凍れる時間の秘法(ダイの大冒険)

登録日:2011/05/05 Thu 06:19:20
更新日:2025/04/22 Tue 10:29:12
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(こお)れる時間(とき)秘法(ひほう)は、漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』に登場する技術。
ゲームドラゴンクエストシリーズ』にはない漫画オリジナル要素である。

同作品における多大なネタバレを含むので閲覧注意。









⚫︎目次


【概要】

メラ系イオ系のような個人の魔法力だけで行使する「呪文」ではなく、天変地異の力を利用した秘術の類。
数百年に一度、皆既日食が起きる瞬間にのみ使用できるとのこと。

これをかけられた対象は、その効果が解けるまではどんな攻撃も受け付けなくなる。
こう書くと鋼鉄変化呪文(アストロン)と似ているが、アストロンの場合はかけられた者は動けないものの意識はあり、会話も出来る。
対して『凍れる時間の秘法』は対象の時間そのものが止まる、つまりいかなる変化も起こらなくなる結果として攻撃の無効化が生じるのであり、根本の意味合いが異なっている。

十分な力を持つものが使えば数百年は効果が継続するので、普通は防御になど使えない。
要するに、本来敵や他者を封印する為に用いられる術ということ。

作中でこれを用いたことが判明しているのは大魔王バーン、並びに勇者アバンの2名。
以下、両者の使用用途とそのエピソードを紹介する。
ちなみに直近の皆既日食は本編開始の17年前に起きている。


《バーンの場合》

バーンは何千年もの昔、自身の体を二つに分けた。
自身の意識と知識、そして魔力だけを残した本体である老人の身体、もう一つは若さと力を分離した身体。
皆既日食が訪れる度、分離した身体に凍れる時間の秘法をかけ続けて己の若さを保っていたのである。

時間が停止した無防備な肉体をどうするかと考えるバーンの前にあるモンスターが現れる。
他人の肉体に宿り自由に動かすことの出来る魔物のミストである。
この主従の出会いにより、何者もそれを倒すことができず、かつバーン本来の肉体の凶悪な戦闘能力を持つミストバーンが誕生した。ぶっちゃけ反則以外の何物でもない。

ただし余りに強力すぎるため、またバーンの秘密が明るみに出ないよう、常時は闇の衣をミストバーンに纏わせて力を押さえさせている。
ミストバーンは必要なときにバーンの許しを得て秘めた力を解放し、長い間1人でバーンを守り続けてきた。
作中語られる「魔王軍など元々必要無い」というミストバーンの言は、誇張ではない本心からのもの。
実際ミストバーンが初めから全開で事に挑んでいたなら、出会った時点でダイ達の物語は終了していたのは想像に難くない。


《アバンの場合》

本編の過去、旧魔王軍を率いる魔王ハドラーを封印するために使用した。
秘法は(アバンが予想した通り)術者であるアバンを巻き込む形でハドラーは凍結。
解凍されるまでの約1年間、魔王の不在で世界に仮初めの平和が訪れた。
レイラはこの時期にダイの仲間となるマァムを産んでいる。
最終的にハドラーが倒されたのは15年前であるのに、戦いの最中にあったはずの両親を持つマァムが16歳であるのはその為。


なおマトリフはアバンを犠牲にしてしまった無力感を嘆き、時間が凍った相手すら消滅させるメドローアを後に編み出している。
本編の最終決戦にポップ達に同行したブロキーナは、この経験からミストバーンの不滅の秘密を解き明かしてポップに助言を与えている。

「心配いらん、ポップ君…」
「キミがマトリフどのから受け継いだ呪文…」
「あれだけは例外だ」

確かに有効ではあったのだが、フェニックスウィングにて弾き返されてしまうオチは空しい…。


ちなみに、本編開始時のアバンの年齢は31歳。
1年間の停止を含めて考えると、旧魔王軍の地上侵略が始まった21年前ではアバンは11歳。
初めてハドラーと対峙し、また魔王打倒の旅に出た18年前は、母国カール王国の騎士団に在籍していた14歳の頃にあたる。
そしてハドラーを倒して名実共に勇者となった時は16歳。

後のダイ(12)やポップ(15)もそうだが、代々若すぎる勇者達である。


【前日譚にて】

勇者アバンと獄炎の魔王』において、この秘法の使用と由来、特性についても詳しく補足された。
元々学者の家系の出であるアバンは、ハドラー打倒の旅の最中、ギュータの隠れ里で大賢者バルゴートの書庫からこの秘法の使用方法について調べていたのである。
同時にただの人間であるアバンには荷が重く、ハドラーに効くことは間違いないものの自身が巻き込まれる可能性が高いことも知っており、カノンからも失敗すれば命にかかわると警告されている。
しかし「自分の命一つで済むなら命を懸ける価値はある」というアバンの覚悟を見て*1、カノンは書物を渡すことを決める。
カール王国にあるアバンの家で行われたマトリフとの会話内容から、かなりの体力を必要とすることも判明する。

この時のレギュラーパーティーは勇者アバン戦士ロカ僧侶レイラ、そして魔法使いマトリフの4人。
しかし、秘法を使う際の決戦にはマトリフと、助っ人として参戦した武闘家・ブロキーナを含めた3人で挑んでいる。
当時既にレイラはロカとの子供を妊娠しており、生まれる子供のことを考えてロカ共々戦いに参加させなかったのが理由。

そして決戦時、当初の懸念が的中。ハドラーに術は命中するもアバンもその余波に巻き込まれてしまう。
時間凍結したアバンとハドラーの取り扱いはマトリフに任され、両者の身柄は隠された。

旧魔王軍は禁呪法で生み出されたバルトスが健在であることを根拠にハドラーの存命は把握していたが、
肝心の封印されたハドラーの捜索に手こずり、その間に魔物達へのハドラーの影響支配力が弱まったのも相まって、
各地で人間達に敗走を重ねて勢力としては大きな弱体化を余儀なくされた。

そして約1年後に両者は秘法から開放されることになる。
アバンは「自分が力量不足で術が不完全だったから封印が解けた」と思っていたが、
実際は魔王軍がハドラーの身柄を奪還するも封印が解けず手詰まりになる中、その戦いを観察していたある勢力から知恵を授けられたガンガディアが秘法を解いた結果、同じ秘法の影響下だったアバンも必然的に時間凍結から解放されることになったのである。それがなかったらアバンとハドラーは未だ封印され続けていたかもしれない。

なお、マトリフも秘法を解く方法自体はいくつか見つけてはいたが、ハドラーを凍らせたままアバンを解放する方法が見つけられないため手が出せずにいた。
(アバンを呼び戻せても、ハドラーまで復活してはアバンの献身の意味がないため)

このことから解呪のハードルはかける時ほどに高くはないことがうかがえる。*2

バーンがミストバーンの正体を隠していたのも秘密がバレて秘法が解かれる可能性を考慮していたため。
それならば秘法を実際に使用したアバンを警戒したのも当然であろう。


【予想外の副作用】

この秘法は時間を止めてしまうため、封印前後で変化はないはずである。
しかし秘法を掛けたタイミングでの精神状態が維持されるためか、それが解除された後の人物の精神状態に影響が出ている。
アバンは秘法を何としてもかけるという精神状態で維持されている為、解除後は精神が強くなり、空烈斬をマスターしている。
対してハドラーは未知の呪法をかけられる恐怖の状態で維持されている為、解除後は精神的に弱くなっている。*3


【余談】

SFC版『ドラゴンクエストⅥ 幻の大地』ではこれと同名の裏ワザが存在する。ここでは詳細を省くが、完全に遂行した場合LV1スライム三体がデスタムーア撃破などと言う無茶も可能である。
DS版『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』でも復刻したが、この裏ワザの副産物のバグにより、レベル1トルネコで地獄の帝王はおろか裏ボスすら満身創痍に出来るほどの火力を叩き出せるという何を言ってるのか分からないバグまで付随してきてしまった。

ドラゴンクエストX』ではVer.4.0のラスボスが「凍れる時獄の秘法」というこの技をオマージュしたであろう特技を使ってくる。


追記・修正は秘法に巻き込まれる覚悟を持ってお願いします。


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最終更新:2025年04月22日 10:29

*1 アバンが既に大半の内容を頭に入れてしまったからというのもある。

*2 ダイ本編でもバーンが合体のために任意で解いている。

*3 これは真・大魔王バーンのメンタルにも同じ作用が出ているとの考察あり。