智子「ここは……?」

智子は医務室のベッドに寝かされていた。
ベッドの周りには、心配そうな顔をしたエルマ中尉とハルカ、そしてキャサリンが顔を覗き込んでいた。
そこに、俺とビューリングの姿はない。

ハルカ「基地の医務室です」

キャサリン「お、気づいたねー」

エルマ「良かった…。俺少尉に運ばれてきて、丸一日寝てたんですよ?」

智子「俺少尉が?」

智子は起き上がろうとして、体をひねると激痛が走った。

智子「つ…!」

エルマ「あ、寝ててください!」

智子「でも、ビューリングと俺は……」

エルマ「俺少尉なら、隣の部屋で眠ってます」

キャサリン「俺は、あの後アホネン大尉たちとディオミディア撃退に行ったねー」

智子「そ、それでどうしたの!?」

ハルカ「俺少尉、撃墜はできなかったけど、追い返したんですよ!」

智子「そう……」

智子はほっと安堵の息を漏らす。

智子「ビューリングは……?」

キャサリン「ええとですねー、それが……むぐっ!?」

キャサリンの口を、ウルスラとハルカが抑えて、エルマに訴えかけるような目を向ける

エルマ「……体中に銃撃を受けて、シールドが吹っ飛んで、それで…」

智子「そんな……私、ひどいことばかりしてきたのに……どうして」

エルマ「ビューリング少尉、言ってました。穴拭少尉は部隊に必要な人だからって……」

俺「その通りだ」

キャサリン「お、俺!?寝てなきゃだめね!」

俺「ほんのかすり傷さ、もう大丈夫だ」

俺の頭には包帯が巻かれていた。
それを見て、智子の心がズキリと痛んだ。

智子「俺、大丈夫なの?

俺「人の心配する暇があったら、自分の心配をするんだな」

智子「ねぇ、俺…ビューリングは……」

俺「エルマ中尉が言った通りだ」

智子「……」

エルマ「と、とにかく今はゆっくりと、……傷を治してください。あとのことは心配しないで」

智子「でも……私とビューリングがいなくなったら……」

キャサリン「だ、だいじょうぶね!今度はウルスラの作った新兵器を試すことにしたね!なんだっけ?」

ウルスラ「…空対空ロケット」

キャサリン「そう!そのロケットがあればあんな奴、あっという間に撃墜できるね!」

ロケットを当てるには、かなりの距離まで近づかないといけないだろう……
そんな智子の心配を感じたかの様に、エルマ中尉が手を握る。

智子「エルマ中尉……」

エルマ「ほんとに大丈夫だから。私たちでなんとかする。だから、あなたはゆっくりと傷を治してちょうだい」

ハルカ「あ、安心してください!ここへは絶対にネウロイを近づけさせませんから!」

俺「皆、そろそろ行こう」

キャサリン「そうね」

去り際に、全員が頭を下げた。

「穴拭智子少尉、ありがとう」

自分は……、わがままばかり押し付けていたような気がする。
智子は包帯の巻かれた腕を見つめ、そう考えた。

一体どれくらいの時間、そうしていたのだろうか。
気づくと空は真っ暗になっていた。
扉がノックされたが、返事する気にもなれない。
すると、扉が開き、ハッキネン大尉が入ってきた。

智子「大尉…」

ハッキネンは無言で、智子に一枚の紙を差し出す。

智子「これは……?」

ハッキネン「帰国命令です」

智子「帰国命令?」

ハッキネン「そうです。叙勲の決まったエースを、死なせるわけにはいかない、と、佐久間中佐から連絡がありまして」

智子「……」

ハッキネン「明日、迎えの飛行船が来ますので、それでガリアのブレスト軍港まで向かってください」

ハッキネンはそれだけ言うと、部屋から立ち去っていった。
智子には、ビューリングの死が重くのしかかってきた。
彼女は、彼女が戦友と認めた智子の身代わりとなって死んだのだ。
智子は、お荷物ぐらいにしか思っていなかったのに……。

智子「どうして、わたしをかばったのよ……、自分の撃墜数しか興味なかったわたしを……」

智子は、声を押し殺して泣きながら、以前俺に言われたことを思い出していた。

『これからの戦いは、編隊飛行の一撃離脱戦法が主流になる』

あの時、彼の言葉に耳を貸しておけば、こんな事にならなかっただろう。
私は、あまりにも頑固すぎた。だから、彼の言葉を蔑ろにして、大怪我をして、戦友を失った。

智子「私の大馬鹿……」

智子は朝まで泣いた。



翌朝、智子の病室に、軍服を着て部下を連れた佐久間中佐がやってきた。

佐久間「今日は正式な命令なんでね。さて、扶桑皇国陸軍、スオムス義勇飛行中隊所属、穴拭智子少尉。帰還を命ずる。」

佐久間「ご苦労様。国に帰れば、国民の歓迎が待っているぞ」

智子は、担架に載せられて外に出る。
二ヶ月ほど暮らしたこの基地は、相変わらずボロボロのままだった。
それがなんだか寂しく思えてしまう。

智子「中隊の皆は……?」

衛兵「出撃待機中ですよ」

智子「そう……」

智子の戦争はあっけなく終わってしまったが、俺や他のみんなの戦争はまだ続いている。

智子「大丈夫かしら……」

衛兵「え?」

智子「ううん、なんでもないわ。私に心配する権利なんてないかもしれないから…」

自分は彼女たちと、何一つ協力しなかったではないか。
足手まとい、役立たず、期待しない……、そう言って邪魔者扱いして、無視してきた。
でも、それは間違いだったのだ。そんな思いが胸に溢れてくる。
……しかし、そんな事を今考えてもしょうがない。もう帰りの車も来ている。
智子が車に乗り込もうとしたとき……

ハッキネン「空襲警報発令!空襲警報発令!」

けたたましいサイレンの音と共に、ハッキネン大尉の声が、飛行場の一角に据え付けられたスピーカーから流れてきた。
その声に、担架を持った佐久間中佐の部下がぼやく。

部下「ついてねえなあ。こんな時に来なくてもいいもんなのに……」

ハッキネン「接近しつつある敵は、先日の巨大爆撃兵器を含む戦爆連合二十余機!高度四千!当基地に進撃中!」

智子「やっぱり、来たのね……」

智子が飛行場に目を移すと、そこからウィッチ達が次々と空に上がっていく。
ぐんぐんと上昇していくのは、アホネン大尉率いる第1中隊だ。
最新鋭のメルスを装備しているから、速いのだろう。
その後に上がるのは、ずんぐりした機体、バッファローを操るキャサリンだ。相変わらずよたよたしているから一目で分かる。
キャサリンの横の小さな体はウルスラだろうが、手に筒を抱えている。あれは空対空ロケットだろうか?
今飛び上がった白い機体は、ハルカの十二試戦だ。ほら、前を見ないから編隊を組めないじゃないの。
中隊長であるはずのエルマ中尉は、離陸でもたついていたようだ。G50は上昇力が良くないんだから、準備してないと……。
そして、最後に飛び上がったのは俺のJu88だ。背中に巨大な7.5cm砲を担ぎ、一際目立つシルエットだ。
私が居ない今、あの中隊を率いるのは実質彼だろう。
彼の実力ならば、あの中隊を率いることは容易いだろう。でも……

どこまでも危なっかしい、義勇独立飛行中隊の姿を智子は見つめた。
"いらん子"と呼ばれ、母国で行き場をなくした仲間たち。
ここでも、居場所がなく、私も邪魔者扱いしてきた仲間たち。
でも、そんな彼らは私に『ありがとう』と言ってくれた。

自分は、競い合うだけじゃなく協力しあえるような、そんな仲間たちを失おうとしているのかもしれない。
本当の友人になれたかもしれない、彼らを。……例えば、ビューリングのように。

智子「でも……やっぱり、俺だけに任せられるわけじゃないのよ」

衛兵「え?…し、少尉何を!?」

智子は、担架から起き上がり、衛兵の持つ風呂敷包みから軍刀を抜く。

智子「私、行かなきゃ」

足と腕の痛みはまだ引かない。だけど、歩けないわけじゃない。
つまり、飛べないわけじゃない。
片足を引きずって、智子は格納庫の方へと走り出す。
そんな智子を、佐久間中佐が追いかける。

佐久間「おい、少尉!どこにいくんだ!」

智子「みんなのところです」

佐久間「おいおい!そんな身体でどうしようっていうんだ!貴官には、帰国命令が出ているんだぞ!」

智子「拒否します」

佐久間「拒否するとはどういうことだ!これは抗命罪だぞ!」

近づく佐久間中佐の鼻先に、智子は軍刀を突きつける。

佐久間「ひっ!」

智子「すいません。勲章とチャラってことで」


格納庫に飛び込むと、既に智子のキ27が準備されてあった。

整備兵「あ、穴拭少尉!本当に戻ってきたんですか!?」

智子「これは?」

整備兵「俺少尉が、『智子少尉は、必ず戻ってくる。だから、機体の準備をしておけ』って…
    俺たちはそんな訳ないと思ってたんですが、俺少尉があまりに強く言うもんですから」

智子「ふふっ、俺ってば、分かってるじゃない」

智子は、その足を愛機に突っ込む。
足は、キ27に吸い込まれるように入る。そして、青白い魔法陣が展開し、エンジンが回りはじめる。

整備兵「そんな怪我で飛べるんですか?」

智子「飛べるじゃないの、飛ぶのよ」

智子は叫んで駆け出した。
飛行場に飛び出て、ありったけの魔法力をキ27のマ一型魔導エンジンに送り込む。
エーテルのプロペラが勢いよくまわり、智子は弾かれたように滑走し、痛む体に鞭打って、グングンと上昇していく。
その姿を見て、整備兵達は帽子を振る。

整備兵「旧式とは思えない上昇力だな」

整備兵「気合が入ってるんだろ。魔力は気合さ」

整備兵「ネウロイ共をやっつけてくれよ!エース!」


巨大なディオミディアを前にして、俺たちはどうすることもできなかった。
改めてみると、やはりデカい。翼の径は学校のグラウンド位はあるんじゃなかろうか。
四発のプロペラによって進むその巨大な姿は、凶悪そのものであった。

エルマ「まるで白鯨ね。」

俺「さしずめ、俺達は白鯨に立ち向かうエイハブ船長ってか?」

キャサリン「でも、エイハブ船長は最後は死んじゃうねー」

ハルカ「縁起の悪い事言わないでくださいよ!」

俺たちは、機銃の射程外から、ディオミディアとそれを護衛するラロスを遠巻きに見つめる。
その反対側では、第1中隊が同じように、ネウロイを遠巻きに見つめていた。
ラロスは、攻撃してこない俺たちには興味ないのか、ぴったりとディオミディアにくっついて離れない。

俺「近づく手段がないな……」

ハルカ「俺少尉の、大砲は使わないんですか?」

俺「あぁ…これを持つと手が震えちまってなぁ」

エルマ「ウルスラ、ロケットの準備は?」

ウルスラ「OK」

キャサリン「機銃の射程外から撃って当たる?」

ウルスラ「無理」

エルマ「こうしていてもしょうがないわね……、とりあえず攻撃してみましょう」

しかし、ディオミディアに近づけば、ご丁寧にもラロスと防御機銃がお出迎えをしてくれる。
近づいては離れてを繰り返し、どうにも近づけない。
それは第1中隊も同じようだ。

エルマ「う、こうなったら……」

キャサリン「こうなったら?」

エルマ「体当たりするしかないのかなぁ……」

俺「何言ってんだ!?」

エルマ「でも、このままじゃまたスラッセンの街を爆撃されちゃう……。私たちは機械化航空歩兵よ。
    みんなを守らなくちゃいけないのよ?だったらいっそのこと……」

ハルカ「エルマ中尉だけに行かせません!」

キャサリン「待つね!やけになっちゃダメね!」

俺「そうだ、まだチャンスはあるさ……そうだろう?智子少尉」

智子「ええ、そうね!皆離れて!体当たりするなんてダメよ!」

キャサリン「トモコ!」

エルマ「穴拭少尉!」

智子は雲間から現れて、俺たちの目の前で両手を広げる。

ハルカ「少尉……」

エルマ「どうしたんですか!?病室で寝てたんじゃ……」

智子「あなただけに任せるわけにはいかないでしょう?」

エルマ「でも…怪我してるのに……」

智子「怪我がどうしたっていうのよ!俺だって怪我してるのに居るじゃない!
   それに、私はエースなのよ?エースが寝ててどうすんのよ!」

キャサリン「トモコ……やっぱりユーは最高のエースね!」

キャサリンが智子に抱きつく。

智子「ちょ、褒めるのは後でいいわよ。とにかく、今は私と俺の指示にしたがって」

俺「やはり来たか、智子少尉」

智子「ええ、あなただけに任せるわけにはいかないもの」

俺「だろうね」

智子「それと、機体の用意ありがとう」

俺「なんのことだか?」

智子「ふふ、素直じゃないわね……アホネン大尉!」

アホネン『なぁに?』

智子「お願いがあります。ラロスをひきつけていてください」

アホネン『あの忌々しいディオミディアはどうするのよ?』

智子「わたし"達"でやります」

アホネン『……了解。俺少尉、穴拭少尉のこと頼みましたわよ』

俺「ええ、任せておいてください」

エルマ「でも、どうするんですか?」

智子「私に策があるの。聞いて」

――――

俺達は今、キャサリン、エルマ、ハルカ、智子、俺、そしてウルスラの順番で一列に並んでディオミディアに突撃している。

キャサリン「これが"策"ねー!」

智子「仕方ないでしょ!あなたのストライカーが一番頑丈なんだから!」

先頭でシールドを張りながら喚いているキャサリンを、智子が宥める。
護衛のラロスは、第一中隊にかかりっきりで、こちらには飛んでこない。
しかし、護衛が居なくなったからといって、ディオミディアが脅威であることに変わりなはい。
近づく俺たちに向け、無数の防御機銃から火線が伸びる。

キャサリン「こりゃたまらないねー!」

智子「みんな!前方にシールドを集中して!」

5人分の魔力で、キャサリンのシールドを強化しているため、そう簡単には破られることはない。
ディオミディアの防御機銃は、軽装甲がなされており、ハルカの20mm機関砲か、俺の7.5cm砲しか歯が立たない。
そこで、まず俺の7.5cm砲で粗方の機銃座を片付け、次いでハルカの機関砲で残りの機銃座を破壊。
最後にロケット弾を撃ち込む算段だ。

智子「それじゃあ、俺もお願い!」

俺は、智子の言葉に頷き、7.5cm砲を構える。
しかし、手が震えて照準がうまく定まらない。

俺「頼む、収まってくれ、頼む、頼む!」

智子「全く、やっぱりダメじゃない!」

智子は、俺の後ろに回りこんで、7.5cm砲を構える俺を支えるように手を伸ばす。
俺の手に、智子の手が重なる。
不思議なことに、震えが止まった。

俺「と、智子!?」

智子「早く撃ちなさい!早く!」

俺「了解!」

俺は、PaK40の引き金を引く。
大音響と共に、ワインの瓶ほどの大きさの薬莢が排出され、榴弾がディオミディアに突き刺さる。
着弾点周りの機銃座を吹き飛ばすが、それでもまだ機銃座は残っている。

智子「ハルカ、お願いね」

ハルカ「は、はい」

智子「それじゃあ、タイミングを合わせて!」

ディオミディアがどんどん近づいてくる。

キャサリン「そろそろ限界ね!」

智子「今よ!」

ハルカは身を乗り出し、20ミリ機関砲を構え、狙いをつける。
しかし、視界がぼやけてしまってうまく狙いがつけられない。

ハルカ「あうっ!」

引き金をしぼるが、機関砲はあさっての方向を向いて、火花を散らすのみ。
今だ健在の機銃座にかすりもせず、あっという間にディオミディアの上空を通過してしまう。

智子「どうしてあの距離で外すのよ!」

ハルカ「ご、ごめんなさい……」

智子「次ははずさないでよね。何回も出来るわけじゃないんだから」

ハルカ「は、はい……」

俺「……ハルカ一飛曹、もしかして目が悪いのか?近視?」

ハルカ「はい……」

智子「本当なの、ハルカ!?」

キャサリン「眼鏡かけるね!」

ハルカ「ダメです!」

俺「なんでだよ!」

ハルカ「眼鏡かけたらわたし、すっごいブサイクなんです!」

智子「眼鏡、持ってないの?」

ハルカ「……持ってます、ごめんなさい」

全員「かけろ!」

俺たちの魂の叫びがこだました。
あのウルスラも叫んでいたような気がするが……気のせいだろう。

ハルカ「嫌です!」

智子「あのねえ!戦争なのよ戦争!ブサイクとか言ってる場合じゃないでしょ!」

ハルカ「戦争だろうがなんだろうが、絶対にかけたくありません!」

智子「どうして!理由によっちゃ斬るわよ!たたっ着るかんね!」

ハルカ「斬って!斬ってください!少尉に切られるなら本望です!」

俺「あのなぁ……」

ハルカ「すきなんですっ!」

智子「え?」

ハルカ「私、智子少尉が好きなんです!ライクじゃなくてラブなんです!それなのに少尉ってば、この間途中まででやめちゃったじゃないですか!
    それはきっと私に魅力がないから!そうなんですよね!メガネかけたら更に魅力半減で、少尉に見向きもされなくなっちゃいます!」

キャサリン「女同士でなにやってるね」

エルマ「地獄に落ちますよ」

俺「扶桑じゃそういうのが流行ってるのか?」

智子「違うわ!私はレズビアンじゃないわよ!ねえハルカ!冗談でしょ!?」

ハルカ「冗談じゃないです……私を抱くって約束してくれたら、メガネかけます」

智子「あ、あんたねぇ……!」

ウルスラが智子の耳元で呟く。

ウルスラ「抱くって言って」

キャサリン「抱いとくねー」

エルマ「まぁ、この場合仕方ないんじゃないんでしょうか」

俺「……非常時ってことで」

智子「くぅぅ!なんで私が!分かったわ、抱くわよ!抱くから!」

ハルカ「本当ですか!?」

智子「女に二言はないわ」

ハルカはその言葉を聞くと、ポケットから瓶底眼鏡を取り出す。
あまりにも大きいので、水中眼鏡と間違えるほどだ。

智子「ぷふっ」

ハルカ「笑いました!?」

俺「笑ってない!誰も笑ってないから!いや、よく似合ってるな!」

ハルカ「そ、そうですか?」

その後ろでは智子が全員につねりあげられていた。

智子「いひゃいいひゃい!よ、よし行くわよ!」

再び俺たちは突撃を開始する。
先ほどと同じように、キャサリンを先頭にして距離をつめていく。
そして、200メートルを切ったところでハルカが顔を出し、20mm機関砲の引き金を引く。
薬莢が排出され、弾丸は機銃座に吸い込まれ、炸薬を爆発させ、それを破壊する。

ハルカ「やったぁ!」

その後立て続けに4つの機銃座を破壊し、ついにディオミディアは丸裸になる。
距離50メートルで、キャサリンとハルカが離脱する。

俺「ウルスラ!」

ウルスラは頷くと、両手に持ったロケット砲を発射した。
乾いた音とともに、ロケットは白い航跡を残しながら、ディオミディアに吸い込まれる。
着弾の瞬間、ロケット弾は爆発し、ディオミディアの胴体に大穴を開けた。
しかし、まだ落ちない。

智子「俺!」

俺「了解!」

俺は、その大穴めがけて、7.5cm砲を向ける。
もうこいつは、怖くない。なぜなら、周りには仲間がいるから。
俺の砲弾で、仲間が死ぬことは、もうない。

俺「いけえええええええ!」

砲口から、勢い良く放たれた7.5cm徹甲弾は、ディオミディアの大穴に突き刺さり、貫通した。
内部に搭載した爆弾に命中し、ディオミディアの胴体が中央から折れ、ついに爆発四散する。

エルマ「……やった?」

ハルカ「みたいです……」

キャサリン「キャッホー!俺、最高ねー!」

ウルスラ「勝った」

智子「やった!やったわ!俺!ついにあいつを落としたのよ!」

智子が、俺に抱きついて歓声をあげる。
彼女の胸が、思い切り押し付けられる。……ふふ。

俺「いてぇ!……やったな、智子少尉」

エルマ「あらあら」

ハルカ「な、なにやってるんですか!俺少尉、離れてください!」

俺「いや、俺は……」

ハルカが俺と智子の間に入り、無理やり引き離す。
智子の顔は、今更真っ赤になっている。

智子「いや、あの、喜びすぎちゃったというかね……なんていうかその、ほら」

俺「分かってるよ、智子」

ハルカ「な、なんで呼び捨てなんですか!」

俺「智子だって俺のこと呼び捨てだし、ビューリングもキャサリンもだからな」

エルマ「こちらひばり、こちらひばり!雪女、聞こえますか!?」

ハッキネン「こちら雪女、どうぞ」

エルマ「やりました!私たち、ディオミディアを撃墜しました!」

ハッキネン「そう……ご苦労様」

俺「エルマ、変わってもらっていいかい?」

エルマ「あ、どうぞ」

俺「砲兵より雪女、銀狐に代わってください」

ハッキネン「……分かってるのね」

俺「仲間の事ですから」

智子「銀狐…?誰?」

俺「砲兵より銀狐、聞こえるか?」

ビューリング「ああ、よく聞こえるよ」

智子「び、ビューリング!?死んだはずじゃ…!」

ビューリング「誰も死んだとは言ってないさ。ただ、俺たちに一芝居打ってもらっただけだ」

俺「智子が仲間意識に目覚めるようにな」

ビューリング「そういう事」

智子「……なるほど、私はまんまと嵌められてたわけね」

俺「俺はアカデミー賞を取れると思ってるんだぜ?」

智子「ええ、確かに……でも、良かった」

俺「何がだ?」

智子「ビューリングが生きてて」

俺「彼女も傷を負ったが。致命傷ではなかったからな」

智子は、編隊を組み直した俺たちの前に出て、向かい合う。

智子「皆、今まで散々、足手まといだなんて言ってごめんなさい。そして、助けてくれてありがとう」

キャサリン「いやぁ、照れるねー」

エルマ「気にしないでください。だって私たち」

俺「仲間だからな」

ウルスラ「仲間」

智子「ええ、そうね……皆、これからよろしく!」

ハルカ「少尉ー!」

智子「ちょ、ハルカ!離れなさい!」


こうして俺たちは、無線越しに大歓声を聞きながら、基地へと帰投した。
スオムスいらん子中隊、もといスオムス義勇独立飛行中隊はこの日、本当の飛行中隊となった。
最終更新:2013年02月02日 13:55