岩谷尚文


「俺は弱いんでね、時間が惜しいんだよ。」

小説投稿サイト『小説家になろう』に掲載され、MFブックスより書籍化された作品『盾の勇者の成り上がり』の主人公。
名前の読みは「いわたに なおふみ」。
担当声優はアニメ版が 石川界人 氏 、ドラマCD版が 鈴木達央 氏。

元はごく普通の現代日本で暮らしていた大学2年生で20歳の青年だったが、図書館で『四聖武器書』を読んでいる最中、
世界を脅かす「波」と呼ばれる災害に対抗する勇者の一角「盾の勇者」として、他の3人の青年と共に異世界に召喚される。
だが、召喚された国であるメルロマルクは盾の勇者を嫌う三勇教が国教であり、
尚文は召喚されてから3日目にして王女であるマルティ=S=メルロマルクに性犯罪者の冤罪を着せられ、
伝説の盾を除き身一つでこの異世界に放り出される。
これにより、金も世評も理不尽に失った彼は極度の人間不信に陥り、従来の人の良さが鳴りを潜めて冷酷な性格へと変貌。

このような極限状況でも「波」から生き残り、元の世界に帰るために抗う事を決意するが、
自身の武器が「盾」である事と、「他の武器を所持できない」という勇者の特性により、
守る事しかできない尚文はレベルアップが難しく、強くなるには「尚文が守りつつ共に戦う誰か」が必要であった。
人間不信に陥った彼に信頼できる仲間を募るなど到底不可能な状況だったが、
「奴隷商」を名乗る怪しい男の提案に乗り、裏切る事が不可能な奴隷として購入した亜人の少女・ラフタリアと旅を始める。
そんな中、ラフタリアの美貌に目を付けた槍の勇者・北村元康から「自分が勝ったらラフタリアを奴隷から解放しろ」という条件でいきなり決闘を申し込まれ、
国王により強制的に決闘に参加させられた挙句、本来勝てた試合に八百長で敗北してしまう。
しかし、独善的かつ一方的な言い分で自身を尚文から奪おうとする元康達をラフタリアは拒絶。
彼らから聞かされる尚文の悪評も一蹴し、絶望から錯乱する尚文自身から拒絶されても傍にいる事を宣言される。
自分と自身の無罪を心から信じ、一緒に居ようとするラフタリアの信頼を受けた尚文は、
異世界に召喚されてからようやく出会えた「理解者」を得た事で救われ、それ以降は表面的な言動は変わらないまでも人間味を取り戻し、
当初は契約による主従という関係でしかなかったラフタリアとも信頼を築いていく。
なお、これだけだと単純に人間不信の救済に見えるが、この決闘回までの尚文はPTSDで味覚障害と認識障害を起こしており、
ラフタリアは尚文のお蔭で見違えるような美少女に成長したものの、彼からは拾った時の痩せっぽちの幼女のままで認識され続けていた。
そんな彼が、ようやく彼女を正しい姿で認識する場面は序盤のハイライトと言える。
+ ネタバレ注意
こんな理不尽な冤罪を着せられた理由は、上記の通り三勇教が四聖勇者のうち・弓・槍の勇者を神と崇め、
逆に盾の勇者は「盾の悪魔」と呼んで忌み嫌っているためだが、そもそも三勇教は最初は盾の勇者を召喚する気は無かった。
本編開始の一月前、予言に書かれていた「災厄の波」が起きて世界全体が大被害を被っており、
世界各国は四聖勇者を召喚するために世界会議を行い、各国が召喚する順番を決めてメルロマルクは4番目となったのだが、
これを聞いた三勇教は自分の国に神である三勇を召喚して力を強めようと画策し、勇者召喚の媒体となる聖遺物を偽物にすり替え、
本来の順序を無視して盗んできた聖遺物をメルロマルクの王・オルトクレイと共に四聖勇者の独占召喚を試みたのである。

しかし、剣・弓・槍の勇者だけを召喚するはずが、彼らの見込みに反して盾の勇者まで召喚されてしまった。
三勇教としてはすぐさま盾の勇者を抹殺したかったのだが、そうすれば他の召喚者達の不信を買うのは明白であり、
そうでなくとも聖遺物を盗んでいるのに加え、勇者まで死なせてしまったら他国との戦争は避けられない。
よって、三勇教はマルティの冤罪事件を支援するという形で盾の勇者として召喚された尚文を追い出し、
教義に則り三勇者に「盾の悪魔」を抹殺すべく、信者や三勇教側の隠密部隊「影」を使って盾の勇者の悪評を広めようとしたり、
国と結託しギルドやマルティを通して三勇者に尚文に悪印象を抱くような情報を送るなど、卑劣な裏工作を行った。

しかし、尚文は反感を持たれる「盾の勇者」という身の上を隠して行動し、
しかも利用しようとしていた他の三勇者は「ゲームの世界に召喚された」という認識だったため、
彼らの起こした騒動などが民衆の間で悪評として広まってしまい、逆にそれらの尻拭いを尚文が行ってきた結果、
民衆の間で尚文と他の勇者達の評価は次第に逆転。
業を煮やして勇者同士で対立する状況を作ろうと工作するも、逆に剣の勇者・天木錬と弓の勇者・川澄樹が国と三勇教を疑って調べ出したため、
遂に信仰対象であるはずの三勇者すらも偽の勇者として抹殺し
(聖武器の所持者を新たに召喚するには、波が発生していない状況で一度揃った四聖全員が死亡していなければならない)、
自分達に都合の良い真の勇者を再召喚した上で、次期女王候補二人をも殺し、教会の擁立する者を王位に据えようと目論んだ。

要は「冤罪をかけられたから迫害されていた」と言うよりは、
「他の勇者に怪しまれずに盾の勇者への迫害を正当化するために冤罪をかけた」というのが真相だが、
冤罪を着せた当事者である王女のマルティは他人を陥れるのが好きな外道であり、
外面こそいいがとにかく呼吸するかのように他者を貶める筋金入りのエゴイストで、こうした三勇教の思惑とは無関係に下種である。
また、国の実質的な最高権力者かつ真っ当な為政者でもあった王妃ミレリア=Q=メルロマルクが外交で国から離れていた状況も、
これらの暴挙に拍車を掛ける形となった。

抗争の末に教皇が尚文に倒されて三勇教は邪教認定された。
オルトクレイは三勇教やマインの陰謀をろくに疑いもせずに利用されたため名前を「クズ」と変えられるなど因果応報な目に遭ったが、
最終的に自分の蛮行を反省している一方で、マルティは悪足掻きの末に魂まで消滅した。
三勇者には尚文は直接制裁はしていないが、仲間に愛想を尽かされて捨てられたりマルティにいいように利用され、
いずれも悲惨な目に遭っている。

固有装備として、異世界に召喚された時から持たされた「伝説の盾」を所持している。
この盾は常に体にくっついて外せないため、一時期身分を偽っていた時は盾に見えない「本の形をした盾」などに変化させる必要があった。
装備した者は自身の防御力が極めて強化され、身体に直接攻撃されても受けるダメージは大きく減少する半面、
攻撃力は全然伸びなくなり、攻撃動作もできなくなるばかりかアイテムなどの間接的な攻撃方法も使用不能になる
(攻撃に用いないのであれば、薬品や包丁などの調理用具は使用可能)。
そのため戦闘では防御で様々な効果を持つ盾や結界を操り、敵の攻撃や移動を阻害して味方を守るなど、サポートに特化した戦い方しかできなかった。
中盤以降はカウンタースキル付きの盾が使えるようになり、以降はそれを攻撃手段にしている。

また、当初は他の三勇者が召喚前の世界でプレイ済みのゲームという形で事前情報を得ていた中で、
一人だけそういった事前情報が無かったために、不遇職かつ情報弱者なのに加え、世間の評判も最悪という三重苦スタートを切る事になったものの、
ゲーム知識を過信した結果あちこちでトラブルを重ねる三馬鹿三勇者を尻目に尚文達は着実に実力を付けていき、
しまいには「三勇者が迂闊に突出して早々に全滅し、尚文達一行が最後まで踏ん張ってその尻拭いをする」
のが半ばテンプレ化する程に、その立場は逆転していく事になった。
尤も、こうした勇者同士の不和や情報の食い違いには裏に隠れた陰謀が関わっており、
何より「波」の打破には全員で力を合わせざるを得ないとして、次第に和解する道を模索する展開になっていく。

中でも槍の勇者・元康は、特にきつめのざまぁ展開で精神が弱っていた時に優しくしてくれた鳥系幼女、
フィーロを「天使」として熱烈に信奉するようになり、フィーロの保護者である尚文の事も「お義父さん」と呼び、
下にも置かぬ扱いをし始めたあたりからすっかりコメディリリーフとして仕上がってしまい、
本編で散々酷い事をしてしまった尚文達を時間遡行して救済しようとする元康主役の外伝作品、
『槍の勇者のやり直し』まで作られてしまった。
なお、ただでさえ難易度の高い歴史改変を、事前知識を過信してトンチキな行動を取りがちな元康がまともに出来る筈も無く、
全ループで余計なお世話しか働かなかった(どころかラフタリアにとっての最悪の結果まで発生させていた)ため、
ループの内容を知ったラフタリアからの好感度は更に下がった。まあ、本編と独立した外伝らしいオチとも言えるか。

+ 『盾の勇者の成り上がり』作品解説
本作は『小説家になろう』に投稿された異世界転移系の作品の一つであるが、
『ありふれた職業で世界最強』やシンデレラ系の女性向けなろう小説と共に、
Web小説の中で異世界モノの「ざまぁ系」「復讐系」の人気を根付かせた立役者の作品として知られている。
これらの系譜はWeb小説が台頭する以前から『風の聖痕』など一定の需要があったジャンルだが、
異世界ブームと結び付き、人気ジャンルの一つとして地位を形成するに至っている。
ただし、ざまぁ=復讐劇という訳では必ずしも断言できず、加害者に報復する『モンテ・クリスト伯』のような作品ばかりではなく、
主人公が何もしていないのに勝手に加害者側、あるいは対立していた側が落ちぶれたりする場合もあるのだが
(事実『盾の勇者』でも尚文は加害者に報復こそする場面があるが、三勇者が落ちぶれたのはただの自滅である)、
それ以前はなろうの異世界系の先達者である『ログ・ホライズン』やなろう黄金期の作品である『この素晴らしい世界に祝福を!』のように、
主人公は転移前からそれなりに他者より秀でた部分があり転移先の世界でそれが活かされたケースや、
転生したらスライムだった件』のように転生先で棚ぼたでチート能力を入手してしまうケースが多かったが、
『盾の勇者』以降は「元から主人公は有能だが周囲が蒙昧なため真価が評価されなかった」「そもそも主人公当人が自分の潜在性に無自覚」、
そして後から主人公が頭角を現し、追放ないし冷遇した者達がしっぺ返しを受けたり後悔するがもう遅いというケースも多く見られるようになった。
また、所謂「俺だけ知ってるゲーム知識で異世界無双」する作品のアンチテーゼ的な物語ともなっており、
ゲーム知識から来る先入観でトラブルを起こす三勇者と対照的に地に足のついた活動でじわじわ成り上がっていく尚文や、
三勇者でそれぞれ能力強化システムの情報が食い違っている事の真相など、ゲーム気分でいる元プレーヤーいじめの要素が様々登場する。

コミカライズ化もされている他、アニメもキネマシトラスによって3期まで制作されている人気作品となっており、
重要な初回は1時間スペシャルで放送されるなど、深夜アニメとしては異例とも言える力作となっている。
ただし、書籍と漫画版・アニメ版のメディアミックス作品はどれもストーリーの大筋自体は共通だが、
細かい改変や省略によりそれぞれの媒体で印象が異なる描写もある(原作者の許諾は取っているとの事)。


MUGENにおける岩谷尚文

WingDings氏をはじめとする『JUS』風キャラ製作者交流サイトの多数の製作者達によって作られた、
『JUS』風ドットを用いたMUGEN1.0専用のちびキャラがUNKNOWN XD氏により公開中。
設定通り通常攻撃すら非常に貧相でストライカーか当身技をメインにして戦う性能をしている。
AIもデフォルトで搭載されている。
紹介動画

出場大会

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最終更新:2025年03月23日 13:59