「低予算映画の王者」「B級映画の帝王」の異名を持つロジャー・コーマン氏が監督した、
1956年制作のSFアメリカ映画『金星人地球を征服』(原題:It Conquered the World)に登場する地球外生命体。
日本では長らく劇場未公開でテレビ放映のみであったが、「
怪獣図解」で名高い大伴昌司氏が少年誌の記事等で
「金星ガニ」として紹介し、
日本人にはこの呼称が定着しているため本項目でもそれに準じて記載する。
なお、映画本編では特に名前は無く、呼ばれる場合は「金星人」とか「クリーチャー」であるが、スタッフからは「Beulah(ビューラ)」と呼ばれていたらしい。
一般名詞的な呼称しかないと呼びにくいので米国では俗称として、
「キュウリ(あるいはナマコ)の怪物(Cucumber Creature)」「アイスクリームコーン」などと呼ばれている。さもありなん。
でかい頭と両手のハサミが特徴の生命体。
デザインは『百万の眼を持つ刺客』のリトル・ハーキュリーズや『From Hell It Came』の
Tabongaなどを手掛けたポール・ブレイズデル氏が担当しており、
着ぐるみの内部にも彼自身が入ったらしい。
当初は当時の「大重力の惑星の生物は背が低くなる」という
科学考証*1に基づき
平たい形状の生物として造形されたが、
映画の怪物としては迫力に欠け、主演女優からも
「本当にこれが地球を征服しに来たの?」と蹴り倒されたため、
コーマンの指示で上方向にパーツを継ぎ足した結果、このデザインになったという。
ハサミは人間を絞め殺せるほどの力があり、身体を覆う甲殻は至近距離でバズーカ砲を喰らっても傷付かない強度を持つ。
ただし眼球だけは弱く、弱点となっている。
人類の現状を憂う天才科学者アンダーソン博士と偶然交信に成功し、地球を改善しようとする博士を騙して移住・侵略を企てていた。
地球に飛来した斥候員は超能力で地上の機械文明を麻痺させ、地球人の精神を遠隔操作できるコウモリ状の装置を各国の要人に放つ。
しかし、アンダーソンの友人のネルソン博士が洗脳された妻ジョーンを止むを得ず射殺する出来事が起き
(一度コウモリにコントロールされてしまうと、たとえ金星ガニを倒しても元の人格には戻らないため殺すしかない)、
さらにアンダーソンの妻クレアが身を呈して金星ガニの正体を明かし、そして惨殺されるに至ったことで、
人間性を回復して反旗を翻したアンダーソンにハサミで重傷を負わせながらも、眼にガスバーナーをブチ込まれて倒された。
まさしくB級映画のテンプレのような作品ではあるものの、
1966年には『金星怪人ゾンターの襲撃』(原題:Zontar, the Thing from Venus)としてリメイクされている(
機界生命体とは無関係)。
こちらの金星人は三つ目のコウモリ怪人といったデザインに変更されているが、肝心の造形があまりにもショボく、
案の定旧作(と言うより金星ガニ)ファンからの評判は芳しくなかったようだ。
余談ながら、ネルソンを演じたピーター・グレイブス氏は、後年『スーパーフューリー』『スパイ大作戦』の主演として成功した役者である。
また、
『メタルギア』シリーズでは、『MGS3』でFOXの医療担当でB級映画マニアのパラメディックが通信で同作を話題に出している。
MUGENにおける金星ガニ
カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
弾丸マックス氏提供の
スプライトを用いて作られており、ファイル名は「Beulah」。
「とびかかり」や「体当たり」などの技を持つ近接戦向けの性能だが、コウモリを2体まで召喚する遠距離攻撃も持つ。
超必殺技はいずれも1
ゲージ消費で、「突撃」「大群コウモリ」、ガード不能技「洗脳光線」の3つ。
AIもデフォルトで搭載されている。
出場大会
プレイヤー操作
*1
実際の金星の重力は0.91Gで地球と大差は無い。というよりむしろ弱い。
なお、太陽系の惑星・衛星で表面重力は大方の予想通り木星の2.53Gトップなのだが、次でいきなり海王星の1.14Gまで落ち、
3位の土星は地球とほぼ同じ1.09G、地球は4番目で当然1G、天王星に至っては0.89Gと金星よりも弱い。
後年の「キングギドラが金星を1夜(地球時間120日)で滅ぼした」という設定然り、当時の一般人の天文知識の具合が窺える話と言えよう。
なお、木星や土星の重力が低く感じられるかもしれないが、これは所謂ガスジャイアント(巨大気体惑星)故に見た目より軽いからである。
最終更新:2024年05月12日 23:46