突然、行政庁に来たテロリスト共がライフルを連射している。
目の前で何人もの職員が倒れていった。
そのような状況の中で私は、笑っていた。
このテーブルの設計上では内部に鉄板が組み込まれており、弾は貫通しない。
奴等が同じように連射していれば、直にリロードしなければならないはず...
その隙をついて逃げ出すしかない...!
さっきまで派遣軍の要請を伝えに来た職員はまだ生きている。
すぐ隣にいるその職員に声をかける。
「おい、お前! 奴等がリロードする隙をついて逃げ出すぞ!」
「わ、分かりました!!」
その職員の見かけはまだ若かった。
新人なのに大変な目に遭っているものだ。
何秒待っただろうか...
食いしばっている歯も痛くなりはじめ、これが現実のことだと実感してくる。
すると、発砲音は収まり始め、マガジンの落下して床を叩きつける音が聞こえた。
「今だ!」
と、私は叫び、出口へと走る。
若い職員は後へと続き、後ろをついてくる。
私はドアノブを回し、廊下への逃げ道を開く。
しかし、少し遅かった...
やはり、マガジンの交換時間のほうが早かったようだ。
後ろを追いかけていた彼は足を打ち抜かれ、倒れこんだ。
倒れた彼は助けてくれとでも言うように手をこっちに伸ばし、必死な顔をしている。
「ーーーー」
何かを言おうとしたのか口を開いた瞬間、脳漿を打ち抜かれ、彼の全身は床へと倒れこんだ。
そんな状況の中、私は外へ脱出しようと動く。
銃弾が私の腕を追いかけ、貫通していった。
鋭い痛みにふらつきながら、どうにか廊下に出る。
そうすると、廊下の奥の方から何人かの足音が聞こえた。
「ーー応援到着、執務室にてテロリストの襲撃!ーー」
「ーー執務室前方にて、職員と思われる怪我人1名発見!ーー」
どうやら、駆け付けた応援隊が到着したようだ...
そう気づくと、突然めまいが起こり、意識を失った...
知らない天井だ...
目が覚めると、そこはどうやら医務室のようだった。
いくら
ケートニアーといえど、怪我をすれば、それ相応の支障は出る。
撃たれた私の左腕は、包帯が巻かれていた。
「
レーシュネさん、状態はどうでしょうか?自分で報告できますか?」
振り返ると、そこには看護婦がいた。
窓から差し込む日光が重なり、若干眩しい。
「ああ、少し痛む...あの後はどうなった...?」
「状況を説明します、少々お待ちください。」
看護婦は部屋を出ていき、部屋に一人になった。
5分ほど待っていると、部屋の戸がノックされて開いた。
「長官、回復して良かったです。」
出てきたのは、軍服を着た一人の男だった。
すこし老いている人だ、服装からも上位の軍人なのだろうと思った。
「何日か前に、臨時行政庁にテロリストが侵入してから、本部を別所へ移し対策を講じました。」
「被害はどうなった?」
「被害は...内部にいた職員の過半数が殺害されました...」
その軍人は残念そうに状況を報告した。
そして、軍人は言葉を続けた。
確実となった事項に私はため息をついた。
クラナとの接触は、間接的に
タリェナフ派との戦争となるだろう。
「あと、貴殿に会いたいと言ってる方がいらっしゃいます。」
「私に会いたい...?」
彼が言ったことに少し戸惑った。
行政庁の職員だろうか? それはない。
あの日に大勢の人が殺された。
私に会うという余裕も今は無いに決まってる。
分からない点を考えていると、病室の扉が開いた。
入ってきたのは3人いた。
2人は見覚えがあった。
ゼマフェロスの訪問者の翻訳をしていた
SHEPOLの
ラムノイ君。
もう一人はその訪問者の
アシュタフィテス君...
そして、あと1人は誰か分からなかった。
黒髪の短髪で金飾りをつけた青色の見慣れない上着を着ている。
その顔はなにか決意にあふれた顔をしていた。
どうやらゼマフェロスの民のようだった。
そんな中、アシュタフィテス君がお辞儀をして、何かを言った。
おそらく挨拶か何かだろう。
「レーシュネ殿、ご回復おめでとうございます。」
「お初にお目に伺います。私の名前はロスナ・ゼスナディと申します。今回は貴殿にお伝えしたいことがあって、参りました。」
彼らが言った言葉をラムノイ君は後に続いて翻訳する。
すると、突然ロスナ・ゼスナディと言った者が頭を下げた。
「私の失態において、ノルメルの騎馬兵を貴国の会議所に襲撃させてしまったこと、大変申し訳ありません。」
ノルメルの軍とは関係ないだろう彼が頭を下げたことに私は驚き、詳しく聞くことにした。
どうやら、クラナはもっと複雑なことになっていたようだ...