ゲーム機

登録日:2024/11/04 Mon 17:00:00
更新日:2025/08/03 Sun 23:51:26
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ゲーム機とは、ビデオゲームをするための専用端末のこと。英語ではVideo Consoleと呼ばれることが多い。コンシューマーゲーム機(一般消費者向けの意)とも呼ばれ、その場合の略称はCS機。

広義にはゲームセンターとかにあるアーケードゲームもゲーム機だが、ここではコインを入れたりせず個人が購入すれば楽しめる機種について説明する。
基板とコントロールBOXとかアーケード筐体を丸ごと買うような逸般人は除外する。


●概要

「ゲームをプレイする」ことに特化して作られた家電であり、1980年代以降からパソコンと並行して急速に普及した。
当時のパソコンは機械に詳しい人だけが手にとる大人向けの高嶺の花だったのに対して、ゲーム機は子供から大人に至るまで気軽に楽しめる趣味の家電として発展していった。

理論上は、高性能なパソコン一台さえあれば殆どのゲームソフトは楽しめることになるが、そこまでの処理能力を持たせたパソコンは(現代とはまた違う理由で)とんでもなく高価かつデリケートなものであった。
とても子供がおねだりできる値段ではないし、仮に親が持っていても万が一壊れると大惨事なのでまずゲームさせては貰えなかった。

そこで登場したのが「ゲームだけできればヨシ!」と部品や構造をよりシンプルなものに納め、機能もゲームに特化することで、パソコンより遥かに安価かつ頑丈なプレイ環境を提供できるという極めて画期的な家電「ゲーム機」である。

これの登場により、子供や機械が苦手な人でもゲームに触れる機会が急増。
友達と2人以上でマルチプレイ(という名の友情破壊)して盛り上がったり、画面付きの携帯ゲームを黙々とやり込んだり通信したりといった手軽かつ多彩な楽しみ方ができる趣味となり、キャラクター人気も含めた日本を象徴する娯楽の一つとして定着していくこととなる。

今でこそ潤沢な量のデータを扱えるものの、当時は限られたコストや容量のなかでゲームを成立させる必要があり、開発陣の知恵や技術力もかなり試されていたらしい。ドット絵一枚、フォント一文字から徹底的に削ったのも有名なエピソード。
ゲームとはいっても、当時のノウハウが今日におけるIT技術の進化にも一役買っていると言える。



●高性能パソコン・スマートフォンの台頭とゲーム機の立ち位置


こうしてパソコンやアーケードとも上手く住み分けを果たし、携帯ゲームも長らく非力なガラケーがメインだったことで特に脅威にはなり得ず、家庭向けのゲーム機の地位は最早安泰か……と思われたが、時代の進歩により思わぬライバル達が現れ始めた。

技術の進歩によって手頃な構成でも十分高性能になるパソコンや、ガラケー時代から大幅にパワーアップを遂げたスマートフォンである。それに伴い、ゲーム向けのコンソールサービスも急速に発展し、移植版も多数発売された。
その世代の上位機種であればゲーム機と遜色ないクオリティでゲームをプレイするにもほぼ問題ない時代にはなりつつある。

2024年現在ではPCやスマホ向けのコンソールとの同時展開という形態こそ珍しくなくなったが、ゲーム機も汎用端末にお株を奪われてしまった訳ではない。
現代でもゲーム機にはゲーム機独自の強みがあり、昔とはまた違った形で上手く共存しているのだ。

【メリット】


手軽に安定したプレイ環境が揃う

コストパフォーマンスにおいては、今も昔もゲーム機の右に出るものはない。

自分でゲームパッドを用意しない限りは原則マウスとキーボード、もしくはタッチ操作が必要になり、お世辞にも操作性が良いとは言い難い(こちらで慣れる人も多いが)。
もちろん、ゲーム機であればコントローラーは初めからついてくるのでその心配はない。
今では大差ないが、丁寧に扱わないとすぐにエラーを起こしたパソコンと比べて、子供が遊んでも良いように丈夫にしやすいという恩恵も外せない。
昔コントローラーを投げたりカセットをフーフーしていた人は作った人に感謝しよう。

性能と価格のバランスが良い

システム上でゲームを動かすには、差はあれど一定水準の処理性能を持たなくてはならない。
そのため快適な動作を目指す場合には相応の性能を確保した端末を準備する必要がある。

極端な話、究極のグラフィック体験を探し求めるとどうやってもゲーム機がパソコンには敵わないが、その為に最上位のCPUやらグラフィックボードやらを挙げていくと間違いなく費用がエラいことになる。
パソコン自体の価格は昔より落ち着いたとはいえ、ゲーム向けの高性能なパソコンの場合はグラフィック関係のパーツを吟味する分非常に高くつくのだ。
ぶっちゃけ、最高級グラフィックボード一つ分の予算があれば余裕でゲーム機とソフトが買える。

(据え置き型)ゲーム機の場合、PCと比べて部品がシンプルになり、製造コストも軽いことで大幅な低価格化を実現できる*1

汎用端末が進化したようにゲーム機の技術もまた順当に進化しており、現実的な予算でゲームを普通に遊べればよい人の場合は、現役世代のゲーム機1台で十分過ぎるほど美麗なゲームを楽しめることが多い。

システム側もゲームに専念しやすい


普段使いのパソコンやスマートフォンは他のデータや個人情報とも繋がっているため、負荷の高いゲームでゴリゴリ酷使していると最悪大量のデータごと吹き飛んでしまう心配がある。
ガンガン発熱させても放熱できるゲーミングPCはともかく、冷却ファンもなく常時バッテリーとすし詰め状態のスマートフォンは特に熱を持ちやすい。

その点で言えば、比較的シンプルな構造でゲーム以外のデータを入れないゲーム機は気兼ねなく(?)ゲームの為にフル回転することができる。
勿論、実際に壊れたらなんだかんだショックではあるが、大事なデータや通信手段が巻き添えになるよりは幾分かマシだろう。
どうしても常駐ソフトが増える汎用端末に対し、ゲームに専念できるシステムならその分電力や発熱を抑える設計も行いやすい。

中にはゲーム配信をしたいと考える人もいるだろうが、その場合はゲームと配信の同時進行という重労働にも耐えうるPCが必要になってくるので更に予算が上がる。
しかし、ここで欲張りすぎずゲームはゲーム機に任せることで、PC側は配信作業のみになり負荷を大幅に減らすことができる。
近年では配信やチャットも可能なゲーム機も登場しているが、負荷を減らすという意味ではやはり分担できる体制の方が安定しているか。




規格を統一、最適化しやすい

PCとスマートフォンどちらにも言えることだが、全製品が同じ部品や機種を使用しているとは限らないので、開発者はなるべく様々な動作環境で動作を検証する必要がある。
性能的には問題なくてもパーツとの組み合わせやコードとの相性で思わぬ挙動をすることもあり、当然ながら様々な種類・性能の環境の動作検証していくのは非常に骨が折れる作業である。
一方、ゲーム機の場合は検証を行う端末の仕様が絞れるので開発の負担も軽減される。実際、PC版がある作品であっても動作基準はゲーム機にしていることもある。

プレイする側にしても、機器のスペックとにらめっこすることなく「本体一式があればまず確実に動く」という安心感は重要である。
もし、元々そのゲーム機用なのに頻繁に処理落ちやフリーズするようなゲームがあったら、それは十中八九作った側が悪い。スペックや仕様が分かりきっている機器に対してプログラムを最適化できていないことになるからだ。

また所有者が多く販売数が伸びやすいことも開発側にとって重要な利点。当初はPC向けに作ったゲームが、予想以上に人気が出たということでゲーム機に移植されることも多い。


オフラインでも楽しめる複数人ゲームの選択肢がある

オンライン上での複数人プレイ可能なゲームはどの端末でも充実しているが、対面交流でも使える複数人プレイ可能なオフラインゲームはPC・スマートフォン向けだと少ない。
個人で使うことが前提なPCとスマートフォンに対し、ゲーム機向けの作品はテレビや大型ディスプレイで楽しむことを視野に入れている。
一つのソフトを買えば複数人で気軽に楽しめるのも昔からの強みである。


(物理ROMのみ)ゲームソフトの貸出・譲渡・売却ができる

2020年代現在、PC・スマートフォンの場合はほぼダウンロード(販売)のみに限定されているが、ゲーム機はこれに加えてディスク・カートリッジ方式のパッケージ版も提供されることもまだ多い。
そのため、遊び終わったゲームを他人に貸したり・あげたり、別の作品を購入するための原資に充てることができる。
これは消費者だけではなく小売(特に中古販売店)にとっても良い商材となる。


ゲームに集中できる

汎用機器でゲームを楽しむ人が増えた中、提唱されつつある概念。
スマートフォン・パソコンの依存問題を懸念する層が増えてきた今、ゲーム機以外の他の専用機器と共に見直されている。
ゲーム機は基本ゲームしかできないので無関係な通知が入ってくる可能性は低い。そのためゲーム体験への没入感・集中度が向上しやすい効果があるとか。





【欠点】

拡張性の低さ

パソコン用のUSB機器やストレージを流用できるようになったのも比較的最近の話。
ゲーム機専用の周辺機器は独自規格が多いためか、比較的高価になりやすくおいそれと買い足すには少し厳しい。
また、本体の拡張性についてはメーカー側の構想ややる気次第…というより、発売時点の性能より先は正直期待できないことが多い。機能面はオンラインアップデートとして拡張される機会も増えているが。
機種によっては特に使い道のないまま残された入力端子だったり、時代を先取りし過ぎた珍妙な周辺機器が作られたりすることもある。

また、PCゲームだと有志が開発したアドオンであるMODを入れて楽しむ人も多いだろう。
Windowsと互換性の高いMicrosoftの『Xbox』シリーズは対応している作品もあるが、それ以外は無い。こう言った部分も楽しみたい人は必然的にPC版が推奨される。
一方でMODとチートは技術的には互いに延長線上に存在するため、チート使用者がPCゲームに比べれば比較的少ないと言う利点でもある。

またFF11ではPS2やXBOX360でもプレイできたのだが、ゲームの拡張が進むにつれてスペック由来のフリーズ等の不具合が発生するようになったため、PS2の修理サポート終了とともにサービス自体も終了するということもあった。


将来的にゲームソフトが遊びにくくなる場合がある

拡張性の低さと似た理由だが、ゲーム機は機種が変わると仕様も大幅に作り変えられることから、ソフトの持ち越しが難しいことが多い。旧作を引き続き遊ぶためにはレトロハードも同時に所持し続ける必要が出てくる。
PCゲームの場合はOSが世代交代したとしても古いゲームが全く動作しなくなるというケースは起こりにくいのだが。
また、ゲーム本体は勿論、据え置き機の場合はテレビが対応しなくなることもある。今はHDMIだが、それ以前のゲームはコンポジット端子(黄、白、赤)と呼ばれるケーブルだったのをご存知だろうか?
最近のテレビはデジタル系の入力しか備えない事が大多数のため、このコンポジット端子が付いていないこともあるので繋げないこともある。
これやRGB21/SCART、S端子による入力をコンバートしてHDMIで出力する装置もあるが、大半のコンバーターは変換遅延が存在するためにアクション系のゲームがプレイし辛いという弱点がある。
またアナログ入力では誤魔化せた垂直同期の微妙な狂いが、このコンバーターが対応しきれなくてそもそも画面が表示できない、表示できても歪む等のトラブルもかなり多い*2
ゲーム機によっては後方互換に対応している例もあるが、それも基本は1世代前までがほとんどで2世代以上となるとごく初期のPlayStation3やXboxシリーズくらいしかない。
過去にはバーチャルコンソールなどの公式エミュレータとも言えるレトロゲーム販売サービスなどもあったが、現在は終了している。*3
近年では過去作のリマスターやリメイクもそれなりに活気づいているものの、当然だが収益の見込める人気作に限られるし、大抵の場合再度購入が必要となる。


(機種専用に)最適化しにくい

上の利点と思いっきり矛盾しているが、近年お約束となった「マルチプラットフォーム」での悩みがこれ。
ハードの垣根を越えて同じゲームのマルチプレイ(所謂クロスプレイ)まで実現したは良いが、クロスプレイでは逆にハードごとの違いを吸収しなければいけないので「特定のハード固有のスペック」を余さず利用して動くゲームが近年では却って開発が難しくなっている。
PS2やPS3のゲームの移植が少ないのは、機種独自の最適化が進み過ぎていて(ゲーム機だけに限らず)現行機の仕様では動作を再現するのが難しいためとされている。


●ゲーム機の種類

大きくゲームセンター等に置かれる大型筐体(アーケード筐体)と個人所有する家庭用の2種類に分かれるが、本項では家庭用を中心に紹介していく。

【据え置き機】

自宅などの建物内に置いて使うゲーム機。任天堂の『ファミリーコンピュータ』『Wii』、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の『PlayStation』、マイクロソフトのXboxなどが代表的。
単体では使用できずディスプレイやテレビに出力して使う必要がある。

2000年代に入るとDVD・BDの再生機能が搭載される物が出始め、ゲームをしない層にも購入されるようになった。
また動画配信サービスなどにも対応することでストリーミングメディアプレーヤーの機能を持つ進化も起きている。

○任天堂

○SIE

○Microsoft

○SEGA

○その他


【プラグアンドプレイ機】

据え置き機の中では簡易的な作りのゲーム内蔵モデル。*5
「テレビに繋いで直ぐにプレイ」の謳い文句通り、映像出力のケーブルを繋いだあとは電源をオンにするだけでゲームが遊べる。
近年では電源もUSB供給である事が多く電源コンセントを占領する手間すらも省かれている事も。
その特性上、一部のアーケードゲームのような体感ゲーム機が多い。
近年流行している復刻版ミニゲーム機もこのプラグアンドプレイに入る。
あとなぜか項目が建っている威力棒Viiとか。



【携帯機】

ディスプレイと本体の機能が一体化したタイプの小型のゲーム機。スペックこそ同世代の据え置き機には及ばないが、電源さえ確保できれば場所を選ばず遊べるのが最大の強み。
『ゲームボーイ』『ニンテンドーDS』『PlayStationPortable』などが代表的。
こちらもビデオゲーム黎明期から様々な商品が展開されていたが、1989年に任天堂から通信機能に対応したゲームボーイが登場し現在の形が確立した。
初期の頃はディスプレイの費用と電池持ちの問題から白黒液晶機も一般的に使われていた。カラー機が普及したのは1990年代後半以降である。*6

2000年代半ばになると多機能化が進行。デジタルメディアプレーヤー機能を始め、無線LANを活用したインターネット接続に対応した。
ウェブブラウザも搭載したことからブラウジングマシンとしても活用できるようになり、今のスマートフォンに近い使い方もされていた。
この時代に小中学生だった人の中では学校外だと、これが初のインターネット端末だった人も少なくないだろう。

2010年代に入ると、より多機能で汎用性の高いスマートフォンと市場がぶつかり合うようになる。
結果としてSIEは撤退、任天堂は据え置き機と統合したハイブリット機路線に移行し、純粋な専用機としての携帯ゲーム機はその役割を終えることとなった。
一方でスマホの技術を転用して、中華メーカーを中心にAndroidやWindowsなどとの互換性を持ったOSを搭載したゲーム機が作られるようになり、お気に入りのゲームを気軽に持ち運べる媒体として一定の人気を獲得している。

○任天堂

○SIE

○その他


【電子ゲーム機】

LSIゲームとも呼ばれる。任天堂の『ゲーム&ウオッチ』やバンダイの『たまごっち』等が代表例。
手の平サイズの特に小型なゲーム機であり、ゲームは内蔵式でソフト交換は出来ない、基本的に背景の壁紙を除いてモノクロ液晶と簡易的な作りであり、ジャンルもアクションやパズルなどが主。
70~90年代が最盛期であり、たまごっちブームの際は似たような育成ゲームが大量に発売された事もあった。
現在は技術が進み、カラー液晶のものも見られている…が、その分値段も高くなっており、レトロ需要狙いのコレクションアイテム化も進んでいる。

〇任天堂
  • ゲーム&ウォッチ

〇バンダイ



【ハイブリッド機】

名前通り据え置き機と携帯機を合体させた物。『Nintendo Switch』が代表的…と言うより、2025年現在Switchと直接後継機Switch 2しか存在しない。
携帯機のように単体で使用することができ、大画面で遊びたい時はディスプレイに出力できる万能型。
これのPC版と言っても良い『Steam Deck』などのモバイルゲーミングPCも多数の企業から発売されている。



【VR機】

仮想現実(VR)に対応した物。その性質上ヘッドマウントディスプレイとなる。ゲーム以外の機能も豊富であり、ゲーム機に含まないことも多い。





追記・修正はゲームをプレイしながらお願いします。

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最終更新:2025年08月03日 23:51

*1 事実、初代ファミコンは1万円台の価格でありながら当時のPC機やSG-1000などの競合機を上回るグラフィック性能をウリとしていた。現在でも特に高価とされるPS5Proですら約12万円と、同程度のスペックのPCゲーム環境を一式組むことを考えれば十分安上がりである。

*2 特に解像度をシーンごとに切り替える事もあるゲームに顕著。

*3 代わりに『Nintendo Switch Online』といった加入期間内は遊び放題のサブスクリプション形式へと移行している。

*4 PlayStation Vitaから液晶とコントローラーを排して据え置き機として再設計したもの。

*5 と言っても、発売当初のゲーム機はソフト交換式ではない内臓モデルが当たり前だったので先祖返りと言えるか。

*6 90年代前半でもゲームギアやPCエンジンGTなどのカラー液晶機器は存在していたが、高額商品である事や電池の持ちが悪い事もあり、あまり普及しなかった。

*7 Nintendo Switch自体は下記のハイブリット機だが、本機は画面出力非対応であり事実上の携帯機となる。