
  • 「なぜヒーローものは進歩しないのか……なぜヒーローは平気で臭い芝居をして、平気で正義を謳わなきゃいけないのだろうかと。これは子供に対して悪影響を与えるんじゃないかとひそかに思ってるんだよね」
  • 「力に対して力でぶっつぶすという図式は、やってることは悪もヒーローも同じなわけ。それで表面的な正義を謳うのは、そんなこと信じてる大人は誰もいないんだけど、子供は喜ぶだろうという、どこか小馬鹿にしたようなところがある。みんな正義とは何なのかということを考えずに作ってるんじゃないか」
  • 「テーマは愛だよ、愛」
  • 「(アンチがいても)いいんだよ、そういうのが面白いんだから」
  • 「お前の頼みは聞く。そういうものだろ」
  • 「美味い物のわからない奴は、だいたい才能も無いね!!」
  • 「『響鬼』は良い作品だと思うよ。俺は嫌いだけど、作品としての「志」があった。要はね、その「志」があるかないかなんだよ」
  • 「その志を感じられればさ、俺が好きか嫌いかなんてどうだっていいんだよ。俺が嫌いであっても認めることは出来る。ただ世の中、志が無いのが多いよね。そうなると、もうダメだね、いろんな意味で」
  • 「きゅうりはデザート」
  • 「殺そうと思う相手の名前は知らない方がいい」
  • 「(ホン読みについて)せっかく刷り上がった脚本を愚かなプロデューサーがダメにする会」
  • 「誰もかれもがレモン好きだと思うんじゃねーよ!」
  • 「巻き巻きしてー」
  • 「(撮影現場での視聴率アップ祝勝会に)え? オレいた? そんな下々の者どもがいるような所に?」
  • 「(小沢澄子から『そういえば尾室君は?』のセリフ一行でいいのにと文句を言われて)生意気にも。オレ様に対して。あれは反論があったけど場の空気考えて黙ってたんだ。あれは2人の会話が長かったらそれでいいんだよ。でも短かったでしょ? その時はいるんだよ。わかんないから。ちょっとしつこい?」
  • 「長石(多可男監督)さんは、オレに一から教えてくれた人だよ」
  • 「(ポパイの命のおにぎりを手に)お前らこんなもん食ってんのか。下々の者どもは」





追記、修正は任せた。

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最終更新:2026年08月05日 21:56

*1 意味はヒンディー語で「瞑想する賢者」とのこと。

*2 なお、井上氏がシリーズ構成を担当したアニメの脚本をよく担当していた石橋大助氏が『仮面ライダーウィザード』にサブライターとして関わっている。

*3 アカウントはスタッフと共同で管理しており、井上本人がポストする際は忘れない限りは「(本人)」と付く。

*4 元々、「草加が何者かが変身したカイザによって殺害される」という展開は決まっていたらしい。

*5 この頃の『クウガ』は路線変更の話も上がっており、路線変更後は井上氏に任せようという案もあったが、ストーリーに感銘を受けた井上氏が「『クウガ』は今のままの方向性でいかなきゃダメだよな」と現在の路線を尊重して脚本を執筆したという逸話がある。

*6 本人も自著で「まったく酷いものである。いや、酷いのは私の方か」と遠回しな反省を述べている。

*7 さすがに『RIDER TIME 龍騎』については直接的なシーンはカットされたが。

*8 ちなみに犯人はブラックコンドル/結城凱役の若松俊秀氏。お互い体を鍛えるのが趣味なのでよく腕相撲で力比べをしていた。

*9 実際、その話を担当した年以降は『コナン』には参加しておらず、オリジナルエピソード以外に脚本を担当した3話「プロサッカー選手脅迫事件」「消えた死体殺人事件」「カラオケボックス殺人事件」はいずれも原作のアニメ化。ちなみに「消えた死体殺人事件」では犯人の動機の改変があったり……

*10 作風自体は割と似ているが、井上氏は「ハードではあるが根本は勧善懲悪もので罪を犯した者は報いを受ける」内容だが、富野氏は「内容がハードな上に必ずしも正義が勝つとは限らず、頑張っても報われない」内容の為、合わないと思われるのは無理もなさそうだが……

*11 ※岸本みゆき氏のXより原文ママ。ちなみに三部作を見せたのも岸本氏との事。

*12 三代続けて脚本家というのは珍しいが、親子で同じシリーズを担当したことのある脚本家は『聖闘士星矢』・『ドラゴンボール』シリーズを担当した小山高生・小山真氏の例がある。ジャンルは異なるが、虚淵玄氏も祖父の大坪砂男氏と同じく作家の家系である。

*13 亜樹子氏のデビュー作でもある『小説 仮面ライダーディケイド 門矢士の世界~レンズの中の箱庭~』の事と思われる。監修が敏樹氏、執筆が亜樹子氏となっている。

*14 蝋で作った翼を授かったが、忠告を無視して太陽まで飛ぼうとした結果、翼が溶けて死んだ。要はヒーローだろうと悪役だろうと、誰でも調子に乗ればそれ相応の末路を辿るという事。

*15 この場合の『人』というのは人の心を持った怪人……即ち完全に悪と言い切れない者達も含む。

*16 実は少なくとも画面内では1人も殺していない。

*17 ただし、現在ではネット配信サービスの発達や、当時ちびっ子だった世代が成長した事などから「一気見した方が面白い」などと再評価されつつある。

*18 ただし、『ファイブマン』も玩具売上こそ壊滅的だったが視聴率は後半で持ち直し、最高視聴率では『ジェットマン』と『ジュウレンジャー』を上回っている。また、パワーレンジャーシリーズの開始による海外市場開拓もシリーズ立て直しの大きな一因だったことも補足しておく

*19 のら犬兄弟のギョーカイ時事放談!や『仮面ラジレンジャー』でゲスト出演した際に語られているが、門矢士の口癖の元ネタである。