デッカー・アスミ

登録日:2023/07/14 Fri 13:27:38
更新日:2025/01/07 Tue 21:31:54
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WARNING!

この項目は『ウルトラマンデッカー』のネタバレを含みます!













悪ぃ。待たせちまったかな?


デッカー・アスミとは、特撮テレビドラマ『ウルトラマンデッカー』の第14話、第15話に登場する人物。

演:谷口賢志

【概要】

本性を表したアサカゲ ユウイチロウ博士……否、バズド星人アガムスと、彼に追い詰められる主人公アスミ カナタの前に突如現れた謎の人物。

その正体は未来から来た人間であり、かつてスフィアと戦っていた頃のアガムスの戦友。
そしてウルトラマンデッカーの本来の変身者である。

アガムスは自ら開発した時空移動システムで過去の地球に飛び、後を追ってこられないようにシステムを破壊した。
システムの修復が完了するまでの間過去の地球をスフィアの脅威から守るための策として、
未来の戦士たちはウルトラディーフラッシャーのみを送り込み、勇気ある人間に一時的にウルトラマンの力を与えることを考えた。
そして選ばれたのがカナタであり、カナタがスフィアに取り込まれた時に彼に接触してウルトラディーフラッシャーを送ったのも、
以降彼が力を必要とする度にディーフラッシャーを転送し、必要に応じてデッカーの各タイプや怪獣のカードを送っていたのも、全て未来のデッカーである彼であった。
戦闘シミュレーションでビビったカナタにうっかり転送して序盤にして正体バレの危機を作ったりもしたけど。
第1話でスフィアに取り込まれたカナタに語りかけ、デッカーと名乗った声の正体も彼で、そのためカナタは彼の声に聞き覚えがあった。

主人公がヒーローの代理であり、現れた本来の変身者に力を回収されて目前で自分が変身していたヒーローに変身されるという衝撃の展開は、
雑誌や次回予告ではデッカー・アスミの存在とともに完全に秘匿されており、
彼を演じるのが過去複数の特撮作品でヒーローに変身し、特撮ファンの間で知名度の高い谷口氏ということも相まって放送時は大きな反響を呼んだ。

そして「未来人」「苗字が『アスミ』」という点から察しがつくように、カナタの子孫でもある。
カナタがさらなる力を望んだタイミングで都合よく新しいカードが送られてきたのも、デッカー・アスミがそれを察知することができたため。
本人もなぜそんなことがわかるのか不思議に思っていたが、血筋のなせる技だったようだ。


【人物像】

ブラウンのジャケットに身を包み、体にはプロテクター、指にはオープンフィンガーグローブを着用しているなど、
常に戦いの場に身を置いていることを思わせる、ワイルドな服装をした男性。
外見は「おじさん」と言われても仕方がないくらいにはくたびれており、カナタにも「おっさん」と言われているが、
本人曰く「おっさんじゃねえ」とのことで、見た目より実年齢は若いのかもしれない。

金髪に無精髭が目立ち、不敵な笑みを浮かべることが多いため、一見軽薄そうにも見えるが、強い正義感と責任感の持ち主。そして本人曰く「しつこい質」。
そのためか頑なな態度を取ることもあるものの、本質的には気のいい性格であり、
カナタにも巻き込んでしまった負い目からか戦いから遠ざけようとした優しさも持ち併せる。
アスミ家の血筋ゆえか煎餅も好物のようだ。彼の言によると「明日見屋」の煎餅は未来には火星に進出しているらしい。

アガムスとは彼の妻レリアも含めて親交があり、彼が狂気に飲まれた理由を理解し、
既に亡きレリアのため、そしてアガムス自身のためにも命を懸けて止める決意を固めていた。

ちなみに好物は『明日見屋』銘菓・宇宙せんべい
明日見屋は未来世界でも健在で、デッカー自身も子どもの頃に火星でよく食べたとのこと。
血は争えないと言う事であろう。


【戦闘スタイル】

先述の通り、劇中におけるウルトラマンデッカーの本来の変身者は彼であり、
変身後の姿や基本的なスペックはカナタが変身したデッカーと同一だが、戦い方は明らかに異なる。

容姿も含め、かつてのダイナを思わせる熱く我武者羅なスタイルのカナタ版デッカーと異なり、
その戦い方はむしろ『ダイナ』に登場したニセダイナを彷彿とさせる、冷静沈着なファイトスタイル。
挑発も交えながら最小限の動きで相手の攻撃を捌き、痛烈なカウンターを叩き込むその戦いぶりは、カナタを「すげえ……」と感嘆させ、
リュウモンも『見つめる天才』としての観察力から、当初はカナタが変身したデッカーと勘違いしていたイチカと異なり、
事情は知らないながらも「俺たちの知ってるデッカーじゃない」「今までのデッカーより数段戦いに慣れている」とすぐに違和感を持ち、困惑していた。
一方で中の人ネタかスフィアザウルスの角を掴み上げて土手っ腹に蹴りを入れるというワルっぽいムーブもかましたりする。

またタイプチェンジの使い方も特徴的。
ウルトラシリーズにおいてタイプチェンジはまず基本フォームで劣勢になってから相手の能力に対応する形で使うものというのがお約束になっていたが、
彼は戦況に応じて能動的にタイプチェンジを繰り返し、相手を翻弄するという、言ってみればより攻撃的にタイプチェンジを用いるものとなっている。
敵の背後に回るためだけにミラクルタイプにチェンジし、そこからストロングタイプになって攻撃、
再びミラクルで分身攻撃を繰り出し、反撃を防ぐためにストロングに……と、目まぐるしくタイプを切り替える戦い方は圧巻の一言。

カナタが使った際には一体ずつしか呼び出せず、しかもすぐ消えてしまうディメンションカード怪獣も、
彼は三体同時に展開し、横槍さえなければ長時間実体化できているなどここでも差別化されている。
そのためすぐ消えるのは仕様ではなく、カナタの使い方が下手くそなだけというのが明らかになってしまった。

一方で、カナタが割と多用するウルトラデュアルソードは作中では使用していない。
ケンゴに時空を超えてこの武器を託したのは未来のユザレであり、おそらくデッカー・アスミとも面識があると思われるが、
存在を知らなかったのか、知っていたがあえて使わなかったのかは不明である。


【本編での活躍】

スフィアザウルスとの戦いの最中、テラフェイザーを乗っ取りウルトラマンデッカーに牙を剥いたアガムス。
その猛攻に変身解除に追い込まれたカナタととどめを刺さんとするアガムスの間に割り込むように飛来した。

カナタと視聴者置いてけぼりの会話を交わした後、彼がレリアの名を出したことに激昂したアガムスは再びテラフェイザーを起動。
デッカー・アスミがその手にウルトラディーフラッシャーを出現させると、
カナタの腰にあった絆創膏入れディメンションカードホルダーも彼のもとに戻り、そのままウルトラマンデッカーに変身。
テラフェイザーを翻弄するも倒しきれず、セルジェンド光線とTRメガバスターの撃ち合いで変身解除してしまう。

その後は事情を知りたがるカナタを突っぱねるものの、突如体全体にノイズが走ったかと思うと苦しみ、気絶してしまう。
時空移動システムは人間一人を転送できるまでに修復されたもののまだ完全とは言えないようで、
過去の時代に長時間は留まれず、転送した人間の体に負担を与えるという欠点があったのだ。
カナタに介抱されて意識を取り戻したものの、彼を「ガキ」扱いして邪険にするデッカー・アスミ。
しかしカナタの祖父からの言いつけである『誰かのためにできることがあるなら迷わずやれ』という言葉を聞き、
さらに彼の苗字を知ったことで自分とのつながりを察し、態度を軟化させた。


自分が数百年後の未来から来たこと。

未来において人類はユザレの血を引く者、もう一人のウルトラマン、そして様々な星の人々とともにスフィアと戦っていること。

スフィアの性質と目的。

アガムスもまた未来人であり、この時代にスフィアを連れてきた張本人であること。

カナタはそれを食い止めるため、ウルトラマンデッカーの代理として選ばれたこと。


様々な事実を打ち明けたところにアガムスが現れ、自らの故郷バズド星は地球人のせいで滅んだと語る。
そんな彼にバズド星はスフィアのバリアに覆われただけで、まだ希望を捨てない仲間たちが戦っていることや、
地球を滅ぼしても自分たちがいた時間軸には影響を及ぼさず、並行世界が生まれるだけであることを訴えるが、
故郷と妻の復讐に囚われたアガムスの心は変わらず、カナタを庇ってフェイズライザーの銃撃を受けてしまう。

召喚されたテラフェイザーの攻撃から逃げ惑う中、彼は「大人の責任」と称して、
カナタに自分たちの宇宙の平和を願う想い、そしてそれを胸に戦っている仲間たちの存在を語り、自らの命を顧みずにアガムスを止めようとする。
しかしカナタは逃げようとせず、彼の、そしてテラフェイザーの前に立ちはだかった。


なんだよそれ! わかんねぇ……わかんねぇよ!!
おっさんの言ってることも、博士の言ってることもわかんねぇ!

なんでそんな簡単に、命を捨てられんだよ!?
捨ててどうなるんだよ!?それで、ホントに解決すんのかよ!?

おっさんの仲間たちも今……戦ってるんだろ!?
だったら……!何が何でも、生き延びろよ!!
生きて!!一緒にがんばれよ!!

巻き込まれたからじゃない……!

俺は今、俺の世界を守りたいんだ!!

現代(こっち)は俺に任せて……さっさと未来に還りやがれ!!


カナタの強い想いを聞き入れたデッカー・アスミは、相変わらず「デカいクチ叩くガキ」と毒づきながらも、
再度彼にウルトラディーフラッシャーを託したのだった。

デッカーに変身し、テラフェイザーに向かっていくカナタ。
しかしその力に圧倒され、TRメガバスターの直撃を受けてしまう。
それでも闘志を燃やし、耐え続けるカナタを援護するため自らの光の力を送るデッカー・アスミ。
そしてインナースペースで自らの家に伝わる家訓を伝え、鼓舞する。


我が家の家訓でな……!

『今できることを全力でやれ』!
『仲間が欲しかったら腹を割って全力で話せ』!
『負けた理由を探すより、勝てなかった自分を超える努力をしろ』!!


負けるなぁぁぁ!!

ウルトラマンなら……!!

立ち上がれぇぇぇぇぇ!!!


その後、二人の強い意志に応えるかのようにダイナミックタイプの力が発現。
「この時代を守るウルトラマンの姿」を満足そうに見つめるのだった。

戦いが終わった後、アガムスはまだ生きているであろうことや自分の本名を伝え、
自分の時代を守るべく「ご先祖様」のカナタに別れを告げ、未来に帰っていった。

「アガムスを救ってやってくれ」という言葉を残して……。


【余談】

  • 『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』では、ウルトラディーフラッシャーが元の持ち主であるラヴィー星人ディナスからカナタに受け継がれたこと、
    ディナスやカナタの仲間たちの思いからデッカーのウルトラディメンションカードが生まれたことが描写されている。
    『デッカー』本編の時間軸はアガムスの介入によってデッカー・アスミがいた時間軸とは別の歴史を辿っているため、
    彼が持つデッカーの光は違った経緯でもたらされたものだと思われるが詳細は不明である。

  • 未来で戦うもう一人のウルトラマンことダイナに関して、本編では名前を出さずわずかに触れられるだけであったが、
    第21話でダイナ本人が登場した際、カナタはひと目見ただけで彼がデッカー・アスミの語っていたウルトラマンであると理解し、名前まで知っていた。
    本編に映っていないところで詳細を聞いていたなどと推測されていたが、カナタ役の松本氏曰く「実はアガムスがウルトラマンダイナって言ったからです」とのこと*1


  • 「三大特撮制覇の夢が叶いました」と語る谷口氏だが、実際にオファーがきた際には「確かに出たいとは言ったけど割と軽い気持ちで言ってたことなので焦った。信じられなかった。」とも語っている。
    役が決まるまでウルトラ作品全然見てなかったし*2
    坂本浩一監督に「『ウルトラマンに出るにはどうすればいい?』と尋ねた」というエピソードも「坂本監督が人前で話すことが苦手と語っていたので話題のネタ振りと、観客のみなさんは坂本監督を知らないだろう*3から紹介したい意図があった」とし、
    つるの剛士にTwitterで聞いた」のも「つるのさんが主題歌を歌う機界戦隊ゼンカイジャーが『アマゾンズ』でお世話になった白倉氏と武部氏の新作だし、宣伝になったらいいな」との意図があったという。

  • 特にワイルドな風貌・戦法がアマゾンアルファを彷彿とさせたため、登場・戦闘シーンに『アマゾンズフィルター』*4を掛けるMADが作られたりもした。
    • ラストはカナタと明るく別れたいとあの形にしたが、「自分が笑顔を見せるとアマゾンズを思い出せれて怖がれるかも」と不安もよぎったという。
    • ウルトラシリーズの前作にあたる『ウルトラマントリガー』で隊長を演じた高木勝也氏とはアマゾンズで共演があり、デッカー出演と変身を知られ「まさ兄!伝説っすよ!アンタ伝説っすよ!アンタ最高っすよ!」とかなり興奮した様子の電話がかかってきたという。

  • 谷口氏が三大特撮変身を制覇したしばらく後、『ウルトラマントリガー』にてマナカ ケンゴを演じた寺坂頼我氏が舞台『Dancing☆Starプリキュア』The Stageにてキュアカグラを演じることが発表された際には、
    『後はプリキュアだけ』とネタにされていたこともあって「プリキュアだと…!?」と反応している。いくらなんでも無理でしょ…

  • 第14話のラスト、セルジェンド光線とTRメガバスターがぶつかり合うシーンではインナースペースで彼がセルジェンド光線のポーズを取っているカットがあるが、これは台本にはなく現場で追加されたもの。
    撮影中にカナタ役の松本大輝氏がすごい顔で見ていたためどうしたのかと思っていたら、武居監督に「実はあいつにはまだ(光線を)やらせたことがない」と耳打ちされたという。こどんな顔してたんだ
    その後松本氏もちゃんと光線のポーズを取る機会があった。良かったね。

  • まともに登場したのは2話限りのゲストキャラだが視聴者からの人気は高く、軽い気持ちの発言が実現して焦った谷口氏だが「谷口さんとの共演から松本君の芝居が良くなった」と制作側からも好評だったという。
    2023年6月18日に新宿ピカデリーで行われた『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』グランドフィナーレ舞台挨拶にはサプライズゲストとして谷口氏が登場している。


追記・修正は『大人の責任』を背負いながらお願いします。

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最終更新:2025年01月07日 21:31

*1 本編のアガムスのセリフである「邪魔はさせんぞダイナ!」等だとタイミングが合わないため、セリフの順番が変わっているか、尺の都合でカットされた場面にあったのだと思われる。

*2 子どもの頃は家のルールとして「テレビは1日30分」の厳しい規定があり、ウルトラマンは友達の家で見かけるものという認識だったという

*3 やりとりがあったのは女性向けレーベル小説から始まり漫画化・アニメ化もされている「文豪ストレイドッグス」が実写映画化された際の舞台挨拶

*4 『仮面ライダーアマゾンズ』はショッキング・グロテスクなシーンが多い影響もあり、映像にやや薄暗く色褪せるような加工が掛けられている。そこから転じて、こういった加工をライダーファンを中心に『アマゾンズフィルター』というあだ名で呼ぶようになった。