「降ろしてくれ…降ろしてくれ!俺はまだ行けないんだぁーーっ!」
円谷プロの特撮作品『
ウルトラQ』の実質的な最終回である第28話
*1「あけてくれ!」に登場する
乗り物。
現実世界から時間と空間を超越した「理想郷」へのジャンプ台の役割を果たす謎の
列車。
現実の辛さに絶望した人々を乗せて
その世界へと連れて行ってくれるが、
理想郷へと至る際に過去の日常を振り切れず
「あけて」などと言うと途中下車させられ、
以降はいかに現実に幻滅してもう一度搭乗させてもらおうと思っても、二度と搭乗させてもらうことはできない。
同じような性質を持つエレベーターも存在しており、こちらはどこまでも深く降っていった先に理想郷へと辿り着く。
窓が無い≒未練に繋がる過去を見せ付けられる心配が無いので単純な移動手段としてはそっちの方が便利そうである
この手の「理想郷に連れて行ってくれる」という話は、
「
理想郷なんてものは存在しなかった。辛くても現実で頑張って生きていくしか無いのだ」とか、
「その地の人にとっては理想郷かも知れないが、地球人・日本人の感覚とは全然違った」とか、
「移住先には移住先なりの不都合や悩みはあるもので、結局100%完璧な理想郷なんて存在し得ない」とか、
「
表向きの理想郷を維持するために、裏では酷い事が行われていた」とか、
「
理想郷に行きたいなんて願う愚か者を騙して招き寄せる罠だった」とか、
何かしら裏の落ちが待っているのが定番であるが、この話では本当に現世の悩みから解放された良い場所が存在するらしい。
結局この話の落ちは「一度は思い止まって異次元列車から降りた男が、やっぱり乗りたいと言い出したが、無理だった」というもの。
理想郷の存在はまず間違いなく、そこが良い場所であるという事は否定されなかった。
現実に戻って来れない(らしい)のが唯一の難点であるが、
何らかの方法で原稿などの郵送物を理想郷から現実世界へ送ったり、特殊な短波を使い電話で交信することもできる。
理想郷に行ってしまった小説家が、現実に残してきた家族のもとへ原稿を送り続けて生活の支えを果たしているあたり、
「
現実世界とはもう関われない。残してきた人との繋がりは断たれる」とか、
「現実世界に残してきた人の事を想うのは理想郷の住人には不要な未練だと洗脳される」と言った事にはなっていない。
そうしたよくある偽理想世界・ディストピアものとは異なっているのが、この話の不思議さを際立たせている所である。
そして、この回の主役となる「異次元列車に乗ってしまった男」、
沢村正吉が悲惨な人物である。
車掌から異次元列車の仕組みと行先、そして到着したらもう戻れない旨を聞かされたのち、
車窓からは妻や子との在りし日の美しい思い出の光景、そしてそれらが自分を呼ぶ声が聴こえてきた。
*2
思わず正吉は項目冒頭の台詞を叫び、現実に帰ろうとした。その結果無事元の世界に帰ることが出来た…が、話はそれで終わらなかった。
妻からは
「みっともないったらありゃしないわ!正体もなく酔い潰れて身も知らぬ余所様の所に担ぎ込まれるなんて…」と罵倒され、
娘はその両親の姿を見て
「お父さんもお母さんも大っ嫌い!これが夫婦なの、親子なの!?」と喚き出す。
職場に出勤しては
「何時だと思ってるんだ!退社時刻になって出勤する社員がどこにいる!」
「何だその目は!まるで金魚じゃないか!貴様酔ってるな?西も東も忘れやがって!」等と上司に雷を落とされる。
…あの車窓の光景とはまるで違って、
帰ってきた現実は、彼を冷たく厳しく迎えた。家庭にも職場にも本来あった筈の居場所はもう無いも同然なのだ。
そして彼は帰る場所もない中夜の道を歩き、ふと見上げた空を走る見覚えのあるそれに、項目最下部の台詞を叫ぶのであった。
この列車が
妖怪的な存在なのか、
ヤプールのような異次元の存在なのかは明かされていないが、
異次元列車の車掌(演:堤康久)がケイブンシャの『全怪獣怪人大百科』に掲載されたことがある他、
『円谷プロ全怪獣図鑑』では怪獣として「異次元に住む人」、その補足情報として異次元列車が掲載されている。
また『
ウルトラ怪獣擬人化計画』で美少女擬人化されている……が、流石に完全な人型ではなく、
アイギスのようなメカ要素の強いデザインになっている。
……というかシリーズファンでも、多くの人は多分言われないと「異次元列車の擬人化」とは気付かないかもしれない。
設定やデザイン的に扱いが難しかったのか、アニメには登場せず漫画『ギャラクシー☆デイズ』では
顔すら描かれていないモブキャラ扱い。
てか、普通に車掌の恰好で良かったんじゃないですかね?
夢オチの1/8人間と並んで『Q』の超常的存在の中でも際立って異端の存在であり、
その設定や来歴が極めて曖昧なこともあり正規映像作品やゲームなどのメディアミックスでも登場したことは無い。
ただし、この列車の
次元を超える能力が
マルチバースすら渡れるものだった場合、
マルチバースの設定が確立した
ニュージェネレーション作品にて、
何らかの形でこの次元を渡る力を活かす立ち位置で登場させられる余地はあるかもしれない。
実際に『ウルトラマン:アロング・ケイム・ア・スパイダーマン』では、
ウルトラ世界内のマルチバースどころか
マーベルユニバースから
スパイダーマンと
Dr.ドゥームを運び込んでいる。
『ウルトラシリーズ』のキャラとしては珍しく
タカラトミーから商品化されており、
プラレール
*3として徳間書店の雑誌「ハイパーホビー」2004年3月号誌上限定で発売された。
ちなみにタカラトミーは他にも『ウルトラシリーズ』関連商品を発売しており、トミー時代の「ウルトラマンプリント4000」や、
「ウルトラマンキッズ スピンレース」(厳密にはタカラトミーに買収される前の株式会社ユージン製)、「メタコレ シン・ウルトラマン」等がある。
MUGENにおける異次元列車
カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
しゃがみやジャンプの概念がなく、
上下左右に飛び回りながら移動する。
ガードが一切できない代わりに、投げなどステートを奪う攻撃に対して完全無敵。
原作で戦闘描写が一切存在しないこともあり、所有する技は全て乗り物系キャラらしい体当たりによる攻撃。
通常技は3種類で、弱・強攻撃の使い分けに加え、原作の展開をモチーフにした
投げを持つ。
必殺技として下向きにカーブを描きながら突撃する「快速」、1
ゲージ消費の
超必殺技として高速で直進し突っ込む「特急」を持つ。
キャラアニメーションが一切存在しない割り切った作風や、ステートを奪う技が一切通用しない点から、一見
のりもの勢にも思えるが、
ハイパーアーマーまでは有しておらず、攻撃を喰らうとしっかりやられステートに移行している。
喰らい判定はしっかり全車両に存在するが、どの技も
攻撃判定は先頭車両の前方にしかない、という点には注意。
AIもデフォルトで搭載されている。
「連れてってくれ…!俺も連れてってくれ……!」
「どこへでも連れてってくれえーー!」
出場大会
プレイヤー操作
*1
2023年現在では映像ソフトや配信サービスなどで最終話=第28話として位置付けられているものの、
制作順では第4話とかなり早めに撮影されており、本放送時では第20話となる予定だった。
しかし、怪奇路線から怪獣中心の路線へのシフトが決まったこと、話が難解だという理由でエピソード自体がお蔵入りする羽目になってしまった。
その後、1年半後の再放送で24話として無事日の目を見た他、年月の経過と共にその扱いも整理が付いたのか上記のように至る。
*2
明言はされていないが、番組の制作年代や作中描写から察するに、妻子が第二次大戦時に戦地へ出征する正吉を見送る際の光景だった模様。
愛する妻と幼い我が子が死地へと赴く自分を辛そうに見送る様子をまざまざと見せつけられたのだから、
正吉が本当は上手くいっていないはずの現実を忘れて取り乱す程の郷愁に駆られてしまったのも無理からぬ事だったと言える。
*3
作中で異次元列車の外観として使われているのは「小田急3100形電車」という、
小田急電鉄でかつて特急「小田急ロマンスカー」の運行に使われていた実在車両である。
この車両はプラレールでもラインナップされており、限定品ではその色変え品としてモノクロで表現することで『Q』作中の異次元列車を再現した形である
(もっとも総天然色版『Q』では異次元列車は普通に実車のロマンスカーの色に塗られているため、
普通のロマンスカーのプラレールの方が劇中再現ということになってしまうが…)。
この車両の運行開始は1963年で『Q』当時はかなり新しい車両だったが、2000年に引退しており、プラレールの方も3100形は絶版となっている。
最終更新:2025年02月26日 21:08