オラーシャ
オラーシャというところは一年中吹雪いて、晴れることが少ない所だと思っていた。
が、実際来てみると確かに雪は積もっているが太陽は出ているし吹雪も無い。
寒さは予想できていたので大したことはなかった。
隣にはネウ子がネウロイユニットを履いて飛んでいる。
ロマーニャの巣は現在、主が居ない状態だが人間にはわからない。
子供のようにネウ子がはしゃいだ声を上げる。
私「寒いってお前感覚無いだろう」
ネウ子(やろうと思えば温度を感じることくらいたやすいのさ)
私「初耳なんだが」
ネウ子(キミも出来るはずだヨ? 今回は戦う時はやらないとまともに動けないヨ寒いし)
私「……今はいい」
首に巻いた黄色いマフラーに触れ、前日のことを思い返した。
前日 501基地
私「――という訳で、暫く休暇をもらいたいんだが」
ミーナ「友人の結婚式ね……」
書類に目を通しながらミーナは私の話を聞いている。
無断で行くのもよかったが、後で面倒になっては困るので適当な理由をでっち上げた。
ミーナ「どこまで行くのかしら?」
私「オラーシャまで。とはいってもネウロイの侵攻とは離れた所だ」
ミーナ「ふぅ」
一段落ついたようでミーナは肩を揉み背筋を伸ばす。
ミーナ「一人くらいなら問題ないわ。ネウロイの反応は見えないけど、サーニャさんと美緒が頑張ってくれてるし。かわりに帰ったら少し事務と哨戒を手伝ってもらおうかしら」
私「普段と変わってないぞ」
ミーナ「あらそうだったかしら」
口に手を当てミーナは笑った。
私「げふっ!」
ミーナの部屋から出ると、横からルッキーニが飛びかかってきた。
突然のことだったので受け止めきれずに一緒に倒れてしまう。
ルッキーニ「う、うじゅっ、ご、ごめん私!」
私「気にしなくていい。それよりも怪我はないか?」
ルッキーニ「うん」
私「……ならいい」
安堵からため息が漏れる。
私「ところでどいてくれないか?」
現在私は仰向けで、ルッキーニは私の腹部に乗っている。
頼む私にルッキーニは頬を歪ませ、その細い腕を私の胸まで持っていった。
……まさか最初からこれが狙いじゃないよな?
私「ええいどけどけ」
強引に体を起きあがらせると、ルッキーニは廊下に転がった。
ルッキーニ「ね、ね、どっかいくの? あたしも行きたい!」
私がミーナの部屋に行く時は外出の許可を貰う時なので、私の外出は知られているようだ。
目を輝かせながら四つん這いで近づいてくる。
買い物なら連れてってやりたいところだが、今回はそうはいかない。
というよりも連れて行ったら色々とバレるのでダメだ。
私「駄目だ駄目だ。もう一回
おまけに言ってやるが駄目だ。それにオラーシャだから寒いぞー」
ルッキーニ「うぇー」
私「今度ローマに連れてってやるから」
ルッキーニ「ホント!?」
嬉しさからか耳と尻尾が現れる。
なんとなく現れた耳を触れてみると柔らかくて気持ちいい。
ルッキーニ「絶対だよ!」
ルッキーニは立ち上がると、膝についた埃を手で掃う。
そして何か思い出したように手をポンと叩いた。
ルッキーニ「ちょっと待ってて!」
パタパタと耳としっぽを出したまま廊下の角を曲がって行ってしまった。
どこかへ向かったということは何か持ってくるつもりなのだろう。
とりあえず廊下に座ったままでは足が冷たいので立ち上がることにした。
ルッキーニ「おーい!」
壁に背中を預けて2、3分たったころルッキーニは戻ってきた。
手に黄色く長いものを持っている。
ルッキーニ「はいこれ!」
私「これは……マフラーか」
ルッキーニ「あたしが少し前に使ったやつ。オラーシャって寒いらしいし、寒くないように!」
ルッキーニは私にマフラーを手渡すと笑顔を見せた。
急いできたのか額に汗が少し。肩で息もしている。
私「大事に使わせてもらうよ」
マフラーを右手で受け取り、左手でまだ耳の生えている頭を撫でてやる。
気持ちいいのか嬉しいのか尻尾が反応している。
ルッキーニ「お土産よろしくね!」
私「覚えてたらな」
人差し指で、つん、と軽く額を押してやる。
ルッキーニ「忘れないでよー」
そういってルッキーニはどこかへ走って行った。
貰ったマフラーを首に巻いてみる。
ほんのりとルッキーニの、太陽の匂いがする気がした。
現在
巻いていたマフラーをもう一度強く巻きなおす。
ネウ子(何ナニなに? そのマフラーどうしたの?)
ネウ子が近づいてきてマフラーに顔を近づける。
ネウ子(こ、これは……ルッキーニちゃんのマフラー!)
私「何故わかるんだ?」
不思議に思って尋ねると、ネウ子は腰に手を当て胸を前に出す。
この時ご丁寧にもわざわざ胸を再構築して巨乳にしている。
ネウ子(匂い! ルッキーニちゃんのかほりくんかくんか!)
飛んでいるにもかかわらずネウ子にビームを撃ってしまった。
寸でのところで身をかわすネウ子。
ネウ子(じょ、冗談だヨ! 以前倒された時に付けてたのをみただけだヨ!)
正直ネウ子なら匂いで判別してきそうだから恐ろしい。
……よく考えたら鼻無かったなコイツ。
ネウ子(それにしてもデカイね。作ったボクがいうのもなんだけどさ)
ネウ子が空を見上げる。
私達の目の前には巨大な黒い壁、所々に赤い模様が入ったそれは、白い雪国とは全く合っておらず威圧感を放っている。
横だけでも相当の大きさなのに、縦はそれ以上に高い。
私「これ本当に倒せるのか?」
ネウ子(ボクとしては出来れば壊したくないんだヨね)
私「なんでだ? お前達にとってもマイナスに働いてるんだろ?」
ネウ子は腕を組んで首をひねったり頭を掻いたりしてから言った。
ネウ子(親心ってやつ……かな?)
私「なんだそりゃ」
ネウ子(それは置いといて、電波障害を止めてくれればボク達は戦わなくてもいいんだ。話すくらいならこの距離でも可能だしね)
確かに会話をして障害を取り除くことができれば
戦う理由は無くなる。
こちらとしても面倒事はごめんだ。
何よりこのネウロイを相手にして倒せるかどうかわからない。
話し合いで済めばいいんだが、嫌な予感がする。
こういう時の私の勘はとてもよく当たる。
私「上手く行くのか?」
ネウ子(いくよ絶対ね)
振り向いてネウ子は(恐らく)笑った。
だが私にはどうも無理をしているように思えて仕方ない。
私「ネウ子お前……」
???(おいーッス)
やる気のなさそうな声が脳内に響く。
壁のようなネウロイとは逆の方向からネウ子の友人が手を振りながらやってきていた。
ネウ子(やー)
二人は互いに抱き合ってクルクルと空中で回る。
友人というよりは親友のほうが近いんじゃないだろうか。
ネウ子(近づくなヨお前の体冷たいんだヨ!)
友人(そりゃこっちのセリフッスよ触るんじゃないッスよ!)
かと思えば突然離れて互いを罵倒し合う。
私「ああもう。お前ら落ち着け」
ネウ子(何いってるの?)
友人(自分達は冷静そのものッスよ)
ネウ子・友人
本当にこの二人と一緒で大丈夫なのかと頭が痛くなった。
やぱりネウロイというのは私には理解が出来ない。
友人(それは置いといて、どうッスか? 見た感想は)
私「そう言われてもデカイとしか言いようがないな」
友人(それだけなら大したことないんスけどね。やっぱジャミングが大きいッス)
肩を落としてため息を友人はついた。
ネウ子(……)
ネウ子はテレパシーでネウロイに会話をしているようだ。
聞き取れないし表情もわからないが、なんとなく上手くいっていないことが分かる。
ネウ子(ダメダナ)
どこかの誰かに似た様な口調で腕でバツ印を作る。
ネウ子(そもそも話を聞いてないっぽいヨ)
ネウ子が私を指さす。やってみろということか。
目を瞑り意識をネウロイに集中させる。
私(……おい聞えるか?)
ネウロイ(ララ……ラララ……)
私(唄うのをやめろ。話を聞け)
ネウロイ(ラララ……ラ……ララララ……)
ため息をつきテレパシーを中断。ネウ子の言う通りだ。
まるで泣きやまない赤ん坊のようだ。
そもそも聞えているかすら怪しい。
ネウ子(ダメでしょ?)
私「ダメダナ」
これは本当に破壊するしかないのかもしれない。
私「仕方ないな。適当なところを攻撃して、意識をこっちに向けるか」
ネウ子(攻撃するにしてもコアの位置が高すぎるしね)
しかしこの巨体に傷がつく程度の攻撃をしたところで気にも留めないだろう。
目の前がネウロイで一杯になるほど近づき、切断しようとビームを撃ちこむ。
私「んなっ!?」
が、ビームはまるで吸い込まれるように黒い体へと消えていった。
おそるおそるネウ子を見ると、無駄に可愛らしいポーズを取って
ネウ子(対ビーム付けてたの忘れてたテヘッ)
友人に頭に穴開けられたのは言うまでも無い。
ネウ子(今回は流石に死ぬかと思ったヨ)
友人(うるさい黙れ)
私「なんでそんな無駄な機能を……」
現在いる位置は大体4000メートル付近。
もう少し上に行ってそこに攻撃を仕掛ける事にした。
マフラーの端に触れるとユニットに力を込めた。
12345メートル地点
下の方に比べると一気に冷え込む。
何とか我慢できているがそろそろ感覚を無くすべきか。
ネウ子(やっぱり無視されてる……っぽいね)
ここに来るまで何回かネウ子が話しかけてみたが、相手は唄うのを止めていない。
ネウロイはコアを破壊されなければ死にはしない。
少しばかり痛い思いをしてもらおう。
友人(じゃあ私くん頼むッス)
ネウ子(ボク達はビームしか出来ないからね)
二人はネウロイのそばから離れる。
なぜこの二人ついてきたんだと思いつつ、右腕に力を込める。
恐らく普通に殴っても少々えぐれるだけですぐに修復するだろう。
断艦は相手が下にいないと使うことができない。
ならば先日ネウ子から貰ったこれの出番だ。
私「おおおおおおおおおおおおお!」
ユニットの速度を上げネウロイに近づき腕を振り上げる。
ダァン!
右手のひらをネウロイに思いっきり叩きつけると、壁に物がぶつかった時の音のような音が響く。
更に腕に力を込め、ネウロイを押すように腕を前に出す!
ビキィィィィィッ!
亀裂がネウロイに入る。
ゆっくりと手をネウロイから離すと、手のひらからは1メートルほど杭が飛び出して、ネウロイに穴を開けていた。
亀裂は段々と大きくなり、この場所から下の部分が白い塵のようなものになって消えた。
同時にネウロイが少しずつだが降下を始めた。
これで大体以前ネウ子が作ったネウロイとと同じくらいの高度にコアがあるはずだ。まあルッキーニから聞いたので詳しくは知らないけれど。
私「……歌が止まった」
振動がコアまで届いたのか、1万メートルを超えたあたりから頭に響いていた歌が途切れる。
これならこちらの声も相手に届くだろう。
ネウ子(いやーヨかったヨかった)
友人(流石の威力ッスね)
ネウ子(ボクがつくってあげたんだ。モットホメロー)
友人(凄いッスよ。私くんの武器)
ネウ子(褒めるの間違ってない? ねえ)
二人で先に上に上昇していくネウ子達。
話すだけならここからでもいい気がするが、止めようとしても二人はどんどん上へと昇って行く。
感じる温度を遮断して私も二人の後を追った。
上空約32099メートル地点
山々ははるか下の方にある。
何も聞こえない。温度の感覚もない。
幸い視覚に異常はないようだ。
もしこの場所で視覚を奪われ身動きがとれないままされて放置されたら、すぐに発狂してしまうかもしれない。
それほどまでにこの場所は冷たい。
頬に当るマフラーがとても心強く感じる。
ネウ子(……いたね)
友人(コアちっちゃいッスね)
先に昇った二人が見つめる先は、槍の様な形をした頂上。
その一番先にコアが埋め込まれているのがわかる。
私「で、話は通じてるのか?」
二人は首を横に振った。
しかし結果的には歌は止まったわけだしこれで解決、ではないんだろう。
ネウ子は頬に手をあて首をかしげる。
ネウ子(もしかして……)
友人(知っているッスかネウ子!?)
ネウ子(ボクの嫌な予感が当ったならひょっとしてこの子……っ!?)
ネウロイの頂上部分が開きコアが現れた。
コアは私達と同じように紅く怪しい光を放って、舐めまわすようにこちらを見ているのがわかる。
私「見ているだけ……?」
ネウ子(……私っ! 下! 下!)
ネウ子の言葉が早かったか、それが私の脚に絡まりつくのが早かったか。
私「しまった!」
ネウロイの触手。
ずっと下の方から伸びてきた触手に右足に巻きつかれてしまった。
何とか引きちぎろうと脚に力を込めるが、何かおかしい。
まるで脚が無くなってしまったような――
私「あ、足がっ!?」
右足は触手と同化して既に私の物ではなくなっていた。
背中からジリオスを抜き取ると、峰側で足だったものを強引に砕く。
足を取り込んだことに満足したのか触手は再び下のほうへと戻って行く。
片足でバランスを取りつつ友人のそばへと寄る。
私「これはマズイな」
友人(そうッスね。治るの早くてよかったッスね)
私「……他人事だなおい」
友人(他人事ッスから。それよりもどうするッスか?)
友人はネウロイのコアを見る。今は私を見てはいないようだ。
友人(逃げるなら今のうちッス。まあウィッチ達が壊してくれるのを祈るのも手ッスね)
退屈そうに友人は背伸びをした。
友人(……でも、アイツはそんな気は更々ないみたいッスけどね)
そこで気付く。あのコアは私達を見ていない。
じゃあ今は誰を見ている? 誰に狙いを定めた?
ネウ子(ぐっ)
答えにたどり着いた時、ネウ子の声が頭に響いた。
ネウ子を見るとネウロイの触手に右胸を侵食されていた。
私「ネウ子!」
ジリオスを再び抜き同じように峰で胸を破壊する。
私「なっ……」
破壊した胸部にはネウロイの命、コアが赤々と輝いていた。
このコアを破壊されればネウ子とロマーニャの巣は消え去ってしまう。
普段は巣に置いてきているはずなのに何故――。
私「お前なんで……」
ネウ子(……わからない)
友人(二人とも前!)
私「チィッ!」
ネウ子を後ろへと放り投げた瞬間、胸に衝撃が走った。
触手がコアの真下から私の胸へと伸びてきている。
私「げほっげほっ……」
触手は槍のように鋭く、正確にコア部分へと当っていたが、ここは下手な攻撃では突き抜けられない。
しかしコアに一点集中の衝撃が響いたようだ。思わずせき込んでしまう。
そして浸食が始まった。
少しずつ胸が触手と一つになっていく、ジリオスは先ほどの衝撃でどこかへとんでいった。
私「ぐ、おおおおおおおおおおおおおお!!」
触手を握り振りほどこうとするも胸は完全に一体化してしまったようだ。
段々と首まで浸食が進んでいる。このままでは私のコアも取り込まれてしまう!
私「があああああああああああああああああ!!」
バギィッ
聞えないはずなのに音が鳴ったような気がした。
目の前には胸を取り込み大きくなった触手。
私(……いったあああああああああああああああああ!)
襲う激痛。
それもそもはず、強引に侵食された胸や喉の部分を触手ごともぎ取ったのだから。
人間でいうなら自ら肉をそぎ取ったようなものだ。
戦闘中なので出来ないが、本当はその辺を転げまわりながら叫びたい気分だ!
ネウ子(
危ない!)
友人(前! 前!)
激痛に耐えながら前を見る。
迫る触手、むき出しのコア、遅れた反応。
とっさに私は右腕を前に出す。
襲い掛かる衝撃にコアの激痛は増し私は意識を手放した。
私(……ここは?)
気がつくと暗い部屋にいた。
一歩踏み出してみると、暗すぎてまるで宙を浮いているようだ。
ほ……ぁ………ぁ…
静かすぎて耳鳴りがしていたところに小さな声が聞えた。
場所はわからないが声がするほうへと足を進める。
ほ……ぁ…ぎ………ぁ……
少しずつ大きくなっていく声。
どこかで聞いたことのある気がする。
突然、暗闇に小さな穴が開いた。そこから白い光が差し込んできた。
明かりの中に箱のようなものがある。
あ!おぎゃあ!ほぎゃあ!あっあっほぎゃあ!
箱を覗き込むと生まれて間もないような赤ん坊が泣いていた。
なんとなく持ち上げて抱きかかえてみる。
すると赤ん坊は泣きやむのを止めて眠り始めた。
私「……ひょっとして、お前なのか?」
眠る赤ん坊を見ながら私は呟いた。
私「はっ!?」
どうやら気絶をしてしまっていたようだ。
前方を見ると前方で友人が触手から飛びまわっているのが見える。
ネウ子(大丈夫!?)
ネウ子が顔を覗き込んできた。胸の傷はもう残っていない。
自分の胸と喉を触ってみるがこちらも治っている。
しかしマフラーが侵蝕された際に間に合わず少し破れてしまっている。
ネウ子(右腕の武器に感謝したほうがいいヨ。特殊な金属だから、すぐには取り込めずに吹っ飛ばされただけだから)
私「なあネウ子」
ネウ子(何?)
私「あのネウロイは赤ん坊なんだ」
ネウ子(……知ってる。母親だしね)
私「怖くて怖くて仕方ないから触れたものを全て自分と一つにしようとする」
ネウ子(……ボクがいなかったからね)
私「アイツはそのうち手当たり次第に侵食し始めるだろう」
起きあがると右腕に力を込める。
私「恨むか?」
ネウ子は無言で首を横に振った。
私「……そうか」
首のマフラーの破れた部分が黒く修復してゆく。
右腕の武装は振動しながら威力を上げていく。
私「行くぞ」
私の動きを察知したのか、友人を狙っていた触手が私に標的を変更した。
だが遅い。
触手が私に追いつくよりも速く、隙間を縫ってコアの目の前へとたどり着く。
私「……小さいな」
私の体よりも小さいんじゃないかと思うほど小さなコア。
そっと右手をコアに当てる。少しだけ柔らかい。
触手が追いついて私の背中に、後頭部に貼り付くがもう遅い。
キュウウゥゥゥゥゥウウウン!
体に杭打ち機の振動が響いた。
巨大なネウロイが白いチリへと変わってゆく。
ネウロイの断末魔が普段よりも耳に残った。
さびしがり屋の、歌しか知ることが出来なかったネウロイの断末魔が。
友人(じゃあ自分は先に帰ってるッス。巣のほうも心配ッスから)
友人は手を振りながら消えていった。
多分だが私は友人と二度と会えない気がする。多分だけど。
ネウ子(……ウィッチはネウロイの事なんて知る必要はないんだ)
私「どうした突然」
ネウ子(本当はわたしがあの子を殺すつもりだった。コアを見せた時点で打ち抜くつもりだった。でも、出来なかった)
私「……私は復讐をしただけだ」
マフラーをほどいてネウ子に見せる。
首に巻いていた中央の中途半端な部分が黒く染まっている。
私「全く借り物なんだぞコレ……」
ネウ子(キミは)
私「ん?」
ネウ子(キミは殺せるのかい? 彼女達を、ストライクウィッチーズを、フランチェスカ・ルッキーニを)
私「……」
ネウ子(わたしはキミが好きだ。いろんな意味でキミほど惹かれる存在は無い。この気持ちに嘘は無い。出来ることならわたしが殺されるならばキミがいい)
私「……」
ネウ子(キミの気持ちはどうなんだ? 彼女達を殺したいのか? それとも――)
私「……わかっているならいつまでも基地で過ごしていないさ」
ネウ子(……そっか)
私「さあ帰るぞ」
ネウ子(ねねね、お土産かってこうヨー。ボクの調べではお肉が美味しいらしいヨー)
普段の口調のネウ子に戻る。
背中に抱きついてくるネウ子を、今日は引きはがす気にはなれなかった。
後日
ルッキーニ「なにこれー!」
私「……申し訳ございません」
黒くなったマフラーを持ってルッキーニに頭を下げる。
念の為洗ってみたがやっぱり黒い部分は取れなかった。
ルッキーニ「うじゅー……」
私「お、お土産あるぞ!」
私は懐から買ってきた缶に入った熊カレーをルッキーニに渡す。
缶の表示をしげしげと見つめてから、ルッキーニは私の頭を撫でた。
ルッキーニ「もう汚しちゃだめだよ?」
私「は、はい」
ルッキーニ「それじゃ食べよっ! 夕ご飯前だから二人で一つね!」
ルッキーニに手を引かれ台所へと向かう。
後で宮藤にでもマフラーの編み方を教えてもらおうと思った。
最終更新:2013年02月02日 14:25