――ロマーニャ基地、上空にて――
ペリーヌ、リーネ、宮藤、彼の4人が
模擬戦を行っている。
しかし宮藤はペリーヌとの試合にて、いきなり力が抜けたような感じになった。
ストライカーから煙が発生する。
宮藤「えぇっ……何…!?」
ペリーヌ「もらいますわ!」タタタタタ!
宮藤「わぁぁっ……!」ベチャベチャ
ピーーーッ!
リーネ「勝負あり!ペリーヌさんの勝ち!」
その後の二戦も、宮藤は本来の力を発揮することが出来ず、全敗した。
ペリーヌ「ちょっと宮藤さん!訓練だからって手を抜かないでくださる!?それとも私では本気を出せないと…!?」
宮藤「そんなっ、私手なんて抜いてないよ!?」
彼(ペリーヌの言う通り、普段の動きじゃない。どうしたんだ、芳佳?)
ペリーヌ「…………。」ブゥゥゥゥン!
宮藤の不調に疑問を抱いたままだが、ペリーヌは怒った顔をして基地に帰投した。
――ハンガーにて――
ペリーヌからの報告を受け、坂本はハンガーへ訪れた。
整備兵は宮藤のストライカーをくまなく調べ始める。
整備兵A「……全ての項目をクロスチェックしましたが、異常は見あたりませんでした。」
整備兵B「魔道エンジンも全てオーバーホールされています。一応、念のためにオイルとプラグは新品に変えておきましたが…。」
坂本「そうか、ストライカーには問題なしか…了解した。ありがとう。(……だとすると…宮藤自身の問題か…。)」
坂本「ん?そういえは、整備長はどうした?ここ最近、見かけないようだが……。」
坂本がおじさんについて尋ねる。
整備兵A「おやっさん…いや整備長は最近、出張が多いらしいです。」
整備兵B「虫型のネウロイに襲撃された日も自分たちは休暇を頂いていましたが、整備長だけは出張していたらしく……」
坂本「…そうか。おやっさんにも、今後とも整備を頼むと伝えておいてくれ。」
整備兵B「了解しました。」
その後、坂本は宮藤を連れて医務室へと向かった。
――医務室にて――
彼「大丈夫か、宮藤!」ダダダダ…バタン!
宮藤が医務室に向かったということを聞き、彼はもの凄い勢いで駆けつけ、ドアを開けた。
しかし、そこにはまだ検診中の宮藤が、服を脱いだままの状態でいる。
宮藤「かっ彼さっ…ひゃ…///……きゃぁぁぁぁっ!!」///
彼「あっ……。」
宮藤の悲鳴が医務室中に響き渡った。彼はただ呆然とし、その場に突っ立ったままでいる。
坂本「おい彼………。」
彼「な……何でしょうか、少佐…?」
坂本「…いいから出て行けっ!」
坂本の怒号が飛び、状況を完全に飲み込んだ彼は直ぐに退室した。
バタン……
女医「え……えぇと…至って健康ですね。」
坂本「…そうですか…。」
宮藤「あの…急に健康診断なんて、どうしたんですか?」
坂本「いや、定期的に部下の健康状態を把握するのも、上官の役目だからな。」
坂本は宮藤に健康診断を受けさせたが、何処にも異常は見あたらなかった。
その様子を伺いに来ていたペリーヌとリーネが坂本に気付かれ、観念した二人はヒョコッと顔を上げ、宮藤のところへ近づいていった。
リーネ「芳佳ちゃん…どっか悪いの…?」
宮藤「うぅん、ただの健康診断!全然何ともないよ。」
リーネ「はぁぁ、よかったぁ~…。」
ペリーヌ「まったく、健康管理もウィッチとして大切な任務の一つですのよ?」
宮藤「えへへ…だから何ともないって……」
バルクホルン「何ともないならなおさら不安だな!」
何処からともなく登場したバルクホルンに全員が驚く。坂本でさえ、気配に気が付かなかった。
バルクホルン「お前がまともに飛べていないのは、確認が取れている。その原因が分からない以上、お前を実戦に出すわけにはいかん。」
バルクホルンに不調を見抜かれていた宮藤は、基地待機を命じられた。
反対するも、上官からの命令、そして自分自身でも気付いている異常に逆らうことは出来なかった。
――夜、ハンガーにて――
宮藤は一人、箒を使って飛ぶ訓練をしていた。
エイラとサーニャがその姿を見つけ、宮藤に「何してんンダ?」と話しかけ、さらにペリーヌも出てくる。
本来ならそのような展開になるはずだが、彼が来たため、エイラ達はすかさず物陰隠れてその様子を見守った。
エイラ「かっ、彼ダ!サーニャ、今は隠れるンダ!」コソコソ
サーニャ「え、どうして?エイラ…?」コソコソ
ペリーヌ(あっあれは…彼少尉……。宮藤さんと、一体ここで何をする気なのかしら!?)コソコソ
彼「……宮藤。」
宮藤「へっ…?かっ、彼さん!?どうしてここにっ…!?」
箒を持って飛ぼうとしていた宮藤は、彼の声に驚いて魔法を解除した。
彼「いや……ちょっと気になってな。それと…その…昼間は、悪かった…。」
宮藤「いっいえ……あの時は彼さんが心配してくれたから……恥ずかしかったけど、…嬉しかったです…。」
少し顔が赤くなるが、それでも宮藤はどこか落ち込んでいる様子がある。
彼「(模擬戦の時の……あれか……)よし……少し、話さないか?」
宮藤「…………はい。」
二人はハンガーの隅に移動して、木箱に座って話し始めた。
彼「どうしてこんな時間に、箒で訓練なんて……」
宮藤「……あのね、彼さんはいきなり飛べなくなったことある…?」
彼「……昼間の模擬戦のことか?」
宮藤「…………私…どうすればいいんでしょう……なんで、上手く飛べないんだろう……。」
宮藤は俯き、自分の手の平を見つめた。
サーニャ「エイラ…私達は部屋に戻った方がいいんじゃない……?」コソコソ
エイラ「イヤ…しかしダナ、サーニャ……」コソコソ
サーニャ「…………。」ジ-----
エイラ「う…うぅ……。」
エイラ達は見つからないよう静かに、ハンガーの出口へと向かっていった。
サーニャ「あれ…そこにいるのは…ペリーヌさん?」
ペリーヌ「……へっ?」ビクッ
エイラ「まったくお前も……ホラ、帰るゾ!」グイッ
ペリーヌ「ちょ、なんであなた達までここに!いいから離しなさいっ――」コソコソ
隠れていたペリーヌも、ハンガーから退場した。
少しの沈黙の後、彼は両手を組んで、静かに話し始めた。
彼「…………おれも一時期、飛べなくなった時がある。」
宮藤「えっ…?」
彼「飛べなくなった。いや、飛びたくなくなったんだ。前に、おれが男のウィッチだから、長い間扶桑のとある研究所にいたって話をしただろ?」
宮藤「はい……でも、研究所の詳しいことは…口止めされてるって話も……」
彼「………研究所じゃ毎日、魔法力のテストやら身体の至る処まで検査するやら、変な薬も飲まされたり、一日中便所だって監視されている。その時のおれにとっては最悪の生活だった。研究所の奴らも、おれに魔法力があることを軍に伝えた両親も、全部憎くかった。」
宮藤「……………。」
彼「一年前、実戦での研究データを取るために、おれが飛行隊に所属された時……もう飛びたいなんて思わなかった。ネウロイを倒すための専用ストライカー、自分の魔法力を活かした高度な戦術を手に入れることは出来たが、せっかく自由になれたんだ、もうこのまま逃げ出そう、そう思った。」
彼は宮藤に、未だ嘗て自分の口からは誰にも話さなかったことを伝えた。
彼「……でも、ストライカーで飛ぼうとしない、おれの話しを聞きつけた両親が……欧州にある研究所の支部に駆けつけたんだ。お偉いさんに呼び出しをくらったのか、親自身から出向いたのかどうか分からないが……それでも…おれは飛ばなかった。」
ギリッ… 彼はいきなり歯を食いしばり、拳を強く握りだした。
彼「………その数日後…俺が参加しなかった作戦で……ネウロイに両親が来ていた研究所が破壊されたと………連絡が届いたんだ。」
宮藤「っ…!!……そんな……」
彼「…信じられなかった……おれは、その研究所があった所へ向かった。でも……建物は全て壊され、生存者は誰一人としていなかった。何としても両親を捜そうとしたけど……………もう手がかりも何もなかった。」
宮藤「……彼さん…。」
宮藤はどこか、彼と似たようなものを感じた。自分が前回のブリタニア基地に配属される前に見た、ストライカー研究所の跡地、そして父の墓。
墓の前で泣き明かした、あの時の自分を彼と重ね合わせた。
彼「その後……おれは自分が許せなくなった。生きる価値なんて無い。死ぬしかないと思った。でもそんな時……おれは宮藤、お前の話を聞いたんだ。」
宮藤「私…の……?」
彼「……ブリタニアに来た…宮藤博士の娘。「守りたい」って、おれより年の低い女の子が現実を受け入れ、必死に戦っているって話しをな。
事情が違うと言えど、宮藤…いや、芳佳を見て…おれは自分の守れなかった両親、人々に対して出来ることは芳佳のように戦うこと、それだけだと思った。」
その後、彼はロマーニャ基地に配属するまでの出来事を全て語った。
宮藤がきっかけで覚悟を決めたこと、空を飛び、ネウロイを撃墜していったこと、両親の墓を建てたこと。
そして、この基地で宮藤と出会えたこと。
宮藤「…そう………だったんだ……。」
彼「芳佳………お前がいるから、おれは飛べるんだ。おれだけじゃない、他のみんなにとって……大切な存在なんだ……。だから……お前が悩んでいたら…みんなが助けてくれる。」
寄り添って、宮藤の両手に手を重ねる。
宮藤「…………はい……っ。」
少し涙目になって、小さくコクンと頷いた。
宮藤は確かに、手と心から伝わる彼の温かさを感じていた。
彼「…………まぁ!そんなに気にすることじゃねーよ!魔法力はあるんだろ!寝れば治る!」
彼はいきなり声を張り上げて喋り、「はっはっは」と坂本の真似をし始めた。
宮藤「も…もうっ…彼さんっ…!……でも……ありがとう…――」
俺「……………。」
俺は隠れて、二人の会話を最後まで聞いていた。
時間は十数分前にさかのぼる。
元の世界にてアニメ「ストライクウィッチーズ2」を視聴していたため、この先の未来に起こるであろう展開はほぼ把握している。
自棄になった俺はその特性を利用し、今までは決して変えようとはしなかった本来の展開を、自らの手で変えてしまおうと企んだ。
そうすれば、彼と宮藤を突き放すことが出来る可能性が生まれてくる、と………
宮藤が夜に箒の訓練をしていることをアニメ8話の内容から推測し、俺はハンガーに訪れた。
そしてエイラやサーニャ達との会話が終わったタイミングを見計らって宮藤に話し掛けるつもりだった。
しかし宮藤に近づいて行こうとした時、彼女の隣には既に彼がいた。
物陰に隠れていた3人がコソコソとハンガーから出て行く所を見かける。
その3人と入れ違いに、俺は物陰に隠れたのだった。
俺(彼の過去…か………)
なぁ……教えてくれよ……俺はどうやったらお前みたいに強くなれるんだ。
どんな努力をすればいい?どうやったら、魔法力を得られるんだ?どう頑張っていれば、宮藤達に近づけるんだよ?
分かるわけ無いよな……俺は英雄になんかなれないんだよ。お前以上の努力をしたとしても、才能がゼロなら、それは何にもならないんだよ。
確かにお前は偉いさ……家族を失うことは辛いだろうけど…………でも、お前には戦える力、才能があるじゃねぇか。
挫折するだの、自分だけ生きていてもいいのかと理由をつけて戦わなかっただの、なら戦いたくても力なくして死んでいった人達はなんなんだよっ!
覚悟を決めても、悔しくても……お前みたいにすんなり立ち上がれるやつなんていねぇんだよ。
ネウロイに焼かれた街には……自分以外の家族が全員殺されて……立ち上がりたくても、それでも何も出来ずにビームに飲まれて死んでいった奴が山ほどいるんだよ……
お前みたいに……元から才能がある奴だけじゃねぇんだよ。
…それなのに、まるで自分は悲劇の主人公気取りか。元から魔法力も才能もあって、ネウロイと戦えるのにか。
…………ふざけるな……。
彼の過去を聞いた時、彼の決心、そして亡くなった家族への想いが俺に伝わったのは確かだろう。
それでも俺は、ひたすら彼を否定した。ただ「彼が憎い」という理由だけで。
そうか……犠牲か……犠牲があるから……彼と宮藤は恋人同士になったんだ。
それに…彼の両親の犠牲があったから、彼は今…誰からも頼りにされ、ウィッチ達とイチャイチャしている日々を送ることが出来るんだ。
いや何処の世界だって、犠牲があるから、勝者がいるんだ…。
……俺は彼を救った。…なのになんで………俺じゃなくて彼なんだ………。
誰も…俺みたいな犠牲になった奴なんて気にも留めない。
ミーナは俺をのけ者にし、雑用をこなす毎日を押し付けたんだ……。
くそっ…何が仲間のためだ……消えてしま
………っ!?……………………く…そ……っ………
一瞬、「もう、やめてくれ……」と、心の奥底から自分の声が響いてくるような気がした。
俺はハッとし、段々とその声が痛みに変わっていくことを理解する。
……………っ…!!
胸に響く痛みを手で押さえつけ、俺はハンガーから出て寝室へと戻っていった。
――男性兵士用の共同寝室にて――
俺「…………ここは………?」
キョロキョロと周りを見渡す。しかし暗くてよく見えない。
ただ、今理解できることは、どこか見覚えのある風景だということだ。
……ベットで寝ていたはずなのに……
…何処だろう………前に来たことがあるような………
…!……これは……
足下を見ると、俺はランニングシューズを履いていた。身体にはウィンドブレーカーを着用している。
土手の、白線が中央に引かれたアスファルトの道の上に、俺は立っていた。土手の下には川が流れている。
俺「…俺が……あの世界に来る前に走ってた土手だ……。」
…どういうことだ?……俺は元の世界に戻ったのか………
いや…もともとあの世界になんか行ってなかったんだ。疲労でおかしくなって、ただの幻を見ていただけなんだろう……
白線にそって、俺は歩き出す。
俺「……………………痛…っ…。」ビキッ
太腿の裏と肘の内側から鋭い痛みを感じる。
…確かにあの時は……足が痛くて…歩くのも辛かった……
じゃあやっぱり、スト魔女の世界に行ってたのも……ただの夢だったのか……
そう思っていた時、川沿いで何かが光った。
俺(!!……あれは………あの時と同じ……赤い光…?)
足をかばいながら坂を下りて、手で草木を払いながら光った方向へと進んでいく。
そして小さな穴の中に、キラキラと発光している赤い結晶を見つけた。
俺「………ネウロイのコア……。」
…………そうだ…このコアを触ったせいで、俺はスト魔女の世界に飛ばされて……
ここにこれがあるってことは……あの世界は夢じゃなかったのか?
そう思った時、身体が自然に動いた。俺の意志に反して、手がそのコアへと伸びていく。
っ!?…何でだ……!?手が……………
そのコアに触れた瞬間、周りを白い光が覆った。俺は驚いて、とっさに目をつぶる。
俺「………!!」
何が起こっているのかが理解できない。しかし段々と、身体が宙に浮くような浮遊感を感じ始める。
突然の出来事に目をつぶり、怯えながら約一分が経過した後、俺は恐る恐る、閉じていた目を開いた。
…っ…………ここは…っ!?
俺の周りはドス暗い雲のようなもので覆われ、身体は宙に浮いていると言うより、上から下へと落下しているような状況だった。
下から突き上げてくる風圧を感じ、身体を動かして必死にもがく。
なんだよここ…っ…!なんで落ちてるんだよ……!?……こんなところ見たことが……
っ!!………………ネウロイの……巣……
それは、アニメ「ストライクウィッチーズ」一期でみた光景と酷似していた。
テレビで見た巣の内部の映像が、目に映る周りの光景と重なり合う。
落下している中、時より見かけるネウロイ特有の六角形模様が更に、ここは巣の中だということを認識させた。
どうなってんだ………あのコアに触れたせいなのか………それでネウロイの巣に俺が……
……そういえばあの時、一期の何話だったか忘れたが……ネウ子はコアを宮藤に見せ、それを触れさせようとしていた………。
どうして触れさせようとした?もっさんが来たから、宮藤はコアに触れなかったけど……あのまま触れていたら…どうなっていたんだ?
俺の頭に、数々の疑問が浮かんでくる。一期9話にてネウ子が自らのコアを意図的に見せ、宮藤がそれを触ろうとした、謎の行動。
そして元の世界の兵器と同じ形をし、どこから来たのかも判明されていないネウロイの正体。そして何より、コアを触ったことによって今自分が信じられない状況にいるということ。
スト魔女は…人の作り出したフィクションのはずだ……でも、この光景はなんだ!?俺がスト魔女の世界で過ごした……何週間もの生活はなんだ…!?
これは………本当に……俺がおかしいだけなのか…?
俺「…………!!……ぐぁっ……あぁ……がっぁ…!!」
突然、胸の辺りが苦しくなり始めた。身体の中で、嘔吐する時のような消化物が逆流する感じがする。
しかしそれは喉元ではなく、みぞおちに向かって突き上がっていく。
俺「あっ…がああっ…ぐっ……!(何だこれ…!?痛い…苦しい…!)」
今まで感じたことのない激痛。身体の中から何かが皮膚を貫いて、飛び出そうとしている。
俺「あっああああっ…ああっ………!!…ああああああああああああああ…っ!」
次の瞬間、俺のみぞおちには、内側から裂かれるように穴が出来た。自らの身体に恐怖し、叫ぶ気力さえも消失する。
俺「はぁっ……!はぁっ………っ!いやだ……いやだ…っ…。」
…助けて……誰か…!何だよ……どうなってんだよ…!?……誰か…誰かっ……!身体にっ穴が……っ!
過呼吸になりつつ、胸に空いた穴の中へと視界を移す。
すると……その中から、赤く光る結晶が姿を表した。
俺「―――――――ッ!」
それはまさしく、ネウロイのコア、そのものだった。
俺「っ……ぁっ……ああああああっ!!」ガバッ
…っ!……こ……ここは……寝室……?……ネウロイの巣は…?今のは……
俺は共同ベットから飛び起きた。周りではまだ、多くの兵士達が眠っている。
俺「そうだ……こあっ……コアが……っ!」
すぐさま胸の辺りを手で何回もさすった。しかし、コアや穴は何処にも見あたらない。
手のひらを胸に乗せ、ドクンドクンと自分の心臓の音を感じ取る。
………夢…だったのか……
俺は体中の汗を拭き取り、夢を見ていたということをやっと理解することができた。
俺「でも……今の夢は…………一体………。」
――翌日、ハンガーにて――
前日に「機材を運ぶ手伝いをしろ」との指示を受けていたため、俺はハンガーに来て作業を行っていた。
整備兵「そういえばお前は扶桑人だったよな。明日、扶桑の艦隊がロマーニャに来るらしいぞ。」
俺「扶桑艦隊……ですか?………戦艦大和……」ゴト ゴト
整備兵「あぁ、それ。戦艦大和だ。あ、機材そこに置いていいぞ。」
俺「はいっ………と。…………ん?あれは……おじさん?」
機材を床において顔を上げたとき、離れたところから数日ぶりに俺はおじさんを見かけた。
上層部から命令を受けて、どこかに出張することが多くなったと整備兵から聞いていたけど……
久しぶりだし、挨拶するか……。
俺はおじさんの所へ歩いていき、後ろから話し掛けた。
俺「久しぶりです。おじさん。」
おじさん「……!!…お……俺………。」
俺の声を聞いたおじさんは、ハッとしたような顔で振り返った。
おじさん「俺、お前たしか…!………………………いや……何でもない……」
俺を見て何かを言おうとしたが、おじさんは言い留まった。何か、思い詰めているような様子がある。
そして俺から目を離し、カチャカチャとストライカーの整備に戻った。
………??……なんだ?………いや…きっと忙しいんだな……あまり、話し掛けないようにしよう。
今おじさんは手が離せないのだろうと思い、俺は邪魔をしないようにと、振り返って自分の作業場へ歩いていく。
おじさん「………………ちくしょう………」
後ろから微かにおじさんの声が聞こえたが、俺はただの愚痴だと思い、別に気にすることはなかった。
その約一時間後、大和で起こった事故により救助要請を受けた501は、宮藤、リーネ、彼の三名を大和へ派遣させた。
大和での負傷患者の治療が終わった後、本編と同様にすぐ近くの海域にネウロイが出現した。
しかしネウロイの数は本編と異なっていた。大型が二機出現するという、あり得ない展開が発生した。
戦局は好ましくない状況であったが、宮藤は大和にて発見した新ストライカー「震電」によって後から出撃し、大型一機を一人で撃墜した。
そして信じがたいことに、もう一機の大型は彼のみによって撃墜された。
その件について、大和の乗組員はこう語る。
「少尉と戦っていたネウロイの動きが完全に停止し、まるで自分から消滅していくようだった」……と……。
俺がこの話を知ったのは、基地で震電を履いた宮藤を見かけた後だった。
――夜、執務室にて――
杉田『今回の宮藤さん達の活躍により、大和は無事で済み、犠牲もありましたが大きく被害を抑えることが出来ました。本当に感謝しています。』
501のウィッチ達の活躍により危機を逃れたことへの感謝を伝えるため、杉田艦長はミーナに電話を掛けた。
渋い声が彼女の耳に響き渡る。
杉田『…最後に失礼、彼少尉について……お聞きしたいのだが』
ミーナ「彼さんのことですか……?」
杉田『はい。……昼間の――』
彼「こっちだっ!……はぁああああっ!」ダダダダダダ!
大和に向かってビームを放とうとしたネウロイに弾丸を撃ち込み、彼は大型を引きつけた。
大型ネウロイA「ピキィィィィィ!」バシュウウウ!
大型は彼のいる方向に向きを変えたが、それでも容赦ない攻撃に悪戦苦闘する。
彼「くっそ…!…リーネ!そっちはまだ大丈夫かっ!」
リーネ『……はいっ!(芳佳ちゃん……っ)』バシュウウン!
大型ネウロイB「ピキィィィィィ!」バシュウウウ!
リーネは扶桑艦隊が避難し終わるまで、もう片方の大型ネウロイのビームを防がなければならない。
彼(このままじゃ…リーネが…!……………この大型だけでも…!)
大型ネウロイA「ピキィィィ…」バシュウウ……
彼「(……ビームが止んだ!)っ!………おおおおおおおおおおッ!」ブゥゥゥゥゥゥン!
一瞬のスキを突き、彼が大型に向けて最高速度で突っ込んでいく。
彼「………このっ……くそったれがあああああッ!」ダンッ!
次の瞬間、彼は思いっきりネウロイに拳を突き立てた。
杉田『――彼少尉の行動は自殺行為のように見えましたが、その数分後、ネウロイの動きが完全に停止したのです。これは一体……」
ミーナ「………………それはおそらく、彼少尉の固有魔法のためです。」
ミーナは話の内容から彼が起こした行動の意味を理解し、杉田に説明し始めた。
杉田『彼少尉の…固有魔法……ですか?』
ミーナ「はい。……ネウロイと直接接触することによって力を吸収し、その力を自らの魔法力へと変換する能力……つまり……」
ミーナ「彼少尉の固有魔法は、ネウロイに対しての『エネルギー吸収』……ということです。」
~つづく~
「研究所」、「彼」の存在、「おじさん」の行動、この世界と元の世界。
そして、「俺」自身。全ては繋がり始める。
明かされる、坂本の限界。
俺にはこの先の展開を知っているという特性がある。
それを活かし、最悪の展開へと導かせようと考え出した。
だがしかし……
何もせずとも、すでに未来は最悪のエンディングへと向かっていた。
最終更新:2013年02月03日 15:56