機動戦士クロスボーン・ガンダム 猿の衛星

登録日:2012/09/28(金) 00:22:22
更新日:2025/02/01 Sat 21:09:35
所要時間:約 5 分で読めます





私の名はハリソン・マディン大尉

青きF91を駆る連邦のエース・パイロット


今 私はかつてない窮地に立たされていた

だが 信じられない! こんなことがあるのだろうか?


なにしろ目前のMSを操縦しているのは……


サル


なのだから!

「なんで なんでこんなことになってしまったんだああっ!」




機動戦士クロスボーン・ガンダム』の番外編。
短編集『スカルハート』に収録された。
木星戦役を終えた後の地球連邦軍大尉ハリソン・マディンの活躍、そして恐るべきMSを操縦する猿との死闘を軽妙なタッチで描いている。


▽目次

[あらすじ]

サイド2近辺の暗礁宙域では事故が多発していた。
すわ海賊かと怪しいMSを捕らえてみれば、そこに乗っていたのはジオンのノーマルスーツを身につけた猿。
おまけに気性が荒く、捕獲時にMSを5機も大破させていた
もちろん放っておくわけにはいかないが、何しろ「トニーの漫画かよっ!」と愚痴りたくなるほど意味不明な事態なので軍も動かせない。
そこでハリソンに調査が命じられた、という訳だ。
民間企業のブラックロー運送の協力を得て、猿のねぐらと思われる謎の衛星に向かうのだが……。



[登場人物]

苦労の絶えないエース。
クロスボーンX1との戦いで「月刊MS」の名勝負10選にランク入りした実力を持つが、真面目すぎる性格と女の子の趣味が原因で出世には遠い。

ブラックロー運送のスタッフ。
衛星に向かうハリソンのF91に同乗してサポートを行う。

  • ブラックロー運送の皆様
トビア、ベルナデット、ウモン、ヨナの四人。
表の顔は運送業者、しかしてその実態は宇宙海賊クロスボーン・バンガードである。
ウモンは「終戦を知らぬまま30年間ジャングルに隠れていた男」の逸話*1を披露した。

  • シーナ・カッツィユッキー
一年戦争時代の事象を知るサイド3の老人。
かつてジオンが行っていた「とある計画」についての事柄を噂で聞いていた。
ジオン式敬礼が抜けないが特に連邦に敵意があるわけではなく、すぐに謝る。
「ジークジ……」
「おおお、オフィシャルではございませぬぞ!」
「っていうか全否定!」
機動戦士ガンダム MSV戦記 ジョニー・ライデン』新装版のあとがきによれば、同作でジョニーの側にいる坊主頭の青年が若いころのシーナであるとのこと。



[E計画]

一年戦争当時、戦争で貴重な国民の命が失われていく事を憂いていた「さるジオンのやんごとなき高官」が偶然立ち寄った地球の施設でTVゲームに興じる猿を見た事から思い付いた計画。
その計画とは何と猿にMSの操縦技術を叩き込み、ジオンのパイロット不足を補うというトンデモナイもの*2
その高官の独断により、ジオン軍総帥ギレンすらも知らぬまま極秘裏に進められていたが、計画が完遂される前に一年戦争が終戦を迎えた事で実験用プラントを乗せた衛星は放置された。
そして衛星は、研究員と猿を乗せたまま小惑星帯を今もさまよっているという……。

なお、トビア達はこの正体不明の「さるジオンのやんごとなき高官」にガルマを連想していた*3
大切な事なので言っておくがオフィシャルではございませぬぞ!
とは言え『鋼鉄の7人』でこの事件が語られている以上、現状では公式設定となりつつあると思われるが…




[事件の顛末]

サイド2で暴れ回ったのは、やはりE衛星でクローン培養された強化猿であった。
改造MS・バルブスに乗って二丁拳銃ならぬ四丁銃を使いこなし、とても猿が乗っているとは思えない操縦技術でハリソン隊を追いつめていく猿。
そしてその中で、ハリソンはある仮説を立てた。
バルブスを操るのは

ニュータイプ猿

なのではないか? と。

一説には、猿の遺伝子は95%まで人間と同じだと言われている。
ニュータイプが人の革新であるなら、ニュータイプに進化した猿が現れても不思議ではない…*4と。

しかしそんな仮説を立てたところで劣勢に変わりはない。やむを得ずトビアは、“スカルハート”で出撃する。

トビアは予備のABCマントをMS用の塗料で黄色く塗り、それをガスで膨らませる事でバナナに見せかけた。
猿達がそれに気を取られた隙を突き、反撃に出るハリソン。
“スカルハート”とハリソンは一気にバルブスの手足を切断し、無力化させた。

かくして事件は終わった。
調査の結果、食料プラントはまだ稼働しており、猿達はすでに人間のコントロールを離れていた。
猿達が暴れた理由は謎のままだ。
猿という種、ひいてはヒトも含めた霊長類すべてが潜在的に持ち合わせる残虐性が、今回の事を引き起こしたのか?

トビアは思う。
果たして人間は、何十万年もの時を経て、猿とどれほど違う生き物になれたのか―――を。

彼は、ヒトに進化する前の猿たちが尖った骨で同族を殺し、縄張り争いを繰り広げる様子を思い描く。
やがてその姿はヒートホークを掲げたザクの姿に重なっていくのであった…。


一方ハリソンは、トビアがスカルハートのパイロットだとは全く気付いていなかった。



[登場MS]

「青い閃光」の愛機。詳しくは項目に譲る。

ハリソンの部下2名が随伴機として搭乗。
U.C.130年代当時としては高性能のはずだがバルブスの前では無力で一瞬で撃墜された。

  • MS-06MS(モンキースペシャル) バルブス
今回の影の主役。
機体番号からわかる様に単なるザク改造機であるが、ゲルググの流用らしきビームライフルの最大4丁同時ドライブなど中身は時代から考えるとかなり高性能(あくまで0079~0080年当時の基準で考えて、だが)。
脚部もザクの腕に換装し、マグネットコーティングに加え背部には複数の姿勢制御バーニアを備えたバックパックを装備する事で高い機動力を持つ宇宙専用機
パイロットの技量で最新MSにも匹敵する能力を見せる。

  • “スカルハート”
正式名はクロスボーン・ガンダムX1改・改
バナナ作戦で猿の注意をそらし、反撃の糸口を作った。




追記・修正は「ニュータイプ猿? そんなバナナ」と思った人にお願いします。

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最終更新:2025年02月01日 21:09

*1 おそらく西暦1972年の横井庄一さん発見・帰国が元ネタ。こちらは知らなかったというか「信じなかった」のほうが正確とはされる

*2 とは言え公式で他にもトンデモ計画が次々出てきている以上、実際にやっててもおかしくない状況になりつつあるが…

*3 ただし、ガルマはカリスマこそあったものの独自の軍や組織を所持できる権限は無かった(地球方面軍もあくまで委任扱い)事と、猿のモビルスーツの武器がビームライフルだった(ガルマ生存時にMS用のビームライフルを作成する技術はジオンには無かった)事から彼ではなく、キシリアに内諾と協力を取り付けたマ・クベが発案である可能性もある。

*4 実は既にNT能力を持つイルカが『機動新世紀ガンダムX』で登場していた(宇宙世紀ではないが能力的には宇宙世紀のNTと同等)。これが元ネタなのかは不明