バルクホルンとハルトマンの部屋


 珍しく自室に戻ったハルトマンは部屋でゴロゴロしていた。

エーリカ「ねえトゥルーデ」

バルクホルン「なんだ?」

エーリカ「わたしって女の魅力はないのかな」

バルクホルン「何故そう思うんだ?」

エーリカ「だって俺ってちっとも手を出さないんだもん」

バルクホルン「……まあ、あいつは堅物だからな」

エーリカ「いつも一緒に寝てるのにさー」

 ハルトマンがぷぅと頬を膨らませるとバルクホルンは苦笑いを浮かべる。

バルクホルン「ほどほどにしておけよ」

 もはやハルトマンの自室=俺の部屋のようななものになっているので、一緒に寝る等のことは当たり前になっている。

エーリカ「でもこういうふうにスルーされると結構傷つくよ」

バルクホルン「わたしはそういうのはよくわからないな」

エーリカ「このまえなんかお風呂上りにズボン一枚でベッドにもぐりこんだのにさー」

バルクホルン「お前は大体そんな感じだからな、特にそそるものもないだろう」

エーリカ「一昨日は俺がお風呂に入ってるときに背中流してあげたし」

バルクホルン「……タオルは?」

エーリカ「無し」

バルクホルン「だろうな」

エーリカ「うー……結構勇気いるんだよ?」

バルクホルン「勇気と無謀は違うぞハルトマン」

エーリカ「昨日は裸でベットの上で寝てみたけどわたしに布団かけて俺は床で寝ちゃうし」

バルクホルン「ぶっ」

 流石にバルクホルンも噴き出した。



バルクホルン「なななな、何をやっているハルトマン!」

エーリカ「ベットの上で寝てみた」

バルクホルン「もうちょっと前!」

エーリカ「裸でベットの上で」

バルクホルン「お前には恥じらいというものはないのか!?」

エーリカ「実を言うと裸見せるの初めてじゃないし」

 バルクホルンは少しめまいを覚えた。

エーリカ「ねー私って魅力ないのかなあ」

バルクホルン「……とりあえず一言」

エーリカ「何?」

バルクホルン「年頃の娘が簡単に裸を見せるな!」

エーリカ「トゥルーデだけに言われたくないな」

バルクホルン「という訳なんだが」

エーリカ「ミーナどう思う?」

ミーナ「うーん……わたしもトゥルーデが裸で寝るのは前々から」

バルクホルン「ツッコまないぞ」

ミーナ「まあ冗談は置いて、フラウ本当にいいの?」

エーリカ「何が?」

ミーナ「あなたが人前で裸を晒すのは一度や二度じゃなかったけど、一人に対してそれも男性に裸を見せるなんてことはなかったわ」

エーリカ「えーそうだったかな。昔はあったと思うけど」

バルクホルン「何年前だ」

ミーナ「おまけにベットの上に裸で寝るなんて誘ってるようなものよ? 襲われても文句言えないわよ?」

エーリカ「だよねー」

 ハルトマンがあくびをする。
バルクホルン「ウィッチとして飛べなくなるかもしれないんだぞ!?」

ミーナ「トゥルーデ」

バルクホルン「なんだ!?」

ミーナ「落ち着きなさい」

バルクホルン「……」

ミーナ「どうするかはフラウが決めることよ」

エーリカ「うーん……」

 頬に手を当ててハルトマンは唸った。
 女として生きるかウィッチとして戦うか、どちらも大事なことで悩むのは当たり前だとミーナは思う。

ミーナ「考えが決まらないならもう少し――」

エーリカ「いや、別にわたしは俺となら一緒になってもいいと思ってるよ」

バルクホルン「んなっ!?」

エーリカ「ただみんなと一緒に飛べなくなるのは悩むなと思って」

ミーナ「……あなたがそこまで想っている俺少尉のどこに惹かれたのかしら?」

エーリカ「んー特に理由はないかな」

ミーナ「なら別の人でもいいんじゃない?」

エーリカ「でも、俺の隣は凄く居心地がいいんだ。ずっと隣にいたいくらいに」

 ふぅ、とハルトマンがため息をつく。

エーリカ「最初は物珍しさで部屋に行って、その次に部屋を見て昼寝場所に丁度いいかなって思ったんだよね。
邪魔だって追い出されるならそれでよかったし、わたしもそうなるかと思ってた」

エーリカ「予想外だったのが俺がわたしを置いてくれたことだった。あれは少し驚いたよ」



エーリカ「そしてわたしが怪我をして助けてくれた。その時くらいかなー、少しずつ俺のこと意識し始めるようになったのは」

 ハルトマンが後頭部に手を回し恥ずかしそうに笑う。

エーリカ「一緒にいて、一緒に戦って、一緒にご飯食べて、一緒に寝て、そんな当たり前のことを繰り返してたらいつの間にか好きになってた」

ミーナ「フラウ……」

バルクホルン「その気持ちに間違いはないのか?」

エーリカ「うん」

 ハルトマンが力強く頷くと、二人はため息をついた。

バルクホルン「……幸せ者だなあいつは」

ミーナ「なんとなくだけど父親が娘を取られたような気分だわ」

エーリカ「でもまあ、俺がわたしのこと好きかどうかはわからないんだけどねー」

ミーナ「それはないと思うんだけど」

バルクホルン「同感」





バルクホルン「何が俺がわたしのことどう思ってるか聞いてきてー、だ。アイツらしくない」

 ぶつぶつと文句を言いながらバルクホルンは俺を探す。

バルクホルン「それにしてもどこにいるんだ?」

 部屋にはいなかったし食堂にもいなかった。シャーリーやルッキーニに聞いたが見ていないという。

バルクホルン「……そういえば俺って普段なにしてるんだ?」

 よくよく考えると、ハルトマンと居る俺しかみていないバルクホルンは一体何をしているか見当がつかなかった。

宮藤「バルクホルンさんどうしたんですか?」

バルクホルン「おお宮藤、俺を見なかったか?」

宮藤「俺さんですか? さっき見ましたけど」

バルクホルン「本当か!」

宮藤「海の方で歩き回ってましたよ」



 滑走路・先端

俺「……おや、バルクホルン大尉」

バルクホルン「やっと見つけたぞ……」

 肩で息をしながら俺の横へ座る。

バルクホルン「海の方ってだけじゃわからなかったからな、色々回った」

俺「滑走路が使われていなくて、エーリカもいないときは自分はここで本を読むことにしてますので」

バルクホルン「何を読んでいるんだ? 絵本ではないようだが」

俺「神話とかその辺をまとめた本ですね。伝承とか色々ありますよ」

バルクホルン「ほう」

俺「カールスラントから扶桑の胸に七つの傷を持つ男の伝説まで色々と網羅されています」

バルクホルン「……それって本当に神話か? まあいい回りくどいのは苦手だからな率直に言おう」

俺「何でしょうか」

バルクホルン「俺、ハルトマンのことはどう思っている?」

俺「……何故あなたが聞くのですか?」

バルクホルン「頼まれたからだ」

俺「誰に?」

バルクホルン「ハルトマンに」

俺「……」

バルクホルン「……」


 二人が口を閉じ数分がたった。
 先に口を開いたのはバルクホルンだった。


バルクホルン「ハルトマンはお前となら一緒に居たいと言っていたぞ」

俺「……そうですか」

バルクホルン「あいつは勇気を振り絞って言った。お前はどうする?」

俺「……自分も好きですよ。エーリカのことは」

バルクホルン「……そうか」

俺「その、表現しにくいんですが、一緒にいるだけで満たされるというか、なんというか……」

 珍しく俺が困っているのがわかる。

バルクホルン「はは、そんなものなんだろうさ。わたしにはよくわからないがな」

俺「……面目ない」

バルクホルン「ところで何故だ?」

俺「何がですか?」

バルクホルン「昨日の夜のことだ」

俺「ああ、エーリカから聞きましたよ。裸で寝るのはどうかと思います」

バルクホルン「そういうことじゃない。……というかハルトマン言いふらしたな!」

俺「まあ冗談ですよ」

バルクホルン「お前の冗談は冗談になっていないというのをいい加減に悟れ」

俺「考えときます。……エーリカが裸で寝ていたことですよね」

バルクホルン「その通りだ。ハルトマンはウィッチとして飛べなくなったとしても、お前と一緒ならいいと言っていた」

俺「……嬉しいですね」

バルクホルン「しかしお前は据え膳と言っていい状況で、ハルトマンに手を出さずにそのまま寝た。これはどういうことだ?」

俺「あー……その、えーと……」

バルクホルン「ハルトマンは自分に女として魅力がないのではないかと、わたしに相談までしてきた」

俺「あーうー、うー……」

バルクホルン「そのうーうー言うのをやめろ! 何故手を出さない、ハルトマンがお前に好意を持っていることくらい前からわかっていただろう」

俺「うー……その、ですね……」






夜・俺の部屋

 扉を開くとハルトマンがベッドの上で横になっていた。
 眠っているのかすぅすぅと寝息が聞こえる。

俺「……」

 暖かいロマーニャとはいえ、裸では流石に寒いのか今日はきちんと服を着て寝ている。
 とはいうものの布団を被っていないため少し肌寒そうだ。

俺「……はぁ」

 俺はため息をつくと袖から掛け布団を一枚取り出してハルトマンにかける。

俺「……狸寝入りはダメですよ」

エーリカ「なんだ、気付いてたんだ」

 エーリカが目を開いた。

俺「バルクホルン大尉やミーナ隊長とまではいきませんが、長い仲ですから」

エーリカ「多分日常では一番長く一緒に居ると思うけどね」


エーリカ「ねえ、わたしって魅力がない?」

 ハルトマンが俺に尋ねると、俺は横に首を振る。

エーリカ「じゃあなんで?」

俺「……」

 こういう時俺が黙るのは、怒っているか照れているか困っているかのどれかで、これは照れている時だとハルトマンはわかった。

エーリカ「んー……まあいっか。おやすみ俺」

 ハルトマンは目を瞑る。
 そう、これでいいんだと自分に言い聞かせて眠ろうとする。

エーリカ「……む?」

 ふと体を包まれるような感覚に目を開くと、俺の顔がすぐ近くにある。
 体全体を布団で包まれて抱きしめられている。

エーリカ(あー……これって)

 一度扶桑の話を聞いたことがある、なんでも好きな女性の絵を枕に印刷して抱きしめてねる枕があるらしい。

エーリカ「……これだけでいいの?」

俺「……今は」

エーリカ「そっか」

 ハルトマンはニコリと笑う。

エーリカ「うん、わたしも今はこれでいいと思う」

俺「……今は、ですね」

エーリカ「お休み、俺」

俺「……お休みなさい」

 寝る前に一度だけ俺はハルトマンの髪を触った。



バルクホルン「何が、大事すぎて手が出せない、だあの堅物め」

 バルクホルンはクシュンとくしゃみを一つ。

バルクホルン「……服、買ってくるかな」




おまけ 俺とバルクホルン大尉は殺伐と仲よしなようです

バルクホルン「わたしは確かに服をくれと言った、確かに言った」

俺「じゃあいいじゃないですか」

バルクホルン「わざわざ霧吹きで濡らした体操服をよこす馬鹿が居るとは思わない」

俺「こちらもジャガイモを芽が生えまくってるのに渡す人がいるとは思いませんでしたよ」

俺・バルクホルン「「はははははははははははは」
最終更新:2013年02月02日 13:11