406 :名無しの俺:2010/12/25(土) 01:29:23 ID:Vg2H93/E
夜 ブリタニア 501統合戦闘航空団基地
その日、お父さんのお墓の前で私は誓いを立てた。
ウィッチとして、皆を守りたい。その為にネウロイと戦うと。
その場で坂本さんに志願した私は、
ガリア大陸を間近に望む小島――第501統合戦闘航空団、
通称『ストライクウィッチーズ』基地に案内された。
着いた頃には辺りはすっかり夜の色。とても長く、激動の一日だったと思う。
机の並んだ一室で、私は改めて他のウィッチの人達と対面した。
私を見つめるのは、坂本さん他9名のウィッチ達。
「はじめまして、宮藤芳佳です! よろしくお願いします!」
微笑む人、訝しむ人、様々だったけど、概ね好意的に受け入れてくれているみたい。
となると、次に気になるのは彼。隣で私以上にガチガチになっている少年。
歳は私と同じか、少し下といったところか。
こうして見ると、改めてあれが見間違いだと実感する。
ミーナ「では、次はあなた、自己紹介してもらえる?」
彼の肩が一際大きく震えた。皆の視線が一斉に彼へと突き刺さる。
悪魔召喚の件といい、かなり興味を引いているらしい。
僕「は、はい! 僕……いえ! 自分は<僕>と申します! 17歳です!
あの、扶桑皇国の弓月の君高等師範学校に在籍していまして、えと、軍属ではないんですけど……」
たどたどしい挨拶に、皆がどよめく。
バルクホルン「軍人ではないだと!?」
ペリーヌ「軍人でもない殿方がどうしてここにいますの?」
エイラ「扶桑の学校では悪魔の使い方を教わってんのかなー」
エーリカ「何でモミアゲ尖ってんの?」
等と口々に漏らしている。
皆が驚くのはもっとも。
私も17歳という年齢には驚いた。学生なのは……私も同じだし。
身長は私よりやや高いかどうか、銀髪の女の子とほぼ同じ。とても17歳には見えなかった。
僕「えぇっと……ごめんなさい……」
完全に萎縮してしまった彼は、涙目になって頭を下げる。
その様は見ていて可哀相なほどで、こっちが謝りたくなってくる。
407 :名無しの俺:2010/12/25(土) 01:32:36 ID:Vg2H93/E
坂本「静粛に! まだ挨拶は終わっていないぞ!」
坂本さんの一喝で場が静まり返る。でも、そんなことしたら余計に話しにくいんじゃないだろうか。
その証拠に、彼は続きを語らない。いかにも、頭が真っ白になりました、という表情を蒼白の顔面に浮かべている。
坂本「どうした? 続けろ」
僕「ひぅっ! ぁあの、僕は、その…………すいません!」
何故か謝る彼に坂本さんも首を傾げ、他の皆さんも私語を禁じられているせいか、気まずい沈黙が流れる。
助け舟を出してあげたいけど、一体どうすれば……。
そんな感じで私が迷っていると、
沈黙を破って、どこからともなく声が響いた。
芳佳「この声……」
低く渋味を含んだ、それでいて甘い色気もある壮年の美声。
ホウオウの上で私に語りかけた男の人の声だ。
彼の隣で大人しく座っていた黒猫が、軽快な動きで肩に跳び乗る。
愛らしい姿と裏腹に、声はその猫から発せられていた。
ただ、口から声が出ている感じはしないのだ。
黒猫「聞け。うぬは師の命で欧州まで来た。
つまり、うぬの双肩には師の面子と立場が掛かっている」
僕「っ!」
彼は、はっとして黒猫を見る。
黒猫は変わらず冷ややかな眼差しで彼を見下ろし、尊大な口調で続けた。
黒猫「うぬの功績は、そのまま師の功績となる。逆もまた然り。
うぬがその体たらくでは、欧州での師の評判はどうなる?」
僕「僕が師匠に恥をかかせる……?」
黒猫「然様、弟子の教育も碌にできぬのかと謗りを受けることとなろう。
少なくとも、ここのウィッチ達には、そのように記憶されるであろうな」
僕「い……嫌だ。それだけは……絶対に!」
不思議だ。あれだけ萎縮していた彼の表情が、みるみる凛々しく引き締まる。
黒猫の言葉が魔法のように作用している。
もっとも、話してる内容の意味はさっぱりわからないけど。
408 :名無しの俺:2010/12/25(土) 01:35:18 ID:Vg2H93/E
猫「ならば胸を張れ。顔を上げよ。まだ自己紹介も済んでなかろうが」
彼は黒猫を振り落とす勢いで背筋を伸ばし、
僕「失礼しました! 僕は軍人ではありませんが、『超國家機関 ヤタガラス』からの指令により、
デビルサマナーとして皆さんと一緒に戦わせていただきます!
未熟者ですが、よろしくご指導のほどお願い致します!」
はきはきと直立不動の状態で言い切ると、深々と頭を下げた。
エーリカ「デビル……」
バルクホルン「サマナー?」
芳佳「ヤタガラス……?」
聞き慣れない単語に、一同疑問符を浮かべる。
僕「あ……それと探偵事務所で見習いなんかもしています。
皆さん調べてほしいことなどあれば、是非ご相談ください」
またしても流れる沈黙。
何から問うべきか迷っているのか。
気まずい雰囲気に、またも彼は冷や汗をびっしり浮かべている。
ゴウト「申し遅れた、我が名は業斗童子。ゴウトでいい。今後ともよろしく頼まれてくれ」
そうこうする内に、黒猫――ゴウトさんも端的に名乗る。
その口調からも雰囲気からも、私よりずっと年輩であること、
彼より立場が上であることが窺え、妙に畏まってしまう。そもそも彼は何者なんだろう。
シャーリー「やっぱ猫が喋ってるよな……」
ルッキーニ「使い魔かなぁ?」
二人の囁きを拾ったゴウトさんは眉をひそめ、睨みを利かせた。
ゴウト「これは念話で語りかけているのだ。ウィッチ以外には聞こえぬ。
それと我は使い魔ではない。
そうさな……さしずめ、こやつの教育係兼お目付け役兼助手といったところか」
ペリーヌ「探偵で猫が助手でお目付け役で教育係……頭が混乱しそうですわ」
409 :タイトル付けてなかった 「サマナー俺」とでも:2010/12/25(土) 01:39:05 ID:Vg2H93/E
当然だと思う。私はとっくに混乱している。
困惑する場を纏めたのは、隊長のミーナさん。
ミーナ「それでは、自己紹介は終わったわね。
彼の所属と目的、能力に関しては気になると思うけど、それを話すと長くなるの。
詳しくは、明朝のミーティングで説明します。
ですから明日の朝食後はここ、ミーティングルームに集合するように。以上、解散」
事務的に説明を終えたミーナさんは、ふと思い出したように、
後ろの方で遠慮がちに立っていた女の子を一瞥した。
ミーナ「あ、それとリーネさんは、宮藤さんを部屋に案内してあげてね。
(僕)君は坂本少佐、お願いします」
リーネ「は、はい!」
坂本「了解した」
私は部屋に案内してもらおうかと思ったけど、解散後も、皆は何故かその場に留まっていた。
理由はすぐにわかった。
彼だ。
エーリカ「ねぇねぇ、何でそのモミアゲ尖ってんの?」
シャーリー「お前、本当に17歳か?」
最初にふたりが彼に詰め寄り、
ルッキーニ「あ~! あたしも聞きたい~!」
その後ろで一番小さな女の子が、ぴょんぴょん跳びはねる。
坂本「ちょっと待て、私もこいつに用がある。すまんが、先に話を聞かせてくれ」
ふたりの間を割って入った坂本さんが、真剣な顔で彼の前に立った。
坂本「お前、戦闘中、ネウロイのビームを刀で斬ったな。あれはどうやった? あの光は?」
僕「えっと、あの、あれはマグネタイトと言いまして、
その……魔法力……みたいなものなんですけど……それを刀に込めまして……」
彼はしどろもどろだ。坂本さんの思い詰めた表情、迫力に気圧されてるのかも。
坂本「……つまり、魔法力を刀に込めているんだな? 込めれば斬れるんだな?」
僕「いえ、魔法力とはちょっと違うんですけど、でも似たようなものと言うか何と言うか……」
坂本「どうなんだ! はっきりしろ!」
僕「ひぅっ! すみません!」
曖昧な言い方に坂本さんの怒りが爆発。
彼は縮み上がり、何度も何度も頭を下げた。
僕「すみませんすみません! ごめんなさいごめんなさい!」
410 :名無しの俺:2010/12/25(土) 01:42:03 ID:Vg2H93/E
坂本「……いや、すまない。私も熱くなった。
ともかくだ、魔法力のようなそれを込めているとして、お前の刀は普通の刀なのか?
私の刀では、そんな芸当はできないぞ?」
僕「い、いえ、僕の刀は退魔刀として、MAGと馴染むように造られています。
術も込められてますし、普通の刀では難しいんじゃないかと……」
坂本「そうか……。ならば魔法力を込めて打てば、同じことができると思うか?」
僕「たぶんできると思いますけど……できない可能性もなきにしもあらずと言うか……。
いえ、できます……おそらく、もしかしたら」
坂本「はぁ……もういい」
溜め息をついて、背を向ける坂本さん。
呆れられた彼は、がっくりとうなだれ、
僕「本当にすみません……。僕は弟子の立場で……。
師匠なら何でもわかるんでしょうけど、僕は全然ダメなんです」
仕舞いには膝を抱えて、床に「の」の字を書き出してしまう。
あんなに大胆な戦いをした彼が。私を抱き留めた彼が。こんなに脆い人だったなんて……。
芳佳「そんなことないです!!」
見兼ねた私は、気付けば大声で叫んでいた。
僕「え……」
芳佳「あなたは私を助けてくれたじゃないですか!
赤城の乗組員だって、全員あなたに救われたんです!
それは凄いことなんです!」
力いっぱい、自分なりの言葉で激励する。
それは私が求めた、誰かを守れる力。
たとえ悪魔だろうと何だろうと。彼はその力を、皆を守る為に使った。
私には力が足りなくて、ひとりでは誰も助けられなかった。
彼と坂本さんがいなければ、誰も守れなかった。
彼には私以上の力があるのに……。
坂本「そうだ。お前がいなければ赤城は勿論、私と宮藤も危なかったかもしれん。
お前のお陰だ、誇っていい」
力が、あるはずなのに……。
411 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:44:14 ID:Vg2H93/E
「いいえ……やっぱり誇れやしません。最後は結局、おふたりに助けてもらわなければ僕は死んでた……」
私達の声は、彼の心の奥までは届かなかった。
それほどまでに彼の劣等感は根深かったらしい。
僕「師匠なら、もっと安全で確実に"すべて"を救ってみせるのに……。
師匠は最強で、かっこよくて、それに比べて僕は……」
私達には、もう掛ける言葉がなかった。
ちらりとゴウトさんを見遣るけど、黙して語らない。話す気がないようだ。
またしても気まずい沈黙。
引き裂いたのは、小さな影だった。
ルッキーニ「うりゃ~!」
僕「うわぁ!?」
私の眼前でうずくまる彼の頭に、突然ルッキーニちゃんが飛びついたのだ。
帽子を無理やりに取られる寸前で、頭を押さえて尻餅をつく彼。
僕「な、な……何するんですか、いきなり!」
ルッキーニ「ねーねー、気になってたんだけどさ。なんで帽子取らないの?」
そういえば。
私は彼が帽子を取った姿を見ていない。艦内でも基地内でも、戦闘中でも角帽は一体化したかのように離れない。
僕「いや、これは……」
ペリーヌ「室内では帽子を脱ぐもの。まして礼を取る時も外さないなんて無礼ですわよ?」
ルッキーニ「見せて見せて~」
僕「だ、だだだ駄目です! これだけは絶対に見せられません! 勘弁してください!」
彼の抗議に耳を貸さず、帽子を引っ張るルッキーニちゃん。
ルッキーニ「え~、そんなに嫌がられたら逆に気になる~!」
シャーリー「お、おい、ルッキーニ……」
ルッキーニ「シャーリーも気になるでしょ?」
シャーリーさんは少しの間、ルッキーニちゃんと目で語り合い――
シャーリー「確かに気になるなぁ……」
意地の悪い顔でニヤリと笑った。
そしてシャーリーさんは彼の右腕を両手でがっしり捕まえる。
シャーリー「よし、ハルトマン! 左腕押さえろ!」
エーリカ「オッケー!」
ハルトマンさんもすぐに左に回り、腕を捕えた。
僕「えぇぇ!? 止めて……放してくださいぃぃ」
左右と正面から攻められた彼は可哀相なくらい狼狽している。
私は助けようか迷って、はっとなる。
もしかして、これがルッキーニちゃんの狙いだったのかも……。
そんなふうに思うのは考え過ぎだろうか。
それでも。
いつの間にか重苦しい空気は払拭され、雰囲気は一転して賑やかなものになっていた。
でも(僕)君も本気で嫌がってるみたいだけど……どうしよう。
そのことに夢中になるあまり、私はまったく気付かなかった。
この場から3人――いや、ふたりと一匹の姿が減っている。
坂本さんとゴウトさん、ミーナ隊長がいなくなっていたことに。
412 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:48:45 ID:Vg2H93/E
喧騒から離れ、私とミーナは業斗童子を連れて廊下に移動する。
あのやかましい室内では、話も碌にできやしない。
もっとも、お陰でゴウトだけを気付かれないよう連れ出せた。
ゴウト「それで坂本少佐。我に話とは?」
騒がしい室内とは対照的に、静寂に包まれた廊下。黒猫の重厚な声が朗々と響く。
ミーナ「私が坂本少佐も交えて、いくつか確認したいと思ったの。
少佐は色々聞いてるかもしれないけど、私は上からの命令以上は知らないから。
それで、ゴウト……さん?」
ゴウト「ゴウトで構わぬ」
ミーナは見た目に似合わぬゴウトの雰囲気に、どう接するか迷っているようだ。
無理もない。ゴウトは40年か50年、
或いはそれ以上の時を過ごしてきたかのような風格を漂わせているのだから。
ミーナ「ええ、それじゃゴウト。あなたに質問してもいいかしら?」
ゴウト「何故、我に? 説明なら明日にすると、貴官が言ったばかりであろう。
それに、サマナーは我でなくあやつだ」
ミーナ「それはそうだけど、私達とあなただけの方が話が早いし、正確だと思ったから。
それに、彼についても聞きたいの」
ゴウトは少し思案する素振りを見せ、頷いた。
ゴウト「我に答えられることであれば答えよう」
了解が得られたので、ミーナと換わって私が言葉を継ぐ。
坂本「『超國家機関 ヤタガラス』。デビルサマナーや陰陽師、その他にも様々なエージェントを統括し、
扶桑を陰から支え、護ることを目的とする組織。ここまでは相違ないな?」
ゴウト「いかにも。取り分けデビルサマナーは、
悪魔が関係していると思しき種々の事件の調査と解決、都市の霊的守護や、封印の管理を担っている。
悪魔を使って国家転覆を目論む不届きな輩もいるのでな」
坂本「では何故、あのような少年を寄越した?
確か表向きは、サマナーがネウロイ相手にどれだけ通用するか、即ち戦力実験だと聞いた。
失礼だが、戦争ができる性格とは思えん」
それが一番の疑問だった。
裏の組織が表の戦争に介入する。
そこにどんな思惑があるのか知る由もないが、その先兵たる人間があれでいいのか。
413 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:51:30 ID:Vg2H93/E
ゴウト「それを言うなら、あの宮藤という少女もあまり向いているとは思えんが」
坂本「それはそうだが……あれは宮藤とは真逆だ。
戦闘においての力量はかなりのものだと思う。だが、精神面は甚だ不安だな」
ミーナ「そうね、他に適任がいなかったわけでもないでしょう?」
そこでゴウトは
初めて沈黙した。
十数秒ほど経ったろうか。ゆっくり言葉を選んで語り出す。
ゴウト「……正直なところを言おう。
此度の任、我もヤタガラスも、奴には荷が勝ち過ぎていると思っていた。
そこを強く推したのが奴の師であった」
ミーナ「荒療治のつもり? どうしてそこまで……ここは弟子の修業の場ではないのよ。迷惑だわ」
ミーナの意見には賛成だが、
戦闘経験も飛行経験もない少女を連れてきた私も、偉そうには言えないので黙っておく。
ミーナから鋭い視線を向けられても、ゴウトは平然と尻尾を振っている。
文句は上に言ってくれ、とでも言わんばかりだ。
ゴウト「さて、な。だが、奴も未熟ながら腕は悪くないゆえ、足手まといにはなるまい。
もっとも弟子にしては、であり、サマナーとしては師の足元にも及んでおらぬが……」
支援があったとはいえ、大型ネウロイを落とした立役者は彼だ。腕に関しては疑う余地はない。
しかし師匠とやらは、更に高みにいると言う。
坂本「あれで足元にも及ばんか。そこまで優秀なら、何故自身が赴かない?」
ゴウト「師が守護を任ぜられている皇都 東京は、あらゆる意味で扶桑の要の地。
霊的守護においても例外でない。彼の地を気安く離れることはできぬのだ。
まぁ、他にも諸事情あるのだが……」
ミーナ「となると、相応の実力者なのかしら?」
最重要拠点の護りを任される。それは力を認められている証。
サマナーの場合はどうか知らないが、どこの世界のどんな職業でも、そう変わらないだろう。
414 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:54:57 ID:Vg2H93/E
ゴウト「我も数多くのサマナーを見てきたが、その中でも五指に入る。
放っておけばネウロイ同様、扶桑一国に留まらず世界の脅威となったであろう異変を
いくつも解決してきた。まず間違いなく、当代随一と言えよう」
坂本「貴方のような人? がそこまで誉めるなら、さぞかし偉大なのだろうな」
しまった、「人」のところで声が上擦ってしまった……私としたことが……。
ゴウトが気にしていないのが幸いだった。瞬間、耳がピクンと動いてはいたが。
私は苦し紛れに話を進める。
坂本「奴がその後を継ぐのか……できるのか? あれに」
ゴウト「どうだかな。師と言っても、歳は未だ30を少し越えたばかり。
今後も、功績、名声、共に益々高まっていくであろう。後継ぎも焦って決める必要はない」
口振りからして歳を重ねた老師をイメージしていたが、予想外に若くて驚いた。
代わりはいくらでもいる……ということか。
ゴウト「偉大であるがゆえに、弟子の性格もああなってしまったとも言えるが」
ミーナ「と、言うと?」
ゴウト「あやつは師を深く尊敬している。崇拝と言ってもよい。
あやつの服装から何から、すべて若き日の師を真似たものだ」
憧れの存在と同化しようと、そのすべてを真似る。己に確固たる芯のない未熟者がよくやる行為だ。
ゴウト「偉大な師の弟子であるという誇りと、不世出の天才と事あるごとに比較される重圧。
奴とて日々上達はしている。されど、努力すればするほど、
近付くほど見えてくるのが才能という名の壁」
だが模倣は所詮模倣。それだけでは決して壁は越えられないのだ。
そして越えられないと悟った時、挫折はより深くなる。
坂本「その壁に押し潰され、あのように弱気で卑屈なヘタレに……おっと、失礼」
私の失言に、彼は怒りもせず苦笑した。
ゴウト「構わん。大方、その通りだ」
人と違い、猫の表情は読めない。
ゴウト「我も奴の師とは15年来の長きに渡る付き合いだが、
師があれの歳の頃には既に当代を襲名していた。
そして東京の守護を任され、他のサマナーも羨むほどの功績を立てていたからな。
比べるだけ愚かだというのに……」
415 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:57:21 ID:Vg2H93/E
ただ私には、その声音に悲しげな色が含まれているように感じられた。
ミーナ「だからと言って、優しくしてあげるとは思わないでね。
私達は人を守る為に戦ってるの。心の有り様がどうあれ、共に戦う以上は指揮に従ってもらいます」
「無論だ。むしろ、とことん厳しく扱いてやってくれ。
それで潰れるなら、所詮それまで。器ではなかったというだけのことよ。
少なくとも我の見立てでは、あれには才能がないゆえな」
常に死線をさ迷うくらいでちょうどいい。
と最後に付け加えて、ゴウトは笑った――気がした。
さっきの同情するような素振りは私の勘違いだったのだろうか。
それとも、今のが?
どうあれ自分と深い仲にある弟子に対して、その態度はあまりに……。
坂本「厳しい……いや、冷たいのだな……」
私は素直に感情を口にしていた。
言い過ぎたかと僅かに不安を覚えたが、ゴウトは欠片も動揺しない。
ゴウト「温い情を挟んでいては、任務も大義も立ち行かぬ。
下手に出れば舐められ、弱みを見せれば付け入られる。
悪魔を相手にするなら、生半可な覚悟は命取りになるのだ」
それはうぬらも同じであろう。
ゴウトは言外にそう語っている。
私は何も言えなかったし、言う気もなかった。
まさにその通りだからだ。彼の言葉は、そのままネウロイに置き換えられる。
ゴウト「貴官らには伝えておくべきか。
我らは言わば陰の存在。それが表に出張ってくる理由を」
ゴウトは強引に話を戻す。脱線してしまったが、そもそもの用件はそれだった。
ゴウト「我らはサマナーとして指令を、探偵としても、ひとつの依頼を受けてここまで来た」
ミーナ「指令?」
ゴウト「ネウロイの――怪異の目的と正体を解明し、可能ならその根源を絶て、というものだ」
416 :サマナー俺:2010/12/25(土) 01:59:52 ID:Vg2H93/E
私とミーナは言葉もなく、驚愕に目を見開く。
その指令があまりに単純で当然。それでいて至難の業だからだ。
坂本「ネウロイの目的と正体……ウィッチなら誰もが一度は抱く疑問」
ミーナ「有史以来、多くの人間が挑み、ひとりとして辿り着けなかった謎……」
ゴウト「その為の手段は問わない、とも」
坂本「そんなことが可能なのか?」
ゴウト「知らぬ。我らは任務とあれば従うのみ。そして遂行するのは……あやつだ」
あやつ。
あの卑屈で弱気で頼りない少年。
ゴウト「だが言えるとすればひとつ。
ウィッチとサマナー、魔法力とマグネタイト、遡れば源流を同じくしながら、似て非なるもの」
私は、サマナーについてもMAGについても無知同然。
だが完全には理解できなくても、納得はできた。
遥か昔、怪異や悪魔と対峙した能力者、その力が分岐した姿。
そう考えれば辻褄が合う。
だとすれば……。
ミーナ「まさか……!」
ゴウト「悪魔とネウロイも同様やもしれぬ」
ゴウトがガラス玉のような緑の瞳で、私とミーナを交互に見据える。
仮にそうだとすれば、両者が出会うことで何かが起きるかもしれない。変わるかもしれない。
私は漠然とした予感が胸に沸き上がるのを感じていた。
坂本「鍵を握るのは奴、そしてこの部隊か……」
417 :サマナー俺:2010/12/25(土) 02:02:36 ID:Vg2H93/E
ルッキーニちゃんの暴走から、すっかり猥雑な現状のミーティングルーム。
突然その扉が開き、入ってきたのは坂本さん、ミーナさん、ゴウトさんの3人だった。
いつの間に外に出ていたんだろう。
室内に広がる光景を目の当たりにした3人の反応は様々で……。
坂本「ほどほどにしておけよ」
と苦笑いの坂本さん。
ミーナ「あ、あなた達、何を……」
呆気に取られるミーナさん。
ゴウト「恥を晒すなと言ったばかりだというに……」
僕「うわああああん! 助けてよ、ゴウトー!!」
そしてゴウトさんはというと、
呆れ果てた溜め息をついて、彼の悲鳴混じりの救援要請を完全に無視。
ぷい、と背中を向けると、首輪に挟んだ小さな手帳と小筆を取り出す(!)。
しかも小筆を口にくわえて黙々と走らせ始めた(!!)。
しかし、その間も背後ではこんなことが……。
ルッキーニ「ほれほれ~、逆らうでない」
ルッキーニちゃんは彼の背後から外套を引っ張ったり、
潜り込んで腋をくすぐったり、やりたい放題。
シャーリー「いい加減に観念して楽になっちゃいなって」
ああっ、シャーリーさんの大きな胸に彼の腕が食い込んで……。
エーリカ「優しくしてあげるからさ……フゥ」
あわわ……ハルトマンさんは押し付けても、あまり効果はなさそうですが、
代わりに耳に息を吹きかけてます。
僕「ああっ! ちょ! そこは! らめぇぇぇぇぇぇぇ!!」
彼はふたりからの猛攻に、あられもない声を上げたりなんかして。
それでも帽子は死守するあたり執念を感じずにいられない。
今も涙ぐみながら助けを求めてるけど……いいんでしょうか、ゴウトさん……(でも助けない)
室内を見回すと、ドタバタを棒立ちで眺めている少女がふたり。
名前は確か……エイラさんとサーニャちゃん。
エイラ「楽しそうだな……」
サーニャ「うん……」
エイラ「私達も加わるか……?」
サーニャ「いい……」
エイラ「でも気になるよな……中身」
サーニャ「……少し」
どうやら帽子の中身が気になるみたい。
418 :サマナー俺:2010/12/25(土) 02:06:45 ID:Vg2H93/E
でも、3人が男の子に密着してるのを不快に思う人もいるようで、
ペリーヌ「あなた達! 殿方にそんなに張り付いて……破廉恥ですわよ!」
ペリーヌさんは顔を赤くして怒っている。
バルクホルン「馬鹿馬鹿しくて付き合ってられん。私は部屋に帰らせてもらう」
唯一バルクホルンさんは、不快感も露に出ていった。なんだか怖そうな雰囲気の人。
ふと私は隣にいた栗色の髪の娘――確かリネット・ビショップちゃん――と目が合い、
笑いかけたが、彼女はすぐに目を伏せてしまった。恥ずかしがり屋さんなんだろうか。
仕方なく私と彼女は、黙ったままゴウトさんと僕君を交互に眺めることにした。
童顔の少年は、とても恐ろしい悪魔を従えているとは思えない。
悪魔、か……。
悪魔と聞いて、私が思い浮かべるのは故郷の親友。
そういえば、彼女もそっちの方面に造詣が深かったような。
今度、送る手紙に彼のことも書いてみよう。案外、意気投合したりして。
団子になって暴れ続ける4人を見る私の胸には、今後に対する期待と不安がない混ぜになっていた。
それは、飄々としているゴウトさんも同じだったみたい。
けれど、まさか手帳にその胸中が綴られているとは、
この時の私には想像もつかなかった。
この日、ひとりの若きデビルサマナー……の弟子が欧州の地に降り立った。
師は扶桑の――否、世界的に見ても当代随一のサマナー、と言っては贔屓の引き倒しだろうか?
いや、身内贔屓を差し引いても、奴は今も昔も無類の強さを誇っている。
あの少年は、そんな男の弟子だ。
だが、今はまだ何者でもない、卵の状態である。
これが卵か雛のまま喰われる運命か、喰う側の蛇に回るか、
はたまた龍に化けるかは、まだ、誰にもわからない。
我はただ、奴の"目"を慧眼と信じ、己が使命を果たすのみ。
しかし、不肖の弟子ときたら、女子ふたりに組み敷かれている始末。
年端も行かないような童女に外套を引っ張られながら、
それでも必死に帽子を押さえて半泣きになっている。
まったく……少女の玩具にされているその様は、なんとも情けないもので……。
我はお目付け役として、またサマナーの先達として、
今後のことを考えると暗澹たる思いであった……。
デビルサマナー
俺 対 黒鉄ノ魔軍
第一章
「悪魔召喚師、欧州に見参!」
元ネタ
『デビルサマナー
葛葉ライドウ 対 超力兵団、
アバドン王、他、葛葉ライドウシリーズ』
419 :サマナー俺:2010/12/25(土) 02:14:04 ID:Vg2H93/E
現時点でのデータ
僕
17歳
153cm
職業:学生、探偵所助手、デビルサマナー
所属:超國家機関『ヤタガラス』
武器:扶桑刀(退魔刀)、拳銃(コルトライトニング) どちらも師匠のお下がり
封魔管:ポルターガイスト、モコイ、ホウオウ、ヌエ、他
とあるデビルサマナーの弟子。
師匠は過去の歴史を振り返ってみても、歴代トップクラスのサマナー。
そんな師匠を尊敬、崇拝しており、師匠のスタイルを真似たがる。
しかし偉大過ぎる師匠の弟子である重圧に悩まされ、努力するほど師匠との才能の差を実感。
結果、卑屈な性格になってしまった。
幼少から女性と接する機会がなく、女性に対する免疫が皆無。
オリジナル要素が増えると思いますが、みっちゃんルートに挑戦
420 :名無しの俺:2010/12/25(土) 02:43:43 ID:TUpDVxiI
乙
おもしろかったぜぇ
421 :名無しの俺:2010/12/25(土) 02:46:57 ID:.ITDPqdQ
遅ればせながら、いらん子の人、短編の人乙
最近のウルスラプッシュは凄いな
422 :名無しの俺:2010/12/25(土) 02:53:02 ID:.ITDPqdQ
おっと、途中で送信した。
サマナーの人も乙です。
ライドウの弟子・・・なのか? まぁあんな化け物の弟子なら卑屈にもなるわな
そしてようやく俺のみっちゃんの時代が来た!
最終更新:2013年02月02日 14:47