ドラえもん のび太と緑の巨人伝

登録日:2023/02/28 Tue 03:17:00
更新日:2025/04/15 Tue 14:11:55
所要時間:約 9 分で読めます




僕らの希望が未来を動かす。

監督:渡辺 歩*1
脚本:大野木 寛*2
主題歌:絢香「手をつなごう」

『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』とは『映画ドラえもんシリーズ』の第28作目のタイトルでわさドラ映画としては3作目。オリジナル映画は『ワンニャン時空伝』から実に4年振り、わさドラでは初のオリジナル映画となる。


概要

環境問題を扱った名作として名高い『さらばキー坊』を原案に作られた物語で、キー坊がメインキャラとして登場する。序盤の流れは原作をなぞり、中盤の緑の星以降がほぼオリジナル展開となる。また『森は生きている』や『雲の王国*3を彷彿とさせる展開も入っている。

映画版と漫画版にかなり物語や設定等で差異があるのだが本項目では映画版をメインに記す。異なった経緯については後述。

本作の公開に合わせて『もう一つの"緑の巨人伝"』という特別回も放送された。本項目ではそちらについても記す。

あらすじ

ある日、のび太は裏山のゴミ捨て場で一本の苗木を見つける。見過ごす事の出来なかったのび太はその苗木を持って帰るも「植えてはいけない」とママから叱られる。そこでドラえもんは「植物自動化液」を使ってその苗木が歩く事を出来るようにした。その苗木にのび太は「キー坊」と名前を付けて可愛がり、町を一緒に歩いたり、みんなと遊んだりと楽しく過ごしていた。

そんなある日、ドラえもん達は怪しげな壺らしき物を見かけて追いかけるがそこから出てきたのは謎の緑色のスライムのような怪物。この怪物は突然木を吸い始め、逃げきれなかったのび太達も吸い込まれてしまった。

そして目を覚ますとなんと地球が目の前に。敵に見つかりそうになったドラえもん達は出口らしき所へ逃げ込むが、そこから通じていたのは 緑の星 という植物人が住む星であった。そこでドラえもん達は恐ろしい計画、「地球遠征法」が進められようとしている事を知る…

登場キャラクター

メインキャラクター


お馴染み22世紀のネコ型ロボット
殆どのひみつ道具をドラミに 出さなくていい分まで 修理に出させてしまい、結果役に立たない道具しか残っていなかった。

実はエンディングにて一人だけ「あたたかい目」をやってたりする。

CV:大原めぐみ

彼の名前には「すこやかで大きく、どこまでも伸びて欲しい」という意味が込められている。*4本作はのび太が全面的にメインの映画。かっこいい活躍というよりはのび太本来の優しさがどの映画作品よりも強く出ており、特に終盤の彼の言動、行動は必見。

+ 終盤のネタバレ注意!
「正義って、いい事なのに…
いい事の為にどうして喧嘩をするの?」

のび太は正義の為に争いを行う植物人を疑問に感じていた。力だけでは自然を守れない事をのび太はきっと思っていたのだろう。植物人達が国を信じるようにのび太もまた巨人になったキー坊が自分達を忘れていない事を信じており、そしてそれは的中、巨人の放ったビーム攻撃はのび太とリーレを丁度避けていた。

そしてキー坊に招かれるように巨人の中へ入ったのび太は枯れたキー坊を見つける。

キー坊を助ける為、沼に苦しみながらも水を運び、そしてその姿を見たリーレものび太を支え、水を運んでキー坊に水をやった。これはのび太がキー坊を救う為にした精一杯の行動であり、この思いがキー坊にも伝わったのか自我を取り戻す事に成功している。

この言動、行動は後に長老が語った思いやり、愛が命を紡ぐというメッセージにも繋がっている。



リーレの一言で全て意見が賛成の方向でまとめられた事に対し、「偉い人の一言でみんなの意見が決まっちゃうのね。」と呟いた。

リーレの心の中の寂しさに一人だけ気付き、彼女と距離を縮めようと直接話しかけた。*5。そしてそれが彼女にも伝わったのか比較的穏やかに話が出来ており人間の中では一番リーレが心を開きかけた相手だった。


特にこれと言って良いほどの活躍も無いばかりか、ズボンが緩くなってずり落ちたりと散々な目に会う。ナエちゃんは一目惚れで好きになった。細かい点ではあるが弱気になって叫んだのがいつもの「ママ〜」ではなく何故か「お母様」呼びだった。*6


序盤はいつもの調子だが、緑の星に来てみんなの不安が募る中、リーレに対し潔く土下座して地球に帰させて欲しいと頼み込んだり、枯れかけのキー坊に水をあげる為に自ら探索に行く事を名乗り出るなど、今回はいつにもましてカッコいい。


相変わらずペット嫌いであるが、本作では元が苗木という事もあってか映画版、漫画版共にキー坊を家に住ませる事を許可している。また映画版では手伝いをしてくれたキー坊に愛着が湧き、のび太をおつかいに行かせる際に「肥料を買ってきて」と頼むほど。映画版では愛情というテーマを印象付けるキャラの一人であり、地球へ帰ってきたのび太を優しく出迎えてくれた。


漫画版は殆ど出番無しだが映画版では愛情を表す役割としては非常に重要なキャラ。キー坊をママよりも先に受け入れ、そして地球へ帰ってきたドラえもんを家族として暖かく迎えてくれた。*7

CV:萩野志保子

映画版のみ登場。
森林が無くなる事を恐れているのび太に、現在は緑地として保全している事を教えて安心させた。また、彼のおじいさんが言った「人間は過ちを犯すけれども、その過ちから学べるのが人間」というのは本作を物語る上でかなり重要なセリフだったりする。

ゲストキャラクター

  • キー坊
CV:吉越拓矢

『さらばキー坊』の時と同じく「植物自動化液」をかけた事で知能を持った苗木。原作からデザインが変更されて、普通の幼い子供のような姿になっている。また性格も無邪気な子供といった感じであり、元気いっぱい。漫画版では紙や鉛筆を無駄遣いするのび太に怒ったりと木としての一面が描かれている反面、映画版では町の人々や森の民との交流から、キー坊という子供としての一面が描かれている。

+ キー坊の演説
「地球に時間をくださりありがとうございます。
今、地球人達は深い反省と共にこのままではいけないと
気付き始めました。今まで見ようとしなかった問題にも
人間達は取り組み出したのです。
一人一人が行うささやかな行動が大きな物となり、
将来きっと、きっと!地球をあるべき姿にし、
美しい自然を取り戻すでしょう!」

みんなが言葉を理解出来るようになった後、
演説にてキー坊が語った内容。
実際序盤の町の場面を見ると分かる通り、のび太が目にした新聞に環境保全の取り組みが進められている事が書かれていたり出木杉が今は緑地として保全すると言っていたように実は自然を大事にしようと人間達は解決の為に取り組んでいた最中だったのだ。

これは地球出身の植物人として地球を見てきた苗木のキー坊にしか分からない事でもあり、ただ動物が自然を破壊する敵だと決め付けていた植物人(特にシラー)はキー坊や長老が言うまでこの事を気付きもしなかった。

そして「沢山勉強して長老のようになりたい」とキー坊はのび太に願い、のび太はそれを受け入れてキー坊はのび太と別れ、宇宙へ行く事となった。そして、月日は経ち…

因みにこのような演説は原案の「さらばキー坊」にもあり、「文明が栄えすぎて人間達は地球を自分だけのように思い込んでいたが最近ではそれを反省する声も高まってきている、このままではいけないと気付き始めている。植物を愛し大事に育ててくれる人間もいるから、もう少し時間が欲しい。」という風に植物人を説得していた。


  • 赤いジョーロの女の子
CV:松元環季*8

映画版の序盤に登場。キー坊と仲良くなって一緒に水浴びをしていた。この女の子の持っているジョーロがキー坊のこの子との思い出である。

緑の星の中心人物

  • リーレ姫
CV:堀北真希/渡辺菜生子(幼少期)

本作のもう一人の主役。作中に登場する植物人の中では一番人間に近い容姿の持ち主*9。緑の星の女王であり、全宇宙植物議会総長。…だが発言は原稿を読み上げただけだったり、性格はワガママだったりと姫としての素質がなっていないように思えるが、これは両親が早く亡くなってしまった為に心を閉ざしたからである。本当は寂しがり屋だったりするが、中々それを表せないでいる。ドラえもん達や森の民、長老と交流をする事で徐々に彼女の心に変化が現れ始める。*10『もう一つの"緑の巨人伝"』では幼少期の頃が描かれており、その頃はまだ本編程性格が荒れてはいなかった。尚、その頃には既に両親共に亡くなっている。

  • シラー

緑の星の大臣的な立ち位置だがリーレに姫の自覚がまだ付いていない為、実質的に全権限はシラーにある。その為リーレの言い分を無視して「地球遠征法」を実行、映画版では実際に 地球を緑で埋め尽くし 、全動物を滅ぼそうとしていた。尚、漫画版では最後まで悪役らしい振る舞いをしていたが映画版では自身の行いを後悔する場面があり、最終的な印象はかなり異なる。

  • 長老ジィ
CV:三宅裕司

森の民から慕われている長老。緑の星へやってきたキー坊を助け、のび太達にも協力をしてくれる。シラー達の争いで解決するやり方には反対しており、「緑の危機は内なる物である」と言い放っている。

+ 長老が最期に語った言葉
「命を紡ぐ全ての者たちよ。
そしてのび太さん、キー坊さん。
私は君たちの姿に、遠い昔の自分を重ねた…
一人と一粒。それがこの星の始まりだった。
互いに思い合う心。
命が命を繋いで守ってきた思いやりを、
人々は繁栄と引き換えに、みんな忘れてしまった…
最後の力で…今、それを伝えよう。
生命の全てが互いに支え合い、宇宙は成り立っている…!
これは変わる事の無い、真の愛だ!
そう…宇宙は愛で満ちている!
私は信じる…この愛を!
未来を担う君たちが、大きく育ててくれる事を…!」

本作のこれまでの物語をこのメッセージと共にまとめると「昔、一人の人間と一粒の植物の種から繋いできた思いやりは繁栄と共に争いという形で失われてしまい、今もこうして緑を守るという建前で争いを続けた為、緑を失う結果に繋がった。」という事であった。

しかし長老は最後の力で緑を再生させ、「生命同士が支え合う愛によりこの宇宙は成り立っている。のび太やキー坊、リーレを含む未来を担う子供達は愛で命を紡ぎ、これからも未来を大きく育てて欲しい。」というようなメッセージを残した。

漫画、映画どちらともに正体が明確には描かれていないが、映画版ではこの人間が長老であるとするならば彼もまた一人の人間であり、緑の星を創世した者であるという事になる。この通りならば「私から盗んだ物を返して欲しい」という長老のセリフにも繋がる。


  • パルナ
CV:有田哲平(くりぃむしちゅー)

ナスのような見た目をしている。シラーの配下であり、度々ドラえもん達と対立する。やや強引な所があり、森を傷つけた事を指摘されても「傷つけましたが何か?」と言い返した。

森の民

  • ヤマ
CV:石田ことみ

ロクちゃんを追いかけた際、ドラえもん達と出会う。
漫画版では名前こそ無いがそれらしきキャラが登場し、
ドラえもん達を動物として少しの間敵対視していたが、
映画版では最初から温厚にドラえもん達と接していた。

  • ロク
CV:土屋蓉子

ドロムシを見に森へ入って来た。
漫画版ではヤマ同様それらしきキャラが登場、
ドラえもん達を敵対視していた。

  • ナエ
CV:上野一舞

映画版のみ登場。
スネ夫のズボンを直してくれた。

  • モヤ
CV:渡邉甚平

ジャイアンに似ており、最初ヤマとロクはジャイアンをモヤと間違えた。漫画版でも似たようなキャラがおり、そっちでは更にスネ夫に似た者もいた。

『もう一つの"緑の巨人伝"』登場キャラクター

  • ドラボテン&のびテン
CV:水田わさび(ドラボテン)/大原めぐみ(のびテン)
さすらいの吟遊詩人で、ドラえもんとのび太によく似ているサボテン。メキシカンめいたラテン系の恰好をしている。「サボテンブルース」という曲を歌っているが歌が下手な為、周囲からの評判は散々。グリンピアで出会ったリーレと共に半ば強引に「禁断の森」に行く事となる。

設定

  • 緑の星
漫画版ではグリンと名付けられている。
緑の問題を取り上げる「全宇宙植物議会」という物が存在しており、今作では地球が問題のある星として挙げられた。
巨木のような城のある水上都市「グリンピア」と、そこから離れた所に森の民が生活する森林地帯があり、『もう一つの"緑の巨人伝"』では巨人がいると噂される「禁断の森」が存在する。
映画版では戦争により一度文明が滅亡したようであり、
現在でも地底に存在しているが、それを覆い隠すように緑に溢れている為か誰一人として気付いていない。漫画版では地球よりも土が痩せ細っており、どちらも内なる緑の危機が迫っている事が確かであるのが分かる描写が存在する。

  • 緑の巨人
漫画版では動物達を森の奥へと連れ、戦いを終結させた守り神として伝説に残っている。が、リーレによれば実は動物達を消し去った事で戦いを終わらせた兵器のような物であり、実際シラーは人間達を滅ぼす為に巨人の研究をしている。
映画版では巨人というより巨木となっており、戦争が激化した中で生き残った人々を守ってくれた伝説が残されている。キー坊を核にして復活させようとする所は両方とも同じだが、映画版ではキー坊の憎しみと悲しみに「巨人の黒双葉」が反応して巨木となり、緑の星の兵士でも制御が出来ない程となってしまった。
『もう一つの"緑の巨人伝"』ではどんな願いでも叶えてくれる伝説が残っており、リーレは両親とまた会いたいという願いを叶える為に巨人に会いに行こうとしていた。

  • 地球遠征法
植物人の調査により発覚した自然破壊が問題となっている地球の植物を救う為に考えられた方法。それは地球の全植物を根こそぎ奪い取り緑の星へ移し替えるという物である。当然、植物が奪われてしまえば酸素供給源が無くなる。つまり 動物はやがて死滅するので、非常に人間からしたら恐ろしい計画である。 *11しかし、シラーはそれだけに飽き足らず、更に全動物を直接滅ぼそうと言う案も裏で考えていたのだ。『雲の王国』で天上人がやろうとしていたノア計画と似ているが、あちらと明確に異なるのは全動物を確実に滅ぼそうとしている点であり、また話し合いの余地すらも残してはくれなかった。*12漫画版では緑兵を使って人類に直接攻撃をして滅ぼそうとしていたが、映画版では緑で埋め尽くす事で滅ぼそうとしていた。何気にそこと、その描写からの終盤の展開はわさドラ映画には滅多に無い不気味な雰囲気が漂っており、トラウマになりそうな程。
因みにこの遠征法は「さらばキー坊」に登場した植物人達が考えていた物とほぼ同じ。

登場したひみつ道具

  • 植物自動化液
植物を自由に歩かせる事の出来る道具。映画版ではやたらと量が多い。

  • かたづけラッカーDX
映画版のみ登場。
ゴミに吹きかけると持ち主の元まで戻す道具。裏山に不法投棄されたゴミに使用。原作に登場した落とし物カムバックスプレーと効果が変わりないように見えるが…

  • 落とし物カムバックスプレー
漫画版では実際にこの名前に変更。効果もやはり上記と変わりない。 どちらの展開でも0点の答案がのび太の元へ帰ってきた。

  • 心の石
漫画版のみ登場。
砕いてばら撒くと意思を持つようになる道具。『森は生きている』に登場した「心の土」とよく似ている。
作中では裏山に使用しており、後に裏山が地球を救う事となる。

  • 畑のレストラン
漫画版のみ登場。緑の星では地球より土が痩せ細っていた為、味も量もいまいちな物が出来上がった。

  • 時門(漫画版)/タンマウォッチ(映画版)
時門は閉めれば閉めるほど時間の流れが遅くなる道具*13で、タンマウォッチは作動した瞬間、自分以外の全ての時が止まる道具*14であり、これが後に地球を救う事となる。時門は裏山が完全に閉めたおかげで助かったのだがタンマウォッチの場合はポケットからたまたま降ってきて、偶然にも木に引っかかった事で作動した為助かった事となっている。

ドラえもんが空から落ちるのび太とキー坊を救う際に使用。*15 実は映画版の使用場面はこれだけであり、漫画版にはそもそも登場しない。

  • 緑アンテナ
映画版のみ登場。
風に当てて回すと心地よくなれる(ドラえもんも使い方を忘れており本来の用途は不明)。
一部資料では「植物と心を通わせることができるらしい」とされているが、作中では上記の通りドラえもんがどんな道具か忘れてしまっており本当のところは不明。

  • 双葉型の笛
「心の石」で打ち解けた裏山がくれた笛。
漫画版では上記の緑アンテナに当たる道具であり、
キー坊の正気を取り戻すのにも役立った。

  • 役者ダイコン
映画版では身に着けながら観察した相手に短時間のみ変身できる道具。兵士に化けて何故か本人に本人役として喋りかけたのだが脱出に成功している。漫画版ではダイコンが直接変身する道具で、作中では五人に化けてもらい囮役に使ったりしていた。どちらも時間制限があったり芝居がまさに大根だったりと欠点が存在する事には変わりない。

  • ネムケスイトール
漫画版のみ登場。その名の通り眠気を吸い取る道具だが、その眠気を弾にして撃つ事も出来、どうやら吸い取った眠気の具合により眠らせる力が変わるようだ。作中では朝に吸い取ったのび太の眠気を使用したが、一発で眠らせられるほどの強力な物だった。

  • スカイリーフ
漫画版のみに登場するが、実は映画の予告編で出てきたり、リーレやパルナ含む兵士が本編で似た物を使用していた。
緑の星にある空を飛べる乗り物であり、これをドラえもん達も使用していた為 タケコプターの出番は無かった。

  • ドラえもん気球
映画版のみ登場。キー坊を助けるべく乗り出したのがこれ。
ジャイアンが吹いた際に 鼻水が噴出した事で 操縦不能となり墜落した。*16

漫画と映画の差異について

漫画版と映画版は細かなストーリー及び主軸となるテーマが異なっており、町の人々との交流、森の民の文化の数々、終盤の戦争を示唆する描写は映画版にしか無い。*17設定自体が違うキャラや道具も多い為、比較してみるのもまた良い。とはいえ何故ここまで違う物になってしまったのか、と気になる人も多い筈。

+ 監督の見解について
映画版において監督の見解としてのテーマやストーリーは実は「わからない」

最初に言っておくがこれは渡辺監督が語った反省でもある為、公式の見解とはまた異なるので注意。

後年のインタビューにて監督は、
  • 最初は「ゆうれい城へ引っこし」がベースの別の映画を作るつもりだったが藤子プロからキー坊の話を制作してほしいと提示された(『ゆうれい城』自体は渡辺が後に絵コンテを描いて通常回として放送している)
  • 環境問題を取り扱うに辺り藤子先生の元の作品から託されたものに回答を出せず曖昧になった(そもそも『さらばキー坊』やその実質的な続編『雲の王国』でも明確な答えは出せていなかった)
  • 回答が出せないため、意味の無いシーンをつなぎ曖昧にしていった(終盤の多くのシーンがそれに当てはまる)
  • 緑の巨人と言った単語がなんなのかはわからないが少なくとも作中でその言葉の意味も否定してしまった(前述の巨木の描写に繋がる)
と……諸々の原因が重なって「制作している側にすら誰もわからない作品になってしまったこと」を反省点として挙げており、駄作であったと自評した。

漫画版はストーリーを再構成してあるため筋の通った物語となっているのだが、少なくとも映画版においては意味や筋が通る部分は「無い」と監督は断言してしまっている。
事実曖昧なシーンや意味を汲み取りにくいシーンは確かに多く、それに対して「回答は無い」のもあってか前衛的な言動も多い。
例を出すと前述の緑アンテナは作中の映像ではドラえもんたちはクルクル回るといい気分になっていたものの、その道具は出してみただけで「特に意味は無い」。本作は「感じてもらう」タイプの映画として実際に作られている為か、個人の受け取り方によって評価が180°程変わる事もある。

劇中だと「わからない」といった単語が頻出することもあってか、ドラえもん映画としては「面白い」「つまらない」というより「わからない」と言う独自の基軸で語られがちな映画である為 こうあるべきだったとも言い難いのが本作の難しい所でもあり、実際残念ながら本作は2023年現在でも評価が割れてしまっている。

最近のわさドラオリジナル映画がメッセージを直接伝える作りになっているのは本作の評価を見てなのかもしれない。

しかし、監督が言ったからと言って駄作の一言で片付けるには惜しい部分や大事なメッセージも多い為、よく分からなかった人も是非「暖かい目」でもう一度この作品を見てみると分かる事もあるかもしれない。また本当に理解不能な作りかと言われると別にそうではない。本作はメッセージを間接的に伝えておく作りな為、色々自分で考察してみると段々と理解が出来てくる。本作のテーマ、主軸は 「無意味な争いを止め、共に助け合い愛し合い、次へ命を紡ぎ育ててゆく」 という上述した長老が最期にのび太へ語った事がそうであるという見解が強い。

監督を担当した渡辺は映画公開時のトークショーにて「環境問題といった大きな問題を扱うと、作品の中でそればかりが目立つリスクがあり、難しかった」と振り返り、後年には『アニメスタイル002』などの雑誌において本作に関する反省や制作に関する裏事情について明かしており、本作の評価は渡辺の監督としてのキャリアにも大きく影響を与えたようだ。


余談


  • 本作の町の舞台設定は通常回や他の映画作品と比べると前時代的な描写がされており、2008年にしてはやや違和感を感じるような描写もある。*19

  • ニンテンドーDSでゲーム化されている。ジャンルは過去2作のわさドラ映画のゲーム版とは異なり横スクロールアクション。尚、物語は漫画版をベースにしているが、シラーが最後改心するなど映画版の要素もある。



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最終更新:2025年04月15日 14:11

*1 『ドラえもん』リニューアル後のキャラ設定、大山ドラ時代の映画の作画、『帰ってきたドラえもん』等の短編作品やわさドラ初映画の『のび太の恐竜2006』を過去に手掛けた。

*2 リニューアル後の『ドラえもん』の脚本を手掛けている。

*3 『雲の王国』は元々キー坊の話の続きとして作られており、つまり本作はこの作品の前日譚でもある。

*4 詳しくは『ぼくの生まれた日』を参照。

*5 しかしシラー達がリーレを捕まえた事で二人の会話はそこのみで終わってしまう。

*6 原作の初期作品等で元々見られた呼び方なのだが、何故キャラ設定の固まった頃の本作でこの呼び方だったのかは不明。しかも終盤ではママに戻っている。

*7弟をつくろう』でもパパはドラえもんを家族としてカウントしている。またこの描写は『ロボット王国』のラストのママのセリフにも通ずる物がある。

*8 前作では幼少期の美夜子を担当。

*9 お団子ヘアに見える頭部は花の蕾のようなものとなっており、手足も人間のものとは若干形状が異なる。

*10 漫画版では緑の星のやり方に反発し明確にドラえもん達に味方するが、映画版では「そのやり方は違う」とまでは言い切れなかった。

*11 当然反対する者もいたが、リーレ(正確には予め用意された原稿)により一斉に賛成の考えに傾いた。

*12 ノア計画は一応地上の人間まで滅ぼそうとはしていなかった。

*13 実は時門を完全に閉めると時が止まるという設定は原作の話『時門で長〜い一日』には無く、本作初出の物だったりする。

*14 全ての定義は曖昧で、本作では地球で作動しても緑の星には干渉が及ばなかった。『時間よ動け〜っ!!』では太陽の動きさえも止まるとされているが…

*15 何故かウキウキしながら高速で回っただけで二人は空まで飛んだ。

*16 ウラヤマ星の話で同じオチがあったりする。

*17 漫画版では裏山と仲良くなったり、植物人達と戦ったりと大長編らしい描写が見られる。

*18 2012→2013は例外

*19 わかりやすい例で言うと、野比家のテレビがブラウン管の物である事。