526 :
空の王な俺:2011/02/10(木) 17:36:22.30 ID:BcLPwyk/0
ルッキーニ「贈り物?マリアから?」
ある日の朝食後、思い思いに席を立とうとするウィッチーズを呼び止め、ミーナが切り出した。
坂本「マリアというと、ロマーニャ公国王女のマリア殿下か」
ミーナ「ええ。ロマーニャのために戦ってくれている501戦隊、特に友達でもあるフランチェスカ・ルッキーニ少尉にお裾分けしたいから、取りに来て欲しいって」
ルッキーニ「おー!」
シャーリー「んー、物資は今のところ足りてるが……。せっかくだし、臨時補給がてら行ってこようかな」
ミーナ「ただ問題があってね。ものが生ものなのよ。車のスピードだと悪くなっちゃうの」
シャーリー「生もの?」
ミーナ「牡蠣ですって」
ペリーヌ「牡蠣?貝のですの?」
ミーナ「ええ。私は食べたことないのだけれど、ペリーヌさんはあるのかしら」
ペリーヌ「ええ、シャンパンと合わせていただくのが有名ですわね。
ガリアでは一般的なオードブルですわ。わたくしはアルコールは、舐める程度でしたが。
って、そんなことはどうでもいいんですの!牡蠣なんて足が早い上に、傷んだら危険な食品の典型ですわ!」
坂本「ああ。扶桑でも有名な話だ。一晩置いた生牡蠣は絶対に食べるな、と言われている」
芳佳「うちにも何度かいらっしゃいましたよ、牡蠣で食あたりした患者さん」
528 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:39:54.11 ID:5xRB5zEy0
よっさんの宅急便
よさ宅だな!
529 :空の王な俺:2011/02/10(木) 17:41:39.20 ID:BcLPwyk/0
ミーナ「あら本当。だから先方、とにかくいきなり今日のうちに取りに来て持って帰ってくれ、なんて言ってきたのね……」
バルクホルン「今朝いきなりか。言っては悪いが、いい迷惑だな……」
シャーリー「完璧に善意であるぶん余計にタチが悪いな……」
エーリカ「王族って言うのはねぇ……」
余「……。」
ルッキーニ「う゛ー!マリアを悪く言わないで!」
ルッキーニ「あたしがストライカーで取ってくるよ。それなら文句無いでしょ?」
ミーナ「うーん、不可能とは言わないけれど、大変よ。氷も入ってるからすごく重いし」
坂本「ネウロイの襲撃に出くわすこともあるかも知れない。両手が塞がっていては機銃も持っていけないだろう」
ルッキーニ「う」
シャーリー「なら、私も一緒に行こうか?」
ルッキーニ「シャーリー!」
ぱぁ、とルッキーニの顔が輝く。しかしミーナは渋い顔のままだ。
530 :空の王な俺:2011/02/10(木) 17:44:39.51 ID:BcLPwyk/0
ミーナ「部隊の運営責任者としては、こんなことのために貴重なウィッチを二機も割きたくないのよね……。大規模な作戦も近いし。
うーん、どこかにいないかしらね。積載重量に余裕があって、荷物を運びながらでも自衛くらい普通にこなせる人」
余「……。」
わざとらしく首を捻りながら、チラリと男に視線を送るミーナ。もっとあからさまにじっと見つめる坂本とシャーリー。
ルッキーニなどは袖をつかんでせがまんばかりである。
余「……余ならやらんぞ。王に駈使をさせようとは、不敬者どもめ。」
坂本「私たちは何も言っていないさ。しかし、困ったな」
ミーナ「困ったわねぇ」
ルッキーニ「よっさん……」
シャーリー「なぁ、なんとか頼めないか?」
余「ふん。」プイ
ウルスラ「……」
ウルスラ「食べてみたいなぁ……牡蠣」
余「!」
531 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:46:04.08 ID:ayeI7aFP0
ウーシュ!?
532 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:49:49.62 ID:gu5B4yWVO
計画通りw
533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:50:03.43 ID:YQrDNs6X0
よっさん、お妃様様が言ってますよw
534 :空の王な俺:2011/02/10(木) 17:50:12.26 ID:BcLPwyk/0
それまで我関せず卓の隅で本を読んでいたウルスラが、唐突に一言呟き、男がぴくりと反応した。目ざとくそれに気づいたシャーリーがたたみかける。
シャーリー「なー、せっかくだもんな。よっさん、ウーシュもこういってるしさ、頼むよ」
余「何を言われようと、王が左様な使い走りがごとき真似ができるか。」
ルッキーニ「ぶー、よっさんのケーチ」
余「だが……」
ルッキーニ「?」
余「まったき偶然ではあるが、ローマに用事があることを思い出した。気は進まぬが、ただのついでをわざわざ拒むこともない。」
あっさり前言を翻す男。そのまま席を立つと、スタスタと出て行ってしまった。さっそくハンガーに向かうらしい。
ミーナが後に続く。
ミーナ「あ、待って待って。行ってくれるなら作戦番号を交付するから。勝手に飛び回ると怒られるわよ、今は――」
535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:53:14.10 ID:YQrDNs6X0
よっさん流石です
536 :空の王な俺:2011/02/10(木) 17:53:38.45 ID:BcLPwyk/0
ルッキーニ「やったー!あんがと、ウーシュ!」
ウルスラ「楽勝」
エーリカ「にゃはははははは」
ヴイ! と中指人差し指を立てて見せるウルスラと、笑いながらその頭をぐりぐり撫でるエーリカの悪魔姉妹である。
ミーナ「ウルスラさん……」
芳佳「あはは……」
シャーリー「たいがい単純だよなーよっさん」ケラケラケラ
坂本「なんだか分からんが、とにかくよし!わっはっは!」
537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:55:12.14 ID:ayeI7aFP0
ウルスラ、恐ろしい子っ!!
538 :空の王な俺:2011/02/10(木) 17:57:36.58 ID:BcLPwyk/0
果たして数時間後、男は大きな木箱を抱えて戻ってきた。
余「『玉座』が嘆いておるわ……。運送屋の真似事などと……。」ブツブツ
シャーリー「いいからいいから。早くいただこうよ。バルクホルン、手伝ってくれ」
バルクホルン「ああ」
二人がかりで、バールを使ってこじ開ける。油紙と氷に包まれて、三十キロ近くの殻付き牡蠣が入っていた。
ルッキーニ「おおー」
リーネ「氷、溶けてないですね。結構時間かかったのに」
余「気温の低い高高度を巡航してきたのだ。日光をシールドで遮蔽してな。」
シャーリー「おお……意外なほど細やかな気遣い」
余「ふん。気の進まぬ仕事だが、余のミスで腹でも壊されては王の矜持にかかわるというだけだ。」
ウルスラ「……ツンデレ?」
滑走路脇に、即席の立食パーティ会場が設営された。
工作用バーナーを用いた網焼きグリルと、殻をむくためのナイフ、生食用の調味料などが並べられる。
非番の者はウィッチ以外の基地要員も参加が許された。さすがにアルコールは禁止だったが。
539 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:00:30.28 ID:BcLPwyk/0
芳佳「おいしいですね!」
ミーナ「不思議な味ね……」
エイラ「サーニャ、殻は危ないゾ、手切るなヨ。こっちの焼けたやつやるヨ、なーサーニャ――」サーニャサーニャサーニャ...
サーニャ「……おいしい」
坂本「わっはっは!」
バーナーに炙られた牡蠣の殻がパチパチと爆ぜ、軟風にのって強い、しかし嗅ぎ慣れた潮の香りが漂う。
真夏のロマーニャは今日も快晴、巨大な入道雲が大陸の上に見える。
めいめいが思い思いのやり方で、このマリア王女からの贈り物とアドリア海の午後を享受していた。
男は皆から少し離れた場所、滑走路の縁に座り、海を眺めていた。
気づいたウルスラが、よく焼けた牡蠣を二つ持って歩み寄る。
ウルスラ「もう満腹?」
余「いや、少し休んでいただけだ。そなたはどうした?」
ウルスラ「お礼」
余「礼?」
540 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:05:19.65 ID:BcLPwyk/0
ウルスラ「そう。牡蠣を運んでもらったお礼」
言いながら、持ってきた牡蠣のひとつを差し出すウルスラ。
余「これが礼か。もともと余が運んできたもののはずだが。」
ウルスラ「要らない?」
余「もらおう。」
ウルスラ「うん」
ウルスラは微笑んで頷く。対照的に男は渋い顔だ。
余「……なんとなく最近、そなたは余に対して遠慮がなくなってきたような気がするぞ。」
ウルスラ「気のせい」
ジト目気味の男に対し、涼しい顔で応じるウルスラであった。
541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:08:27.56 ID:m5ZwiUyP0
よっさんやっぱり尻に敷かれ始めてゲフンゲフン
543 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:11:05.62 ID:BcLPwyk/0
ウルスラはスプーンを取り出すと、持っていた牡蠣の一つを脇に置き、もう片方から身を掬い取り、男に差し出した。
ウルスラ「あーん」
余「ぬぅ!?」
ウルスラ「あーん」
余「ま、待てウルスラ・ハルトマン。心遣いは幸甚であるが、人目がだな……。」
ウルスラ「今なら誰も見てない。あーん」
余「む……ぐ。」
男は急いで周囲に目を走らせると、スプーンに噛み付くようにして牡蠣を奪った。
盗み食いでもしているかのように急いで咀嚼し、飲み込む。
544 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:13:51.92 ID:BcLPwyk/0
ウルスラ「慌てすぎ」
笑って言いながら、ウルスラは脇に置いておいたもう一つの牡蠣を拾い、その身を救って食べた。
男に食べさせたのと同じスプーンで。
男は思わずその口元を見つめてから、そんな自分を横目で流し見ているウルスラ (ご丁寧にスプーンはくわえたまま) に気づく。
余「カールスラントのウィッチはみな悪魔だ……。」
ウルスラ「ふふっ」クスクス
仄かに頬を染めたウルスラの、ささやかな笑い声が潮騒に溶けていった。
545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:16:56.22 ID:qdVLTKhB0
ちょっと壁にひびが入った
546 :空の王な俺 >>542 二機6話じゃねーの?:2011/02/10(木) 18:17:41.75 ID:BcLPwyk/0
次の日の早朝、基地外周にある海岸線。潮風は生ぬるく、昼の日差しの強さを予感させる。
501戦隊の基地はである城塞は、中世に建設されたのを改修したものであり、周辺には当時の遺跡が点在している。
地形が変化したのか、海中からもかつては家屋か何かの一部だったと思しき石柱や、崩れかけた石像などが飛び出していた。
男はのんびりと波打ち際を散歩していた。とくにあてがあったわけではなかったのだが、そこで偶然に人影を見つけた。
海から突き出た石柱のうちの一つに、坂本が立っていた。目を閉じ、刀を正眼に構えている。
傍目にも明らかな集中の様子を、男はしばらく黙って見ていた。
やがて坂本は目をカッと見開き、刀を振りかぶると裂帛の気合と共に振り下ろす。
坂本「烈風斬!!」
刀が振り下ろされた軌跡にそって、海が数百メートル先まで断ち割れた。
逆巻く水の鳴動、切り裂かれた風の悲鳴。
海底までもが露出する一撃に、男が感嘆の息を漏らす。
余「天晴れ。」
坂本「お前の『勅視』の方が威力は上だろう」
息を整えながら、坂本が応じた。男の存在には気づいていたらしく、驚いた様子はない。
547 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:23:38.45 ID:BcLPwyk/0
余「王の業は王以外の者の技との比較に相応しいものではない。」
坂本「あくまで自分は別格、か。羨ましいことだ」
余「……その様子なら、そなた気づいておろう。」
坂本「私の魔力が減衰し始めていることか?」
余「いかにも。そなたはそろそろ二十歳か。魔力の減衰はとうの昔に始まっておろう。凡百のウィッチなら飛ぶことすら叶わぬ頃だ。そなたといえど――」
坂本「言うな。私とて分かっている。もはや私には、ネウロイのビームを防ぐどころか、飛ぶことすらギリギリだ。
このままでは、自分自身も部隊の皆も危険にさらしてしまう。だがそれは覚悟の上だ」
余「意気や良し、天晴れである。が、合理的ではないな。」
坂本「それでも戦い続けたいんだ。せめて、飛べる限りは『STRIKE WITCHES』でいたい」
余「何故だ?」
坂本「わたしが“もののふ”だからだ」
余「……。」
坂本「匹夫の意地さ。笑わば笑え、『空の王』」
男は嗤わなかった。
549 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:28:32.27 ID:BcLPwyk/0
坂本「幸いにして、と言うべきなのか分からんが、501として戦う作戦は『オペレーション・マルス』で最後だ。それが私の最後の戦場になるだろう。
『STRIKE WITCHES』として、『STRIKE WITCHES』の最後の作戦に参加できる。決着としては、上々だ」
余「最後?どういうことだ。」
坂本「なんだ。『オペレーション・マルス』については先日ミーナから説明されただろう」
余「耳に入っていなかった。そういえば昨日も、ローマと往復する途上やたらと部隊照会を受けたが、そうか、なにか大規模な作戦があるのか」
坂本は呆れ顔でため息をついた。これほど重要な作戦を聞き流しているとは……。
否、この男が人の話を聞かないのは今に始まった話ではないか。
坂本「大規模どころではないぞ。ヴェネツィア公国を解放する、ロマーニャ戦線における最重要戦略目標だ。
そして成功しても失敗しても、ヴェネツィア解放を目的に再結成された501にとっては最後の作戦になる」
余「失敗はせぬ。王がついておる。」
坂本「……だろうな。懸案事項は色々あるが、お前ならきっとなんとかしてしまうんだろう」
余「それより、501が解散となると、戦隊員はどうなるのだ?」
坂本「私は後方に移動だろうな。他の者については、基本的には本国の原隊に復帰することになるはずだ」
550 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:33:40.61 ID:BcLPwyk/0
坂本「お前はどうするんだ?」
ふと思いついて、坂本は尋ねた。
この男はどこかの軍隊に所属しているわけではないから、次の居場所を誰の命令にもよらず好きに選べる。
無論、戦場以外を選ぶこともできる。しかしこの男の助力がなければ、戦局は再び悪化するだろう。
余「そうだな。乗りかかった船だ。もうしばらくは、欧州の空を巡幸するも良かろう。」
坂本「そうか。なら私も安心して扶桑に戻れるというものだ」
余「ときに……。」
男は何かを聞こうとして、しかし言葉を濁した。深刻な口調ではなかったが、妙にそわそわと落ち着かなく視線をあたりにさ迷わせている。
坂本は怪訝に思いながらも聞き返した。
坂本「どうしたんだ?」
余「う、うむ。ウルスラはどうするか知っておるか?」
妙に改まって、何を聞くのかと思えば。
501が解散した後はウルスラが転戦する先についていこうというのだろう。ただ、わざわざそうすることを知られるのは恥ずかしいと見える。乙女か。
しかし……
552 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:37:26.69 ID:ayeI7aFP0
よっさん まじ 乙女!
553 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:39:41.92 ID:BcLPwyk/0
坂本「何だ、知らないのか」
余「む?」
坂本「彼女は欧州には残らないぞ」
余「何だと。」
坂本「ウルスラ・ハルトマンは本来技術省勤務だ。なし崩しでここに居たが、501が解散するなら欧州に残る理由はない。
彼女はノイエ・カールスラントに戻ることになるはず……どうした、そんなに慌てて」
余「急用を思い出した。」ワタワタワタ
坂本「……あれさえなければな……」
坂本は再び呆れて息をついた。
554 :>>546 SSの中でって事 言葉足らずでごめん:2011/02/10(木) 18:41:49.85 ID:YQrDNs6X0
よっさん…
555 :空の王な俺:2011/02/10(木) 18:43:26.73 ID:BcLPwyk/0
男は基地にとって返すと、ハンガーで『玉座』を出してきて飛び乗った。
基地の壁に沿って螺旋を描くように上昇、目指すはウルスラの部屋である。
ウルスラは部屋で、窓際の机に突っ伏して眠っていた。寝巻きではなく、軍服の上を脱いだだけのカッターシャツ姿。本でも読んでいたのだろうか?
暑さよけのためか、窓は開け放っている。カーテンが南風にたなびき、規則的に上下する彼女の背を撫でていた。
余「ウルスラ・ハルトマン。」
ウルスラ「うや?」ムニャムニャ...
余「ええい、起きろウルスラ。話がある。いや話は昼でもいいが、少なくとも寝るときはベッドにゆけ。」
窓の外に滞空しながら、男は窓の縁を叩いて呼びかけた。
ウルスラはようやくのろのろと体を起こすと、眠そうな半目で窓の外にいる男を数秒見つめ、その後またのろのろと眼鏡を探してかけて、再び窓のほうを見た。
男はそれらをじっと待ってから、再び口を開く。
余「話がある。話は昼でもいいが、少なくとも寝るならばベッドにゆけ。いくら夏とはいえ、体を冷やすぞ。」
ウルスラ「……」
ウルスラはしばらく無言だったが、やがて何かに気づいたように右手で顔を隠し、立ち上がった。
ウルスラ「いい、起きた。入って」
余「そうか?話がある。ここでは障りがあるゆえ、『玉座』に……なぜ顔を隠している?」
ウルスラ「突っ伏して寝てたから、跡がついてる……恥ずかしい。見ないで」
556 :空の王な俺 来る来ると思ってたらやっぱり来たよさるさん:2011/02/10(木) 19:00:29.04 ID:BcLPwyk/0
ウルスラは顔を洗い、ついでにコーヒーを淹れて戻ってきた。
男は律儀に断りを入れてから、窓から部屋の中に入った。
ウルスラ「いる?コーヒー」
余「いただこう。」
ウルスラは持っていたカップのうち大きなほうを差し出すと、もう片方を両手で包むように持ってベッドの縁に腰掛けた。
一口飲んで、ほうと息をつく。
男も唇を湿らせるようにその苦い液体を口にすると、本題を切り出した。
余「501が解散になれば、そなたはノイエ・カールスラントに戻ると聞いた。」
ウルスラ「そう」
余「勅命をもって命じる。余について参れ。」
ウルスラ「できない」
余「何故だ。」
ウルスラ「私にもすべきことがある」
余「技術省の仕事か。そんなものせずとも、余に任せておけば――」
ウルスラは無言で首を振った。男は押し黙るほかない。
558 :空の王な俺 >>554 戦闘ではわりとあちこちで活躍してる気がする それ以外は……:2011/02/10(木) 19:04:32.50 ID:BcLPwyk/0
彼女がわざわざ技術研究などしなくても、ネウロイを欧州から一掃する程度自分ひとりでもやれる。
少なくとも男はそう確信していたが、その事を告げたとて彼女の意思は動かないだろうという直感があった。
坂本の信念と同じだ。ウルスラは“もののふ”ではないが、彼女らの信念には同じ根がある。『自分の義務を果たす』という根が。
男から見ていくら微力であろうとも、だからといって戦争のさなかに何もせず安穏とはしていられない。
そう、まさしく人類は戦争中であり、さらに故郷を占領されている彼女は二重の意味で当事者なのだ。当然の感覚と言える。
余「ぐぬぬぬぬ……」
余「しかし、しかし。そなたはいいのか?余の臨幸したるこのロマーニャの大地は直に解放されるであろうが、他ではかの黒き奴ばらはまだ優勢だ。
すべて片付けるには、余の力をもってしても二年はかかる。その間、余はこの地を離れるわけにはゆかぬのだぞ。」
ウルスラは無言で、手の中のカップを見つめている。
余「二年間、合うことはできなくなる。そなたは平気なのか。……実のところ、余のことなどどうでもいいというのか。」
最後の言葉は、情けないほど弱弱しい。
ウルスラ「そんなことはない」
余「ならば……。」
ふるふる、とウルスラは首を振った。
559 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:08:30.01 ID:BcLPwyk/0
ウルスラ「今はだめ。……でも」
余「ぬ?」
ウルスラ「戦争が終わったら……」
ようやく、ウルスラが顔を上げる。潤んだ瞳が男をとらえた。
ウルスラ「迎えにきて」
背筋に灼けた鉄が流し込まれるかのよう。
ウルスラ「待ってる」
余「……そうか。」
余「待っていてくれるか!」
ウルスラはこくりと頷いた。
ウルスラ「……待ってる。ずっと」
560 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:10:38.62 ID:ayeI7aFP0
ウルスラ…!
561 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:13:16.88 ID:BcLPwyk/0
思わず男はウルスラの前に跪き、その体を抱きしめようとした。
ウルスラはやんわりと抵抗する。
ウルスラ「待って……だめ」
余「何の障りがあろうか。」
ウルスラ「その……昨日はシャワーを浴びてないから……匂うかも」
余「構わぬ。」
構わず抱き寄せる。
ウルスラ「でも……あ……」
引き離すかされるがままにするか、その逡巡を表すようにさ迷ったウルスラの手は、結局男の背に落ちた。
二人はお互いの頬を寄せ、しばらく抱き合っていた。
窓から聞こえてくる潮騒だけが部屋の中の音の全てだったが、万の言葉より雄弁にお互いの心が伝わっていた。
男は一旦体を離し、す、とウルスラの顎に手をかける。ウルスラは最初視線をさ迷わせたが、最後は観念して瞳を閉じた。
再び二人は接近し、その唇が触れ合う――
562 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:18:15.98 ID:BcLPwyk/0
ウウウウウ――――
寸前で警報が響いた。
二人の相対速度がゼロになり、一拍置いて逆転する。
余「邪魔が入った。」
ウルスラ「危なかった」
余「ふん。」
ウルスラはころんっ、とベッドに倒れこみ、枕を抱いて丸まりながら呟いた。
男はその様子を見て楽しそうに笑うのだった。
ウルスラが枕で口許を隠したまま尋ねる。
ウルスラ「行くの?」
余「当然だ。彼奴らの罪は重い。」
『玉座』に飛び乗ると、器用に窓を潜り抜けて飛び立った。声だけが窓から部屋に降ってくる。
余「帰ったら、続きだ!」
ウルスラ「……馬鹿」
563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:19:43.96 ID:Au/Ok0Ub0
余っさん積極的じゃないですかー!
564 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:23:47.65 ID:BcLPwyk/0
ミーナ『ロマーニャの北方100kmの地点で、ネウロイの大規模な進攻が確認されました。スクランブル班は――』
余『不要だ。控えておれ。』
ミーナ『え?』
余『今日の余はちょっと凄いぞ……!』
ミーナ『ちょ、ちょっと!?』
具風を巻き、励起したエーテルが波のように『玉座』の周りで弾ける。エーテルの輝きが軌跡をなぞって空に複雑な絵画を描く。
一気に高度12,000mまで上昇し、音速にも迫らんという勢いで加速。
戦場へ向け進軍する。
565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:24:21.47 ID:Nyle5BiQO
これで…これで…やっとウルスラが幸せになる
これで気がねなく……
566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:27:51.79 ID:zwYg6bT30
死亡フラグがあらわれた!▼
567 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:29:25.75 ID:BcLPwyk/0
余「<●><●>」ギン!
バーン、ネウロイは砕け散った!
余「<●><●>」ギン!
バーン、ネウロイは(ry
余「<●><●>」ギン!
バ(ry、ネウ(ry
余「<●><●>」ギン!
BNK!BNK!
余「わはははははは!!絶好調だ!わーはっはっはっは!!」
BNK!BNK!BNK!BNK!BNK!BNK!BNK!
余「今日は奴ばらにとり最悪の日だ!わーはっはっはっはっは!」
568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:31:26.16 ID:mWAfAdmI0
絶好調である!!
569 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:32:33.98 ID:BcLPwyk/0
「最悪の日」だったのは確かだった。
ただしそれは、ネウロイにとってばかりではなかったが。
570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:37:22.72 ID:Au/Ok0Ub0
えっ
571 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:38:23.84 ID:BcLPwyk/0
男がロマーニャ内陸部で無双していた頃。
ウルスラは501戦隊基地ハンガーの隅で本を読んでいた。照りつける日差しがハンガーの入り口から斜めに差し込むが、ウルスラの足元までは届かない。
いつもの光景。しかし見る者が見れば、時折彼女の手が自身の唇に触れ、そのたびに真っ赤になってその指を振り払う様子に、“何か”を感じ取ったことだろう。
しかし、この場にはそれはいなかった。
いたとしたら、この後彼女が辿る運命も違ったものになったのかも知れなかったのだが。
ウルスラ「……?」
ふと視界の端、海の方向に何か光るものが見えた気がした。
立ち上がり、ハンガー入り口付近まで出て行く。熱波と、潮の香りを孕んだぬるい風が肌を撫でる。
差し込む日差しに目を細め、手をかざしながら眺めてみる。何も見えない。いや、また光った。海面の反射に似ているが、しかし空の方向からであったように思える。
よくよく見てみると、空の中に一部おかしな部分があるのが見えた。
抜けるように青い空と真っ白い入道雲のきっぱりとした境目が、その部分だけ渦を巻くように捩れ歪んでいる。
ウルスラ「あれは……」
何かが隠れているのだ。先ほど見えた光は、あれに反射したものに違いない。
何か。遠近感がつかみにくいが、大きさは恐らく、大型の飛行機程度。
そこまで考えて、ウルスラは全身が総毛立つのを感じた。
ウルスラ「敵襲!」
573 :空の王な俺:2011/02/10(木) 19:43:54.56 ID:BcLPwyk/0
ウルスラが叫ぶのと、そのネウロイ ―― 光学迷彩を解除し、その黒々とした姿を顕にしていた ―― がビームを放つのは同時だった。
ハンガーに直撃。基地に激震が走る。駐機されていたストライカーが、その整備兵もろとも吹き飛ぶ。
ウルスラは灼熱の爆風にあおられ、ハンガーから投げ出されて滑走路に叩きつけられた。
一拍遅れて、非常警報が鳴り響く。
驚騒に陥った人間たちを嘲笑うかのように、ゆっくりと降下して来るネウロイ。
それが、薄れゆく意識の中でウルスラが最後に見たものだった。
574 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:46:20.89 ID:YQrDNs6X0
俺が変な事を書き込んだばかりに…
575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:48:24.65 ID:LJWBhST+O
もう、嵌められないの・・・・・
嵌められ……ないよ…………
576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:53:24.63 ID:Nyle5BiQO
おい
お……
577 :空の王な俺:2011/02/10(木) 20:03:15.40 ID:+qy5t1q80
管制塔からネウロイの襲撃と、その被害状況の報告を受け取ったミーナの判断は素早く正確で、残酷だった。
彼女は素早く周辺を哨戒中の部隊に救援を要請すると、基地内のウィッチ達に強い口調で避難命令を下し、彼女らを基地内でもっとも頑丈な地下室に隠した。
芳佳とエーリカの二名がハンガーにいた人員の救助を強硬に主張したが、ミーナは受け入れなかった。
ハンガーが破壊され、滑走路を占拠された以上、もはや自力での反撃は不可能だというのがその理由だった。
ハンガーにいた人員や、その他の基地施設を破壊しつくされることになっても、ウィッチだけは守らねばならない。
基地やストライカー、基地要員は代替が可能だが、ウィッチは貴重なのだ。そう粘り強く説得するミーナの顔は蒼白だった。
隣に立つ坂本の唇は、ともすれば零れ落ちそうな言葉を押しとどめるかのように固く引き結ばれていた。
しかし予想に反して、ネウロイはハンガーのみを徹底的に破壊すると、即座に機首を返し引き上げていった。
578 :空の王な俺:2011/02/10(木) 20:07:31.96 ID:+qy5t1q80
男はネウロイが去ってから十数分後に全速力で戻ってきた。
余「………………………………………………」
今、彼は膝をつき、瞬きすら忘れて手の中のものを見つめている。
ウルスラ・ハルトマンの眼鏡。
熱で歪み、血がべっとりとこびりついた、彼女の遺品を。
580 :空の王な俺:2011/02/10(木) 20:09:27.28 ID:+qy5t1q80
とりあえず今日はここまで。
あと今更だし誰得だが設定というものを書いてきた。
しかもうっかり面白すぎて1レスに収まらなかった。
余韻ぶち壊しだけどあと2レス程投下する。
581 :空の王な俺:2011/02/10(木) 20:11:52.48 ID:+qy5t1q80
『空の王』設定
所属: なし
階級: なし
固有魔法: 勅視
使い魔: 不明
飛行脚: サーフボード型ストライカー(?)『玉座』
エンブレム: なし
戦闘評価
・地上、空中、大型、小型を問わない総撃破数は4000機以上。しかも自己申告ではなく、出撃時に随伴した部隊により確認されたものだけでこの数字となる。 味方の観測範囲外でも多くのネウロイを撃破しているはずだが、それは反映されていない。
本人はそれらを全く申告しないので (曰く『ちまちま数えるのも、そんな数字を誇るのも、王のすることではない。』) 実際の撃破数は推測以上のものになりえないが、この倍かそれ以上に上るのではないかと言われる。
・本人が『勅視』と呼ぶ固有魔法は、眼から何らかの力を放射するもの。さまざまな規模の破壊を引き起こす。小型ネウロイ程度ならほんの一睨みで消し飛ぶ。
特筆すべきはその射程圏の広さで、視界全てが攻撃範囲になる。 対象が見えてさえいれば撃てるので、双眼鏡などで射程距離を延ばすことも可能。もともとの視力も高く (本人の申告では100.0) あらゆるネウロイを先制発見・先制攻撃・先制撃破してきた。
本人はこの固有魔法を『王権の行使』と表現することもある。 これは敵とみなしたオブジェクトに対し基本的に接近さえ許さず、一方的に攻撃できる (『生殺与奪権を握れる』) ことを指す一種のレトリックであり、“なんでも言うことを聞かせられる”という意味ではない。
ようは超強力・超精密な『目からビーム』。
・本人が『玉座』と呼ぶボード型ユニットは、樹齢1000年を越えるトネリコを削り出した芯材に、朽ちた月桂樹の内側で育つ宿り木の樹液と、 アフリカ大陸の一部に生息するとある昆虫数万匹分の体液を煮詰めて作った樹脂を塗り固めてフレームとし、表面には聖別された銀と香油などを染料とした呪紋が彫り込まれている。
いわば“クラシックな魔術テクノロジー”の結晶たる呪物であり、ボード全体が呪符として機能する。
近代技術により製造されるストライカーユニットに比べると一般的な性能面で劣ることは否めないが、機構が単純な分抗靱性・信頼性に優れ、またストライカーなら破損してしまうほどの大魔力を注ぎ込まれても素直に応答する。
583 :空の王な俺:2011/02/10(木) 20:13:01.48 ID:+qy5t1q80
個人評価
・経歴には不明な点が多い。というより分かっていることの方が少ない。
オストマン軍人と思われがちだが、たまたま開戦当時にそこに居たというだけで、オストマン国籍すら持っていない。
・性格は尊大。常に周囲に対して上位の存在として振舞う。謙遜や遠慮とは無縁。
・所属や階級などの分類や、エンブレムや名前といった同定を当てはめられるのを何より嫌う。
分類も区別も唯一無二のものでないから必要になるのであり、自身はそうではないと考えるため。
・意外と女性に免疫がない。少なくとも「色を好む」タイプではない。
・『空の王』を名乗るが、決して他者を家臣のように扱うことはない。なぜなら誰も彼の国の民ではないから。
彼が君臨するのは空であり、どこかの国ではない。少なくとも本人はそう考えている。
・国もないのに王だけが存在するなんて滑稽だわ!
今度こそ投下終了。続きは一週間後?じゃあの
584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:14:26.55 ID:Au/Ok0Ub0
間に挟むみたいに乙ってごめんなさい
っていうかシータの台詞使うなwww
586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:25:23.47 ID:5xRB5zEy0
乙
まさかウーシュのこと≪自主規制≫なんてことは無いよね…ね
最後のシータで不覚にもwwちくしょうwww
最終更新:2013年02月02日 13:46