黒白のアヴェスター

登録日:2019/11/15 Fri 15:43:25
更新日:2022/03/03 Thu 00:04:27
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この世は善と悪に分かれている──
あなたの奇跡を教えてください。



黒白(こくびゃく)のアヴェスター』は、正田崇の作品の一つ。
神座シリーズの4作目であるが、時系列的には最も初期にあたる。


目次
+ 開く



概要

元はアプリゲーム『Dies irae PANTHEON』のエピソードのひとつとして収録されるはずだった第一神座:善悪二元真我(アフラ・マズダ)における神座交代を描く物語。

PANTHEONの開発凍結及びlight(株式会社グリーンウッド)の倒産・解散に伴い、シナリオライターの正田とDies以降の神座シリーズのイラストを手掛けるGユウスケの二人により、「PANTHEONに期待をかけてくださった方々へ対する誠意」として始動した。

現在はクリエイター支援サイトEntyとFantiaにおいて毎週金曜日に更新されている。
序章『祈り』は一般公開されているが、その他の閲覧は課金による支援が必要。
ちなみに主要キャラのキャストはPANTHEON開発時に既に決定しており、しかも半分以上ボイス収録は完了していたという。
そんな彼らの幕間の物語を描いたドラマCDと目覚ましボイスアプリ発売が決まり、本来なら序章から4章までを収録した書籍と共にコミックマーケット98で頒布・配布する予定だったが、
新型コロナウィルス流行によるCD制作の遅延及びコミケ98中止によりドラマCDの発売は延期、2020年8月時点では書籍のとらのあな通販限定販売のみに留まっている。


ストーリー



その宇宙は開闢以来、止むことのない争いに満ちていた。
あらゆる生命が両極端な二つの属性にわかれており、互いが互いを敵視している。
白と黒。光と闇。そしてあるいは善と悪。
定義づけなど何でもよく、確かなことはただ一つ。
彼と我は何があろうと相容れない。
ゆえにどちらかが滅びるまで戦いは終わらないという了解だけ。

彼らはこれを真我(アヴェスター)と呼んでいる。

本能であり、生理であり、常識であるがゆえに。
疑う余地のない真実として、誰もが敵を殺さなくてはならないと知っていた。
これは、そんな冥府魔道の物語。
真我の果てに無慙へ至る――殺戮の荒野を行く男の軌跡。



章題

  • 序章『祈り』
  • 第一章『凶戦士』
  • 第二章『聖王の夢』
  • 第三章『骸の星』
  • 第四章『殺人鬼の宴』
  • 第五章『英雄祭』
  • 第六章『慙愧の空』
  • 第七章『沁みる空隙』
  • 第八章『空に消える』
  • 幕間『崩れ』
  • 第九章『動きだす混沌』
  • 第十章『夢に見るもの』
  • 第十一章『忘れ得ぬもの』
  • 第十二章『不変なるもの』
  • 幕間「神剣」
  • 第十三章『ただ君だけが愛しくて』
  • 第十四章『闇の翼』
  • 第十五章『善悪流転』
  • 最終章『堕天無慙楽土』


用語

真我(アヴェスター)

この世界の生命すべてが持つ絶対法則。
本能的・生理的な常識・真理であり、疑う余地のないものとして認識している。
これを理解することを「真我を読む」と表現し、理解が深まるほどに真我の影響は強まる。

1.この世のすべては相容れぬ二つの属性に分かれており、両者は争わねばならない。
2.自分と相手がどちらの側に属しているかは一目瞭然。
3.どちらの陣営にも中核となる集団があり、これを短期間で全滅させるのが勝利条件。
4.討伐に時間をかけた場合、欠員が補充される。つまり後継者が誕生する。
5.戒律という自己強化手段の運用法。

どんなに理解の浅い一般人でも2までは当たり前に理解している。
当然、善の子供が悪になることやその逆も有り得るが、母は自分諸共に子を殺そうとするし、子は母胎を食い破ってでも生きようとする。

善悪の趨勢は出生率にも影響し、戦士が魔王を討てば続くように戦士も多く現れ、逆に魔王側が優勢であれば魔将が活気付く。


なお、ここに記されていない番外ルールとして、

EX1.善は常に追いつめられる側だが、必ず悪を滅ぼす。
EX2.悪が滅んだ時、価値観が逆転し再び善悪の闘争が始まる。

以上の二つが存在することが神座シリーズの他作品で明らかになっている。
善悪に分かれているが、同胞を守ることについての規定はなく、そもそも善悪という分類すらこの世界の住民の認識でしかない。
+ ちなみに
現代における善悪の勢力中枢はそれぞれ後述の戦士・魔将と呼ばれているが、数千年前の前世代では天将(デーヴァ)地雄(アスラ)と呼ばれていた。
少数精鋭で絢爛な天将は現代の魔将に、脆弱さを結束でカバーする地雄は戦士に相当する。
この時代からの残存組で現在も記憶を保持しているのはナダレのみ。

第一神座の統治期間は2~3万年とされているため、こうした変遷が10回以上続いてきたと思われる。

本能を疑わず自意識を持たない傀儡となった住人たちによって常に闘争が続く世界で、後世の述懐では笑顔の少ない時代だったという。
やっぱミトラって糞だわ。


義者(アシャワン)

善、白、光あるいは右道など、真我における善側の存在。
基本的には善性の存在であり、善き行いを是とし日々を営む。
不義者に比べると能力の質では劣るが数では圧倒しており、両者の均衡は維持されている。

善人であるため互いを認めあい調和の取れた社会を築くが、自然への配慮から文明の発展は遅くまた悪との戦闘においても枷が多い。
たとえば義者は定められた寿命を延ばすことをよくないことと考えるため、治癒や延命と相性が悪い、といった具合。
悪に対しては総じて拒絶の感覚を持ち、真我を深く理解している者ほど悪への嫌悪から怒りに囚われ、荒んだ者が多いともされている。


不義者(ドルグワント)

悪、黒、闇あるいは左道など、真我における悪側の存在。
基本的には悪性の存在であり、勝手自儘な行為を是とする。
義者に比べると数では劣るが能力の質では圧倒しており、両勢力の均衡は維持されている。

悪であるため行動に枷がなく、その能力で文明レベルを無視した問題を宇宙中で巻き起こす。
しかし自由であるがゆえに相手が善であれ認めるべき点は認め、その上で己を第一に生き絢爛無垢で常に笑っていると、善に対して皮肉な現状になっている。


戦士(ヤザタ)

真我を深く理解し、星霊ウォフ・マナフにより加護を与えられた義者。
悪を討伐するため、民の声を聞いて宇宙中に派遣される。
戒律によって一騎当千の力を有するが、それでも対になる魔将と戦う時には集団で戦うのが基本とされる。

なお、戦士として正式に認められずとも悪と戦う者たちは存在しているので、戒律を持つ義者=戦士ではない。


魔将(ダエーワ)

真我を深く理解し、戒律を有する不義者。
基本的にひとつの星に1~2体程度しか存在しないが、単騎での戦闘力は戦士をも圧倒している。
聖王領では四級~一級、魔王候補である特級、そして超絶個体である魔王と階級付けをしている。
一級の魔将が『Dies Irae』の大隊長クラスの強さを持つという。

なお、特級魔将は魔王の後継者とされるが、魔王昇格は真我の一存であり『君臨者』より『挑戦者』の気質である暴窮飛蝗や『従者』の気質であるムンサラートは「その方が映える」という理由で数百年の間に幾度も魔王が滅んでも繰り上げ昇格はしていない。


聖王領(ワフマン・ヤシュト)

『戦士の殿堂』とも呼ばれる善の本拠。
現在本拠地としている惑星は星霊ウォフ・マナフの加護のもと、義者だけが存在する緑豊かな水の星。
節度を守るため文明レベルは中世程度に留まっているが、星霊加護により宇宙中に戦士を派遣している。

悪の打倒という大義を掲げ聖王スィリオスのもとに集っていたが、20年前に魔王クワルナフを相手に大敗を喫し、ウォフ・マナフとごく少数の人員を残し壊滅した。
その時に伝説的英雄を含む多くの構成員を失い、ある程度復興した現在も絢爛なる殿堂としての栄光は取り戻せていない。
+ 20年前の真実
勇者ワルフラーンが3体の魔王を屠り、次の標的として第三位魔王バフラヴァーンに狙いを定め準備を進め、出陣を明日に控えていたその時にナダレの権能『崩壊』によりクワルナフが襲来。
戦士たちのあらゆる攻撃が通じず、星ごと魔王に捕食されていく中、勇者は魔王に「不変なるもの」について言葉を投げかける。

しかし常勝の英雄ですらも勝ち目が見出せない状況に、多くの力なき義者たちの絶望を真我は汲み上げ、恥知らずに感情をさらけ出せるように好意的に転墜させた。
どうして勝てない、勇者のくせに。おまえのせいだ。おまえが死ねば我々は助かる。
力なき義者であったがゆえに強大な不義者となった守るべきだった者たちにより、勇者は磔に処された。
そしてその惨状を見てしまった義者も発狂、あるいは自死を選び、残ったのは僅かに30人ほどだった。
なお転墜した連中は残さずクワルナフにもぐもぐされました
やっぱミトラって糞だわ


七大魔王

別名「黒の七王」。
真我が支配する宇宙において、最強の個体である七名の不義者の総称。
己の欲望に素直で、勝手気儘な獰猛さで厄災を振り撒くが邪気など欠片も存在しない純粋悪。
数億の人間を虐殺しようが、星を喰らう星なんて魔物を生み出そうが彼らに邪気は微塵もなかった模様。
善による魔王の討伐例は数えるほどしかないが、魔王同士による抗争や下剋上によって滅びた魔王も数多く存在する。

高位の魔王は星霊など生命としての規格が人間以上の者も多く、上位の三者など千年を超えて活動する魂の持ち主もいる。

入れ替わりが日常的と言えるものの、王の数は最大七名に固定されており、それより増えることはない。
聖王領では危険度から序列をつけているが上位三名は星を複数滅ぼしているような奴等らしい。
事実、破滅工房は序章の時点で既に五百の銀河を滅ぼしている。

序列 二つ名 名前 所在地 備考
一位 破滅工房 クワルナフ 絶滅星団サウルヴァ 星霊、聖王領壊滅の原因
二位 崩界 ナダレ 特異点アンラ・マンユ 最古の魔王、女性、我力は最弱ながら全宇宙に届く権能を持つ
三位 暴窮飛蝗 バフラヴァーン 暴窮飛蝗アエーシュマ 戦闘者、最強の我力使い、部下は戦闘狂の特級魔将2人
四位 殺人姫 フレデリカ 流血庭園バリガー 新参、部下は88人の『殺人鬼』
五位 不浄不動 マシュヤーナ 空葬圏ドゥルジ・ナス 新参、星霊、戦士のズルワーンとは双子
六位 貪婪餓龍 カイホスルー 龍骸星ザッハーク 圧制者、部下は18人の高位魔将
七位 邪戒廻向 アカ・マナフ 真王領ジャヒー 新参、未来に存在する可能性の魔王

なお魔王同士の間に明確な序列はなく、むしろ兄弟のように感じてすらいる。最古の魔王ナダレは不定期に魔王の集会を開いているともされている。
だがその親愛は殺し合いも含む剣呑な関係であり、特に『暴窮飛蝗』バフラヴァーンは“出会った者とは、誰であれ全力で戦わねばならない”という戒律を持つため、魔王の交代は九割がたバフラヴァーンが原因となっている。

よって一部の例外を除いて彼らの間に仲間意識はなく、もともと自己中心的な黒の性質をさらに極めた者らがそろうため、王同士の殺し合いはもちろん挑戦者からの下剋上が頻繁に起き、顔ぶれは一定しない。
特殊な立場を持つナダレを除き、総じて百年前後の内に地位と命を奪われる。

+ ネタバレ
その実態は神座流転のシミュレーション。
すなわち後代の宇宙に生まれ得る座を握るであろう覇道神の元型(アーキタイプ)となる存在。
真我は最終的には七つの時代と七柱の神が誕生する未来を想定して王の数を7人と定めたが、実際には真我の想定を越えた十柱の覇道神が生まれることになる。


正田卿によると、単体の戦闘力は夜都賀波岐と同ランクとのこと(七大魔王は星破壊級~銀河破壊級、天魔達は太極の設定上宇宙破壊級なので同ランク内でも格差はあると思われる)。


星霊

天体に宿った魂。星という種族。
第一神座においてすべての星は生きているが、その中でも高い潜在能力を持つ星が長い時間をかけて自我を得たもの。
星そのものを己が巨大な肉体として動くものと、霊格を実体化させ奇跡を揮う者の二種類が存在する。
もちろん善悪どちらかに属し、魔王は悪の星霊であることが多い。

星霊を始め第一神座の高次生命は人間などと接触するための触覚ともいえる魂体、星幽体(アストラル・ボディ)を作ることができる。
フィジカル面では人間と同等までスケールダウンするため劣化するが、その分権能や意思といったメンタル面の特殊能力を凝縮することで強化することが可能。
魂の核であるため破壊されればほぼ間違いなく死に至り、クワルナフほどの強大な魔王でも自我の喪失は避けられない。

星霊は“すべてが一つであった頃”の記憶を持つため、種族特性として瞬間移動能力を有する。

魂だけを分離させ他の星を乗っ取ることや、逆に星霊以外の生命が星霊を殺して新たな星霊となる事例も確認されている。
星霊を討伐した者は、自身が星霊にならずとも瞬間移動能力を簒奪することができる。ただしその場合は移動距離に限界などの枷が生じる。


戒律

自身にルールを課すことで得られる特殊能力。
ルールを守る限り、その内容を反転させた恩恵を得ることが可能になる。

例1.
攻撃を絶対に避けず、防御しない。
黄金(創造位階)の軍勢以上の不死性を発揮する。

例2.
金銭をケチらず浪費する。
→浪費する金銭の倍は稼ぐ。

ルールの拘束が重く厳しいほど見返りは大きく、複数の戒律を持つ者もいる。

ただし、一度設定した戒律の変更はできず、戒律を破った場合は良くて即死、悪ければそれ以上に苦しい罰を受けることになる。
また、多重戒律は矛盾すれば破戒の可能性が高まるため、基本的には我力で無理やり抑え込める魔将の専売特許となっている。

特殊な例として、虚装戒律(パランギーナ)という『期間や条件を限定した使い捨ての戒律』を設定する者が存在する。
例えば『三日間喋らない』という戒律で『三日間限定のテレパシー』を得て、四日目からは天罰を受けずに普通に喋るといった具合。
ただし、戒律とは己の信念を昇華させたものであるため、本来ならこのような使い方はできず、可能なのは信念とは無縁な余程空虚な存在に限られる。
その他、大義式戒律という星霊がその惑星の住人全員に課することで自身を強化する「小規模な真我」とも呼べるものも存在する。
+ その正体
端的に言ってしまえば、戒律の役割とはある種の『救済措置』

二元論の宇宙において、生命は生まれた瞬間に白か黒の属性(イロ)を決定され、自由意思もなく争う運命を強制されている。
そんな傀儡たちの茶番劇において、己の覚悟を示し『自分はこうである』と後天的に定義することで舞台に個性(いろどり)という綾模様を付与するものが戒律というシステムである。

もっと雑に言えば、天上に座してすべてを慈しみながら見下ろす、神という観客の興を満たすためのキャラ付けに他ならない。
綾模様おばさん「うんうん、それもまた綾模様だね」


星霊加護

守護星霊ウォフ・マナフが戦士に与える奇跡。
功績によって与えられる使用可能回数が決まり、羽根の形になって身体のどこかに浮かび上がる。
攻撃強化(サーム)防御強化(クシャスラ)回復強化(ハオマ)空中飛行(フラワルド)瞬間移動(シェバーティール)の5種類が存在する。

中世レベルの文明の聖王領が宇宙中に移動できるのは瞬間移動の加護によるものだが、ウォフ・マナフが認める場所以外には移動できない。
そのため、単騎で魔王の居場所に吶喊、といったようなことは不可能な仕様になっている。

攻撃強化と防御強化は重くなる性質があり、逆に空中飛行と瞬間移動は軽くなる性質があるため同時使用の相性は悪い。
通常は1:1で使うのがバランスが良いとされ、偏らせることでバグのような結果となることがあるが、リスクが高く自滅しかねない諸刃の剣。


転墜

善が悪に、悪が善に属性反転する現象。
聖王領の歴史においても数件しか確認されていない稀有な現象で、一般にはお伽噺と認識されている。
サンプルが少ないため発生原因の特定はされていないが、強い負の感情が原因とされている。
また、転墜すると強弱も入れ替わり、強い者は劣化し弱い者は強く生まれ変わるとされる。
+ その実情
転墜が起こる条件、それは『自ら定めた戒律を自らの意志で破戒すること』

己で歩むべき道を定め、そこからなお脱却せんという行為を真我は成長であると看做し、それに見合う(真我の視点からすれば)喜ばしい姿へと転じさせる祝福というのが転墜の真実である。

ただし、それは戒律同様あくまで神という観客から見た基準であり、役者にとっては傍迷惑なことこの上ない呪いでもある。
やっぱりミトラって糞だわ


クワルナフの作品(こども)

『破滅工房』の異名を持つ魔王クワルナフの創造物。
どれもがこの時代ではオーバーテクノロジー甚だしい代物で、善悪問わず求め合い争奪戦を繰り広げている。
作品名 効果
クイン 登場人物を参照。
孔雀王(マラク・タウス) マグサリオンの鎧。物理法則の破壊・歪曲、すなわち我力の獲得によりただ頑強なだけでなく肉体の崩壊という現実を歪めた結果の蘇生効果を持つ。
ただしその性能を引き出すには供物を捧げ続ける必要があり、永続ではない。
後に原初環を手に入れたサムルークにより複製品が作られたが、そちらは記憶を代償にする。
カミサマ 所有者の祈りをもとに『魔将を生み出す』という形で願いを叶える偶像。
百の悲劇で一の奇跡を起こす願望器。冬木の聖杯かな?
凍結封印 人間一人分程度の極小範囲の時間停止装置。
範囲内の物体は時間が止まりあらゆる干渉を受け付けなくなる
原初顕す番の環(マシュヤグ) マシュヤーナが所有する指輪。彼女が自我に目覚めるのとほとんど同時に入手した切り札にして分身のような魔導具。
所有者の願望を基に番となる差異が生じた複製品を生み出す。


殺人鬼(ノコギリ)

慣用句ではない、文字通り『人類を殺すこと』を生態とした不義者に属する人類種。
理由のない強大な殺意を有する反動でそれ以外の感情が希薄。表面上は総じて陽気に見えるが本質的に殺人欲求の表現方法に過ぎない。
既に自分たちは人ではないという認識から同士討ちはしない。

人を殺すという信念から逆に人以外の動物への殺傷は忌避する傾向にあり、それ故に食事は人喰い。成熟した殺人鬼は食事自体を取らなくなる。過激派ヴィーガン
『魚が泳ぎ方を考えないのと同じ』と比喩されるように、武術など殺人の技巧を鍛えるという発想がなく、武器にも頓着しない。食器など適当なものを即興の武器に用いるが、愛着のある道具は秘蔵する場合もある。
その強靭な意志の力によって物理法則をねじ曲げ、食器や掃除道具一つ持っただけでも街区を容易く壊滅させるだけの我力を持つ。
最も甚大な被害の記録ではわずか三時間で八億人を虐殺している。

加えて命を奪う者である彼らは性行為のような『命を生み出す』行為は行わない。
そして基本的に不死身であり、肉塊からでも再生する。『殺人鬼とはそういうものだから』以上の理由はない。


我力

不義者が持つ戒律とは別の異能。
文字通り我の強さで物理法則などを塗り替え、荒唐無稽な現象を実現させる意志の力。
中には戒律の底上げや一見不可能な戒律を成立させるために併用する者も存在する。

全体主義的な義者には向いていないが、逆に不義者は他者への祈りや力の結集などが不得手。


会合(ガーサー)

七大魔王が不定期に呼び寄せられる集会。
ナダレが根城とする特異点アンラ・マンユに強制的に瞬間移動させられる。

会合中は誰も死ねず、殺せず、また発生期間も数十年~千年以上と一定せず、期間も数時間~数日と完全にランダム。
これは特異点そのものに宿るシステムのため、主にして最長老であるナダレ自身にも制御不可能。

なお、特異点が第一と異なる神座由来であることや、その性質が歴代覇道神が集められた謎の空間『極奥神座』に類似していることから、第零神座やミトラの宇宙戦艦アーディティヤとの関連性も指摘されている。

なお、ナダレ自身の意向で集合はせずとも念話は可能。こちらも巻き込まれる他の魔王に拒否権はない。
今流行りのボイスチャット


英雄祭(ウルスラグナ)

年に一度、英雄ワルフラーンの命日を挟んで七日に渡って聖王領で行われる祝祭。
英雄の誕生から成長を模した剣舞を行う前二日、かつての誉れ高き無礼講の宴が続く中三日、勝利への誓いを捧げる後二日で構成されている。
華々しい催事であり聖王領の民には盛り上がれる期間だが、その実態はあたかも聖王領が善悪闘争で優位であるかのように見せるプロパガンダ。
士気を維持し新たな戦士を召し上げるために必要不可欠な欺瞞だが、英雄のネームバリューを利用しているという点は否めない。


神剣

かつての義者に相当する者たちが作り上げた決戦兵器。
中枢の消滅による大規模転墜を乗り越えた旧世代の生き残りのひとつ。
しかし真実を忘却したクワルナフや怠惰に膿んだブシュンヤスタ同様、徒労感から自滅を夢見るようになってしまったという。

その概念を知る者は少なく、また知るに足る器の持ち主でなければノイズが走り認識すること自体ができない。



登場人物

義者

マグサリオン

「間抜けが、俺に仲間などいない」

CV.伊藤健太郎

身長:193cm 体重:90kg

戒律1: 『絶し不変なる殺戮の地平(サオシュヤント・アウシェーダル)
◎自分と他者の間で殺意以外の物理接触を禁じる。
→殺意の総和が攻撃力に変換される。
戒律2:『絶し不変なる凶剣の冷徹(サオシュヤント・マーフ)
◎いつ如何なる時も戦いに即応可能な状態を維持する。
→戦いにおける第六感が研ぎ澄まされる。
戒律3:???

主人公。全身を鎧で覆う異端の剣士。

戦士であり悪を滅ぼす意志は非常に強いのだが、その怨念染みた決意は同胞からも危険視される凶戦士。
武才そのものは凡庸だが、その経験に基づく戦術と執念は現在の聖王領で最高の武功という実績を叩き出すに至る。
しかし性格に加えて『悪を滅ぼすためなら同胞ですら手に掛ける』という行動律から規律違反の常習犯であり、憧れる者もいれば疎ましく思う者もいる。

三つの戒律を持つほか、星霊加護を複数同時に使用した際に発生するバグを攻撃手段として利用する。
これはハイリスクハイリターンで簡単に出来る事ではなく、マグサリオンの勘と経験による部分が大きい。
作中ではウォフ・マナフの星霊加護を攻撃に全振りし、山サイズの巨体で三つの都市を粉砕していて驚異的な再生能力を持つ魔将を欠片も残さず滅殺している。
因みに星霊加護の刻まれた部位は眼球

この物語は彼による悪絶滅RTA殺戮の荒野に独り立つまでの軌跡である。

正田卿曰く『一言で表すならダークヒーロー』『お近づきにはなりたくないが遠くで見ていたいという観察対象』


クイン

「私はクイン。あなたの奇跡と共に在る者」

CV.種崎敦美

身長:162cm 体重:50kg

戒律:『輝ける従順(アクワルタ・スラオシャ)
◎他者の指示や願いに従う形でしか行動できない。
→指示さえ受ければ応じた性能が跳ね上がる。

正ヒロインであり実質的な主人公。金髪赤目の少女。

魔王クワルナフに作られた自動人形であり、祈りを蒐集する善の戦士。
祈りの観測者として設計されたため常識人的な思考回路を持つが、そのせいで周囲に振り回される苦労人。
創造主であるクワルナフのことは「お父様」と呼ぶが、悪である父を滅ぼすため命令を忠実に遂行している。

他者の意識と同調する機能を有しており、それを使って宇宙中の義者に語りかけ、同志を募るとともに祈りの蒐集を日常的に行っている。
『黒白のアヴェスター』は彼女の意思を受信した義者(読者)へ語られる物語である。

戒律は他者の指示や願いに従う形でしか行動できない代わりに、指示や願いに応じた己の性能を超強化してその願いを叶える、というもの。
複数人からのオーダーを重ねる事で、「卑怯とも言える域」の身体強化となり、疾風迅雷をそのままに体現して数秒で山すら崩す程の火力を発揮するなど、適切に使えばリターンも大きい。

詳しくは項目参照。


サムルーク

「あたしがいるだろ。心配すんな、上手く使ってやるからよ」


身長:181cm 体重:68kg

戒律:『霊鳥への階梯(シームルグ・アッタール)
◎負傷を癒さない。
→負傷するほど攻撃力が増大する。

新参の戦士。赤毛の女性。

気風のいい姉御肌で、弄り役。頭は良くないように見えて回転や理解が早いタイプ。
調子がよくたびたびクインを困らせるが、善人でありマグサリオンの行動に反感を抱く。義理人情に篤い正統派。

戒律はPANTHEON当時から例として出されていたもので、ダメージを治癒しないことで攻撃力に変換するというもの。
発動すると赤い闘気という形で顕れ、負傷・欠損した部位を強化・補修する。またパッシブ効果として負傷したままで生存できるように出血多量・臓器不全・感染症その他での異常が起きないという恩恵もある。
手足の欠損までに至った攻撃の際には闘気が幻肢の手足を創り出し五百倍近く巨大化し、右手と左脚だけなら身長九百メートルを超え、その重撃は山を抉り砕くほどで渾身の一撃は隕石の直撃にも等しい威力がある。
ただしあくまで『傷付いても生きて闘える』能力に過ぎないため、痛みは常に感じている。
また、頭部や心臓へのダメージは当たり前に致命となる。
それでも笑っていられる驚異的な剛毅さこそがサムルークの本当の力とも言える。

正田卿曰く『姉御肌・不良・長身・四肢欠損。ごめんなさい、全部正田の趣味です』
それなんてエレ姐さん


ズルワーン

「世の中ごちゃごちゃしてないとつまらねえ。
白か黒かの二つに一つって、何が楽しいんだそんなもん」

CV.前田剛

身長:180cm 体重:72kg

戒律:『我は我によって立つ(デーンカルド・アイオーン)
◎あえて戒律を持たない。
→他者の能力を無効化する。

金髪で、ジャラジャラとアクセサリーを付けた奇抜な風貌の男。

クインが初めて出会い、彼女を聖王領に連れてきた戦士。
現在の聖王領ではマグサリオンに次ぐ武功の持ち主だが、不真面目かつ他者の神経を逆撫でする言動が多いため、少なからず信奉者のいるマグサリオン以上に嫌われている。

性格最悪で卓越した銃技を操り、関わった相手を引っ掻き回す嫌われ者のトラブルメーカー。派手な服装を好む飄々とした金髪の不能者。
つまり、そういうことである。
CVは間違いなくルネ山かマエタケ。
→案の定マエタケ。

元は現在の空葬圏を構成していた星のひとつに宿る星霊であり、魔王マシュヤーナとはほぼ同時期に自我を得た双子の関係。
マシュヤーナに殺された直後に意識を維持したまま人間に転生し、聖王領に保護された。

詳しくは項目参照。


フェルドウス

「どうだ、凄いだろう。僕は君らなんかと格が違うんだ」


身長:159cm 体重:51kg

戒律1:『楽園の祝祭日(ノウルーズ・フェルドウスィー)
◎一日一種の技しか使えない。
→日替わりの必殺技を持つ。
戒律2:『絶し届かざる救世の理想(サオシュヤント・アウシェーダル)
◎自分と他者の間で殺意以外の物理接触を禁じる
→自己嫌悪の念が強いほど殺傷力が増す。

クインと同期の戦士。中性的な顔の少年。

生真面目な性格で同期のクインに対して対抗心を持っているが、若干空回り気味。女性に対する免疫も少なく、少し肌を晒されただけで大きく狼狽える。
20年前に壊滅した聖王領の歴史を調べ、マグサリオンや彼の兄であるワルフラーン、聖王スィリオスを信奉している。
男らしく格好良い戦士になりたいと振る舞いを心掛けている。

詳しくは項目参照。


アルマ

「彼を見て、自分が泣いていることに気づいたから。
ああ、私はまだ枯れていない」


身長:166cm 体重:55kg

戒律:『神聖なる献身(スパンダルマド)
◎生涯を通して不義者の男にしか抱かれない。
→善悪認識の阻害、及び抱いた不義者に対する絶対的殺害権。

芸術の如き均整のとれた赤銅色の肉体を持つ白髪の美女。
20年前の聖王領の敗走で生き残った一人でマグサリオンとは幼馴染の間柄。
魔将の討伐数は多くないが、代わりに一級魔将を五人も屠ったという暗殺の専門家。

戒律は義者の女としての幸福を全て捨てるという重い代償と引き換えに、義者と認識されなくなるというもの。
義者側からも善と悪が混ざったようにはっきり認識できなくなり、オフにできるのは聖王領にいる時だけと単独行動に特化している。

また、自分を抱いた不義者に対して絶対的な殺害権を獲得する。
世界法則を捻じ曲げるほどの覚悟は、どれだけ距離が離れていようと相手がどれほど格上でも、条件を満たした相手であれば理論上は確殺可能。
抱かれる際に心から悦楽を覚えるほどに殺害権は高まる。

この戒律のためアルマは既に女としての自己肯定感はなく、悪を滅ぼし善なる地平が生まれた後に穢れ果てた自分は死ねばいいという、後の無慙と似た破滅主義者。

正田卿曰く『今まで男ばかりだった『自己評価の低い有能』枠』『恋の行方は決まってるけど相手の男がなぁ……』


ロクサーヌ

「綺麗にして、美味しいものを食べて、にこにこしてれば大丈夫。
私がしっかりプロデュースしてあげるわ」

身長:165cm 体重:57kg

戒律:『敬虔なる背理(タローマティ)
◎性行為の禁止
→強い魅惑の力を持つ

聖王領の運営を差配する十二諸侯の第九席シャフルナーズ侯。

金髪に褐色肌の妙齢の女性。
最高位の回復強化の使い手で主な仕事は広報事業。聖王の愛人とも噂されている。
しかし本人は堅苦しいことが嫌いで、クイン曰く『女狐』
お祭事が大好きで調子に乗りすぎるきらいがあるのが珠に傷。
特級魔将たるザリチェード相手に軽口を叩きつつ、真っ向から単身で互角以上に渡り合う等、その戦闘力は極めて高いが、その正体はカイホスルーの第一寵姫『龍玉姫』。
実はカイホスルーより若干年上で、二人は幼い頃から共に行動してきた姉弟のような関係。
互いが初めての相手であり、戒律は以降に課したためロクサーヌにとってのカイホスルーは、最初で最後の男という扱い。

性に奔放なビッチがデフォな不義者の女性の中でも一際性欲の強い彼女だからこそ成り立つ戒律。
不義者を虜にし、義者であれば真我の属性認識を誤らせる幻惑の力を発揮する。

正田卿曰く『イメージは美人で、賢く、しかもエロい美人秘書』『女性陣へのカウンター的なパリピっぽい感じ』


インセスト

「僕が来たからにはもう安心だ。
ヒーロータイムの始まりだよ」

身長:わりと高いぞ 体重:秘密だ

戒律:『最善なる天則(フヴァエトヴァダタ)
◎マシュヤーナの真実を叶える
→マシュヤーナへの特攻能力を持つ。

マグサリオンたちと魔王マシュヤーナの戦闘に突如割り込んできた男装の麗人。
傾いた格好や空気を読まない言動などズルワーンに似た雰囲気を持つ。

ヒーローを自称する義者だが一般人として見ても下な方の実力しか持たない。
しかし『マシュヤーナが理想とする姿』を体現することで魔王としてのマシュヤーナを否定するという対マシュヤーナに特化した戒律を持つ。

そんな戒律に彼女が至った理由とは……

詳しくは項目参照。


スィリオス

「お前の慙愧を晴らしてやりたいと思っているのだ。
ワルフラーンの友として」

身長188cm 体重90kg

戒律:光輝なる絶対王政(アクワルタ・ジャムシード)
◎聖王領に住まう全義者を記憶する。
→ 彼らに対する絶対強制権を持つ。

聖王領の頂点に君臨する当代の聖王。制作上の旧名はジャムシード。
かつては才能にあふれた若者だったが、ワルフラーンと出会い彼こそが真なる英雄であると確信しサポートし続けた。

聖王領の壊滅後は生き延びた者たちを率いて再興に尽力したが、同時に二元論の法則に対して違和感を覚えるようになり、20年の間にそれは確信へと変わっていった。

戒律は歴代の聖王が受け継ぎ続けるもので、聖王領に所属する義者全員のプロフィールを記憶することで、彼らに対して絶対的な命令権を得るもの。
選定の聖剣ジャムシードを抜くことで戒律が付与されると同時にその時点での義者全員の情報が流れ込み、良くて自我を失い廃人、悪ければその時点で狂死という非常に重い戒律。
スィリオスのように自我を保ったままでいられた王は歴代でも数人しかいない。

正田卿曰く『覇道適性の持ち主』『何を言ってもネタバレ』


ナーキッド

「殿方同士の絆は大事になさってください。
私は邪魔をしませんから」

身長:164cm 体重:50kg

戒律:『聖歌聖典(アフナ・ワルヤ)
◎自意識を持たず演者として脚本に従う。
→世界の首席としての立場を得る。

「星姫」と呼ばれた聖王スィリオスの妹であり、ワルフラーンの婚約者。
二千を超える星霊と心を通わせ、自在に使役できた星の巫女。
20年前の聖王領壊滅時に婚約者を喪い、勝機が見える時まで時間停止装置で封印された。

その正体は本来の『当代の勇者』であり、白の極北である虚無。『みんなの意思に染められる者』
他者の願いによって与えられた役割を忠実に演じる操り人形であるがワルフラーンにその資質を奪い取られ、勇者の退場により再び白痴へと逆戻りしていたが……

戒律は勇者の立場を奪われてなお演者としての在り方を選んだ彼女に対する真我の祝福。
天下の誰よりも自らの立場を弁えている者として、この宇宙の最強種である星霊をも従える君臨者として振る舞うことができる。
主役の条件は神の玩具」というこの世界の真理の一つを体現した能力とも言える。


ワルフラーン

「おまえの笑った顔を見せてくれ。
それさえあれば、俺は誰よりも強くなれる」

身長:191cm 体重:87kg

戒律:『転輪し必勝する救世主(サオシュヤント・デサーティール)
◎敵に必勝する。
→倒した敵の強さと能力を自身に加算できる。

マグサリオンの兄。故人。享年27歳。
聖王領の歴史上で唯一、魔王の討伐を三度も成し遂げた伝説の英雄。
豪放磊落で一本気、誰よりも笑い、泣き、不思議と人が集まるというカリスマの持ち主だった。
本来、勝利するために設定する戒律を『まず勝利すること』と前提に置くという唯一無二の戒律を自らに定めるなど、戦乱こそが法となっている世界で『勝利の後』を考えていたことが示唆されており、魔王を含めて他者とは明らかに意識の階層が異なる異質な人物。

戒律の遵守難易度は他とは比べ物にならないほど困難となったが、強大な敵を倒すほど飛躍的に強くなる「勝者の概念の具現化」とも言うべき戒律へと昇華。
その結果、倒した敵の能力を戒律も含めて『必勝する』という大義のためにアレンジし取り込むという絶大な恩恵を獲得し、おまけに取り込んだ戒律もアレンジの結果『必勝する』という大元の縛りに統合されるため多重戒律にならないという副産物までもたらされた。
そしてこの戒律によって本来味方であるはずのスィリオスとナーキッドから『愛する心』と『勇者の資質』をも奪い取った

聖王領を襲撃したクワルナフに対し奇跡の何たるかを見せつけ、それがクインの誕生へと繋がった。
しかし彼の最期を目にした義者は一様に自殺するか発狂したとされるが……


スプンタ・マンユ


戒律:名称不明
◎仲間を持たない。
→無双の力を手にする。

『超縮退星』の異名を持つ星霊。
恒星が一生を終え超新星爆発した後に残るブラックホールの成り損ない、中性子星が新たな自我に目覚めたもの。
その表面積は平均的な都市一つぶんの小さなものだが、その身に恒星級の質量を有しており、人類が居住可能な星の数千億倍に匹敵する荒れ狂う超重力により他者の生存を許さない。

数と結束が売りである善に属し、慈悲深い性を持ちながらも孤高の戒律を誓うことで破格の力を得た善側の最高戦力。
過去には魔王を討ったことさえもあるがその戒律のために聖王領には所属せず、20年前のナーキッドの呼びかけにも応えられなかった。

バフラヴァーンと引き分けたとされている七百年前のクワルナフはもちろん、銀河破壊級のクワルナフ以上の強さとされるナダレを会合で一度は倒しているバフラヴァーンを途中までは上回る実力を備えていた。
一級そこらの魔将が万人集まろうとスプンタ・マンユには敵わない。

星体の姿でも強力な力を操るが、魂体の状態での全力の突撃は銀河に轟くガンマ線バーストの唸りと共に行われ、その輝きは恒星が生涯で生むエネルギー量を上回る。これの直射を受けたが最後、数万光年先にある星すら壊滅する。
しかしこれさえ余波に過ぎず、星霊としての権能を全開放したスプンタ・マンユの突進は、瞬間的にブラックホールすら踏み砕く。

第三位魔王バフラヴァーン相手に奮戦するも、その一撃により戦死。創作史上最強の噛ませ犬。

魂体は電磁波の鬣を持つ青紫の馬。人間形態も取れるらしく正田卿曰く「14・5歳くらいの美少年で一人称は我」「いや美少女の間違い」
あぁ“中性子”ってそういう……


アショーズシュタ

「アーちゃんが来たからにはもう安心っす。
大船に乗ったつもりで任せるっすよ」

身長:140cm 体重:35kg

戒律:『翼持つ者の天則(ダフマ・アルドワヒシュト)
◎常に飛び続け、着地をしない。
→有翼種としての特性が強化される。

空葬圏に生息する霊鳥。
その背中に義者たちの生活圏を庇護する巨大な梟で、霊格はウォフ・マナフにも匹敵するが精神は十歳前後の少女のそれ。
魂体も少女の姿で「アーちゃん」と呼ばれるのを好む、梟なのに暗闇を怖がるなど全く威厳はない。

一方で猛禽らしく外見に反して性格は獰猛かつ過激で、空葬圏の他の飛翔生物が相互に協力しながら飛び続けているのに対し彼女は孤高を貫く戒律を設けることで自身を強化している。

隠形(ステルス)の加護を持ち、空葬圏でマシュヤーナから逃げ延びてきたのもこの能力によるところが大きい。
他者に加護を与えることもでき、五感や霊覚さえも透明化できるなど非常に強力。

なお隠形の命名者はインセスト。本来の名称は『アーちゃんシークレットスタイル』と身も蓋もないので却下されている。


アフラマズダ

「それをもって契約としよう。
ああ、なんとまあ私たちの恥知らずなこと」

戒律:『智慧の浄め(ヴェンディダード)
◎真実を口外しない。
→全知に近しい力を得る。

宇宙開闢の時より存在する善側の決戦兵器。
魔王ナダレと対を成す、善悪闘争を加速させる真我の触覚。
当代の剣の巫女であるクインを依代に活動している。

ワルフラーンに発見されたことで彼の愛刀となり、クワルナフにより捕食されたことで彼女を素体に自動人形のクインが創造された。
ただし現在のクインは神剣の一部しか継承しておらず、また未だ別に存在している可能性すら示唆されている。

代替わりするナダレと異なり彼女は開闢から同一の存在として善悪闘争を見続け、その果てに己の死を願うほどに膿んでしまっている。
そしてこの善悪二元の宇宙を終わらせるため、英雄ワルフラーンとある計画を目論む。



不義者

クワルナフ

「奇跡とは何だ? 希望とは何だ?
みんなとはいったい、どういう単位だ?」

身長:■■■ 体重:■■■

戒律:天翔ける破滅の戦輪(プシュパカ・ラタ)
◎武器になるものを生み続けねばならない。
→凶悪かつ強大な破滅の権化になっていく。

破滅工房(はめつこうぼう)の異名を持つ七大魔王の序列一位。
司る悪性は『忘却』

その正体は極超巨星サイズの星を身体とする悪の星霊であり、自身と同じ性質を持つ恒星サイズの分身50以上からなる『絶滅星団サウルヴァ』を率いて宇宙を放浪する、空前絶後のモンスター。
彼にとっては銀河すら食べ物に過ぎず、序章の時点で五百ほどの銀河を滅ぼしている。
星を喰らう星であり、取り込んだものを体内で合成し新しい機能を持つものとして吐き出す性質から『破滅工房』と名付けられた。
会合の時にのみ魂体としての人間形態として顕現し、その容姿は数十の銀河を束ねた法衣を纏う金髪赤眼の美神の如き男。

詳しくは項目参照。

高濱ァ!高濱亮が付けた通称は『暗黒ド○えもん』
確かに丸いし、銀河ってどら焼きに似てるけれども。


ナダレ

「私はみんなの魔王だから。
みんなのためにこうするんだよ」

戒律1:『迷妄の崩れ(ヴェンディダード)
◎善悪闘争の管理者として振る舞う。
真我(カミ)の触覚たる力を得る。
戒律2:『不変なる正義もたらす絶対悪(アンラ・マンユ)
◎真なる魔王として務めを果たす。
→運命操作を可能にする。

『崩界』の異名を持つ七大魔王の序列二位。
司る悪性は『矛盾』

数千年の時を生きる最古の魔王であり、黒と白が入り混じる奇妙な風貌の女性。
神剣と対を成す、善悪闘争が決着するたびに代替わりし新たな闘争を加速させる真我の触覚。
こことは異なる神座(時代)の遺物である宇宙船を根城にし、その性質で不定期に魔王の会合を開いている。

彼女を含む歴代のナダレは凡人でありながら身に余る大志を抱き、挫折しながらその願いを捨てなかった者が名を奪われ、神の触覚として道化を演じる役目を担わされた成れの果て。
この宇宙で唯一許された疑似求道神として宇宙や善悪の操作等の権能を揮うことが出来るが、大義式戒律によって転墜を禁じられているため神を呪いながらも役割に逆らうことが出来ず、結果としてその挫折から虚無的になる運命を背負っている。

そんな中で彼女は神剣と共謀し、新たな世界の礎となり神に吠え面をかかせるため独自の戒律を自らに定め暗躍している。



バフラヴァーン

「そうか、よかったな。
しかし俺のほうが強い」

身長:228cm 体重:200kg

戒律1:『終わりなき群生する暴窮(マルヤ・アエーシェマ)
◎孤独を恐れず戦い続ける。
→己と寸分違わぬ分身を作り出す。
戒律2:『殲くし滅ぼす無尽の暴窮(ハザフ・ルマ)
◎出会った者とは誰であろうと全力で戦わねばならない。
→体力の消耗がない永久機関になる。

暴窮飛蝗(ぼうきゅうひこう)の異名を持つ七大魔王の序列三位。
司る悪性は『暴性』

二メートルを超えた筋骨隆々の体躯の、灼炎のごとき烈しい髪を持つ大男。
最強を目指す戦闘者にして求道者。出会う者全てを倒して、星を幾つも滅ぼす天災を巻き起こしているため序列三位と認定された。
戦闘経験は魔王の中でも抜きん出ており、誕生したその時から一瞬たりとも休まず戦闘力が増し続けている。
「この世のすべてと戦い、倒し、最後に残った者が最強である」という思想の元宇宙を渡り歩き、破壊と殺戮を繰り返して自分以外の全てを絶滅させんとする傍迷惑極まりない戦闘狂。

詳しくは項目参照。


タルヴィード


「俺なら一〇分、いいや七分――違う七秒で終わらせてやる!」

身長:178cm 体重:70kg

戒律1:『殲くし滅ぼす無尽の暴窮(ハザフ・ルマ)
◎出会った者とは誰であろうと全力で戦わねばならない。
→体力の消耗がない永久機関になる。
戒律2: 『殲くし螺旋する熱望の剣(タルヴィ・アストウィーザート)
◎自身が行うすべての挙動を螺旋軌道でしか成さない。
→それによる攻防すべての威力や精度が跳ね上がる。

バフラヴァーンに敗れてなお生き残り、バフラヴァーンの生き方に共感してしまった惑星破壊サークル戦闘狂の集まり『暴窮飛蝗アエーシュマ』の現構成員。
どちらも宇宙に4人確認されている特級魔将の一角で、バフラヴァーンと同じ戒律を有している。
二振りの曲刀を武器とし、蒼銀の全身鎧を纏った聖騎士の如き男性。

詳しくは項目参照。


ザリチェード


「で、でも仕方ない。そういう戒律。
出会った奴は殺さなきゃ、殺さなきゃ」

身長164cm 体重48kg

戒律1:『殲くし滅ぼす無尽の暴窮(ハザフ・ルマ)
◎出会った者とは誰であろうと全力で戦わねばならない。
→体力の消耗がない永久機関になる。
戒律2: 『殲くし直進する渇望の槍(ザリチェ・アストウィーザート)
◎あ自身が行うすべての挙動を直線軌道でしか成さない。
→それによる攻防すべての威力や精度が跳ね上がる。

バフラヴァーンに敗れてなお生き残り、バフラヴァーンの生き方に共感してしまった惑星破壊サークル戦闘狂の集まり『暴窮飛蝗アエーシュマ』の現構成員。
どちらも宇宙に4人確認されている特級魔将の一角で、バフラヴァーンと同じ戒律を有している。
冗談じみたほど巨大な突撃槍を武器とする、血に染まったような紅蓮の全身鎧を纏う女。
「渇きの化身」と形容されるような痩せこけた容姿で、途切れ途切れの吃った喋りに陰鬱な雰囲気を纏っている。

詳しくは項目参照。


フレデリカ

「わたしと出会ったのだから、ちゃんと死なないと駄目ですよ」


身長152cm 体重44kg

戒律:『殺人鬼の掟(キラークイーン)
◎敵が繰り出すどんな攻撃も避けないし防がない。
→それを守る限り不死身。

殺人姫』の異名を持つ七大魔王の序列四位。
司る悪性は『無知』

豪奢な金髪に青いドレスを纏う少女。
本編までの二十年間、数億人単位の大虐殺を繰り返して複数の人類社会を絶滅させている。
秘蔵する武器を持つ殺人鬼であり、彼女の武器は大鎌デスサイズ。
拾い上げたそこらに落ちているモノを振り回した程度で宮殿ごと湖を消滅させるクレーターを作って星の地形すら変えたり、果ては慣性の法則どころか時空間の概念すら無視する。
全霊を乗せて振るわれる大鎌は星すら一刀のもとに両断し得る。

胎児の時点で自身を身籠る母親を自殺させその胎から産まれた忌まわしき鬼子。
従者である88人の『殺人鬼』たちを従え、生死が飽和する混沌の場を跳梁跋扈する純粋な殺意の塊。

詳しくは項目参照。


ムンサラート

「私の名はムンサラート。特技は人殺し全般です」


身長184cm 体重77kg

戒律1:『偉大なる主へ捧ぐ讃歌(ザムヤード・ヤシュト)
◎自分を倒した者の中で、最も眩しい存在に服従する。
→主命により能力が跳ね上がる。
戒律2:『魂の裁定者(ウシュターン・ヤシュト)
◎全盲、及び極度の健忘症。
→近い未来の情報を見ることが出来る。

魔王フレデリカに仕える執事。
ノコギリ男』の異名で百年以上前から名を馳せる、宇宙に4人確認されている特級魔将の一角。
種族としての『殺人鬼』であり、当該種族の『ノコギリ』という通称の由来となった人物。

詳しくは項目参照。


マシュヤーナ

「おまえが悪いのだズルワーン。何もかもおまえのせいだ」

身長:170cm 体重:57kg

戒律:『最愛なる天則(フヴァエトヴァダタ)
◎他社から向けられる想いに同質同量の想いを返す。
→敵の攻撃を完全な形で反射する。

不浄不動』の異名を持つ七大魔王の序列五位。
司る悪性は『退廃』

死面(デスマスク)じみた白磁の容貌に民族衣装(和装)を纏う痩身の美女。

その正体は30年ほど前に自我を得た星霊で、英雄の死に影響されて巻き起こった空葬圏ドゥルジ・ナスの蠱毒を生き延びた巨大な枝垂桜。
花弁の1枚が島ほどの大きさであり、さらに億を超える(ナス)などの不浄なる生物の姿をした二級魔将へと変換することができる。

双子であり、自らが殺し損ねたズルワーンに異常な執着を見せている。

詳しくは項目参照。


カイホスルー

「祈れ願え、奇跡を謳え。おまえたちの寿命は俺が決める」


身長190cm 体重85kg

戒律:奪い貪る三首の業報(アジ・ダハーカ)
◎自分の財を惜しまず消費する。
→消費に見合ったリターンを得る。

貪婪餓龍(どんらんがりゅう)』の異名を持つ七大魔王の序列六位。
司る悪性は『痴情』

長い赤毛を幾つも結わえ、踊り子のような衣装を纏う浅黒い肌の美丈夫。
その正体は支配惑星である龍骸星ザッハーク(土星程の大きさ、直径は約10万km)の星霊を殺し、その地位を簒奪した星霊。
星にとぐろを巻ける程巨大な、貴石と貴金属の鱗を纏った龍である。
破壊に特化した他の魔王とは異なり、自分の上で生きる民を支配し、骨の髄まで搾取することに特化した変り種の魔王。

詳しくは項目参照。


アカ・マナフ


邪戒廻向(じゃかいえこう)』の異名を持つ七大魔王の序列七位。
司る悪性は『虚構』

その名は『悪意の翼』を意味し、聖王領が滅びかけて20年の間に新たに君臨した魔王の一角だが、何故か一切の活動を行なっておらず、本人の名前と、聖王領の遥か真上に位置する所在地『真王領ジャヒー』の名前しか記録されていない状態にある謎の魔王。

その正体は『未来において存在する可能性のある内なる影』。スィリオスは己の裏面が具現化した時に目覚めると考えていた。
しかしナーキッドにより幾多の星霊を善悪の区別なく混ぜ合わせ、剣の形に凝縮した神剣の邪悪なパロディとして具現。
真我の軛を断つというスィリオスの願いを叶えるためのナーキッドの剣となる。


ブシュンヤスタ


戒律:『至天もたらす勝利の礎(ラージャカルマ・アンギラス)
◎与えられたものを拒まない。
→与えられたものに適応する。

『悪夢の女神』と呼ばれた特級魔将の星霊。
クワルナフやナダレ同様、前世代からの生き残りで2000年あまりを生きる最古参の魔将だが、『怠惰』という己の属性に従い50年ほど寝ては僅かに起きるというサイクルを繰り返す女性。

しかしブシュンヤスタが寝ている間、彼女が支配する星ではその悪夢が現実となり地獄絵図と化すため、住民たちは目覚めのたびに人身御供を差し出して平均一月、長くても半年は眠らないよう無聊を慰めるという抵抗を2000年に渡って繰り返してきた。
後の英雄ワルフラーンが7歳で人身御供に名乗りを上げ、5年かけて抵抗した結果、最後は信じられぬものを見て逃げ出すように、恐怖の相を浮かべて狂死した。

彼女の戒律は何物をも拒まず受け入れ、その供物に適応するというもの。
自ら願ったものではなく生まれた際に付与された生贄としての大義式戒律であるが、星とその環境、さらに大転墜により黒の属性を捧げられた結果生まれながらの星霊、不義者よりもその立場に適応。
結果として零の時代に接続し、英雄ワルフラーンという異物を生み出すこととなった。


アパオシャ


戒律:???

フレデリカの先代の第四位魔王。
星体も魂体も漆黒の馬の姿をした邪悪な星霊。

侵略した星霊及びそこに住まう女を犯し、自らの眷属を孕ませるという民族浄化的な手法で手勢を強化する知性を持たない種馬真性の獣。
その方法も生きたまま四肢と舌を切り落とし文字通りの孕み袋にするという悪辣さで、義者の尊厳ごと踏み躙る旱魃の魔王。

本人はワルフラーンとナーキッドによって倒されたが、犠牲者の処理を担ったスィリオスに深い影を落とすことになった。






























ミトラ

「すべては人の心が織り成す綾模様。それを美しいと私は思った」


戒律:『悠久の果てに集えよ怒りの軍勢(ディエスイレ・パンテオン)
◎ 怒りの感情を抱かない
→激しく怒っている者ほど強い世界を生む

第一神座の法則を流出する覇道神
紫がかった赤毛に赤青のオッドアイの女性。

神咒神威神楽において、邪宗門こと転輪王の花輪(サンサーラ・ヴァルティン)が残した碑文には『神座を巡る闘争の重圧に負け、「我が討ったのは悪しき者であり、故に我は善である」という詭弁に逃避した女』と刻まれていた。
彼女の『善と悪が闘争する』『善は常に悪によって窮地に立つ』という認識が流出したのが善悪二元真我であり、つまるところこの世界が荒んでいる元凶も元凶。

正田卿曰く波旬でさえ一宗教のご本尊になるくらいには信者がいるけど、真我にはマジで一人も信者はいません。第一神座の連中は全員無慙の萌え豚なので」

作中、登場人物らに存在を認識されてこそいないが、彼女の流出する法則は一部の者から『狂った母親に抱かれているようなおぞましさ』『狂母の呪縛』といった具合に否定的に受け止められている。
残念でもなく当然である。
付いたあだ名は『綾模様おばさん』
ミトラ「おまえも綾模様にしてやろうか」

物語が進み真我関連で陰鬱な展開が起きるたび、あるいは真我の真実が語られるたびにどこぞの水銀よろしく「ミトラ死ね」「やっぱりミトラって糞だわ(略して「やミ糞」)」と罵倒されるのが読者の間でお約束になっている。というかなまじ冗談じゃない分水銀より酷い。
まぁ最後は無慙に討たれて死ぬわけですが。

なお本作終了後、彼女を主人公とした『事象地平戦線アーディティヤ』の連載がスタート。果たしてミトラの過去とは…。

詳しい経歴はこちらを参照





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最終更新:2022年03月03日 00:04