巌窟王 エドモン・ダンテス





「俺を呼んだな! 復讐の化身を!
 そうとも、俺こそ黒き怨念。
 エクストラクラス、復讐者(アヴェンジャー)である!」


 真名:巌窟王/エドモン・ダンテス
 身長:185cm
 体重:75kg
 出典:『モンテ・クリスト伯』
 地域:フランス
 属性:混沌・悪
 性別:男性
 CV: 島﨑信長

世界で最も高名な復讐劇であるアレクサンドル・デュマ・ペール作の小説『モンテ・クリスト伯』(邦題『巌窟王』)の主人公。
本項目ではゲーム『Fate/Grand Order』に登場するキャラについて解説する。
なお、ある事情から「巌窟王」も含めて正規の真名とされているため、本項目名もそれに準じて記載する。

+ 原作『モンテ・クリスト伯』解説
「──待て、しかして希望せよ」

元々はマルセイユの一等航海士であったエドモン・ダンテスは、恋人メルセデスとの結婚を控えて幸福の中にあったが、
しかし、ある日突如として無実の罪を掛けられて捕らえられ、
浅ましき私欲、横恋慕から来る嫉妬心、それによって罠にかけられたエドモンは、
保身のために無実を知りながら敵に回った検事の手によって、
この世に在りながら「地獄」とさえ称され、許されざる大罪を犯した者達を収監する、死の牢獄にして、
地上の苦しみが集った場所であり、囚われれば最後、帰還は不可能とまでされた、
監獄塔シャトー・ディフへと投獄されてしまう。

幸せの絶頂から地獄の如き絶望へと突き落とされ自殺さえ望んだエドモンだったが、
しかしそこで同じく無実の罪で捉えられたファリア神父という老人と出会い、
神父の導きによってささやかな希望を得る。
神父はエドモンの身の上話を聞き、ダングラールとフェルナンにはダンテスを陥れる動機と機会があること、
ノワルティエとヴィルフォールが父子でありヴィルフォールにもまたエドモンを陥れる動機があることを看破する。

エドモンは鋼の精神によって屈することなく絶望の日々を耐え、ファリア神父が衰弱して息を引き取った後、
遺棄される予定だった遺体と入れ替わる形でシャトー・ディフからの脱獄に成功。
その頃には投獄されてから実に14年もの月日が流れ、20歳だった彼は34歳となっていた。

ファリア神父から託されたモンテ・クリスト島の財宝を手に入れたエドモンは、
それをもって投獄されてから現在に至るまでの出来事を調査し、
かつてファリア神父が黒幕と推測した3人が自分の投獄後にそれぞれ自らの望んだもの(権力、メルセデス、保身)を謀ったように都合よく手に入れ、
今や時の人となっていることを知る。
エドモンはファリア神父の推測が正しかったと確信して復讐を決意。
9年の準備期間を経て貴族「モンテ・クリスト伯」としての地位を築き、
自分を陥れた3人の男に富、権力、そして知恵を駆使した復讐を開始。

全ての善性を捨て去り、容赦なく3人の男を社会的にも精神的にも追い詰め、破滅させていった「モンテ・クリスト」。
フェルナンは過去の悪事を暴かれ、家族から見放され拳銃自殺。
ヴィルフォールは社会的地位を失った上、自分が追い詰めてしまった後妻のエロイーズが服毒自殺し、発狂。
だが、ここでエドモンにも想定外の事態が発生した。服毒自殺した妻は、まだ幼い息子を道連れにしていたのである。
当事者ではない者まで巻き込んだことにショックを受けたエドモンは、
けじめとして最後の一人ダングラールの命だけは助けることにした。
とはいえ、自分がそうされたのと同じように監獄に閉じ込め、極限の飢えを味わわせ、食事と引き換えに有り金のほとんどを奪われ、
彼自身の正体を知らされショックでエドモン・ダンテスに対する消えることのない恐怖を刻んだ上で、だったが。

そしてエドモンは復讐劇の過程で救い出した少女・エデから告白された愛を受け入れる。
善性を捨て、復讐を選んだ男は、最後に失った筈のものを再びその手にし、共に旅立ったという。

FGOに最初に登場した「復讐者」クラスのサーヴァント。
サーヴァントとして現界した彼は物語終盤の後悔と改心の果てに救われた存在ではなく、
復讐心滾らせてパリへと舞い降りた「巌窟王」そのものであり、復讐の化身である。

傲岸不遜な性格で、態度も上から目線、復讐心や憤怒もまた人間らしい感情と肯定し、
常に世界に遍く理不尽と悪意への復讐心を滾らせている青年として現界している。
その言動は一見すれば自己以外の世界全てを憎悪しているようにも映るが、決して無辜なる人々に憎しみをぶつける悪鬼ではなく、
不道徳と悪逆に満ちながら君臨する現実そのものをこそ、彼は憎み否定し続ける。
世界を憎みこそすれ、人間の全てを怨んでいる訳ではなく、
むしろ如何なる苦境にあっても、己が意志を貫こうとする人間をこそ、彼は称賛し手を差し伸べる。
逆に己の復讐心への無暗な共感や理解を示す者には激しい嫌悪を露わにする他、
憤って然るべき境遇にありながらそれを持たず、あまつさえ復讐を否定し怨念から解放せんとする聖女とは頗る相性が悪い。

言動共々復讐者という存在を体現したかのような人物だが、
その本質は両儀式をして「基本的に人間大好きなんじゃない?」と指摘されている通り、
人間の事は悪し様に言いつつも、人の逆境や理不尽にも立ち向かえる魂の輝きを愛している好漢。
とりわけ監獄塔の一件で真価を見定めた主人公に対しては全霊を賭して心身共に力にならんとしている。

なお、型月世界でも『モンテ・クリスト伯』はデュマの創作とされている。
無論、佐々木小次郎のように架空の存在がサーヴァントとして呼ばれることは有り得るのだが、
しかし近年の調査によりシャトー・ディフへ収監されていたファリアという神父が実在していたことが判明している。
そして、デュマには自分の父をはじめとする実在の人物を作品のキャラのモデルに多用する癖があったのを踏まえると、
即ちエドモン・ダンテスは架空の存在ではなく──

+ 宝具
  • 巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人

如何なるクラスにも当てはまらないエクストラクラス「アヴェンジャー」として現界した肉体が、
その生き様を昇華した宝具と化した存在
(一説では、生前に邂逅したというファリア神父が隠していた秘宝の一つ「14の遺物」が関係しているともされる)。
巌窟王が時折黒炎の如き姿へと変貌するのも、この宝具によるもの。
この宝具により巌窟王は死に至る毒炎を怨念の魔力として行使できる他、
あらゆる毒を受け付けず、精神干渉系攻撃の効果を軽減する。
さらには自らのステータスやクラスを隠蔽、偽の情報を見せる効果もある。
真名解放すれば溜め込んだ怨念が周囲へと撒き散らされ、敵は疑心暗鬼に陥って同士討ちを始めることになる
(『FGO』では真名解放は行われない)。

  • 虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)
ランク:A 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1~100人 

地獄の如きシャトー・ディフで培われた鋼の精神力が宝具と化したもの。
肉体はおろか、時間、空間という無形の牢獄さえをも巌窟王は脱する。
この効果により、「亜種特異点」「亜種平行世界」といった特殊な場所にすら時空の隔たりを越えて出現できるだけでなく、
その極地として超高速思考を行い、それを無理矢理に肉体に反映することも可能……つまり、
主観的に「時間停止」を行使しているにも等しい状態で超高速行動を実現することすらできる
ゲーム中では巌窟王が軌跡しか見えないような高速で攻撃し、
やがて幾人にも分身したかのような状態でとどめの一撃を放つ演出が用いられている。

  • 待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人

悪逆と絶望と後悔に満ちた暗黒の中に在って眩く輝く、一条の希望の宝具化。
人間の知恵は全てこの二つの言葉「待て、しかして希望せよ」に凝縮される。
自陣のうち一名を瀕死(戦闘不能状態)からでも完全回復させる上に、
全パラメーターを一時的にランクアップさせる(『FGO』では基本的に使用されない)。

+ 劇中の活躍
イベント「空の境界/the Garden of Order」においては黒幕として登場したのが初出。
魔術王ソロモンによって特異点を形成するサーヴァントの一角として選ばれ、
メフィストフェレスと共にカルデアに召喚されたサーヴァントオガワハイムに閉じ込める役割を担わされていたのだが、
「怨念を持たない者に協力してやる義理はない」と魔術王の命令をガン無視。
オガワハイムを報われぬ怨念の集まる怨嗟の城へと作り変えるなど独自の行動ばかり取った末に、
カウンターとして召喚されていた両儀式に自身の影を殺されたことで一度は消滅した。
この時は正体は明かされていなかったが、復讐者のクラスである事は示唆されていた他、
巌窟王の代名詞ともいえる台詞を放ったことから、ユーザーからは正体を看破されていた。

続くイベント「監獄塔に復讐鬼は哭く」でメインキャラクターとして正式に登場した上に、限定サーヴァントとして実装された。
魔術王の呪いにより精神を異空間「監獄塔」へと囚われた主人公の前に現れ、
仮初めのマスターと共に大罪の具現と化したサーヴァント達と戦うことになる。
ここでも巌窟王は魔術王の尖兵の1人として召喚されていたのだが、やはり言う事を聞かずに独自行動を取り、
主人公が7つの「裁きの間」を突破して、魔術王の呪縛を解き現実に帰還するのを手助けした。
しかし、本来の「シャトー・ディフ」がそうであったように、この監獄塔も脱出できる者はただ一人。
七つの裁きを打ち破った後、彼は最後の障害として唯一の脱出者の枠を懸けて主人公に立ちはだかった。
そうして巌窟王は主人公に殺された。本来サーヴァント対人間という超えようの無い壁がありながら、
先の名などの戦いで手の内や戦いの癖を全て開示していたことが彼の命運を分けたのであった。
そして、それこそが巌窟王の勝利であった。かつて自身を導いたファリア神父と同じように、
あるいは復讐を成し遂げられないで生涯を終えた彼が知ることのなかったもの、
即ち「不条理に貶められた者を導き救う」という勝利と救いを得た。
かくして魔術王の企みを打ち砕いた巌窟王は、短い間とはいえ共に戦った相棒の死を嘆く主人公に、
最大の敬意と激励を示しながら、かつて自分を導いた男と同じ結末を辿れたことへの歓喜を噛みしめつつ消滅した。

「───はは、ははは! 結果はこの通りだ! 残念だったな魔術の王よ!」
「貴様のただ一度の気まぐれ、ただ一度の姑息な罠は、ここにご破算となった!」

「オレなんぞを選ぶからだバカ者め! ざまあない!」

+ ネタバレ注意
ところが、主人公の精神の奥底であり、主人公が人理修復の過程で倒した悪性情報が蓄積するとされる「廃棄孔」に、
監獄塔で七日間を過ごした巌窟王の因子が流れ込んだ結果どういうわけか「個」として成立し、後にカルデアに召喚された巌窟王とは別に、
「監獄塔に復讐鬼は哭く」の出来事を経験した巌窟王 エドモン・ダンテスが主人公の精神内に巣食うことになった。

このこともあって、本編およびイベントなどのストーリー上で主人公が精神攻撃を受けたり、夢の世界で何かしらの危機に陥ったりした場合、
精神世界にひょっこり現れて危機に対抗したり、主人公に助言をくれたりするようになる。
おかげでプレイヤーからは「セコム」「ぐだーずのメンタルセコム」などと呼ばれることも……。

『監獄塔に復讐鬼は哭く』はこのように本編にガッツリ絡むストーリーながら長らく期間限定のイベントで、
イベント後からゲームをプレイし始めるなどした新参ユーザーが主人公とエドモンの関係を把握できない状況にあったが、
2022年1月以降は常設ストーリーと化し、第1部4章をクリアする事で誰でも無料でプレイ可能になった。

格闘ゲームにおいては『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』にて、2022年末のDLCで牛若丸と共にゲスト参戦している。


原作中の性能

Quick主体のアタッカー。
クラス・アヴェンジャーはルーラーに強くムーンキャンサーに不利だが、
どちらもフリークエストではあまりお目にかかれないため、高難易度など以外では気にする必要はない。
むしろバーサーカーを除いた基本クラスに攻守共に等倍で戦えるため、汎用性は高いと言える。

主にスター生産が得意なアタッカーだが、肝心のアヴェンジャークラスのスター集中率が低いため、
基本的には他のクリティカルが得意なアタッカーにスターを補給するか、
巌窟王以外のスター供給役と組ませてスター飽和状態を維持しながらクリティカルを連発する使い方が推奨される。
また、自身の被ダメージ時のNP獲得量をアップする「復讐者[A]」及び毎ターンNPを獲得する「自己回復(魔力)[D]」というクラススキルを備え、
Artsカードが1枚だけというカード構成ながらNP獲得は不得意ではない。
主に、優秀なQuickサポーターであるスカサハ=スカディと組ませるかどうかにより、
スター供給用のサブアタッカーとなるか、メインアタッカーとして運用されるかが決まる。

宝具「虎よ、煌々と燃え盛れ」は敵全体に強力な攻撃を加えると同時に、
3ターンの防御力ダウン及び5ターンの呪い状態を付与する効果がある。
3周年記念強化クエストで宝具強化が行われ、5ターンの間呪い状態のダメージを倍増させる呪厄状態を付与する効果が追加された。
集団戦では殲滅力もさることながらQuick属性かつ多段ヒットの攻撃なため大量のスターを収穫可能であり、
さらに「呪い」は重ね掛けすることが可能なため、巌窟王以外の他の呪い付与持ちの味方と組ませることで、
大型の敵や戦いが長引く高難易度などの戦闘でも大きなダメージソースとして活用可能。



MUGENにおける巌窟王 エドモン・ダンテス

Ichida氏による『TYPE LUMINA』のドットを用いたMUGEN1.0以降専用キャラが公開されている。
機動力が高く、高速機動からの多段コンボが強力。
超必殺技では「虎よ、煌々と燃え盛れ」で攻撃する。
AIはデフォルトで搭載済み。
DLは下記の動画から

出場大会

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最終更新:2023年05月15日 17:39
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