注意

  • ひょっとするとクロスオーバーと呼べるものかもしれません。元ネタの説明も交えつつですが、
キャラの名前を出したり等クロスな要素は極力控えていこうと思います。
  • 今回はほとんど一人のモノローグで地の文ばっかり。
  • キャラクターに勝手な設定が追加されています。でも、これもなるべく逸れないように……

人を選ぶあらすじ

 扶桑皇国の女学生であり、ウィッチのセオリーでもある宮藤芳佳。ある日、彼女の許に死んだはずの父からの手紙が届く。
手紙の意味を、父の消息を知るべく、芳佳は海軍少佐の坂本美緒と共に欧州に向かうプロセス。だが道中、乗っていた空母赤城がネウロイに襲撃される。
 一時はセルフ無力に嘆き打ちのめされる芳佳だったが、勇気を振り絞り、出撃のプロセスを敢行。
しかし健闘空しく危機的セオリーに陥る芳佳。彼女を救い、見事ネウロイを撃墜したのは学生服の悪魔召喚師、デビルサマナーの青年だった。

ヤングな少女芳佳は青年にときめきかけるが、青年は相当なヘタレで臆病者であることが後に判明。その違いに愕然とする。
 ともかく芳佳は父の遺志を継ぎ、ストライクウィッチーズの一員として戦う決意を固めるセオリーであり、
その隣には早速ウィッチ達に洗礼――もとい、弄られる青年の姿もあった。

そして坂本も、青年のお目付け役である黒猫の業斗童子と密談のプロセス、青年の事情を知る。
青年は偉大過ぎる師匠と、セルフ才能の歴然とした差に自信を失い、卑屈なセオリーと化していたのだった。
 加えて坂本は、青年の師が未だ三十歳とヤングなカテゴリーにあること、共に戦う彼らの真の目的が、ネウロイの正体の究明と根絶にあると知り、
驚きを隠せないのだった。


515 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:08:51.56 ID:KOlvYLIs0

 今日も私は泉に水を貯える。
 記憶という泉に。
 知識という水を。
 文字の海から言葉を掬い上げ、残すべきものをろ過するように選別し、ひたすら己の内に注ぐ作業。それが私の日課だった。

 もともと勉強は好きだったし、向いていたのか成績はそれなりに良い。
 けど、時々わからなくなる。私が貯め込んだ知識は、誰かの役に立つのだろうかと。
 例えば、あの娘のように。
 私の"はとこ"で親友の、彼女のように。

 ウィッチの彼女は治癒魔法を持ち、私も怪我をした小動物を見つけた時はよく治療してもらっている。
私自身が命の危機を救ってもらったこともあった。かなりの重傷で、彼女の治癒がなければ危なかったそうだ。どれだけ感謝しても足りない。
 それに魔法がなくても、その笑顔はいつでも私に元気をくれた。だから彼女は私の憧れであり、誇りであり、永遠の親友。
 いつからだろう。私も、あんな風になってみたいと思うようになったのは。魔法もさることながら、人を救い、元気や勇気を分けてあげられる、彼女みたいに。

 けど、私は彼女とは違う。天性の能力も明るさもない。自慢できるものは知識くらい。
 だから。
 師範学校を目指し、教師を目指すのには、そんな理由もあった。私の知識を誰かに役立て、共有する喜びが欲しいから。
 でも、たとえ教師になっても教えられない、共有できない知識、記憶もある。

 それでも、いつか……。
 いつの日にか、私の泉に誰かを招く日が来ることを願って、私は今日も水を汲む。
 それが、私の楽しみだった。

デビルサマナー
俺 対 黒鉄ノ魔軍

第一章
「悪魔召喚師、欧州に見参!」
第二話

元ネタ『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団、アバドン王、他葛葉ライドウシリーズ』

516 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2011/02/03(木) 22:09:00.05 ID:cNYqlPwf0
ああ、あれか。覚えているぜ

支援

517 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:14:16.45 ID:KOlvYLIs0

 今日も私は息を切らして家路を急ぐ。いつも一緒に登下校していた芳佳ちゃんは今、隣にいない。遠く、欧州の地にいる。
かれこれ二ヶ月以上前になるだろうか。芳佳ちゃんがお父さんの手掛かりを求めてブリタニアに旅立ったのは。

祖父「おお、お帰り美千子」

 帰り道、よく知った声が私の名を呼ぶ。それは畑仕事中のお祖父ちゃんだった。

みっちゃん「ただいま、お祖父ちゃん。お仕事お疲れ様。ねぇねぇ、今日は郵便屋さん来てた?」

祖父「はっはっは、最近の美千子はそればっかりじゃなぁ。昨日も同じ台詞を聞いたぞ?」

みっちゃん「えー? そうだったかなぁ?」

祖父「ああ。昨日も一昨日も、その前も。わしがぼけとるんでなければなぁ」

 そう言って、お祖父ちゃんはニヤリと笑う。なんだか恥ずかしくなって、照れ隠しに軽くむくれる私。

みっちゃん「もう、だって気になるんだもん。お祖父ちゃんのいじわる」

祖父「おお、すまんすまん。こりゃ怒らせてしまったかのう」

 頬を膨らませる私に、お祖父ちゃんは頭を掻いて困った振り。
もちろん本気で怒っているのでも、困っているのでもないことはお互いにわかっている。だって、どちらも顔は笑っていたから。

祖父「お詫びにいいことを教えてやろう。今日は来とったはずじゃ。美千子の待ってる手紙かは知らんがの」

みっちゃん「ほんと!? ありがとう、お祖父ちゃん!」

 と、お礼もそこそこに走り出す手紙が来ていると知ったら、もう居ても立ってもいられなかった。

518 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:17:20.71 ID:eM0QD6ZFO
みっちゃんヒロインとはめずらしいな 支援

519 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:20:17.49 ID:KOlvYLIs0

祖父「これ、美千子! 帰り道には気をつけるんじゃぞー!」

みっちゃん「はーい!」

 お祖父ちゃんに大きく手を振りながら、それでも足は止めない。
 だって手紙が来ているのだから。
 芳佳ちゃんからの手紙が来ているかもしれないのだから。
 走ること数分、特に何の変哲もない、和風の民家が見えてくる。私の家だ。
 私は何よりも先に、玄関脇の郵便受けに飛びつく。中には一通の簡素な封筒。

みっちゃん「あったぁ!」

 と、飛び上がりそうになったところで口を両手で押さえる。押さえてから、家族や近所の人に見られていないか確認。
 いやいや、落ち着け私。まだ芳佳ちゃんからとは限らない。送り主を確認しなければ。
逸る気持ちを抑え、そっと封筒を手に取り――

みっちゃん「芳佳ちゃんだぁ!!」

 今度こそ私は、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。封筒には確かに書いてある、宮藤芳佳、と。

みっちゃん「ただいまー!」

 言うなり私は自室に飛び込む。壁にはウィッチのポスターやブロマイド、雑誌や記事の切り抜きが所狭しと張りまくられている。
 が、今日の私はそれらに目もくれず鞄を投げ捨て、椅子に腰掛け机に向かう。
そこまでの動作を一切の淀みなく行い、封筒の口を切る寸前で踏み止まった。

みっちゃん「あ、でも……」


520 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:25:30.19 ID:KOlvYLIs0

 これを開けてしまえば、もう私は止まらない。じっくり時間を掛けて読み、すぐさま返事を書かずにはいられない。
そうなれば、夜遅くまであれこれ悩みながら没頭してしまうだろう。きっと……うぅん、絶対に。
 当然、勉強している時間なんて残らない。それならば、

みっちゃん「楽しみは後に取っておくとして……」

 先に予習復習だけでも済ませてしまおう。本当は今すぐにでも手紙を読みたいけど、我慢我慢。
ということで鞄から教科書と学習帳を取り出し、机に広げる。
気になって集中できないかと思われたが、始めてしまえば簡単に没入できた。

みっちゃん「もう二ヶ月と一週くらいかぁ……。早いなぁ……。どうしてるかなぁ、芳佳ちゃん」

 勉強する手は止めず、私は追想に耽る。内容は内容で理解しているので問題はない。
 私の意識は緩やかに、二ヶ月前のある日、芳佳ちゃんを送り出したあの日に飛んでいく。

 その日、私は早くに目が覚めた。外はまだ薄暗かったが、再び寝付く気分にもなれず、ずっと窓を開けて空を眺めていた。
澄み切った夜明けの冷たい風が部屋に吹き込んでくる。寒いけど、それが寝惚けていた頭に覚醒を促し、意識が冴える。

 まだ薄紫に染まりかけの東の空では、金星がやけに激しく輝きを放っていた。
 明けの明星。
 何故か胸がざわめき、不安を掻きたてる妖しい光。芳佳ちゃんの旅路を案じていた私には、そんなふうに思えてならなかった。

 やがて夜が明けて、私は芳佳ちゃんと連れ立って横須賀基地に向かった。
 大きな空母が発する音と、負けないくらい必死に張り上げた見送りの声は、今でもはっきりと思い出せる。
 私とおばさん――芳佳ちゃんのお母さんと、芳佳ちゃんのお祖母さん、横須賀基地の軍人さんが見送る中、芳佳ちゃんは旅立っていく。
その時、私は確かに見た。不思議な雰囲気を持つ、黒服のふたり。ひとりは空母に、もうひとりは私の隣に。

 千切れんばかりに手を振る芳佳ちゃん。家族や仲間との別れを惜しんで、赤城の水兵さん達も同じく甲板に出て手を振る。
その、ほぼ青と白の集団の中にぽつんと漆黒が交じっていた。おそらくは黒の詰襟に外套。
もっとも、目深に被った角帽と、遠目だったせいで顔は見えなかった。
何より私は芳佳ちゃんしか見ておらず、今の今までは疑問すら抱かなかったのだが、思い返してみると、あれは書生の格好だったかもしれない。

521 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:30:50.54 ID:KOlvYLIs0

 やがて赤城が完全に見えなくなった頃、私はふと辺りを見回す。
 私達以外にも一般人の見送りの姿はちらほら見られたが、私の隣に立っていた紳士は特別異質だった。
 スラリとした長身。上半身は黒の外套に覆われ、はっきりとはわからないが、その下にも同色のスーツを着込んでいる。
黒い革手袋に、目深に被った鍔広の帽子もやはり黒。これで黒猫でも連れていれば完璧だと思った。
 私の視線に気付いたのか、その紳士は軽く帽子を持ち上げ、私を見やる。その瞬間だった。

 うわぁ……

 私は心の中で感嘆の息を漏らした。紳士の顔が途轍もない美形だったからだ。
 切れ長の目、長いまつ毛。人形の如く整った、冷たさすら感じる造形。そう、まるでお伽話から抜け出した王子様のような……。

 年齢はわからない。20代以上なのは確実だろうけど……いや、年齢なんて何歳でもいい。
すれ違えば誰もが振り向き、老若男女を問わず魅了されるだろう、それほどの美貌。

 見惚れる私に構わず、紳士は用は済んだとばかりに外套を翻して歩き出す。
基地の出口とは反対方向へ、何故だか軍人さんも誰も止めようとしない。

清佳「みっちゃん、どうしたの? 帰りましょう?」

みっちゃん「あ……あの、先に帰っててください! すぐに行きますから」

 私は促すおばさんにそう答えて、紳士の後をつける。おばさんは私を呼び止めていたが、私はわざと聞こえない振りをして駆け出した。
 どうしてだろう、あの人のことが気になって仕方がない。でもそれは一目惚れとかそういう類ではなく、単純な好奇心。
それに、基地の中を一度見てみたいという気持ちもあった。咎められたら見送りに来て迷ったと謝れば大丈夫だろう。

 広い横須賀基地を紳士はどんどん進んでいく。他の誰ともすれ違わなかったし、紳士は一度も振り向かなかった。どうやら尾行も気付かれていないみたい。
数分後、どこかもわからない、滅多に誰も来ないような奥まった場所に紳士はたどり着き、そこには待ち合わせていたのか、ひとりの男性が。
 私はそーっと物陰から覗き込み――

522 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:31:30.85 ID:Z4NSQMQ10
金星。明けの明星。
それは・・・あの偉大なる悪魔の・・・
支援。

523 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:36:10.08 ID:KOlvYLIs0

みっちゃん「ひゃっ……」

 今度は声と一緒に息を呑んだ。慌てて口を押さえて顔を引っ込める。
 そこに立っていたのは黒いジャケットに青のネクタイ、黒のハンチング帽の青年……それも金髪に青い瞳だ。
大きな鞄を持っていることからも、どうやら旅装みたい。
 しかし私が驚いたのはそのせいではない。彼が紳士と同等の――否、紳士よりも冷たく妖しく、そして美しい顔立ちだったからでもない。

 青年と思い切り目が合ってしまったせいなのだ。
覗いた瞬間に視線を捉えられた。というよりは、金髪の青年は最初から私がここにいるとわかっていたかのよう。
 いつ追及が来るかとビクビクしていた私だったが、意外なことに、いつまで経っても追及は来なかった。私の勘違いとは思えなかったのだが。

青年「やぁ……また会えたね。君とこうして話すのは何年振りかな……。10年……いや、もっと……まぁいいか」

 紳士はやはり振り向かず、青年と会話を始める。と言っても、青年が一方的に喋っているだけだったが。

青年「先ほど出航した空母……あれに君の弟子が乗っているんだね……。
人の子の歴史の中で、デビルサマナーと怪異が接触するのは初めてではない。
だが……この時代に措いて、彼の存在はひとつの"きっかけ"になるかもしれない」

 デビルサマナー?

 聞き慣れない単語に首を傾げる。
デビルサマナー、直訳すると悪魔を召喚をする者。もしかして……いや、まさかそんなはず……。

青年「僕は、こうして再び君の"きっかけ"になれることを幸運に思う。
人は"きっかけ"を経た行動を"将来"に繋げ、行動により新たな"きっかけ"を得るものだから」

 私は再び、目だけを出して様子を窺う。青年は時折襟首を指で寛がせながらも、紳士から視線を外さない。

青年「そして君の弟子もまた、誰かの"きっかけ"になれるかもしれない。僕と君のように、すべての出会いが何らかの"きっかけ"であるように。
デビルサマナーによる悪魔とネウロイの接触……出会い。それが災厄の兆しとなるのか、それとも希望への道標となるのか……興味深いね」

524 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:41:25.64 ID:KOlvYLIs0

 青年は唇だけで薄く笑った。
 青い瞳は少しも感情を示していない。なのに、何故だか私には彼が本当に楽しんでいるのだと理解できた。
 ぞっと、背筋を悪寒が駆け抜ける。

青年「デビルサマナーの力がネウロイにどこまで及ぶのか。
君達を統べる者の関心はそこにあるのだろうが……しかし、そもそもネウロイ……怪異とは何なのだろうね」

 私はウィッチや戦艦について調べるうちに、当然その疑問にも行き着いた。だが、答えは出なかった。糸口すら見つからなかった。
ネウロイの正体については相変わらず闇の中。県内はもちろんのこと、東京の大きな図書館まで出向いて歴史書を調べたというのに。

青年「君達がネウロイと呼ぶもの。兵器の姿……古くは別の姿も取った漆黒の軍団。
巷や伝承では、あれらを『悪魔の軍勢』などと譬える者もいるようだが……」

 抑揚のない青年の声に、初めて感情の色が垣間見える。それは……嘲笑。

青年「僕に言わせればそれは誤り……思い違いも甚だしい。あれは悪魔とはまるで真逆の性質を持った……まったくの対極に位置するものだよ。
広義の意味での『悪魔』にすら当てはまらない」

 ネウロイが悪魔の対極?
 それって……

 ごくり、と唾を飲んで私は聞き耳を立てることに集中する。

青年「それは兵器の姿を取るようになったことで、より顕著になった。あれは感情の介在しない、まさしくただの兵器だ。
形態の多様性こそあれ、中身は一貫して同じ。あの木偶を創造した者は、最初から感情も、言葉も、交渉の余地も不要と考えたのだろう」

 そう、悪魔とは本来、一言で括れる代物ではない。姿形の多様性もネウロイの比ではない。
だが、私を驚かせたのは青年の次の言葉だった。

525 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:46:44.80 ID:KOlvYLIs0

青年「当然だろうね、何せ相手は咎人。そしてこちらは罰を下す側、即ち断罪者なのだから……」

 人類が咎人……?
 何故……いいえ、誰がそんなことを判断できるの?
 人類を裁ける存在なんて……

 私はどんどん青年の語る話にのめり込んでいく。それはまるで、彼の紡ぐ言葉の一つ一つに人を魅了する不思議な魔力でもあるかのよう。

青年「聞く耳を持つ必要など、どこにもない。ゆえに徹底的に、効率的に破壊する。
だが、あれの役割はそれだけに留まらないようだ。だからこそ……」

そして、それを知り、断言できるこの人はいったい……。

 青年は一度言葉を切り、紳士を、そして、目だけを覗かせていた私を見た。
次の瞬間、私は最大の衝撃を受ける。


青年「あれは……ネウロイは、人の子の"将来"に必要なものかもしれない」


 え……?

 私は我が耳を疑った。

 必要? ネウロイが? 人類の"将来"に?

 ネウロイの正体についての推論は数多ある。
 中には破滅的な終末思想に塗れたものもないではなかったが、
それでも「ネウロイが人類の"将来"に必要だ」などと言う説は聞いたこともなかった。
 呆気に取られる私を、青年がちらりと見て笑った……気がした。

526 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:51:56.56 ID:KOlvYLIs0


青年「ネウロイの存在こそが、人の子の魂を、種そのものをより高いステージへと昇華させるのだろうからね」


 デビルサマナー、悪魔、魂……どんどん内容がオカルト染みてくる。
 にしても、より高いステージとは何なのだろう……。

 内容はさっぱりだったが、私は彼の言葉に不思議な説得力を覚えていた。
 彼の青い眼がその瞳の奥で、今朝見た明けの明星とよく似た光を煌々と放っていたから。不思議と妖しく魅せられる光を。

青年「考えなしにネウロイを殲滅すれば、それは人々の"将来"が、この世界が閉ざされる結果となるだろう。だが、どちらにせよ……」

 私はなんだか怖くて堪らなくなった。
 これは、私ごときが聞いていい話じゃない。
 小さな島国の基地の隅っこなんかで話していい内容じゃない。
 次元が違う。
 そんな気さえした。

青年「いや、止そう……人の取るべき道は人が決めればいい。僕はあくまで"きっかけ"に過ぎないのだから」

 怖い……。
 この人が怖い。身体の震えが止まらない。
 でも、それは彼が私を怯えさせる言動を取っているのではなく。
 私が勝手に怯えているだけなのだ。それが余計に恐ろしい。底無しの深淵を覗いているような、そんな気分にさせられる。

527 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 22:57:10.19 ID:57Kg2VSd0
ほう……みっちゃんとは支援
528 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:00:10.38 ID:Yos2iZTFO
支援ッ

529 名前: 空白に入るのは4文字と10文字 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:00:16.51 ID:KOlvYLIs0

 もしかすると彼は私が焦がれる幻想の住人で、指先一つで世界を吹き飛ばせるような恐ろしい存在かもしれないが、
彼はそんな闇をおくびにも出さず、細身の身体に完全に収めてしまっているのだ。
ただただ、得体の知れなさだけが表に顕われているだけなのだ。

 ああ……私は何を言っているんだろう。どうかしている、こんな荒唐無稽な妄想まで抱くなんて……。

 ぐるぐる回る視界と思考。頭が軋んで、クラクラする。平衡感覚までおかしくなるくらい混乱していた。
 時折青年の背後には、三対六枚の翼が透けて見えた。
白鳥の如き純白の翼と、毒々しい青と赤に彩られた蝙蝠のような翼の二種が目まぐるしく切り替わる。
いよいよ私は正常でないらしい。

青年「だが、一つ言えるとすれば……    ……君も君の弟子も行動を始めてしまった。
望むと望まざるとに関わらず、それは大勢の人間を巻き込んでいくだろう。
だから君や彼の躓きは、すべての崩壊に繋がりかねない」

 もう青年の声も、途切れ途切れにしか聞こえない。会話の意味を考える余裕など、あろうはずもない。

青年「心しておくことだ……君と彼の行動が、巻き込んだウィッチと多くの人々の将来を決定してしまうと。
君と彼の選択が、どんな将来に繋がるのか、
混迷の時代に生きる人々に再び希望を示せるのか……楽しみにしているよ、          」

みっちゃん「はぁ……はぁ……」

 いつしか私は息苦しさを覚えていた。
 壁に手をつき、へたり込む。荒い息で寒気に震える身体を抱き締めて、もう何も考えられない。

 それから数秒、寒気に震える私の身体が突然、プレッシャーから解放された。いや、重力からも解放されていた。
 身体がふわりと浮き上がる。閉じかけた目を開くと、そこには人形の如き美貌が。
 私の膝裏に手が入れられて肩が抱かれて……まるで童話のお姫様と王子様みたく、紳士が私を抱き抱えて運んでいる。

531 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:06:22.42 ID:KOlvYLIs0

 ああ……なんだかほっとする……懐かしい感じ……。何でだろう……男の人なのに、ちっとも嫌じゃない。
あったかくて、優しくて、幸せな匂い……。不思議……眠く……なって……。

 私は紳士に抱かれたまま、ゆっくりと意識を手放していく。
抱かれながら二人の話していた場所に目を遣ると、いつの間にか青年は忽然と姿を消していた。
 最後に見たものは、突き刺さりそうなくらい鋭く尖ったモミアゲと、紳士が私に向ける穏やかな眼差し。
それは、最初の冷たい印象からは考えられないくらい優しかった。

 その後、私は宮藤診療所で目を覚ました。時計を見ると、もう16時を回っており、ほぼ半日寝ていたことになる。
 後からおばさんに聞いたところ、どうやら私は風邪を引いて高熱を出していたらしい。
早起きして星を見る間、ずっと寝巻のまま窓を開けていたせいかも。
そういえば、見送りの時から熱っぽかった気がする。あの時は、芳佳ちゃんのことで頭が一杯だったから自分でも不調に気付かなかった。

 と、なれば倒れたのは金髪の青年のせいではなかったのか。彼を恐ろしく感じたのも、恐怖と風邪による寒気を混同していたせいなのか。 
見た光景、聞いた話のすべてが、著しく現実感に欠けているのも、熱で意識が朦朧としていたせい……。
 真偽は定かでないが、私はそう思うことにした。その方がいい、深く考えないのが身の為だ……心の中で、そんな声が囁いた。

 なんでも、あの後おばさんは、私を心配して基地内を探してくれていたんだとか。
そこへ私を抱いた紳士が現れ、診療所まで運んでくれた、とのこと。
 私が目を覚ました時、枕元にはおばさんと芳佳ちゃんのお祖母さん、それと私のお祖父ちゃんがいた。
 そして目覚めた私は、おばさんにこってり叱られてしまった。

清佳「みっちゃん! なんでこんな身体で無茶したの!」

みっちゃん「ごめんなさい……」

清佳「妙に顔が赤いと思ったら……、それに勝手に基地を歩き回ったら駄目でしょう」

みっちゃん「はい……」

532 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:10:24.33 ID:KOlvYLIs0

 私はベッドに横になった状態でひたすら謝るばかり。仕方がない、私が全面的に悪かった。
それに、おばさんが私を叱るのは心配してくれてるからだとわかってる。
 その証拠に、おばさんは私の容態を優しく確認していた。話すのに問題ないと判断したから叱っているのだ。

 額にひんやり、濡れタオルが気持ちいい。まだ少しの頭痛と熱っぽさ、気だるさは残っているが、頭の中は驚くほどすっきりしていた。
 おばさんはまだ何か聞きたそうだったけど、そこにお祖母さんが割って入る。お祖母さんは優しく語りかけながら私の頭を撫でてくれた。

芳子「まぁ、その辺にしておあげ。一応病人なんだ。治癒魔法だって途中で止めてるんだから」

みっちゃん「そうなの……?」

芳子「ああ、魔法に頼り過ぎるのも良くないからね。ただの風邪くらいなら温かくして栄養を取っていれば、すぐ治るよ。
その方が身体も丈夫になるってもんさ」

みっちゃん「そっか……」

芳子「もう少し休んだらお帰り。ほら、お祖父ちゃんも迎えに来てくれてるよ」

 同じくベッド脇に腰掛けていたお祖父ちゃんを見る。さっきからずっと、心配そうにこちらを見ていた。私が事故で大怪我した時を思い出す。
ただ、その時よりも少し険しいように思えた。

祖父「大丈夫か、美千子。苦しくないか?」

みっちゃん「うん、大丈夫。ごめんね、お祖父ちゃん……怒ってる?」

祖父「いや……言いたいことは全部清佳さんが言ってくれた。もう怒っとらんよ」

お祖父ちゃんはそう言うと、おばさんとお祖母さんに向き直って頭を下げる。

祖父「いや、孫が迷惑を掛けてしまい申し訳ない」

533 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:13:20.10 ID:KOlvYLIs0

芳子「困った時はお互い様さ。親戚なんだから。気にしないどくれ」

清佳「ええ。これくらい、お気になさらず。それにみっちゃんには悪いけど、少し嬉しいんですよ」

みっちゃん「嬉しい……?」

清佳「遠くに旅立った芳佳には無事を祈るくらいしかできないもの。でも、近くにいるみっちゃんには色々と世話も焼けるでしょう?」

 おばさんは苦笑した。それはどこか影のある頬笑みだった。
 そうか……おばさんも寂しいんだ。お祖母さんも。きっと私と同じ……いや、私以上に寂しいに違いない。
 それでも、おばさんは芳佳ちゃんと同じように私を心配してくれる、それがとても嬉しかった。

芳子「みっちゃんには余計なお世話かもしれないけどねぇ。子供の為にできることがあるってのは嬉しいものだよ」

みっちゃん「ううん……そんなことない!」

 思わず声が大きくなる。驚いた三人の視線が一斉に私を向く。
声を張り上げてから急に恥ずかしさが込み上げてくる。
 赤くなった顔を見られたくなかった私は、シーツを引っ被って目だけを出し一言、

みっちゃん「……ありがとう」

 とだけ。私を守ってくれてる大人に感謝を伝えた。

 誰かを守る側の芳佳ちゃんとは違う。やはり私は無力で、守られている存在であると思い知らされる。
 変わりたいと思う。
けれど、それに心地よさを感じている私がいるのもまた事実だった。その心地よさが……甘えが、この平和な扶桑で、
私を怠惰な安寧に誘うとわかっていても……。

535 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:14:49.64 ID:KOlvYLIs0

 おばさん達との会話が一段落して、私はあることに気付く。

みっちゃん「そう言えば……私を運んでくれた人は?」

 診療所の中を見回しても、あの紳士の姿はどこにもない。
私が目を覚まして、ちょっとした騒ぎになったにも関わらず、反応もない。
もしや私が眠っている間に帰ってしまったのだろうか。

清佳「あの人なら、あなたをここまで運んですぐに帰ってしまったわ。名前も、連絡先も告げずに」

芳子「きっと忙しいんだろうねぇ……。仕様がないさ」

みっちゃん「えぇ……そんなぁ……」

 と言いつつも、内心では「あぁ、やっぱり……」と思っていた。
私なんかより、ずっとずっと大きなものを背負っているだろうあの人が、私なんかの為に一分一秒でも無駄な足踏みをするはずがないと。
 それでも……

みっちゃん「また会えるかなぁ……」

 会いたい。会って、お礼を言いたい。

 青年の言葉が真実なら、私とあの人の出会いも何かの"きっかけ"なのだから。このまま見過ごしたくなかった。
 だから私は再び眠りに就くまでの間、昼の出来事を反芻し、記憶に刻みつける。あの人の姿、温もり、青年との会話、そのすべてを。
記憶に刻んで、決して忘れないように。おそらく最大の手掛かりであろう、『デビルサマナー』という単語と共に。

536 名前: デビルサマナー俺 [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:17:18.04 ID:KOlvYLIs0

切りがいいんで一旦中断します。続きは深夜、空き状況によっては明日にでも。

軍事知識に乏しいので、思い切り趣味に走りました。オカルト方面からアプローチというか、お茶を濁そうかと。
元ネタを想起させるキャラクターも当分は控えます。勿体ぶった青年も、多分もう出ませんので。

540 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2011/02/03(木) 23:22:21.46 ID:feK4Nuv+O

元ネタ知らんけど青年の正体が気になったのにもう出ないの?

541 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 23:25:51.93 ID:KOlvYLIs0

 >>540
多分もう出ないので言っちゃうと、正体は唯一神に反抗して追放された堕天使であり、魔王でもあるルシファーそのもの。
真・女神転生シリーズではショタや老紳士、美女など様々な姿で登場、暗躍する。


最終更新:2013年02月02日 14:48