GPU

登録日:2025/09/02 Tue 23:25:00
更新日:2025/09/20 Sat 16:02:45
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GPUとは、Graphics Processing Unit(グラフィックス プロセッシング ユニット)(画像処理装置)の略語であり、コンピューター機器において画像・並列処理を担う部品である。


目次


歴史

GPUの歴史は1970年代、CPUの負担を軽減するためにグラフィック処理機能を分離する構想から誕生。
当初はグラフィックスワークステーション(業務向けのコンピューター)に専用の部品を導入することから始まった。

しかし個人向けには普及が進まず、当時はCPUの性能向上でグラフィック向上を目指す動きが普通だった。
1980年代当時としては高い描画性能を持ったファミリーコンピュータは、Picture Processing Unit(PPU)と呼ばれるグラフィック専用の装置こそ搭載していたものの、スプライトや背景の描画、予め指定された範囲内の色を指定する機能しか存在せず、あくまで補助的役割に徹していた。

1990年代に入ると3DCGの普及に伴い、専用のグラフィックチップの需要はますます高まっていった。
そのためゲーム機メーカーは開発の段階でグラフィックチップを手がけるメーカーと協業するようになり、個人向けにも高性能なグラフィックチップを大量生産する体制が整い始める。
1999年にはパソコン向けに、アメリカのNVIDIAから幾何学(ジオメトリ)エンジン*1をハードウェア上で処理をするグラフィックボード『GeForce 256』が登場。
ソフトウェア面でもグラフィックスAPI(詳細は後述)の統一を目的に『OpenGL(オープンジーエル)』『Direct3D(ダイレクトスリーディー)』と言ったAPIが出現。
環境整備が進められ、一般消費者にも普及するようになった。

1990年代終盤からは、その高い並列処理性能をグラフィックス分野以外に活用するGeneral-Purpose computing on Graphics Processing Units(GPGPU、GPU上での汎用計算)という動きも出始める。
NVIDIAはこの分野にも目を向けており、自社設計のGPU向けにCompute Unified Device Architecture(CUDA(クーダ))と呼ばれる機能を実装。
それとは別に、Appleの提案でNVIDIA以外のGPUでも扱えるOpen Computing Language(OpenCL(オープンシーエル))も次いで登場した。
これらの技術を活用したのが、仮想通貨の採掘(マイニング)や機械学習、生成AIであり、産業部品として広く使われるようになっている。


グラフィックスAPI

APIとはApplication Programming Interface(アプリケーション プログラミング インタフェース)の略で、大まかに言うとソフトウェア間の指示・データの送受信方法のこと。
その内、アプリケーション(ゲームも含む)~OS(~デバイスドライバ)間の描画処理用のものがグラフィックスAPIである。
一応工学的には必須ではないが、全く存在しない場合はグラフィカルUIなどとても動かせないため、現代のOSには事実上必須。
専用機などにおいても、2025年現在ではGPUを快適に使用するためにも統一されたグラフィックAPIの整備は必要不可欠となっている。

現在の意味で広く使われる、ハードウェアを細かく制御するタイプのグラフィックスAPIは、前述したOpenGLが最初。
アメリカのシリコングラフィックス社が開発したAPI『IRIS GL』を元に、公開標準規格として開発された。
組み込み機器向けにも『OpenGL for Embedded Systems(OpenGL ES)』として提供されており、携帯電話や車載システム等で使用されている。

ただ、(1990年代の)OpenGLはワークステーション向けのAPIであり、ゲーム向けには適さない面もあった。
そのため、(Windows向けのPCゲームを増やす目的も兼ねて)Microsoftが開発したのがDirect3Dである。Direct3Dはゲーム向けに特化した分、軽量化が行われたのが特徴。
Windowsを始めとしてドリームキャストXboxシリーズにも採用され、ゲーム(特にPCゲーム)向けのグラフィックスAPIとして今日でも広く使われている。

OpenGLについては、電子機器の性能の進歩に伴って規格が陳腐化したため、後継規格の『Vulkan(ヴァルカン)』が登場し、そちらに置き換わりつつある。
Apple製品ではVulkanではなく自社設計の『Metal(メタル)』を後継規格として採用している。

Xbox以外のゲーム機では独自仕様の物が使われておりPS4以降では『GNM』、Nintendo Switchでは『NVN』というAPIが採用されている。*2


各種機器におけるGPU

パソコン

詳しくはパソコンのパーツも参照。

近年のCPUはGPUも内蔵していることが多く、映像出力は専用GPUがなくても可能なので絶対に必要とまでは言えないが、重量級ゲームや3DCG制作などを行うにあたっては別途装着が推奨される。

基本的に、デスクトップPCならGPUを搭載した「グラフィックボード」や「ビデオカード」と呼ばれる独立パーツの形で、ノートPCなら基盤組み込みやスマートデバイスと同じSoC(APUやメモリ、通信機能などを一体化した物)の形で用いる。
ただしMacはGPUの内製化に合わせて、2020年代からデスクトップでもSoC路線に移行している。

Windows/Linuxの一般消費者向けの独立GPUとしては、GPU発展に大きく貢献したNVIDIAの『GeForce(ジーフォース)』が依然としてほぼ一強の状態だが、AMDの(かつてはATiの)『Radeon(レイディオン)』も長年展開されている。
2022年には新たにIntelが『Arc(アーク)』を提げて参入した。
業務用途向けには、NVIDIA『RTX PRO(かつてのQuadro)』やAMD『Radeon Pro(かつてのFirePro)』、Intel『Arc Pro』シリーズが使われている。

これらの企業は基本的に設計のみを行っており、実際のGPUチップは半導体製造を専門とする企業が製造、そこから供給を受けたPC・パーツメーカーが基板・冷却機構・その他チップ部品などを合わせて組み立てることで、グラフィックボードの商品として出回る。
CPUと異なり、利用者がGPU単体で目にする機会はまずない。

ゲーム機

パソコン以上に映像が大事なので、早期から研究が進められている。
そもそも汎用機器のパソコンからゲームに関係のない部分を省くことで、比較的低価格で優れたグラフィック体験を実現させたのが専用機としてのゲーム機の出発点。
同一規格で長期間生産し数が出やすいことから、GPUメーカー各社も全面的に開発協力している。

時には平均的なPCを上回るグラフィック性能を実現した上で、更に野心的・先進的な機能を設けていることも多い。実際、
  • GPUを描画処理以外に使うことをPCに先駆けて採用したNINTENDO64
  • 世界で初めて統合型シェーダー*3を採用したXbox360
という例がある。

2010年代以降は既製品の構成に近くなっており、PlayStationとXboxではAMDのAPU(Zen系CPU+Radeon)が、Nintendo SwitchシリーズではARM CPU+NVIDIAのGPUコアの組み合わせが実装されている。

スマートデバイス(主にAndroidiOS機)

小さな端末に収める都合上、SoCの一部として実装されている。

Android機にはアメリカQualcommの『Adreno』、イギリスARMの『Mali』が主に採用されている。
Adrenoは同じQualcomm設計のCPUであるSnapdragonと一緒に提供されるので、Snapdragon以外のCPUを使う場合はMaliが用いられることが多い(台湾MediaTekのDimensityや、韓国サムスンのExynosなど)。
Apple製品は、ドリームキャストにも採用されたイギリスImagination Technologies『PowerVR』を長らく使用してきたが、2017年以降は自社設計の『Apple GPU』に移行している。


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最終更新:2025年09月20日 16:02

*1 3DCGをディスプレイに映せるよう2Dとして変換する機能。

*2 なお、移植への配慮のため、OpenGLやVulkanとの互換性は持たされている。

*3 従来は分かれていた色や光の計算と物体の生成を一括して処理すること。これによりGPU性能を無駄なく発揮できる。